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雑誌目次

雑誌文献

medicina57巻8号

2020年07月発行

雑誌目次

特集 真夏の診察室

著者: 平島修

ページ範囲:P.1233 - P.1233

 2019年6月,このテーマで特集企画が採用された際に執筆いただいた先生方へ,『経済・暮らしが豊かになり,経済のグローバル化,格安航空会社の発展とともに,誰もが簡単に海外旅行が可能となった.この30年で約3倍の約2,000万人,8月が最も多く,約200万人が海外へ出かける.逆に海外からの旅行者も年間1,800万人と10年前の3倍,やはり8月が最も多く200万人が日本へ訪れる.ある国でパンデミックが起きた疾患はいつ日本にも持ち込まれ兼ねない時代となった.気候,社会情勢を踏まえ,夏に遭遇する疾患の適切な対応,患者への正しい情報をまとめていただきたい』とお願いした.
 編集作業を進めていた2020年1月,中国より流行が始まったCOVID-19により世界が一変した.WHOですらも感染拡大予測ができず,3月には爆発的に世界中に広がることとなった.その一因にはグローバル化の影響が大きかったと言わざるを得ない.医療者はある日突然,命の危険にさらされるかもしれない,という感染の恐怖のなかで戦う聖職となった.そして3月20日,沖縄の海の前で予定していた座談会はテレビ会議で行うことになった.

座談会

沸騰する地球—気候変動に医師はどう立ち向かうべきか?

著者: 徳田安春 ,   平島修 ,   長谷川敬洋

ページ範囲:P.1234 - P.1241

温暖化が進み,年々災害が増えたり,毎年最高気温を更新するなど,医療者にとっても他人ごとではなくなっています.そこで,未来のことも考えつつ,今を見据えていく必要性を感じて,今回,あえて臨床系の雑誌の中で,環境問題をテーマにお話しさせていただくことにしました.(平島)
*新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い,本座談会はwebでの収録を行った(2020年3月20日収録).

総論

地球という患者

著者: 高薮縁

ページ範囲:P.1242 - P.1245

Point
◎地域的な豪雨の増加は,地球温暖化という病気の1つの症状である.
◎産業革命以降,地球表面平均気温はこれまでに約1.0℃上昇し,0.2℃/10年の上昇を続けている.
◎暖候期の日本の集中豪雨をもたらす広域の雨は,従来少なかった地域にも増えると予想される.
◎コロナ禍の現在,豪雨からの避難時の複合災害を避ける早めの対策が必要である.

病院が被災したら

著者: 小林健一

ページ範囲:P.1246 - P.1248

Point
◎燃料の残量状況によっては非常用発電機の連続運転時間が短くなる可能性がある.
◎医療機器のなかには,非常用電源が起動したあと,手動での再起動が必要な機器もある.
◎地震や浸水を考慮して機器の設置,諸室のレイアウトなどを検討する必要がある.

熱中症

古典的熱中症の分類とその背景

著者: 三宅康史

ページ範囲:P.1250 - P.1255

Point
◎熱中症は,環境や筋肉運動による深部体温の上昇が抑えられずに,臓器の高温化と虚血によって生じる.
◎高温多湿な環境にいるだけで起こる熱中症を“古典的熱中症”,加えて筋肉運動によって体内でさらに熱を産生することで起こる熱中症を“労作性熱中症”と呼ぶ.
◎高齢男女の熱中症の多くが,日常生活中に起こる古典的熱中症である.
◎高齢になるほど,医療機関の受診者数が多く,重症化の傾向がみられる.
◎熱中症の診断,重症度分類には,日本救急医学会分類2015が用いられ,緊急度により3段階(Ⅰ度,Ⅱ度,Ⅲ度)に分類される.
◎古典的熱中症の予後が悪いのは,高齢者に多く,時間を掛けて悪化し,元々の心機能低下や低栄養,腎障害により,治療への反応が鈍いためである.

家庭医が遭遇する熱中症—軽症患者の管理

著者: 阪本宗大 ,   北和也

ページ範囲:P.1256 - P.1258

Point
◎家庭医の遭遇する熱中症で,忘れてはいけないのが,高齢者の熱中症である.
◎夏には常に熱中症を想起しておくことが必要である.
◎帰宅の判断後は,増悪の予防と増悪を早期発見できる見守り体制を調整する.

二次救急の熱中症診療

著者: 寳田千夏 ,   矢吹拓

ページ範囲:P.1260 - P.1264

Point
◎熱中症の治療や予後に関係するのは,臓器障害や意識障害の有無である.
◎患者個人の生物医学的因子だけではなく,環境因子や社会的因子も熱中症発症リスクとなり得る.
◎熱中症の治療では,冷却,補液,臓器障害のマネージメントが重要である.
◎解熱剤は熱中症には効果がなく,臓器障害を悪化させる可能性もあるため,推奨されない.

熱中症ミミック

著者: 河村裕美 ,   志水太郎

ページ範囲:P.1265 - P.1269

Point
◎熱中症のクラスター疾患(臨床表現型の近い重要な鑑別診断)には,感染症(敗血症含む)や,脳出血,悪性症候群,セロトニン症候群,甲状腺クリーゼがある.
◎既往歴・内服歴(向精神薬,抗甲状腺薬など)の聴取,詳細な身体診察が診断に寄与する.
◎初期には鑑別が難しいこともあるため,経過をみて再評価する.

夏に悪化しやすい症状・疾患とその予防・管理

夏に血圧は下がるのか?

著者: 望月泰秀

ページ範囲:P.1270 - P.1273

Point
◎血圧変動の重要な因子として,外気温のほか,身体の活動量や,ノルアドレナリン,カテコラミン,バソプレシンなどの神経内分泌因子の季節的変動,ビタミンD,および血清コレステロールがある.
◎夏季における血圧低下は,冬季に比べて身体活動量が増えること,また,紫外線曝露によるビタミンDの増加が関与している.
◎降圧薬服薬中の患者で,夏季に120mmHgを下回る場合(過降圧),低血圧症状・臓器障害が認められる場合には減量,休止を考慮する.

夏は血管が詰まりやすい?

著者: 山根崇史

ページ範囲:P.1274 - P.1277

Point
◎急性冠症候群(ACS)はむしろ夏に少ない.
◎脳梗塞発症数の季節変動は病型によって異なる.
◎静脈血栓塞栓症患者数はACSと同様,夏場は少ない傾向にある.
◎動脈・静脈の詰まりやすさと季節にある程度関連はみられるが,その原因は明確ではない.

夏の慢性腎臓病(CKD)管理は難しい?

著者: 寺下真帆

ページ範囲:P.1278 - P.1279

Point
◎腎障害のある患者では,体液量・血圧のバランスが崩れやすい.
◎夏季においては,不感蒸散・発汗の増加による体重減少,さらに血管拡張も加わって血圧低下をきたしやすく,透析患者ではドライウェイト(DW)や内服薬の調整が必要となる.
◎また,透析導入前の保存期慢性腎臓病(CKD)においても,体液量・血圧の変化から急性腎障害(AKI)をきたしやすいため,特に利尿薬・レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の内服には注意する.

夏の急性高血糖問題と予防的管理—糖尿病をコントロールして「夏」を安全に乗り切るために

著者: 小比賀美香子

ページ範囲:P.1280 - P.1283

Point
◎夏は清涼飲料水を多飲する機会が多いため,清涼飲料水ケトーシスの発症に注意する.
◎高齢者は自覚症状に乏しく,口渇感の訴えも少ないため,夏は高齢者の高浸透圧高血糖状態(HHS)進展リスクが高まる.
◎夏の糖尿病ケトアシドーシス(DKA),HHS発症予防のため,シックデイルールを活用する.

サンバーン

著者: 鈴木洋介

ページ範囲:P.1284 - P.1286

Point
◎サンバーンはUVBによる短期的な皮膚障害であり,主にステロイド外用薬で加療する.
◎紫外線は,短期・長期のさまざまな皮膚障害を生じるので,防護対策が必要となる.
◎日焼け止めは紫外線対策に有効であり,正しい使い方の普及が望まれる.

悪化しやすいアトピー性皮膚炎の夏の管理

著者: 中島沙恵子

ページ範囲:P.1287 - P.1290

Point
◎アトピー性皮膚炎の悪化因子は年齢により異なるが,汗はすべての年齢に共通する悪化因子の1つである.
◎アトピー性皮膚炎の夏季の増悪因子として,「皮膚表面に残存した汗」が挙げられる.
◎アトピー性皮膚炎の夏季増悪予防のためには,かいた汗を洗い流す,または優しく拭き取る指導が有用である.

夏に起こりやすい湿疹

著者: 服部友保

ページ範囲:P.1291 - P.1293

Point
◎夏は肌を露出する機会や屋外活動が増え,露出部に皮膚炎を生じやすい.
◎夏には紫外線や汗が関与する湿疹が増加する.高温環境や掻破により悪化し,感染症を併発することもある.
◎治療にはただステロイドを外用するのではなく,個々の病変が形成される機序や環境も意識して対策を講じることが重要である.

夏のウイルス感染症

—ますます真夏に増えていく!?—手足口病

著者: 徳田嘉仁

ページ範囲:P.1294 - P.1297

Point
◎夏に日本国内で流行するウイルスといえば,エンテロウイルス属とアデノウイルス属である.
◎発疹をきたす手足口病は,エンテロウイルス属が関与している.
◎手足口病には,その年に流行する血清型によりいくつかのバリエーションがある.
◎地域の流行状況をチェックすることが重要.

ウイルス性中枢神経疾患

著者: 大平純一朗 ,   森川暢

ページ範囲:P.1298 - P.1301

Point
◎ウイルス性髄膜炎の診断の前に,細菌性髄膜炎を必ず否定すべきである.
◎特に免疫不全患者では,髄膜炎から脳炎への移行に注意すべきである.
◎ヘルペス脳炎を少しでも疑う場合は,早期にアシクロビルを投与し,他疾患の鑑別が難しい場合は,抗菌薬,抗真菌薬の併用も検討される.
◎アシクロビル投与時には腎機能低下やアシクロビル脳症に注意する.

痛みを伴うウイルス感染症—Bornholm病,HPeV感染症

著者: 栃木健太朗 ,   小松真成 ,   山口浩樹

ページ範囲:P.1302 - P.1305

Point
◎夏季に流行性筋痛症をきたすウイルス感染症は,主に2つある.
◎Bornholm病は主にエンテロウイルスが原因で発症し,強い筋痛が体幹部に生じる.
◎ヒトパレコウイルス(HPeV)感染症は四肢近位筋に強い胸痛が生じ,クレアチンキナーゼ(CK)が上昇することが多い.
◎流行性筋痛症は激しい疼痛にもかかわらず数週間で自然軽快し,予後は良好である.
◎全身痛の鑑別診断としてGestaltを構築することで地域での流行をいち早く察知することができる.

夏の魔物—おいしい話には裏がある

メジャーな微生物による食中毒

著者: 中野弘康

ページ範囲:P.1307 - P.1310

Point
◎消化器症状以外(腸管外)の症状に注目し,“曝露歴(exposure)”を丁寧に問診する.
◎病歴から原因微生物を予想して,身体所見をとり,腹部超音波検査やCTを組み合わせ,得られた便検体をグラム染色し,最終的に培養結果をみて自分の思考過程が正しかったか答え合わせする.この積み重ねが臨床医としての確かな実力をつけてくれる.

全国の美味しい特産品と影に潜む食中毒

著者: 和足孝之 ,   天野佑 ,   大槻和也 ,   河野香織 ,   永井誠大 ,   西川香澄 ,   橘孝幸 ,   岡田あずさ ,   阿部春季 ,   中野靖久

ページ範囲:P.1311 - P.1315

Point
◎どんな食べ物でも「ナマは危険!」である.
◎不調を訴える旅行歴のある患者では食中毒を念頭におき,「どの地域」で「どのような調理法のものを食べたか」を聞き出すことが大切である.

海外旅行と食中毒

著者: 伊東完 ,   岡本耕

ページ範囲:P.1316 - P.1319

Point
◎旅行者下痢症の多くは細菌性だが,軽症例であれば対症療法で経過観察も可能である.
◎マラリアなどの致死的疾患でも下痢が主訴になりうる点には注意が必要である.
◎下痢が2週間以上持続する場合には寄生虫感染も鑑別に挙がり,糞便検査なども検討される.

食中毒を疑ったら?—集団食中毒への対応も含めて

著者: 寺澤佳洋

ページ範囲:P.1320 - P.1323

Point
◎集団食中毒とは,同一の場所のみならず,同一の食物の摂取など特定の集団に発生する食中毒を指す.
◎集団食中毒を“疑った”際に医師のとるべき行動は大きく,①患者への対応,②保健所との情報共有,の2つである.

ダニ媒介感染症

著者: 忽那賢志

ページ範囲:P.1324 - P.1326

Point
◎媒介するダニの種類は地域によって異なり,自身の勤務する地域でのダニ媒介感染症の疫学を知っておくことが重要である.
◎ダニ媒介感染症の診断にあたっては,登山や農作業などの活動歴や,居住地の周囲の環境についての問診がポイントとなる.
◎ダニ媒介感染症では,抗菌薬投与によるメリットよりも副作用やコストなどのデメリットのほうが大きい.

蜂関連疾患

著者: 佐々木隆徳

ページ範囲:P.1327 - P.1331

Point
◎蜂刺症は4〜11月にみられ,特に蜂の個体数が増える7〜10月に多い.
◎蜂刺症で問題となるのは蜂毒に対するⅠ型アレルギー,特にアナフィラキシーである.
◎国内では毎年,蜂刺症によるアナフィラキシーで20名ほど死亡している.
◎アナフィラキシーの有無を早期に見極め,認めた場合には迅速にアドレナリン筋肉注射を行う.
◎今後も蜂刺症リスクがある場合はエピペン®を処方する.

ヘビ咬傷

著者: 有吉孝一

ページ範囲:P.1332 - P.1335

Point
◎安全のため蛇を病院に持ち込ませない.スマホやメールを活用するとよい.
◎無毒蛇のことや咬まれても毒が入っていないことがある.
◎問題は,①溶血毒,②組織毒,③神経毒,の3つの毒もしくはその組み合わせである.
◎緊縛,切開,吸引の処置は推奨されない.

溺水

著者: 藤﨑修

ページ範囲:P.1336 - P.1339

Point
◎溺水に至った原因も考慮する.背景に他疾患が存在することもある.
◎CPR時は,まず2回の人工呼吸を行ってから胸骨圧迫を行う.
◎肺炎発症時には水質やグラム染色,尿中抗原などを参考に抗菌薬を選択する.

海に潜む魔物たち

著者: 森田喜紀 ,   辻紘明

ページ範囲:P.1340 - P.1343

Point
◎地域特有の危険生物だけでなく,全国で知られる危険生物についても熟知しておく.
◎危険生物の種類を見極めて,それぞれに有効な対処方法を診療で行う必要がある.
◎シガテラ中毒の症状は一般的な食中毒のイメージとは異なることに注意して診療を行う.
◎海難事故を減らすには,救急治療に加えて,ライフジャケット着用などの啓発活動も求められる.

川やプールに潜む魔物たち

著者: 児玉文宏

ページ範囲:P.1344 - P.1346

Point
◎川やプールなどでの淡水曝露には,さまざまな病原体による感染症のリスクがある.
◎特にレプトスピラは重症化する場合があり,早期に診断し治療を開始するべきである.
◎アデノウイルス感染は非常に感染性が高く,診察には注意を要する.

高山病

著者: 鹿野颯太

ページ範囲:P.1348 - P.1351

Point
◎高山病は2,400m以上の高地で発症し,急性高山病,高地脳浮腫,高地肺水腫に分類される.
◎急性高山病は多くは軽快し,予防が可能である.
◎高地脳浮腫,高地肺水腫は早期治療が必要であり,高地肺水腫は繰り返し発症するため積極的な予防が求められる.

特集の理解を深めるための22題

問題/解答

ページ範囲:P.1352 - P.1355

連載 見て,読んで,実践! 神経ビジュアル診察・27

うわっ!? 首が痛い!—髄膜刺激症状の診方

著者: 難波雄亮

ページ範囲:P.1225 - P.1228

 頭痛の中でも髄膜刺激症状をきたす疾患には致命的なものが多いです.髄膜炎・脳出血・硬膜炎など,鑑別は多岐に渡ります.髄膜刺激症状があるかないかを特定できないと,致命的な疾患を見逃してしまうことになります.頭痛疾患を的確に診断するには病歴が最も重要です.髄膜刺激症状がはっきりと指摘できればよいのですが,それを検出する感度が100%に近い検査はありません.わずかな異常所見を検出できるように日々トレーニングする必要があります.それでは髄膜刺激症状について勉強しましょう!
 
*本論文中、関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年6月30日まで公開)。

ケースレポートを書こう! acceptされるために必要なこと・4

structureの原則

著者: 合田建 ,   見坂恒明

ページ範囲:P.1358 - P.1364

新規性は内容に求め,structureには求めない
 新規性がきわめて高い内容が記載された画期的なケースレポートにおいては,論文のstructureはほとんど問われない.しかし,それほど画期的ではない通常のケースレポートでは,まずは「型」に当てはめて論文を書くことがacceptへ向けた近道である.まず「ケースレポートのstructure」を表1に示す.
 論文作成には何より新規性が重要で,2つの発見(新規性)を基に論文を作成するのが,「2つわかった法」である.まず1つ目の新規性(第一新規性)については,本連載の第1・2回で紹介した「ケースレポートになりうる症例の6つの特徴」のいずれかに該当する必要がある.2つ目の新規性(第二新規性)もこの6つの特徴に該当していれば素晴らしい論文となるが,2つも該当することはそう多くない.そこで,第二新規性は「この発見は臨床的に有用だ」という視点からの“アイディアの新規性”とする.

フレーズにピンときたら,このパターン! 鑑別診断に使えるカード・7

「巨舌」「変動する/繰り返す意識障害」「無石性胆囊炎」

著者: 長野広之

ページ範囲:P.1366 - P.1372

総論
 巨舌は嚥下障害や口を閉じにくくなる,構音障害,睡眠時無呼吸症候群(SAS),気道狭窄などの症状をきたします.巨舌の定義は主観的ですが,舌の側面に歯の跡が付いている(図1)と客観的にも巨舌と考えられます.
 では,巨舌を診たときに考えるべき疾患は何でしょうか?

物忘れ外来から学ぶ現場のコツ 認知症患者の診かた・26

運転免許証更新のための診断書を依頼されたらどうしたら良いですか?

著者: 重松一生

ページ範囲:P.1374 - P.1378

ポイント
認知症の方では,運転免許の更新を拒否または保留されます

本気で書く! 入院時サマリー! 患者情報,丸見え化プロジェクト・2

既往歴を,肉付けせよ!〜コピペはダメ.ゼッタイ.

著者: 徳田嘉仁

ページ範囲:P.1380 - P.1385

 前回は,入院時サマリーに併存疾患・既往歴や内服薬,入院前ADL,認知機能,家族構成や介護支援状況など,多くの情報が十分に記載されていなかったため,work breakdown structure(WBS)注)が不十分となり,想起できなかったタスクがどんどん追加で発生して対応が後手に回ってしまった入院管理の一例を紹介した.
 ちなみに,入院契機となった病態の情報を迅速に収拾し,速やかに治療プランを関係スタッフに明示することは,とても大切である.じっくりと入院時サマリーを書いたせいで,「抗菌薬の投与が3時間後になりました!」「救急外来に4時間も患者が放置されていました!」などになってはいけない.当たり前だが,ベッド調整も投薬もリハビリも食事も,すべてのオーダーは医師の指示がなければ始まらない.入院時サマリーを“本気で”記載し始めると夢中になって忘れがちになるが,改めてそこは強調しておきたい.タイムマネジメントと優先順位の選択は間違えないようにしよう.

目でみるトレーニング

問題952・953・954

著者: 岩崎靖 ,   渡辺徹也 ,   陶山恭博

ページ範囲:P.1386 - P.1391

書評

—矢吹 拓 編—《ジェネラリストBOOKS》—薬の上手な出し方&やめ方

著者: 秋下雅弘

ページ範囲:P.1259 - P.1259

 超高齢社会を迎えて患者の多くが75歳以上になるなか,生活習慣病や老年症候群などで多病の高齢者は多剤服用となることが多く,薬物有害事象や服薬管理上の問題を生じやすい.国の統計では75歳以上の約4割が5種類以上,約1/4が7種類以上の内服薬を1つの薬局から調剤されている現状がある.
 そこで重要なキーワードが「ポリファーマシー」である.ポリファーマシーは,単に薬剤数が多いこと(多剤服用)ではなく,薬剤が多いことに関連して薬物有害事象のリスク増加,服薬過誤,服薬アドヒアランス低下などの問題につながる状態,つまり「多剤服用+(潜在的な)害」を指す.したがって,ポリファーマシーの是正では,一律の薬剤削減をめざすのではなく,処方適正化という観点から,患者の生活機能や生活環境などを考慮に入れて包括的に処方を見直し,多職種で対策を講じることが求められる.

—中島 啓 著—レジデントのための—呼吸器診療最適解—ケースで読み解く考えかた・進めかた

著者: 徳田安春

ページ範囲:P.1306 - P.1306

 最適化理論による数量モデルを利用すると,アウトカムを最大化させるような変数の解を求めることができる.これが最適解だ.数学では微分積分法などを用いて推定する.医療分野への応用では,感染症疫学での流行カーブを遅らせて小さくするためのパブリック・ヘルス的介入を求める方法がある.今,世界的に流行している新型コロナウイルス感染拡大に対する介入における最適解を求めて,研究者が数量モデルをつくり政策作成者に提言している.
 日常診療で患者さんにとっての最適解を求めるには,変数とその組み合わせが無数にあるため数理モデル化は困難だ.医学部受験のために勉強した微積分を使うことはできない.患者さんのための最適解を求めるにはどうすればよいか.

—松田能宣,山口 崇 編—これからはじめる—非がん患者の緩和ケア

著者: 木澤義之

ページ範囲:P.1357 - P.1357

 緩和ケアは,疾患を問わず,命を脅かす「重篤な状態」にある患者と家族が,必要に応じていつでも,どこでも受けることができる医療である.しかしながらわが国ではがんを中心に提供されており,まだがん以外の領域で十分に行われているとは言えない.
 本書は松田能宣先生,山口 崇先生という2名の,臨床・研究・教育の力のバランスが取れた素晴らしい緩和医療専門医が編集した,がん以外の疾患に対する緩和ケアの入門書であり実践書である.私達が臨床で出会うことが多い心不全,COPD,CKD,肝硬変,認知症,神経難病についてそれぞれの領域の専門診療+緩和ケアを実践している医師が執筆している.しかも,すべての項目で予後予測とアドバンス・ケア・プランニング,そしてソーシャルサポートの方法が書かれており,この3点は日常診療の質の向上に有用だろう.

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目次

ページ範囲:P.1230 - P.1232

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基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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