特集 腎疾患—エキスパートへの質問で学ぶ診療のキホンと最新情報
扉
著者:
藤田芳郎
ページ範囲:P.1502 - P.1503
一口に医師といってもさまざまなありようだ.専門分野の多様性は言うまでもなく,働く場所においても,開業医,地域病院の医師,あらゆる分野の医師を抱え最先端を自負する大規模病院,そして大学病院がある.腎臓内科の中の一専門分野においても,基礎研究者,統計を扱う疫学の研究者,臨床医などさまざまである.さらに時代によって急激な変化があり,その変化の速度は増している.地域病院の中で腎臓内科医として働いている一臨床医を取り上げてみても,腎臓内科の中の多くの分野,移植,血液透析,腹膜透析,手術関連,腎病理,水電解質などの中の一分野のみに特化している医師は少なく,さらに腎臓内科のみに特化せず,腎臓・内分泌科,腎臓・糖尿病科,腎臓・膠原病・感染症科,腎臓・循環器科,腎臓・血液内科などを標榜し,二股三股もかけて働いている人が少なくない.化学療法の進歩によって腫瘍科との連携も必要とされるようになってきている.また,昨年からはCOVID-19によって思いがけない変化が起きている.COVID-19対策も引き受けてその中心になって働いている医師も多いのではないか.COVID-19時代の真っ只中にあって今までと変わりなく目の前の患者さんに没頭して忙しく日々を過ごしているうちに,気がついてみると浦島太郎になっていたということになりはしないだろうかと,ふと心配になることもあるのは私だけであろうか.
一医師に与えられた時間は限られている.生活もある生身の人間だ.今までは治療法がなく見落としていても患者さんに不利益はなく,逆に診断できても患者さんにとってあまり利益はないという病気が最近の進歩で治るようになった,かつては「見落としてもよかった病気」が今や「見落としてはいけない病気」になった,また原因不明であった病気に「病名」がつけられ治療法が与えられた,などという情報をいかにつかむか.そういう情報が気軽に入る環境をいかに作るか.目の前の患者さんに没頭して日々過ごしていても最新情報を自然に簡単に短時間で知りたいという医師は多いのではないか.競争社会であっても医療現場においては競争原理を働かせずに情報と知識を分かち合う臨床現場であってほしい.患者さんに役に立ち治療に応用できる実践的知識および具体的な治療法を知り,患者さんにより役に立つ臨床医でありたいと願う医師,現場が忙しくても基本と進歩を理解し患者さんに還元する喜びがほしいという医師をわかりやすく助けてくれる雑誌が欲しい.