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雑誌目次

雑誌文献

medicina58巻11号

2021年10月発行

雑誌目次

特集 鑑別診断を意識した—非専門医のための胸部画像診断

著者: 中島幹男

ページ範囲:P.1692 - P.1693

 胸部ほど非専門医が画像診断に関わることが多い領域はありません.COVID-19の流行に伴い,非専門医が胸部画像診断を行う機会がさらに増えているものと予想されますが,逆に言えば非専門医でもある程度のレベルで胸部画像診断をしなくてはならないということです.そこで,多くの非専門医が特別なトレーニングすることなく,何となく読めるような気になってしまっている胸部X線写真や胸部CTについて,“ある程度のレベル”に到達できるよう,わかりやすく解説したいという思いから本特集を企画しました.
 “ある程度のレベル”とは日常の臨床現場で困らない程度,重大な疾患を見逃さない程度だと考えています.このため執筆陣は画像診断の専門家というよりも,第一線で患者と胸部画像に向き合う新進気鋭の臨床医にお願いしました.堅苦しい成書のような記述ではなく,目の前の医学生や研修医に教えるようなつもりで,正確性よりもわかりやすさを優先して執筆をお願いし,普段の「medicina」とは一味違った語り口にしました.専門家からは正確性について厳しい指摘を受けるかもしれませんが,執筆陣の意図ではなく編集者の要求であり,ご理解いただきたいと思います.

特集を読む前に あなたの理解度チェック!

ページ範囲:P.1694 - P.1697

●今月の特集執筆陣による出題です.胸部画像診断に関する理解度をチェックしてみましょう!

まずは基本を押さえる

胸部X線写真で肺門部の構造を理解する

著者: 中島幹男

ページ範囲:P.1698 - P.1699

Point
◎右肺門は逆「く」の字(右上肺静脈と右下肺動脈で構成される).
◎左肺門は左肺動脈が円形に見え,そこから上下に枝が出ている.
◎閑古鳥のパーツの太さと,頭(左)が高いことを意識しよう!

胸部X線写真で確認すべき3本の線

著者: 中島幹男

ページ範囲:P.1700 - P.1702

Point
◎白と黒の間に線(境界)あり!
◎下行大動脈左縁,心陰影,横隔膜の3本(左右で5本)の線が追えるか確認!
◎線が途中で途切れて追えなければ隣に異常陰影あり!
◎上記の状態をシルエットサイン陽性と呼ぶ.

胸部X線写真で確認すべき線が追えないとき

著者: 中島幹男

ページ範囲:P.1704 - P.1707

Point
◎線が途中で消えたら(途切れたら)隣に異常陰影あり!
◎特に左心陰影背側の異常陰影は見逃しやすい!
◎左下葉(LLL)は異常陰影が出やすい!
◎LLLのLサインにも注意!

胸部CTで解剖を理解する—肺野条件

著者: 三輪槙 ,   中島幹男

ページ範囲:P.1708 - P.1712

Point
◎気管・気管支の分岐を覚えよう.
◎下葉のトップは意外と高い.
◎中葉枝・舌区枝はB6と同じ断面で見える.
◎左にB7(S7)は存在しない.
◎気管支と肺動脈の太さの違いを理解しよう.

胸部CTで解剖を理解する—縦隔条件

著者: 三輪槙 ,   中島幹男

ページ範囲:P.1714 - P.1719

Point
◎縦隔条件は,骨や軟部陰影(筋肉・脂肪・石灰化など)を見るための撮影条件.
◎単純CTでも正常解剖をしっかり説明できるようにしよう!
◎血管をよく見るためには,造影CTを撮影しよう!

胸部CTで小葉の構造を理解する

著者: 小林研一

ページ範囲:P.1720 - P.1723

Point
◎いわゆる小葉とはMillerの二次小葉である.
◎小葉を囲んでいるものが小葉間隔壁であり,そこには肺静脈とリンパ管が通っている.
◎小葉には小葉中心が複数個ある.
◎小葉中心性,汎小葉性,小葉辺縁性,ランダムの分布パターンをおさえよう!

どんなときに造影CT?

著者: 笹沢俊吉

ページ範囲:P.1724 - P.1728

Point
◎造影剤使用の禁忌とリスクについて理解する.
◎造影CT撮影が有効な病態を知る.
◎撮影条件や単純CTの有無も考慮する.
◎急性出血を疑うときは造影CTは必須:造影剤のextravasationを見逃さない!

ICUにおけるポータブル胸部X線写真の役割

著者: 船曵知弘

ページ範囲:P.1730 - P.1734

Point
◎ポータブルAP像での撮影と立位PA像との正常像の違いを理解する.
◎比較をする際には,撮影条件を必ず確認して条件による影響を加味して解釈する.
◎デバイスの位置確認の撮影の際には合併症の有無も必ず確認する.

難解な間質性肺炎を必要なところだけわかりやすく

著者: 榎本紀之

ページ範囲:P.1736 - P.1742

Point
◎原因のある間質性肺炎としては,膠原病関連の間質性肺炎,吸入抗原による過敏性肺炎・吸入粉塵による塵肺,薬剤性肺障害の鑑別が重要である.
◎原因のある間質性肺炎を除外できた症例を特発性間質性肺炎と診断する.特発性間質性肺炎は実臨床で最も頻度の高い間質性肺炎である.
◎特発性間質性肺炎のうち特発性肺線維症は最も頻度が高く,かつ最も予後不良であるため見逃さないようにしよう!
◎特発性肺線維症の胸部高分解能CTでは蜂巣肺の存在が最も重要である.

主訴から攻める

長引く喀痰・咳嗽

著者: 松浦駿

ページ範囲:P.1743 - P.1746

Point
◎長引く風邪は存在しない!
◎気管支喘息や咳喘息による慢性咳嗽と診断する前には画像での精査を!

急性の呼吸困難—低酸素血症

著者: 船曵知弘

ページ範囲:P.1748 - P.1752

Point
◎まずは胸部X線写真における白黒から大雑把な鑑別診断を考えよう.
◎胸部X線写真だけでなく,その他の所見も考えて総合的に診断しよう.
◎酸素化を改善させるために必要な検査や処置を迅速に行おう.

胸痛・背部痛

著者: 三好祐輔 ,   瀬尾龍太郎

ページ範囲:P.1753 - P.1757

Point
◎胸痛・背部痛を訴える場合には,killer chest painを念頭に診察しよう!
◎疼痛に対する系統的な問診を活用しよう!
◎肺血栓塞栓症,急性大動脈解離,特発性食道破裂が否定しきれなければ迷わずCT画像を撮影しよう!

慢性の労作時呼吸困難

著者: 藤澤朋幸

ページ範囲:P.1759 - P.1763

Point
◎労作時呼吸困難を診た場合,まず実際に「労作に伴い低酸素血症をきたすかどうか」を調べる.
◎慢性閉塞性肺疾患(COPD),間質性肺炎,リモデリングをきたした気管支喘息,肺癌,胸水貯留といった呼吸器疾患だけでなく,心不全,側弯症,神経筋疾患なども慢性の労作時呼吸困難の原因となる.

呼吸不全なのに胸部X線写真で異常がないとき

著者: 中島幹男

ページ範囲:P.1764 - P.1767

Point
◎まずは身体所見で肺以外の原因(気道,頭蓋内疾患,呼吸筋力の異常)を除外しよう!
◎そして肺血栓塞栓症,気管支喘息発作・慢性閉塞性肺疾患(COPD)急性増悪,臥位で撮影された気胸の3つを考えよう!

特徴的な病歴があるとき

著者: 松浦駿

ページ範囲:P.1768 - P.1771

Point
◎問診は時に画像診断に勝る!
◎疑わなければ聴取できず,診断できない!

抗菌薬に反応しない肺炎

著者: 植松真生 ,   四方田真紀子

ページ範囲:P.1772 - P.1774

Point
◎治療抵抗性肺炎は,宿主因子,微生物学的因子,非感染性の肺疾患の3つに分けて考えよう.
◎見逃してはいけない鑑別疾患は結核と悪性腫瘍!

画像パターンから攻める

すりガラス陰影

著者: 林杏奈 ,   山本和男

ページ範囲:P.1776 - P.1779

Point
◎すりガラス陰影は,気管支や肺血管が見える程度の淡い肺吸収値の上昇と定義される.
◎すりガラス陰影は,肺胞隔壁(間質)の病変でも,肺胞腔内の病変でも生じる.
◎すりガラス陰影を認める疾患は,間質性肺炎,感染症,腫瘍性,血管性など多岐にわたり,詳細な問診を行い適切な鑑別を行うことが重要!

浸潤影とair bronchogram

著者: 小林研一

ページ範囲:P.1780 - P.1784

Point
◎浸潤影とは血管影が認識できない均一な高吸収域である.
◎気管支透亮像(air bronchogram)を見つけよう!
◎浸潤影=感染性肺炎と考えてはダメ!

白いほうが異常なのか,黒いほうが異常なのか

著者: 中島幹男

ページ範囲:P.1785 - P.1787

Point
◎胸部X線写真では,黒いほうが異常の場合もある.
◎複数の病態が混在することもある!
◎黒い側=正常,白い側=異常と短絡的に決めつけないようにしよう!

両肺が真っ白なときに,頭が真っ白にならないように考えること

著者: 大下慎一郎

ページ範囲:P.1789 - P.1794

Point
◎頭が真っ白にならないように,まず代表的疾患を5つ覚えよう!
◎肺の病気だけではなく,静水圧性肺水腫も鑑別に入れよう!
◎代表的5疾患において,少しずつ異なる特徴を覚えよう!
◎バイオマーカー(KL-6,β-D-グルカン,NT-ProBNP)をうまく利用しよう!

小さいすりガラス陰影,放っておいていいの?

著者: 河野雅人

ページ範囲:P.1796 - P.1800

Point
◎6mm以上のすりガラス結節は高分解能CTによるフォローアップが勧められている.
◎すりガラス結節(pure GGN)では上皮内腺癌,部分充実型結節(part-solid GGN)では微小浸潤性腺癌や浸潤性腺癌(置換型腺癌)のことがある.
◎増大傾向や内部充実成分の出現がみられる場合は確定診断を考慮しよう!

結節影と腫瘤影

著者: 柄山正人

ページ範囲:P.1802 - P.1807

Point
◎ケバケバ,モコモコ,胸膜引き込みは肺癌を疑うサイン!
◎空洞を見たら結核に注意.周囲に散布結節がないかチェック!
◎すりガラス陰影±充実成分を含む結節こそ肺癌に注意!
◎菌球(air crescent sign)はアスペルギローマに特徴的な所見!
◎多発結節では気道散布性か血行性分布かに注目!

小葉間隔壁の肥厚—septal line pattern

著者: 中村祐太郎

ページ範囲:P.1808 - P.1811

Point
◎肺は1〜2.5cmの小葉という単位で構成されており,小葉間隔壁で隔てられている.
◎小葉間隔壁は線維性の結合組織であり内部にリンパ管や静脈が走行している.
◎小葉間隔壁の肥厚の鑑別疾患にはリンパ管を病変の主体とする疾患,静脈がうっ滞する疾患,結合織が肥厚する疾患が挙げられる.
◎気管支血管束は小葉間隔壁や胸膜下組織とともに「広義の間質」に含まれる.
◎気管支血管束には小葉間隔壁と同様にリンパ管と肺静脈が走行していることから,小葉間隔壁の肥厚をきたす多くの疾患で気管支血管束にも肥厚をきたす可能性がある.

これって心原性肺水腫でいいの?—butterfly shadow

著者: 川合祥子 ,   中島幹男

ページ範囲:P.1812 - P.1817

Point
◎butterfly shadowの鑑別疾患を知ろう!
◎鑑別として肺胞障害を伴わない非心原性肺水腫,ARDS,肺炎(感染症),肺胞出血などを考えよう!
◎画像だけでなく,病歴・身体所見・他の検査所見を含めて総合的に判断しよう!

メロンの皮みたいなcrazy-paving pattern

著者: 鈴木勇三

ページ範囲:P.1819 - P.1821

Point
◎網かけのある高級メロンの皮のような,すりガラス陰影と網状影の重ね合わせをcrazy-paving patternと呼ぶ.
◎crazy-paving patternは肺胞蛋白症のみに見られる所見ではなく,感染症,腫瘍性疾患,呼吸窮迫症候群など多くの疾患で見られる.
◎crazy-paving patternを見たら臨床情報からの鑑別が重要.
◎COVID-19を忘れずに!

木の枝に実があるようなtree-in-bud appearance

著者: 齊藤均

ページ範囲:P.1822 - P.1826

Point
◎tree-in-bud appearanceを見たら,肺抗酸菌症,特に肺結核は第一に疑う.
◎感染症以外の原因もあることを頭の隅に置いておこう.

細かいツブツブが無数に!—small nodular pattern

著者: 齊藤均

ページ範囲:P.1828 - P.1832

Point
◎肺にツブツブがランダムにたくさん見られたら,まず,粟粒結核と血行性肺転移を思い浮かべよう.
◎胸膜に粒状影がなければ,小葉中心性分布と考えよう.

多発囊胞なのか,気腫なのか,蜂巣肺なのか

著者: 穗積宏尚

ページ範囲:P.1834 - P.1840

Point
◎囊胞,気腫,蜂巣肺の定義を知ろう.
◎多発肺囊胞をきたす代表的な鑑別疾患を知っておこう.
◎傍隔壁型気腫と蜂巣肺の違いに注意!
◎蜂巣肺を見たときの診断の流れは重要!!

白い部分と黒い部分が入り混じるとき—mosaic perfusion

著者: 四方田真紀子

ページ範囲:P.1842 - P.1844

Point
◎肺に白い部分と黒い部分が入り混じる原理を理解しよう.
◎肺胞以外に病変があることもある:肺は肺胞だけでできているのではない!
◎血流や換気の異常が起こるとき=気道が狭くなるときと血管が詰まるとき!

COVID-19っぽいですか?

著者: 三輪槙 ,   中島幹男

ページ範囲:P.1846 - P.1850

Point
◎COVID-19の胸部X線写真は胸膜直下,末梢優位の分布が特徴的.
◎淡い陰影から始まり,進行すると浸潤影や胸水貯留が出現する.
◎最初はどこかに限局していても,次第に両側・非区域性に広がっていく.
◎結局,どんな陰影でも否定はできない!

片側大量胸水を見たら

著者: 赤松泰介

ページ範囲:P.1852 - P.1855

Point
◎胸部X線で片側が真っ白なときは,まず胸水か無気肺か考えよう!
◎片側大量胸水を見たら,まず癌性胸膜炎,膿胸/肺炎随伴性胸水,結核性胸膜炎そして緊急性の高い血胸を考えよう!
◎胸水のCT値を見て疾患を予測しよう!

胸膜の肥厚を見たら

著者: 横須賀哲哉

ページ範囲:P.1856 - P.1860

Point
◎精査が必要な胸膜肥厚を見逃さないようにする.
◎胸膜疾患の診療においてアスベスト曝露歴の聴取は重要!
◎extra-pleural signを理解しよう.

気胸を見たら

著者: 横須賀哲哉

ページ範囲:P.1862 - P.1866

Point
◎気胸の分類(原因)を理解しておこう.
◎胸腔ドレナージの適応を知ろう.
◎再膨張性肺水腫(RPE)や特発性血気胸など頻度は低いが重篤になり得る病態がある.

連載 読んだら,ちょいあて! POCUSのススメ・7

五十肩の超音波診療

著者: 皆川洋至

ページ範囲:P.1681 - P.1687

 平成になって,急速に運動器エコーが普及しました.今回は,X線時代から超音波時代への大転換をもたらした「五十肩に対する超音波診療」について解説します.
 
*本論文中、関連する動画を見ることができます(公開期間:2023年9月30日まで公開)。

主治医の介入でこれだけ変わる! 内科疾患のリハビリテーション・2 リハビリ・運動療法の必要性と基本知識

機能障害・身体機能の評価

著者: 上月正博

ページ範囲:P.1868 - P.1875

 対象患者の診察にあたっては,病歴(既往歴,現症,家族歴),身体所見(身長,体重,血圧,脈拍),各種検査結果(血液検査,尿検査,心電図,胸部X線など)に加えて,動脈硬化性疾患の危険因子(喫煙歴,高血圧,糖尿病,脂質異常症,高尿酸血症,肥満など)の有無とコントロール状況,合併症や併存症の状況などを情報収集し,評価する1).そして,必要に応じて機能障害評価,生活情報・日常生活機能分類,栄養評価,運動負荷試験などを行う.
 本稿では,機能障害と身体機能の評価について解説する.

ここが知りたい! 欲張り神経病巣診断・7

脳出血⑤後頭葉〜視野の問題〜

著者: 難波雄亮

ページ範囲:P.1876 - P.1880

 突然眼が見えにくくなったとき,つい眼球自体の問題に注意を向けてしまいますよね.片眼だけの症状であれば眼球の問題を考慮してもよいですが,両眼ともとなると障害の原因がどこなのか病巣を推測していく必要があります.眼球を栄養する血管の問題? 視神経の問題? それともさらに脳実質の問題? 今回は視野障害について一緒に勉強していきましょう!

目でみるトレーニング

問題997・998・999

著者: 大久保佳昭 ,   大前知也 ,   石田正之

ページ範囲:P.1881 - P.1887

書評

—氏家 良人 監修 木澤 義之 編—救急・集中治療領域における緩和ケア

著者: 林寛之

ページ範囲:P.1729 - P.1729

 Palliative emergency medicine(救急緩和)というのは,世界でも比較的新しいトピックで,北米の救急医学にはフェローシップコースもできている.救命・集中治療と緩和ケアなんて,スポコン漫画と恋愛小説くらいベクトルの違うもののように見えるが,どっちも必要なんだ.生きとし生けるものは全てに始まりと終わりがあり,人間の死亡率はなんと100%! 一世を風靡(ふうび)した『鬼滅の刃』の炎柱(えんばしら),煉獄杏寿郎も「老いることも死ぬことも人間というはかない生き物の美しさだ」と言っているではないか.患者さんの人生において,その人自身の価値観を尊重し,その人らしい人生を送る「生き方(死に方ではないよ)」をお手伝いすることもわれわれ医療者の大事な仕事であり,救急・集中治療も緩和ケアも目の前の患者さんにとっては非常に重要だ.患者さんの意思に反した延命処置がいかに医学的に無駄であり,患者さんの自尊心を傷つけているかということは,世間でもたびたび議論の的になっている.その意味では,本書は手探り状態の日本の「救急・集中治療の緩和ケア」において“一寸先は光”をまさしく照らしてくれる.
 医学生や研修医も含め,多くの医師はこんなの習ったことがない.目の前の困難事例を各自の臨床能力と経験だけで乗り切ってつらい思いをしていることだろう.でも本書を読めば大丈夫.本書はその歴史的成り立ちから,考え方,さらには具体的な対処法まで,熱く深く記載されている渾身(こんしん)の1冊となっている.決してHow toだけでは語れないんだ.

—泉 知里 編—国循・天理よろづ印 心エコー読影ドリル—【Web動画付】

著者: 中川義久

ページ範囲:P.1801 - P.1801

 ドリル(drill)学習は,一定の法則性がある型を繰り返しこなすことで,知識の効率的な定着を促す効果がある訓練法とされます.算数ドリルや漢字ドリルなど,皆さんもなじみがあることでしょう.
 『国循・天理よろづ印 心エコー読影ドリル【Web動画付】』は,単なる心エコークイズや問題集ではありません.基本的な症例から複雑な病態まで,繰り返し学ぶことで心エコーの読影力が飛躍的に向上するドリルです.心エコーは静止画ではなくWebで動画にアクセス可能です.右心カテーテル検査結果などの圧データも多く呈示されているので,心エコーに加えて,血行動態と心不全への知識も整理して身につけることが可能です.

—吉村 知哲,田村 和夫 監修 川上 和宜,松尾 宏一,林 稔展,大橋 養賢,小笠原 信敬 編—がん薬物療法副作用管理マニュアル 第2版

著者: 岩本卓也

ページ範囲:P.1827 - P.1827

 「いかに副作用を軽減して治療を継続するか」.われわれががん薬物治療を開始するときに必ず考えることである.いくら最新のがん治療,エビデンスの高い治療であっても,実際に治療に耐えることができなければその恩恵を得ることはできない.また,がん治療に前向きな患者ばかりではなく,副作用への心配から自ら治療の道を閉ざしてしまう方もおり,そのような患者に対しては一層丁寧な説明が必要になる.このようなとき,実践に強い参考書,副作用について素早く整理できる本が手元にあると心強い.本書は,好評を博した初版の刊行から3年を経て,さらに内容を充実させた第2版であり,医療従事者に求められる副作用管理のポイント,経験に基づくアドバイスが随所に挿入された実践向けの本である.もちろん,患者に要所を押さえた説明をする際にも最適である.
 本書は,抗がん薬投与後に発現する主な副作用を取り上げ,その発現率,好発時期,リスク因子,評価方法をまとめている.また,典型的な症例提示もあり,副作用アセスメントの進め方をイメージできる.そして,第2版では,「患者のみかたと捉えかた」を新設し,腫瘍内科医が身体所見,検査,副作用の評価方法を記載しており,診療の進め方を理解するのに役立つ.また,各論では「味覚障害」「不妊(性機能障害)」「栄養障害」が新たに追加され,「免疫関連有害事象(irAE)」の項目も充実している.

—前野 哲博,松村 真司 編—帰してはいけない外来患者 第2版

著者: 北野夕佳

ページ範囲:P.1845 - P.1845

 救急外来診療には地雷がつきものである.しかし,救急外来は「救急に来た」という時点で医師側も子細に問診・診察する心の準備ができている.また画像検査を含め,手厚い精査が時間的・医療資源的にも許容される.入院病棟診療は,重症病態なので入念な対応を要するが,継続的に経過観察でき,悪化時にはすぐに認識できる(=時間を味方につけられる)という圧倒的な強みがある.
 一方,外来診療はどうだろうか.「総合内科外来」にはどんな症例も来る.かつ,とにかく数が多い.朝,外来ブースで自分のリストに再診6例しか入っておらずガッツポーズをしたのも,束の間の夢.「初診です」「近医からの紹介状ありです」「○○科外来から内科依頼です」「○○科入院中の方で,術前の内科依頼です」「健診で異常を指摘された二次精査です」と,次々に新患が入ってくる.はじめましての患者さんばかりである.救急搬送や入院と同様の時間を割いていては外来が回らない.待ち時間の長くなった再来の患者さんたちがイライラし,看護師さんからはにらまれる.こちらも泣きたくなる.ほとんどの症例は本日初療・精査を開始し,次回,結果説明と介入を始めれば大丈夫なのである.

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2021年10月〜2022年4月開催内科関連学会情報

ページ範囲:P.1888 - P.1893

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目次

ページ範囲:P.1688 - P.1690

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ページ範囲:P.1900 - P.1900

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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