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雑誌目次

雑誌文献

medicina58巻12号

2021年11月発行

雑誌目次

特集 外来で役立つAha!クエスチョン—この症状で、次は何を聞く?

著者: 志水太郎

ページ範囲:P.1912 - P.1913

 病歴は診断プロセスにおいて重要な役割を担っています1).診察では,初見の身体所見情報(視診)とともに,挨拶,そして「今日はどうされましたか?」という言葉を皮切りに始まることが多いでしょう.病歴のセッションは多くの場合,診断における中核となり,その質を規定するものは病歴の“6C”に代表されるような要素(Courtesy,Control,Compassion,Clear mind,Curiosity,Concentration)に分解できます2).そこで得られた情報から自然と(直観的に)鑑別診断の軸となるもの(pivot)と鑑別疾患群(cluster)が想起され,その後に得られる情報と頭の中で突合させながら,鑑別疾患の順位づけを変化させていく3),これがある程度の経験を積んだ医師の一般的な診断プロセスではないかと思います.
 では,どのように患者から話を聞くのがよいでしょうか.筆者は,前述の6CのうちControlの柱となる概念として,マールブルグ大学のBanzhoff教授の提唱する「inductive foraging(帰納的渉猟)」の手法が最も理解しやすい概念ではないかと思っています4).これはopen-ended questionによって,患者のストーリーにおいて中心となる問題スペース(problem space)を明らかにしていくという病歴の再現法です.そして概要が明らかになったストーリーをもとに,さらに“解像度”を高めるような質問(descriptive questioning)や,鑑別疾患リストの診断確度を上下させる特異度の高いclosedな質問(triggered routine)を用いながら,現時点での可能性の高い診断(または診断群)に近づいていきます.

特集を読む前に あなたの理解度チェック!

ページ範囲:P.1914 - P.1918

●今月の特集執筆陣による出題です.外来で出会う頻度の高い症候・疾患に関する理解度をチェックしてみましょう!

総論

問診の心得

著者: 勝倉真一

ページ範囲:P.1919 - P.1921

Point
◎問診に重要な3つのプロセスとして「inductive foraging」「descriptive question」「triggered routine」がある.
◎病歴は患者が体験したエピソードが目の前に映像として浮かび上がるほど詳細に得るべきである.
◎問診中は医師と患者がお互いに時系列を意識しながら対話を進めるとよい.

全身

発熱

著者: 小林正宜

ページ範囲:P.1922 - P.1926

症例
90代女性
現病歴 一昨日に朝の定期検温で38℃台の発熱を認めたため,施設医が往診して診察を行うも明らかな異常はなく,COVID-19のPCR検査を実施し,アセトアミノフェンが処方された.同日にPCR陰性が判明しているが,本日になっても38.5℃の発熱を認めるため,施設職員に連れられ外来を受診した.

全身倦怠感

著者: 石丸裕康

ページ範囲:P.1927 - P.1930

症例
30代男性
現病歴 来院3〜4週間前から疲れやすくなる.様子をみていたが徐々に倦怠感が進行し,仕事をするのもしんどくなってきた.疼痛,咳嗽,喀痰,下痢,血便などは認めない.

体重増加

著者: 西垂水和隆

ページ範囲:P.1931 - P.1934

症例
40代女性
現病歴 もともと太り気味ではあったが,2〜3カ月前から徐々に体重が増え,半年前からすると5 kgの体重増加となった(身長150 cm,体重60 kg→65 kg).周囲からも「異常」と言われるために心配になって外来を受診.体重増加以外には体調に問題はなく,浮腫の自覚もない.

体重減少(食欲低下を伴わない)

著者: 冨山周作

ページ範囲:P.1935 - P.1938

症例
57歳女性
現病歴 3カ月前から徐々に疲れやすさを自覚していた.食欲の低下はなかったが,同居している家族が,以前に比べて痩せているのを感じ,癌が心配で総合診療科の外来を受診した.

食欲低下

著者: 大武陽一

ページ範囲:P.1940 - P.1943

症例
30代女性
現病歴 来院3カ月前頃より,食後の胃部不快感や食欲低下を自覚.市販薬を飲んで対応していたが,改善なく,来院1カ月前に近医受診.血液検査や腹部超音波,上部消化管内視鏡検査などを施行されたが,特に異常は指摘されなかった(H.pyloriは陰性).内服で経過をみていたが,症状が改善しないため,心配になり当院を受診した.

浮腫

著者: 佐々木陽典

ページ範囲:P.1944 - P.1947

症例
75歳女性
現病歴 以前から夕方に軽い対称性の下腿浮腫を自覚していたが,翌朝には改善していた.2カ月前から腰痛がひどくなり,整形外科に通院するようになった.1カ月前から浮腫が急激に悪化して,1日中むくんだ状態となったため,心配になり受診した.

異常知覚

著者: 西知世 ,   多胡雅毅

ページ範囲:P.1950 - P.1953

症例
50代男性
現病歴 7カ月ほど前から両下肢のしびれ(ビリビリ,ジンジン)と歩きにくさを自覚していた.下肢浮腫も伴うようになったため近医を受診したが,血液検査や全脊椎MRIで異常を認めず,精査加療目的に当院を紹介され受診した.

頭頸部

急性の頭痛

著者: 塩尻俊明

ページ範囲:P.1954 - P.1957

症例
30代男性
現病歴 5日前から両こめかみに違和感があり,4日前の午後より頸部〜後頭部に鈍痛が生じた.1日前,昼過ぎに乗り物酔いのような嘔気があり,食残を嘔吐.近医で頭部MRI施行するも異常なく,吐き気止めの処方を受ける.午後から嘔気と頭痛が増悪したため,ER受診.

慢性の頭痛

著者: 中山明子

ページ範囲:P.1958 - P.1960

症例
34歳男性
現病歴 高校生の頃から15年以上頭痛に悩まされている薬剤師.神経内科を受診して「片頭痛」と言われたり,整形外科を受診して「筋緊張型頭痛」と言われたりした.風呂に入って改善するときもあれば,逆に悪化することもある.頭痛が酷すぎて妻の運転でER受診したこともあるが,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が処方され帰宅となった.NSAIDs,スマトリプタンを使っても改善しなかった.薬局で調剤中,運転中,食事中,飲酒中,睡眠中など,頭痛がいつ突然起きるかわからない.痛む部位も前頭部や後頭部など,その時々によって異なり,嘔気・嘔吐も伴うこともある.数時間で治る場合がほとんどで,1日に何度も続くこともあれば,数カ月何もないこともある.看護師の妻からは精神科への受診も勧められ,ショックを受けていた.「もうどこに行っても痛み止めしか出されないし,良くならなさそうであきらめていたが,思い切って相談してみよう」と受診した.

失神

著者: 加藤之紀

ページ範囲:P.1962 - P.1966

症例
30代男性
主訴 気を失って倒れていた

痙攣

著者: 原田拓

ページ範囲:P.1967 - P.1971

症例
35歳女性
現病歴 午前10時頃,仕事中に「気持ちが悪い」といって席を立った後に痙攣を起こしたため救急車要請された.救急隊現着時のバイタルはJapan Coma Scale(JCS)0,体温36.6℃,脈拍54回/分,血圧108/52 mmHg,呼吸数16回/分,SpO2 99%.自覚症状は軽度の嘔気のみ,目撃者とともに搬送となった.

めまい

著者: 浅田萌 ,   北和也

ページ範囲:P.1974 - P.1978

症例
70代女性
現病歴 朝,布団から起き上がる際にめまいが出現.何とかリビングまで這っていき,家族に抱えられて来院.車椅子に乗った状態で診察室にやってきた.受診時にはめまいは消失していたが,発症時には動悸,嘔気と手の震えがあったという.複視,耳鳴,難聴はない.このような症状は初めてであり,救急車を呼ぶべきか迷うほどだったとのこと.呂律困難はなさそうである.

嚥下障害

著者: 山田有統 ,   鵜飼万実子

ページ範囲:P.1979 - P.1983

症例
76歳女性
主訴 食べ物がのどに詰まる

胸部

急性咳嗽

著者: 皿谷健

ページ範囲:P.1984 - P.1986

症例
27歳男性
主訴 数日前からの急性咳嗽

慢性咳嗽

著者: 倉原優

ページ範囲:P.1987 - P.1991

症例
52歳女性
主訴 慢性咳嗽

血痰

著者: 長尾大志

ページ範囲:P.1994 - P.1997

症例
70代男性
現病歴 4カ月ほど前から血痰が出現した.近医を受診して止血剤や去痰薬などの投薬を受けたが,内服中は多少軽快するものの,内服が終了するとまた血痰が出る,ということを繰り返していたため当院紹介受診となった.

呼吸困難

著者: 亀井博紀

ページ範囲:P.1998 - P.2002

症例
30代男性
現病歴 4カ月前の夜に,急に呼吸困難が出現して救急外来を受診.検査(X線,採血)では特に異常はなく,“過呼吸”と言われ経過観察となった.その後から呼吸困難は強さに波があるが,ほぼ毎日認めている.

胸痛

著者: 近藤猛

ページ範囲:P.2003 - P.2005

症例
54歳男性
現病歴 これまでは特に症状はなかったが,2〜3週間前から胸の痛みを感じるようになった.しばらくすると治まるため様子をみていたが,ひどくなってきたために来院.受診時には症状は認めていない.

動悸

著者: 大髙由美

ページ範囲:P.2006 - P.2009

症例
70代女性
現病歴 数日前から日課の散歩をした際に動悸を自覚していた.本日は自宅でトイレに歩いた際に動悸を自覚し,内科外来を受診した.

腹部

嘔気・嘔吐

著者: 西口翔

ページ範囲:P.2010 - P.2013

症例
80代男性
現病歴 2週間前から食欲低下があった.経過をみていたが改善せず,3日前から嘔気・嘔吐を認めたため,外来受診した.

急性の上腹部痛

著者: 横江正道

ページ範囲:P.2015 - P.2018

症例
65歳男性
現病歴 昨日の夕食後からみぞおちの辺りが痛くなり,一時的に右側の痛みが強くなった感じがしたが,その後は左側にも痛みがあり,一度,嘔吐した.その後も上腹部が持続的に痛くなり,夜は眠れず,次第に耐えられなくなったため,朝一番で内科外来を受診.発熱はなく,血圧,脈拍,呼吸数などバイタルは安定している.排便あり(普通便),下痢なし,放屁あり.

急性の下腹部痛

著者: 望月理玄 ,   窪田忠夫

ページ範囲:P.2019 - P.2021

症例
50代女性
現病歴 3日前から緩徐発症の下腹部痛を主訴に,自宅近くの医療機関を受診した.粗大な子宮筋腫があったので婦人科関連疾患が疑われ,総合病院で婦人科のある当院へ紹介となり,ウォークインで外来受診をした.

慢性の腹痛

著者: 水本潤希

ページ範囲:P.2022 - P.2026

症例
35歳女性
現病歴 2年前から右下腹部痛があった.痛みは気にならないこともあれば,体を動かす,特に寝ている状態から起き上がるときに出現することもあった.ここ数カ月間は,一日中ずっと右下腹部に違和感があり,生活に支障のない痛みではあるものの煩わしさを感じていた.食事摂取や睡眠による疼痛の変化はない.知り合いの胃癌が判明したことがきっかけで,もしかしたら自分も何か悪い病気なのではと思い,外来を受診した.

血便

著者: 西信俊宏

ページ範囲:P.2029 - P.2032

症例
80歳女性
現病歴 朝から便が柔らかったが,昼の排便時に便器一杯に真っ赤な便が出た.このような症状は初めての経験のため心配になり,家族とともに来院した.一度血便が出た後からは便意を自覚するが排便は認めていない.来院時バイタルサインは意識清明,体温36.4℃,脈拍76回/分,血圧136/78 mmHg,呼吸数12回/分,SpO2 99%と安定しており,立ちくらみを含むふらつきの訴えもない.

下血

著者: 中野弘康 ,   綿貫聡

ページ範囲:P.2033 - P.2035

症例
80代男性
現病歴 近医内科医院に通院中.2カ月前から腰痛を自覚し,他院整形外科を受診して変形性腰椎症と診断された.2日前から黒色便を自覚していたが様子をみていた.来院当日の朝,排便時にめまいを自覚し,家族に連れられ内科外来を受診した.

腹部膨隆

著者: 國友耕太郎

ページ範囲:P.2036 - P.2038

症例
82歳女性
主訴 腹部膨隆

尿閉

著者: 玉井道裕

ページ範囲:P.2039 - P.2042

症例
70歳男性
現病歴 これまでに尿の出にくさや排尿時痛,血尿を自覚したことはなかった.来院の前日,尿の出が悪いことに気がついた.来院当日,尿がまったく出なくなったため,受診.

血尿

著者: 坂本純永 ,   佐々木彰

ページ範囲:P.2044 - P.2048

症例
67歳男性
現病歴 4年前から高血圧で外来加療を行っている.2カ月前に職場の健康診断で血尿を指摘された.排尿障害や頻尿も含めて自覚症状は何もないが,職場からの指示もあり外来を受診した.

筋肉・関節

筋力低下

著者: 鋪野紀好

ページ範囲:P.2049 - P.2052

症例
40代男性
現病歴 来院1週前に咽頭痛,鼻汁,関節痛が出現した.近医でクラリスロマイシン(200 mg/日)が処方されたが,その後,筋力低下が悪化したため原因精査目的に当科を紹介受診した.来院時には咽頭痛や鼻汁はなかった.

腰痛

著者: 勝倉真一

ページ範囲:P.2054 - P.2057

症例
70代女性
現病歴 2カ月前に自宅で転倒し,その頃から腰痛を自覚していた.1カ月前から腰痛が増強していたが,市販の解熱鎮痛薬で様子をみていた.1週間前から痛みで体動困難となり,家族に連れられて外来を受診した.

関節痛

著者: 澤近弘

ページ範囲:P.2058 - P.2061

症例
50代女性
現病歴 3カ月前から手指関節痛,両膝関節痛が出現した.その後,近医整形外科で膝関節注射を行っていたが,膝関節痛は改善しなかった.両膝関節痛の腫れが強くなり,歩けない状況になった.家族に体を支えてもらいながら,精査目的に内科外来を受診した.

連載 読んだら,ちょいあて! POCUSのススメ・8

頸部POCUSによる上気道狭窄の診断

著者: 古川まどか

ページ範囲:P.1901 - P.1907

 頸部は衣服の外に出ている部分が多く,いつでも,誰でもプローブをあてることができます.甲状腺,喉頭,咽頭,気管,食道,唾液腺といった,私たちが生きていくために必要な機能に関わる臓器のほか,血管,神経,筋肉,その隙間にあるリンパ節など,多彩な臓器や病変をエコーで手に取るように容易に観察できる領域です.
 
*本論文中、関連する動画を見ることができます(公開期間:2023年10月31日まで公開)。

ここが知りたい! 欲張り神経病巣診断・8

脳出血⑥側頭葉の皮質下出血

著者: 難波雄亮

ページ範囲:P.2063 - P.2068

 脳卒中を診療する際に,麻痺や感覚障害を伴うことはとても多いと思います.ただし,なかには何か様子がおかしい/言葉が出にくいなど,目に見えない症状を主訴に受診されることもあります.疑って,病歴を聴取しないと病巣診断につなげられない可能性があります.今回は言葉の問題,「失語」を伴う症例について勉強しましょう.

目でみるトレーニング

問題1000・1001・1002

著者: 岩崎靖 ,   浅見貴弘 ,   大久保佳昭

ページ範囲:P.2069 - P.2076

主治医の介入でこれだけ変わる! 内科疾患のリハビリテーション・3 リハビリ・運動療法の必要性と基本知識

リハビリ・運動療法の基本

著者: 上月正博

ページ範囲:P.2078 - P.2084

 リハビリテーション(以下,リハビリ)の語源は,re(再び)+habilis(適した)+ation(すること)だ.すなわち,「rehabilitation=再び適した状態にすること」という意味になる.近代以降(16世紀〜)においては名誉や権利の回復を指す用語として使われていたが,現代では障害者の社会復帰を促す医療・福祉的な意味の言葉としても用いられている.
 『広辞苑』によれば,リハビリは「治療段階を終えた疾病や外傷の後遺症をもつ人に対して,医学的・心理学的な指導や機能訓練を施し,機能回復・社会復帰をはかることである.更生指導ともいう」とされている.しかし,リハビリはこの10年で大きな進歩を遂げ,その実態は『広辞苑』での定義とはだいぶ違っている.本稿ではリハビリ・運動療法の基本に関して述べたい.

書評

—小林 健二 著—消化器診療—プラチナマニュアル

著者: 上野文昭

ページ範囲:P.1949 - P.1949

大切なものは目に見えない
 (サン=テグジュペリ著『星の王子さま』より)

—三宅 秀彦 著—遺伝カウンセリングロールプレイ—段階的に学べるシナリオ集

著者: 小杉眞司 ,   吉田晶子

ページ範囲:P.1973 - P.1973

 遺伝カウンセリングを学ぶすべての学習者にとって,ロールプレイは重要な学びの場である.しかしながら,どのようにロールプレイに臨むべきか,また生かすことができるのかを十分に把握できず,戸惑うことも少なくないのではないだろうか.結果,ロールプレイ前のディスカッションが盛り上がらない,勉強にはなったが大変だった,という感想になることをよく経験している.
 本書は,京都大学とお茶の水女子大学で遺伝カウンセラー教育に携われてこられた三宅氏の経験を基盤に,認定遺伝カウンセラー制度委員会委員長として今後の展望も含めて執筆された充実したテキストとなっている.第1部では遺伝カウンセリングにおけるコミュニケーションスキル,ロールプレイの目標設定から,遺伝カウンセリング担当者の事前準備,クライエント役の準備,実施,フィードバックの方法,最後のまとめまで,ポイントを絞った形で記載されている.初学者がロールプレイ全体を把握するのに適しており,また経験者にとっても,自分自身の達成度を見直すことができる.そして,指導者やファシリテーターには,指導方法や議論の進め方の改善に役立つ視点が多数盛り込まれている.

—香坂 俊 著—もしも心電図で循環器を語るなら 第2版

著者: 増井伸高

ページ範囲:P.1993 - P.1993

 あの香坂俊先生の名著『もしも心電図が小学校の必修科目だったら』が全面改訂された.しかもタイトルは『もしも心電図が小学校の必修科目だったら2』ではない!

—八重樫 牧人,佐藤 暁幸 監修 亀田総合病院 編—総合内科マニュアル 第2版

著者: 志水太郎

ページ範囲:P.2027 - P.2027

 亀田総合病院の“あの”マニュアルの第2版が10年を経て出版されました.第一印象は「本当に手のひらサイズ」.500ページと聞くと厚い(熱い)印象ながら,院内PHSの厚さとほぼ同じコンパクトさを保っています.値段も3,080円と読者フレンドリー,そのうえ,八重樫牧人品質,亀田品質というプロファイル.ここまでで,これはもうどう見ても買いのロジックとなります.そのほか,数あるなかからダイジェストで個人的なお薦めポイントを記載します.
 このような病院発のマニュアルを見るとき,そこで訓練を受けた医師達が思い出されます.個人的な印象ですが,一緒に職場で仕事をさせていただいたことのある亀田卒の医師たちのカルテは,とても整理されたものだった記憶があります.特に等しく皆同じであったと感じるのは,ヘルスメンテナンスと題されたカルテ末尾の記載でした.本書では第32章の16ページ(pp.468-483)が,この予防医療トピックに充てられていますが,これは病棟でも外来でも重要で,“総合内科・総合診療”的な長期的・包括的ケアを達成するうえでの中心軸を構成する考え方です.そのような丁寧な診療をめざす想いが,このマニュアルに込められています.治療については参考文献とともに,GRADE分類に準じてできる限りの客観性がこの小さな本にびっしり詰まっています.ここまで丁寧にリファレンスや推奨度の方針が行きわたっていることを拝見し,著者の先生方,そして監修のお二方の先生の熱量,教育と医療の質への思い,また作成に伴うご苦労はいかばかりだっただろうか,と思います.このような網羅的かつ米国医療において標準化されている質担保の教育が,国内の病院で行われているということや,またその教育を院外の読者たちに惜しみなく与えてくださる著者の太っ腹な心意気にも感銘を受けました.

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目次

ページ範囲:P.1908 - P.1910

読者アンケート

ページ範囲:P.2085 - P.2085

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.2086 - P.2087

購読申し込み書

ページ範囲:P.2088 - P.2088

次号予告

ページ範囲:P.2089 - P.2089

奥付

ページ範囲:P.2090 - P.2090

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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バックナンバー

60巻13号(2023年12月発行)

特集 一般医家のための—DOAC時代の心房細動診療

60巻12号(2023年11月発行)

特集 内科医が遭遇する皮膚疾患フロントライン—「皮疹」は現場で起きている!

60巻11号(2023年10月発行)

増大号特集 患者さんの質問にどう答えますか?—言葉の意味を読み解きハートに響く返答集

60巻10号(2023年9月発行)

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60巻9号(2023年8月発行)

特集 症例から読み解く—高齢者診療ステップアップ

60巻8号(2023年7月発行)

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60巻7号(2023年6月発行)

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60巻6号(2023年5月発行)

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60巻5号(2023年4月発行)

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60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

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60巻2号(2023年2月発行)

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60巻1号(2023年1月発行)

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59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

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59巻10号(2022年9月発行)

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59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

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59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

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56巻13号(2019年12月発行)

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56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

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特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

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56巻4号(2019年4月発行)

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56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

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55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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