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文献詳細

雑誌文献

medicina58巻13号

2021年12月発行

文献概要

書評

—Andre M. Mansoor 著 田中 竜馬 監訳—フレームワークで考える内科診断—(Frameworks for Internal Medicine)

著者: 青木眞

所属機関:

ページ範囲:P.2208 - P.2209

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 症例の提示が始まる前に「正解はこの中にあります」と検討会を始めたUCSF内科教授のLawrence Tierney(以下LTと略)に度肝を抜かれたのは30年前になる.臨床診断の達人LTが言う「正解」の内実はVINDICATE(Vascular, Infectious, Neoplastic, …)といった基本的病態のリストであり,彼が鑑別診断を構成していくうえでの基本骨格(=フレームワーク)である.今思えばこのLTとの邂逅こそが本書の扱う「フレームワーク」という概念による洗礼であった.監訳者の田中先生も恐らく受洗者の1人であり,それが本書の翻訳を手がけることになった遠因と想像している.
 本書では「下痢」,「心内膜炎」といった問題を整理するフレームワークを作るにあたり,その整理の軸の系統的な整合性にこだわらない.このある種の「軸の乱れ」こそがフレームワークの臨床的な使い勝手をよくし,ひいては教育上も診療上も有用なものとしている.監訳者の指摘を待つまでもなく「消化管出血」を上部消化管は食道・胃・十二指腸と「解剖的部位」の軸で分けて,下部消化管は器質性,血管性,炎症性と「機序」による軸で分類する.まったく同様に臨床の達人LTも「筋肉の問題」を,myopathy(=筋力低下),myalgia(±筋力低下),rhabdomyolysis(CKが上昇)の3つ項目でフレームワークを作るが各項目はそれぞれ「疾患概念・身体所見」「自覚症状」「検査結果」であり,ある意味,整理の軸は1本ではない.しかし鑑別診断を考えるうえでは秀逸である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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