icon fsr

文献詳細

雑誌文献

medicina58巻3号

2021年03月発行

文献概要

特集 いまさら聞けない! 肝胆膵疾患—みなさんのギモンに答えます 膵疾患

自己免疫性膵炎

著者: 神澤輝実1 千葉和朗1 菊山正隆1

所属機関: 1がん・感染症センター都立駒込病院消化器内科

ページ範囲:P.516 - P.521

文献購入ページに移動
 自己免疫性膵炎は,本邦から世界に発信された発症機序に何らかの自己免疫現象の関与が示唆される膵炎で,その病理組織学的には高度のリンパ球とIgG4陽性形質細胞の浸潤と線維化を特徴としlymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis(LPSP)と呼ばれる.血中IgG4値が高頻度に上昇し,全身の諸臓器に多数のIgG4陽性形質細胞浸潤を認めることなどから,現在はIgG4が関連する全身性疾患であるIgG4関連疾患の膵病変と考えられている1,2).高齢の男性に好発し,ステロイドが奏効するがしばしば再燃する.
 一方欧米では,IgG4とは関連がなく,膵管上皮内へ好中球の浸潤を認めるidiopathic duct-centric chronic pancreatitis(IDCP)3)と呼称される病理組織像を呈するもう一つの自己免疫性膵炎が注目され,現在はLPSPを呈する自己免疫性膵炎は1型,IDCPは2型と呼ばれている1).自己免疫性膵炎2型は,比較的若年者に多く,男女差がなく,急性膵炎で発症したり,時に炎症性腸疾患を伴うことがあり,ステロイド治療後の再燃は稀で,発症頻度はわが国では少ない.本稿では,自己免疫性膵炎1型について,最新の全国調査4)の結果を交えて概説する.

参考文献

1)日本膵臓学会,厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班:自己免疫性膵炎診療ガイドライン2013.膵臓28:717-783, 2013
2)Kamisawa T, et al:IgG4-related disease. Lancet 385:1460-1471, 2015
3)Notohara K, et al:Idiopathic chronic pancreatitis with periductal lymphoplasmacytic infiltration. Clinicopathologic features of 35 cases. Am J Surg Pathol 27:1119-1127, 2003
4)Masamune A, et al:Nationwide epidemiological survey of autoimmune pancreatitis in Japan in 2016. J Gastroenterol 55:462-470, 2020
5)日本膵臓学会,厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患等政策研究事業)「IgG4関連疾患の診断基準並びに治療指針の確立を目指す研究」班:報告 自己免疫性膵炎臨床診断基準2018(自己免疫性膵炎臨床診断基準2011改訂版).膵臓33:26-37, 2018

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?