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雑誌目次

雑誌文献

medicina58巻6号

2021年05月発行

雑誌目次

特集 デジタル内科学の勃興—オンライン診療,AI,治療用アプリ

著者: 野村章洋

ページ範囲:P.750 - P.751

 超高齢社会を迎えた日本において,社会保障費の増大や生産年齢人口の減少への対応は急務である.2014年,政府はその解決策の1つとして,「世界最先端の医療の実現のための医療・介護・健康に関するデジタル化・情報通信技術(information and communication technology:ICT)化」を提唱した.これは最先端のデジタル技術を用いることで,効率的かつ網羅的に個人の生体データ・医療データを収集・蓄積し,その解析結果をデータ所有者にフィードバックすることで,より良い健康増進サービスならびに医療を提供することを目指すものである.このモデルが提唱されて7年あまり,このような取り組みは“デジタルヘルス(digital health)”と総称され,未曾有の新型コロナウイルス感染症のパンデミックや本邦におけるデジタル庁の新設もあいまって,医療分野におけるデジタル化を急速に進めている.

特集を読む前に あなたの理解度チェック!

ページ範囲:P.752 - P.755

●今月の特集執筆陣による出題です.デジタル医療に関する理解度をチェックしてみましょう!

Editorial

デジタル内科学とは何か?—デジタルが切り開く新しい医療のかたち

著者: 野村章洋

ページ範囲:P.756 - P.760

Point
◎デジタルヘルスとは,モバイル端末を含む情報通信技術(ICT)を用いたあらゆる医療・健康支援を指す.
◎デジタルヘルスのうち,特に医療に関係するものを指す場合にはデジタル医療と呼び,さらに内科疾患に限定すればデジタル内科学と定義される.
◎デジタル医療を実践する手段として,オンライン診療,人工知能(AI),モバイルヘルス,仮想現実(VR),電子健康情報(EHR)・個人健康情報(PHR)などが挙げられる.
◎デジタル医療にはいまだ有効性,安全性,プライバシー,教育など解決すべき問題はあるが,医療ICTの既存医療との融合は時間の問題であり,身近で活用されているICTから理解と実践を進めていくのがよいと思われる.

オンライン診療

日本におけるオンライン診療の変遷と向かうべき未来

著者: 加藤浩晃

ページ範囲:P.761 - P.767

Point
◎医師が情報通信機器を用いて患者や生活者と医療に関するやり取りを行う手法として,「保険診療によるオンライン診療」,「自由診療によるオンライン診療」,非医療行為である「遠隔健康医療相談」の3つがある.
◎2020年4月の時限措置により,現状は保険診療において初診でも再診でも,どのような疾患においてもオンライン診療を行うことができるようになっている.
◎オンライン診療と対面診療を適切に組み合わせ「ハイブリッド診療」とすることで,患者に提供する医療の質を向上させることができると考えている.

内科領域におけるオンライン診療の実際

著者: 山下巌

ページ範囲:P.768 - P.773

Point
◎オンライン診療は,対面診療と上手に組み合わせることで真価を発揮する.
◎医師と患者が繋がる新たな診療手段として,かかりつけ医機能を強化する.
◎診察機器やウェアラブルデバイスの開発により,診療の質の向上が期待される.
◎操作が簡単な機器の開発などデジタル・ディバイド対策が今後の課題である.
◎すそ野を広げ,医療者・患者・社会が受診リテラシーを向上させる必要がある.

オンライン診療サービスcuronによる遠隔医療

著者: 原聖吾

ページ範囲:P.774 - P.778

Point
◎新型コロナ禍でオンライン診療サービスの導入・利用は急激に増加傾向にある.
◎「curon」(クロン)は現在,全国約5,000の医療機関に導入実績のあるオンライン診療サービスとなった.
◎2020年より提供を開始した薬局向けオンライン服薬指導サービス「curonお薬サポート」とも連携し,診療から薬の受け取りまで一気通貫でできる.

CLINICSを用いたオンライン診療・服薬指導

著者: 稲生優海

ページ範囲:P.780 - P.784

Point
◎多くの医師が,オンライン診療による感染リスク軽減や受診控え防止,かかりつけ機能向上を実感している.
◎オンライン診療により,患者は医療機関への移動や待ち時間を減らすことができ,通院負担の軽減につながる.
◎内科領域では,継続的な治療が必要な高血圧,糖尿病,脂質異常症などの生活習慣病においてオンライン診療の活用事例が多い.
◎オンライン診療は治療の選択肢の1つであり,患者の重症度や副作用の発現状況などによって,対面診療とうまく組み合わせることが重要となる.

小児科領域におけるオンライン診療

著者: 黒木春郎

ページ範囲:P.786 - P.791

Point
◎オンライン診療は小児の日常診療において,さまざまな事例に適応がある.
◎オンライン診療の患者は小児が多く,これはオンライン診療が子育て支援に有用であることを示唆する.
◎COVID-19の軽症・無症状例,また濃厚接触例の診療にオンライン診療が有効である.
◎オンライン診療の利用者(小児患者の保護者)は,その利点と限界をよく理解している.
◎米国では,オンライン診療は小児科領域において,専門医不足への対応,医師教育,患者指導,地域活動に利用されている.

テレビ会議システムを利用した不眠症領域の心理療法

著者: 中島俊 ,   大井瞳 ,   井上真里

ページ範囲:P.792 - P.795

Point
◎テレビ会議システムを用いたオンラインの心理療法は,対面での心理療法に劣らず効果がある.
◎オンライン心理療法では患者のデジタル親和性がそのアクセスに影響を及ぼす.
◎超高齢社会の日本ではオンライン心理療法の社会実装においてデジタルデバイドをふまえた対応が欠かせない.
◎オンライン心理療法で取得されるデータは今後の心理療法のデジタル化に資するものとなる.

オンラインでの面会・看取りの現場

著者: 廣橋猛

ページ範囲:P.796 - P.800

Point
◎新型コロナウイルスの院内感染により家族と面会できなくなることで,緩和ケアの現場への影響は甚大なものがあった.
◎オンライン面会はコロナ禍で会えない患者・家族を救う大切な手段である.
◎オンライン面会には,対面面会にはないメリットがある.
◎アフターコロナでも,オンライン面会は対面面会と融合する形で残るだろう.

人工知能技術の臨床応用

データ駆動型社会とAIが織り成す新たなデジタル医療

著者: 野村章洋

ページ範囲:P.803 - P.806

Point
◎人工知能(AI)とは,大量の知識データに対して高度な推論を的確に行うことを目指したものである.
◎2021年現在のAIブームは,コンピュータ性能の飛躍的な向上に伴う計算資源の増加により大きく進歩した機械学習・深層学習が主流である.
◎AIはビッグデータやウェアラブルデバイスからの大量の入力情報から望む出力を得るためのパワフルなツールであり,データ駆動型社会の医療分野において予防医療やオーダーメイド医療を実現するためのキープレーヤーの1つである.

AIを用いた問診システムによる業務効率化

著者: 阿部吉倫

ページ範囲:P.807 - P.811

Point
◎2024年より始まる医師の時間外労働の上限規制実施に向けて,「医師の業務効率化」は喫緊の課題である.
◎「AI問診ユビー」は,紙の問診票のかわりにタブレットを活用した問診サービスであり,問診に附帯する事務作業の効率化を図り,外来診療中の医師の作業時間低減に寄与する.
◎開発にあたっては5万本の論文をデータベース化し,現在も導入先医療機関での医師の診断結果を反映し続けている.
◎全国300以上の医療機関が導入し,受付時間や診療時間の削減,最適な人材配置などの成果がみられた.

機械学習を用いた感染症の画像診断—感染症検査の目的とAIの種類・適応範囲

著者: 沖山翔

ページ範囲:P.812 - P.815

Point
◎感染症検査には,治療や予防など患者介入を目的とするものと,疫学調査を目的とするものがある.
◎感染症領域の検査において,人工知能(AI)は患者介入,PCRや培養検査は疫学調査に適している.
◎「感染症AI」には,流行状況予測AI,COVID-19判定AIや,身体診察の補助AIなど,さまざまな種類がある.

人工知能技術を用いた遠隔AI病理画像診断

著者: 飯塚統

ページ範囲:P.816 - P.820

Point
◎がん患者の世界的な増加傾向に対して,多くの国で病理医の絶対数が不足しており,病理診断に時間を要するだけでなく,病理医の労働負荷も非常に大きくなっている.
◎病理診断の領域はデジタル化へシフトしており,遠隔病理診断や病理AIの活用に対する期待は高い.
◎病理診断領域の課題解決のために,病理AI解析ソリューション「PidPort」を開発・提供し,診断支援およびプレシジョンメディシンを実現する.

深層学習技術を用いた超音波画像診断の進歩

著者: 鍵山暢之

ページ範囲:P.822 - P.827

Point
◎深層学習は人工知能(AI)技術の一種で,直接入力された生の画像情報などから予測モデルを作成することができる.
◎超音波画像は多様性が高くコンピュータ処理に向いていないと思われていたが,深層学習の柔軟な学習能力で対応可能になってきている.
◎深層学習で超音波画像を処理した例として,画像断面判別,セグメンテーション,自動計測などがあり,臨床応用が迫っている.
◎これらの深層学習技術,通信技術,radiomicsなどの新しいデジタル技術で,超音波検査はより簡単で再現性の高い精密検査へと変貌を遂げようとしている.

モバイルヘルスと治療用アプリ

モバイルヘルスにおけるデジタル療法と治療用アプリケーション

著者: 野村章洋

ページ範囲:P.828 - P.830

Point
◎デジタル療法とは,日本では2014年の薬事法(現在の薬機法)改正で「医療機器プログラム」が薬事規制の対象となったことをきっかけに台頭した新しい治療法である.
◎医療機器プログラムとは「汎用コンピュータや携帯情報端末等にインストールされた有体物の状態で人の疾病の診断,治療若しくは予防に使用されること又は人の体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされているもの」である.
◎医療機器プログラムを主に病気の「治療」に用いるのがデジタル療法であり,その方法としてモバイル端末にダウンロードされるアプリなどを,治療用アプリケーション(治療用アプリ)と呼ぶ.
◎海外ではすでに医療機器プログラムとして規制当局の承認を受けた治療用アプリがあり,医療従事者と利用者双方の診療・診断・治療のサポートに活用されている.
◎日本においてもデジタル療法に関係する臨床試験や治験が進み,臨床的な効果が示された治療用アプリが出てきた.

ニコチン依存症に対する治療用アプリ

著者: 佐竹晃太

ページ範囲:P.831 - P.835

Point
◎ニコチン依存症の治療において,在宅での心理的依存に対する介入を行う治療用アプリを開発した.
◎治験にて継続禁煙率の改善が認められ,ニコチン依存症治療用アプリとして,日本で初めて薬事承認された.
◎両群ともに治療用アプリを用いた場合,オンライン診療は対面診療と比べて治療効果が劣らないことが示され,保険診療内でもオンライン診療が可能になっている.

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に対する非薬物療法としての治療用アプリ

著者: 佐藤雅哉

ページ範囲:P.837 - P.840

Point
◎非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の確立された薬物治療は存在しない.
◎認知行動療法を用いた減量支援はNASH患者に対する最も有効な治療である.
◎2014年に施行された医薬品医療機器等法(薬機法)により,アプリなどのソフトウェアも規制対象となった.
◎NASHに対して認知行動療法を目的とした治療用アプリの介入が有効な可能性がある.
◎現在,NASH治療用アプリの薬事承認を目指し,臨床研究を行っている.

デジタル療法によるアルコール依存症治療への挑戦

著者: 宋龍平

ページ範囲:P.841 - P.843

Point
◎アルコール依存症を疑われる者のうち,専門治療を受けている者は10%以下である.
◎海外では,専門医療機関で用いられるアルコール依存症向け治療用アプリが既に製品化されている.
◎日本でもプライマリ・ケア医療機関での早期介入を想定した治療用アプリ開発プロジェクトが進行中である.

糖尿病治療を目的としたモバイルアプリの開発

著者: 大西由希子

ページ範囲:P.844 - P.847

Point
◎生活習慣改善を促すモバイルアプリは多数開発されている.
◎糖尿病領域では,血糖改善における有効性が示された報告はあるが,本邦で保険適用されたモバイルアプリはいまだ存在しない.
◎現在,保険適用に向けて2型糖尿病治療におけるモバイルアプリの治験が実施されており,今後,糖尿病の予防や治療への有効性が検証されたモバイルアプリの登場が待たれる.

ドライアイ用スマホアプリによる新しい医療ビッグデータの収集—P4 Medicineの実現に向けて

著者: 猪俣武範

ページ範囲:P.850 - P.854

Point
◎Society 5.0で実現する医療では患者・市民を中心とした日常生活圏で予見的・生涯的な医療が行われ,予測医療(predictive medicine),個別化医療(personalized medicine),予防医療(preventive medicine),参加型医療(participatory medicine)から成るP4 Medicineという新たな価値の実現が待たれる.
◎モバイルヘルスとは高機能化するスマートフォンやタブレットなどの携帯端末を利用して行う医療行為や診療サポート行為である.
◎モバイルヘルスアプリの利活用は,これまで医療情報だけでは原因がわからなかった疾患の病態解明やP4 Medicineに幅広く応用される.
◎モバイルヘルスアプリを用いたクラウド型大規模臨床研究により,ドライアイの発症・重症化因子などが明らかとなった.

Digital hypertensionによる高血圧管理

著者: 岸拓弥

ページ範囲:P.855 - P.858

Point
◎高血圧症の治療における生活習慣改善は実行ならびに継続が難しい.
◎ウェアラブルデバイスは高血圧診療と親和性が高い.
◎高血圧治療アプリが今後期待される.

仮想現実(VR)/拡張現実(AR)/複合現実(MR)

VR/MR/ARを用いたオンライン診療の未来—Holomedicine開発の経緯と臨床研究

著者: 関本智子 ,   大山彦光 ,   服部信孝

ページ範囲:P.859 - P.862

Point
◎Parkinson病(PD)の症状安定化のため,多面的な運動症状の評価ができる三次元遠隔医療を着想した.
◎双方向性三次元遠隔医療の実証実験では,参加したPD患者から高い評価が得られた.
◎今後の展望として,記録し蓄積された三次元動作データを基に,深層学習させた人工知能による診断補助システムを開発できる可能性がある.
◎技術革新によってPD診療の底上げ・均質化および患者のQOL向上が期待される.

VRを活用したリハビリテーション

著者: 原正彦

ページ範囲:P.864 - P.867

Point
◎仮想現実(VR)技術の医療応用は30年以上の歴史があるものの,その効果はきわめて限定的であった.
◎われわれは大学での産学連携活動を通して,まったく新しいアプローチのVRリハビリテーション用医療機器の開発に成功した.
◎このVR機器「mediVRカグラ®」は歩行(姿勢)・上肢・認知・内耳機能障害および疼痛の改善手段として応用が進んでいる.
◎近年では病院などでのリハビリテーションにおける新型コロナウイルス感染症対策としても注目されており,また遠隔リハビリテーション機器としての応用も進められている.
 
*本論文中、関連する動画を見ることができます(音声なし,2023年4月30日まで公開)。

VRによる医師・医学生を対象とした医学教育の最先端

著者: 横堀將司 ,   上路健介 ,   藪田遼

ページ範囲:P.868 - P.873

Point
◎救急医療の需要は年々増加しているが,救急医のon the job trainingの機会は限られている.
◎コロナ禍において,医師,医学生の臨床教育も制限されている.
◎virtual realityによる没入感ある教育コンテンツが上記を担保しうる可能性がある.
◎今後はいかに双方向性を高めるか,触覚や嗅覚など付加的情報を与えるかが課題となる.

電子健康情報(EHR)/個人健康情報(PHR)とビッグデータ

Apple Watch® から得られる生体データの医療応用

著者: 木村雄弘

ページ範囲:P.876 - P.882

Point
◎ウェアラブルデバイスのメリットは,無意識で継続的な生活のモニタリングを可能にすることである.
◎ヘルスケアデータのトレンド評価は,具体的な生活指導に活用でき,行動変容を生じうる.
◎医療機器として承認された家庭用プログラムによるデータは,適切な医療提供のための補助として活用する.
◎医療におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の促進には,個人・医療従事者がデジタルヘルスケアに対して,共通の正しい認識をもつことが重要である.

救急医療分野におけるデジタル技術活用とデータ解析

著者: 園生智弘

ページ範囲:P.884 - P.889

Point
◎急性期医療領域において,臨床業務と研究データ収集を両立するのは難しい.
◎音声コマンド入力や画像の光学文字認識(OCR)などの入力支援技術がデータ収集の鍵となる.
◎入力支援技術と医療テキストデータの構造化エンジンを併用したプロダクトであるNEXT Stage ERシステムが急性期医療でのエビデンス提供の道筋を示しつつある.

医療分野におけるブロックチェーン技術の応用

著者: 市川太祐

ページ範囲:P.890 - P.894

Point
◎製薬業界では医薬品開発の難易度が増加しており,新薬の開発コストは増加している.
◎開発コストにおいてはモニタリング業務のコストが一定の割合を占めている.
◎ブロックチェーン技術によってモニタリング業務の効率化が可能となる.

連載 読んだら,ちょいあて! POCUSのススメ・2

急性心不全をPOCUSで評価

著者: 岡田基

ページ範囲:P.741 - P.745

 あなたが初期研修医と当直していると,呼吸苦を訴える高齢患者が救急搬送されてくるとの連絡があり,研修医に初療をするよう指示しました.
 
*本論文中、関連する動画を見ることができます(公開期間:2023年4月30日まで公開)。

フレーズにピンときたら,このパターン! 鑑別診断に使えるカード・17

「徐脈を伴うショック」「遅発性アナフィラキシー(delayed anaphylaxis)」「急性発症の開口障害」

著者: 長野広之

ページ範囲:P.896 - P.903

総論
 ショックとは「酸素供給の低下,酸素消費量の増加,そして酸素利用の不十分さによる細胞/組織の低酸素状態」と定義されます.そして大きく①心原性(心筋梗塞,不整脈),②閉塞性(肺塞栓,緊張性気胸),③循環血液量減少性(消化管出血,腹腔内出血,脱水),④血液分布異常性(敗血症,アナフィラキシー,神経原性)に分かれます.
 ショックの徴候には低血圧,頻脈,意識状態の変化,乏尿,代謝性アシドーシス,そして「5P」と呼ばれる蒼白(pallor),虚脱(prostration),冷や汗(perspiration),呼吸不全(pulmonary insufficiency),脈拍触知不能(pulselessness)があります.このなかでも頻脈,意識状態の変化,蒼白,冷や汗などから血圧が下がる前にショックと気づくのは重要です.ショック=血圧低下ではありません.頻脈はショックの初期の代償作用としてみられる場合が多いですが,逆に徐脈を伴う場合は鑑別が絞られます.筆者は徐脈を伴うショックの鑑別を「VF AED ON」の語呂合わせで覚えています(表1).

ここが知りたい! 欲張り神経病巣診断・2

総論(後編)

著者: 難波雄亮

ページ範囲:P.904 - P.911

 前回に引き続き,神経診察の流れを勉強していきましょう.今回は診断の核になる運動系・感覚系と,反射・協調運動・髄膜刺激徴候・自律神経・起立歩行について記載していきます.最後に,得られた神経所見から病巣部位を推定するコツについても解説します.

目でみるトレーニング

問題982・983・984

著者: 岩崎靖 ,   堀内滋人 ,   平岩卓

ページ範囲:P.912 - P.917

書評

—徳田 安春 監訳—医療者のための 成功するメンタリングガイド

著者: 内海桃絵

ページ範囲:P.785 - P.785

 メンタリングに興味はあるけれど,日本の医療文化になじまないのではないか,異動も多いのに長期的な関係をどう築けばよいのか……そんな疑問を持っていた方々に待望のメンタリングガイドが出版された.メンタリングは,プロフェッショナリズムの育成,安全文化の醸成に効果がある.これまでの実践を踏襲しただけでは対処が難しい状況が発生している今こそ,手に取っていただきたい一冊である.
 本書は全10章の三部構成となっており,最初の3章は「メンターへ」,次の4章は「メンティーへ」,そして最後の3章は「メンター&メンティーへ」と題し,それぞれの役割の心構え,担うべきこと,気を付けるべきことなどが,読みやすい文章で書かれている.

—監訳・訳:岩田健太郎 訳:坂本史衣・大須賀華子・本田 仁・四宮博人・𡈽井朝子—CDCのフィールド疫学マニュアル—The CDC Field Epidemiology Manual

著者: 青木眞

ページ範囲:P.801 - P.802

<天気「後」報から天気予報の国へ>
 昨今の天気予報は非常に良く当たる.筆者が子供の頃の「晴れたり曇ったりところにより雨」とは隔世の感がある(筆者の記憶違いであったらごめんなさい).明日の天気に関する情報は洗濯,買い物,その他,庶民のさまざまな生活に有用である.実際,「洗濯日和」など,「何をしたらよいのか」までガイドしてくれる昨今の天気予報である.逆に昨日は雨でしたが,一昨日は快晴で洗濯日和でした…といった過去の情報は庶民にはあまり意味がない.だいたい過去の情報をどのように今日用いたらよいのか庶民にはわからないのだから.
 あの「3.11」から10年を迎えたが,日々報道される「昨日」のコロナ感染者が何名,累計死亡者数が何名という数字が不思議な既視感を与える.10年前も,昨日は何ベクレル,何シーベルトであるという数字が毎日テレビなどに流されつつ,それでいて筆者を含め庶民は「だから今日どうしたらよいのか」わからなかった.野菜を避けるべきか,西に非難すべきか…わからなかった.ちょうど今回,GoToすべきかどうかわからなかったように.感染者数でも放射能でも何の目的ももたずに漠然と数字を羅列し続ける病理は何に起因するのか?

—田口 敏彦,飯田 宏樹,牛田 享宏 監修 野口 光一,矢吹 省司,上園 晶一,山口 重樹,池内 昌彦 編—疼痛医学

著者: 菊地臣一

ページ範囲:P.849 - P.849

 今という時代,疼痛の診療や研究が,少し前と比較しても,劇的に変化してきている.その変化は,従来われわれが認識していた以上に大きい.今や,疼痛は専門家だけがかかわっていれば良い時代ではなくなっている.また,先進諸国では,疼痛対策が政府の主要な政策目標の1つになっている.
 評者が大学卒業後間もない1970年代初頭,腰痛の患者が受診すると,問診と身体所見の評価の後に,必ず単純X線写真を撮影した.当然,脊椎には変性所見が認められるので,「骨棘が痛みを起こしています.歳のせいですね」と説明するのが一般的であった.治療は,安静,けん引を含む理学療法,そして薬物療法が主体であった.腰痛を生涯の研究主題としてきた評者にとっては,当時,疼痛診療の最前線が今のような変貌を遂げるとは想像もできなかった.

—長谷川 直樹,朝倉 崇徳 編—症例で学ぶ 肺非結核性抗酸菌症

著者: 喜舎場朝雄

ページ範囲:P.875 - P.875

 近年,非結核性抗酸菌症例の検出率と診断症例の上昇が顕著で,呼吸器感染症の中でも注目されている疾患である.しかしながら,わが国での疫学・診断方法・治療開始の時期などについては不明な点も多い.
 今回,医学書院から『症例で学ぶ肺非結核性抗酸菌症』が上梓された.本書の構成は大きく総論と各論に分かれ,総論では最新のわが国の疫学情報,臨床的および細菌学的基準の意義,菌種ごとの使用治療薬の相違点と使用上の注意点,2020年に公表された米国胸部疾患学会/欧州呼吸器学会/欧州臨床微生物感染症学会/米国感染症学会(ATS/ERS/ESCMID/IDSA)ガイドラインの臨床的疑問に対する推奨とその解説をして,具体的な症例の診断・治療のイメージが湧くように配慮がなされている.

2021年5月〜11月開催内科関連学会情報

ページ範囲:P.919 - P.923

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目次

ページ範囲:P.746 - P.748

読者アンケート

ページ範囲:P.925 - P.925

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.926 - P.927

購読申し込み書

ページ範囲:P.928 - P.928

次号予告

ページ範囲:P.929 - P.929

奥付

ページ範囲:P.930 - P.930

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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