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雑誌目次

雑誌文献

medicina58巻9号

2021年08月発行

雑誌目次

特集 日常診療で内分泌疾患を見逃さない!

著者: 田辺晶代

ページ範囲:P.1310 - P.1311

 内分泌疾患は適切な診断・治療により,治癒あるいは良好なコントロールが得られる症例が多い.一方で,治療が遅れるとホルモン過剰や欠乏による全身性の合併症により,時に非可逆性の障害が引き起こされる.そのため早期診断・早期発見が重要である.しかし多くは稀少疾患であるため,教科書で勉強した記憶はあっても症例経験が豊富な内科医は少ない.さらに教科書に記載されているような典型的な症候や検査所見を呈する症例ばかりではないことから,一般医家が日常診療で内分泌疾患を想起することは難しい.
 内分泌疾患を疑う契機は電解質異常,生活習慣病の急な悪化,特徴的な身体所見などである.内分泌疾患を疑う,あるいは否定したい場合は,外来でのスクリーニング検査である程度その可能性を確認してから外部施設の専門医に紹介したいと考えるかもしれないが,スクリーニングに必要なホルモン検査項目の選択や結果の解釈に悩む場面が多いと考えられる.また,逆紹介された際の情報提供書に記載されている負荷試験の結果判定は難解で,その後のフォローに戸惑うことも予想される.

特集を読む前に あなたの理解度チェック!

ページ範囲:P.1312 - P.1315

●今月の特集執筆陣による出題です.内分泌疾患に関する理解度をチェックしてみましょう!

Editorial

どういうときに内分泌疾患を疑う?

著者: 田辺晶代

ページ範囲:P.1317 - P.1323

Point
◎ホルモンは全身に作用を及ぼすことから,ホルモン異常は全身性の非特異的症状を呈する.
◎症候と一般検査異常を複合的に評価し,内分泌疾患を疑う場合はスクリーニング目的で必要なホルモンを測定する.
◎若年性,難治性,原因が明らかでない電解質異常や糖脂質代謝異常の悪化があれば,内分泌疾患を疑う.

頻度が高い内分泌代謝異常 【偶発的な内分泌代謝異常の診療の進め方】

Na代謝異常,SIADH

著者: 間中勝則 ,   槙田紀子

ページ範囲:P.1324 - P.1328

Point
◎高ナトリウム(Na)血症の多くは,抗利尿ホルモン(ADH)の作用不足と自由水の補充障害によって起きる.
◎低Na血症は最も頻度の高い電解質異常であり,種々の疾患で死亡率を上昇させる.
◎医原性の低Na血症も多く,低張輸液や過剰な塩分制限に注意を要する.
◎低Na血症の病態の診断や治療には,尿生化学検査が重要な役割を果たす.
◎トルバプタンが抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)の追加適応を取得したため,その的確な診断はいっそう重要となってきている.

Ca値異常,ビタミンD欠乏症

著者: 竹田秀

ページ範囲:P.1329 - P.1333

Point
◎血清カルシウム(Ca)値の異常は無症状の場合もあり,日常診療でのスクリーニングが重要である.
◎高Ca血症の原因の90%以上を,原発性副甲状腺機能亢進症と悪性腫瘍に伴う高Ca血症が占める.
◎ビタミンD欠乏の診断は1,25水酸化ビタミンDではなく,25水酸化ビタミンDの測定で行う.

低血糖

著者: 長尾元嗣 ,   福田いずみ

ページ範囲:P.1336 - P.1339

Point
◎低血糖を契機に発見される内分泌疾患には,インスリノーマ,下垂体機能低下症,副腎皮質機能低下症などがある.
◎上記が否定された場合には,大分子量IGF-Ⅱを産生する膵外腫瘍などの非膵島細胞腫瘍性低血糖症(NICTH)の可能性もある.
◎専門医への紹介を検討する際には,低血糖発作時に採血した血液中でのインスリンやその拮抗ホルモンの測定結果があることが望ましい.

【薬剤による内分泌異常】

免疫チェックポイント阻害薬による内分泌異常

著者: 越智可奈子 ,   大塚文男

ページ範囲:P.1340 - P.1344

Point
◎免疫チェックポイント阻害薬による内分泌免疫関連有害事象として,下垂体機能低下症,甲状腺機能異常,副腎皮質機能低下症,副甲状腺機能低下症,1型糖尿病が挙げられる.
◎免疫チェックポイント阻害薬による内分泌障害として最も頻度が高いものは甲状腺機能異常であり,破壊性機序による甲状腺中毒症とそれに続く甲状腺機能低下症の頻度が高い.
◎抗CTLA-4抗体の投与中は下垂体機能低下症に留意する必要があり,副腎クリーゼが疑われる症例においては速やかにヒドロコルチゾン投与を検討する.

代表的内分泌疾患 【下垂体疾患】

ACTH依存性Cushing症候群—“劇症”メタボリック症候群を見逃さない!

著者: 菅原明

ページ範囲:P.1345 - P.1348

Point
◎Cushing病は異所性副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)症候群との鑑別が治療上重要である.
◎Cushing病治療の第一選択は経蝶形骨洞的下垂体腺腫摘出術(TSS)である.
◎寛解後はヒドロコルチゾンの補充が6ヶ月〜2年間必要となる.

先端巨大症,成人成長ホルモン分泌不全症—特徴的な身体所見を見逃さない!

著者: 橋本真紀子

ページ範囲:P.1350 - P.1354

Point
◎先端巨大症様顔貌の特徴的な所見(眉弓部の膨隆,鼻翼・口唇の肥大,下顎の突出など)は非常に重要な変化であるが,本人は自覚していないことが多い.
◎近年,下垂体偶発腫瘍のなかに先端巨大症が発見されることが多くなっている.
◎高血圧,耐糖能異常,糖尿病を高率に合併する.
◎小児期に成長ホルモン投与歴がある場合,成人成長ホルモン分泌不全症の再評価が必要である.

プロラクチノーマ—月経異常を見逃さない!

著者: 坂東弘教 ,   福岡秀規

ページ範囲:P.1355 - P.1359

Point
◎プロラクチノーマは月経異常の一因であり,治療により妊孕性の改善や骨密度低下予防に繋がる.
◎プロラクチノーマではドパミン作動薬が著効する.
◎薬剤性などの高プロラクチン血症の鑑別が重要である.
◎プロラクチン測定上のピットフォールに留意する.

TSH産生腫瘍—頭痛,視野障害を伴った甲状腺中毒症状を見逃さない!

著者: 大月道夫

ページ範囲:P.1361 - P.1364

Point
◎血中甲状腺ホルモン(FT4)が高値にもかかわらず,血中甲状腺刺激ホルモン(TSH)の抑制を認めない場合には,不適切TSH分泌症候群(SITSH)を疑う.
◎「見かけ上のSITSH」を除外した後,TSH産生腫瘍と甲状腺ホルモン不応症を鑑別する.
◎治療の第一選択は手術であるが,ソマトスタチンアナログによる薬物療法により,甲状腺中毒症のコントロールが可能であり,約半数に腫瘍縮小が認められる.

下垂体機能低下症—食思不振,体重減少,低Na血症など,症候の集積を見逃さない!

著者: 岡田定規 ,   高橋裕

ページ範囲:P.1365 - P.1369

Point
◎頭蓋内器質的疾患,手術・放射線療法,頭部外傷,周産期異常,小児がんや分娩時大量出血の既往,ステロイド・免疫チェックポイント阻害薬の薬剤歴に注意する.
◎下垂体ホルモンと対応する末梢ホルモンを同時に測定し,疑わしい場合には機能(負荷)試験を行う.
◎続発性副腎機能低下症と甲状腺機能低下症の合併時にはヒドロコルチゾン補充を先行する.
◎副腎不全では副腎クリーゼ予防のために,患者および家族に対するストレス時のヒドロコルチゾン増量の指導が必須である.
◎性腺系および成長ホルモンの補充もQOL改善,合併症予防のために重要であり積極的に行う.

中枢性尿崩症—低張性多尿を見逃さない!

著者: 萩原大輔 ,   有馬寛

ページ範囲:P.1370 - P.1373

Point
◎中枢性尿崩症は,抗利尿ホルモンであるバソプレシンの産生・分泌の障害により発症する.
◎腎性尿崩症や心因性多飲症との鑑別が重要である.
◎デスモプレシンによる治療においては,水中毒に注意が必要である.

非機能性下垂体腺腫,Rathke囊胞,頭蓋咽頭腫—視力・視野障害と下垂体機能低下症を見逃さない!

著者: 西岡宏

ページ範囲:P.1374 - P.1379

Point
◎機能性腺腫を除いた下垂体腫瘍性病変において,最も頻度の高いのが非機能性腺腫,Rathke囊胞,頭蓋咽頭腫である.
◎頭痛,視力視野障害,下垂体機能低下症,高プロラクチン血症(stalk effect)などで発症する.下垂体腺腫では,尿崩症は稀である.
◎ホルモン補充療法以外に確立した薬物治療はなく,症候例,特に視障害は手術(経鼻手術)の適応となる.
◎下垂体偶発腫として見つかることも多く,それらの多くは経過観察となる.

【Column】非特異的症候を契機に疑う下垂体機能低下症の診断のポイント

著者: 桒田博仁 ,   高橋裕

ページ範囲:P.1382 - P.1384

 下垂体は前葉と後葉から成り,前葉からは副腎皮質刺激ホルモン(ACTH),甲状腺刺激ホルモン(TSH),黄体形成ホルモン(LH),卵胞刺激ホルモン(FSH),プロラクチン(PRL),成長ホルモン(GH)の6種,後葉からはバソプレシン(抗利尿ホルモン)とオキシトシンの2種が分泌される.下垂体機能低下症において,ホルモンの標的臓器は全身であるため症状が多岐にわたり,「不定愁訴」と捉えられることも少なくない.また,低ナトリウム(Na)血症や好酸球増多,低血糖などの非特異的な検査異常が下垂体機能低下症と診断されるきっかけになることも珍しくない.
 下垂体ホルモンのうちACTH,TSHは生命維持に必須であるが,LH/FSH,GHについても“その人らしさ”や気力・体力,QOLの維持にきわめて重要であり,的確に診断・治療を行う必要がある.特に中枢性副腎不全による副腎クリーゼは,治療を誤ると致命的なので見逃してはならない.本稿では,そのような非特異的症候を契機に疑う下垂体機能低下症(前葉ホルモン分泌不全)およびバソプレシン分泌不全による中枢性尿崩症の診断のポイントについて概説する.

【甲状腺疾患】

Basedow病—動悸や甲状腺腫大,眼球突出を見逃さない!

著者: 中島康代

ページ範囲:P.1385 - P.1390

Point
◎Basedow病は比較的高頻度に認める内分泌疾患の1つであり,中年女性に多い.
◎動悸,体重減少,手指振戦,発汗増多といった甲状腺中毒所見はBasedow病によく認められる症状である.
◎びまん性甲状腺腫大や眼球突出を主体とした眼症状はBasedow病に特異的な所見である.
◎管理や治療がまったく異なることから,Basedow病と破壊性甲状腺炎との鑑別はきわめて重要である.
◎抗甲状腺薬では無顆粒球症や重症肝障害など重篤な副作用を認めることがある.

Basedow病以外の甲状腺機能亢進症—亜急性甲状腺炎,無痛性甲状腺炎,機能性結節

著者: 鈴木菜美 ,   吉原愛

ページ範囲:P.1391 - P.1395

Point
◎亜急性甲状腺炎は上気道感染から数週間後に発熱,前頸部痛を発症する例が多く,頸部痛は移動する(クリーピング現象).
◎亜急性甲状腺炎の治療の基本は安静であり,薬物治療ではプレドニゾロンが著効するが,漸減することが重要である.
◎無痛性甲状腺炎は甲状腺濾胞の破壊により突発する甲状腺中毒症で,産後の頻度が高く,薬剤との関連も多い.確定診断には甲状腺シンチグラフィが必要となるが,自然軽快が期待できる.
◎機能性結節は甲状腺結節が自律性にホルモンを産生することで生じる甲状腺機能亢進症で,多くは良性であるが悪性の場合もある.根治治療として,手術もしくは131I内用療法が選択肢となる.

甲状腺機能低下症,橋本病—甲状腺腫を見逃さない!

著者: 田上哲也

ページ範囲:P.1396 - P.1401

Point
◎甲状腺機能低下症には原発性と中枢性がある.
◎原発性甲状腺機能低下症の主な原因は橋本病(慢性甲状腺炎)である.
◎橋本病はありふれた疾患であり,その多くは甲状腺機能が正常である.
◎橋本病ではヨウ素の過剰摂取により,甲状腺機能低下症に陥りやすい.
◎中枢性甲状腺機能低下症が疑われる場合は,他の下垂体機能もチェックする.

【Column】甲状腺機能低下症とnonthyroidal illnessの鑑別

著者: 田上哲也

ページ範囲:P.1403 - P.1405

nonthyroidal illnessとは
 nonthyroidal illness(NTI)は心不全,腎不全,肝硬変,糖尿病,摂食障害,悪液質など全身の消耗性疾患において高頻度に伴う甲状腺ホルモンの異常である(表1).すなわち,甲状腺疾患以外の疾患が原因で甲状腺機能に異常をきたす病態であり,厳密には甲状腺機能低下症ではない.全身のエネルギー代謝を抑制(エネルギー消費を節約)するための生体反応として,サイロキシン(T4)が非活性型のリバーストリヨードサイロニン(reverse T3:rT3,非活性型甲状腺ホルモンで,現在測定はできない)に転換されることによる1)
 ICU患者の70%に血清T3や遊離T3(FT3)の低下を認めたという報告がある.そして全身状態の悪化(基礎疾患の重篤化)に伴ってT4や遊離T4(FT4)も低下してくる(図1)2).甲状腺刺激ホルモン(TSH)は正常であることが多いが,低値ないし軽度上昇する場合もある(生物活性の低いTSHの増加による).

甲状腺結節—精査・治療が必要な甲状腺結節を見逃さない!

著者: 銭真臣 ,   杉谷巖

ページ範囲:P.1406 - P.1411

Point
◎日常診療において認める甲状腺結節は高頻度で良性結節であり,経過観察でよいことが多い.
◎悪性腫瘍の90%以上は乳頭癌であり,多くは予後良好である.リスク評価に基づいて治療方針を決定する.
◎専門医に紹介すべき症例として,①穿刺吸引細胞診(FNAC)が必要なもの,②手術が必要なもの,③腫瘤が急速増大するものがある.

【副甲状腺疾患・骨代謝異常】

原発性副甲状腺機能亢進症,その他の高Ca血症—骨量低下,腎・尿路結石,高ALP血症を見逃さない!

著者: 福本誠二

ページ範囲:P.1412 - P.1416

Point
◎血中カルシウム(Ca)濃度は,アルブミン補正した補正Ca濃度により評価する.
◎骨量低下,腎・尿路結石,高アルカリホスファターゼ(ALP)血症の患者では,血中Ca濃度の評価が必要である.
◎高Ca血症患者では,まずintact PTHかwhole PTHを測定する.
◎大部分の原発性副甲状腺機能亢進症は,高Ca血症を契機に診断される.

【Column】局在不明の原発性副甲状腺機能亢進症の治療方針

著者: 竹内靖博

ページ範囲:P.1418 - P.1419

 原発性副甲状腺機能亢進症の有病率は米国カリフォルニア州の調査では女性で0.233%,男性で0.085%と推定されており1),内分泌疾患としては甲状腺機能低下症やBasedow病に次いで頻度の高いものである.なお,この調査では白人に比べてアジア人での頻度は低いとされている.現在,新規に診断される原発性副甲状腺機能亢進症の多くは無症状であり,無症候性原発性副甲状腺機能亢進症が大半である.このような場合,根治的な治療である責任病巣の副甲状腺摘除手術を推奨する条件についての国際的コンセンサスが提唱されている2).また,本症が関与するアウトカムとして重要な骨折発症に関しては,手術療法によるその抑制を支持する十分なデータが蓄積されつつある3〜5)
 その一方で,本症の長期的な生命予後に対する手術の効果については議論のあるところであり,少なくとも短期的にあるいは直接に生命予後に関与するという根拠はないため,手術の選択については患者の希望が大きく影響する.これらの背景を踏まえて,局在不明の原発性副甲状腺機能亢進症の治療方針について考えてみたい.

副甲状腺機能低下症—低Ca血症を見逃さない!

著者: 野津雅和 ,   山内美香

ページ範囲:P.1420 - P.1424

Point
◎テタニー,口や手のしびれ,Trousseau徴候など低カルシウム(Ca)血症の症状が副甲状腺機能低下症の発見契機となる.
◎CTにて大脳基底核の両側性石灰化,心電図にてQT間隔の延長を認めた場合はCaを測定する.
◎低Ca血症を認めた場合,慢性腎臓病,ビタミンD欠乏,低マグネシウム(Mg)血症を鑑別・除外する.
◎急性期は経静脈的にCa製剤を,慢性期は尿中Ca排泄に注意して活性型ビタミンD製剤を投与する.

【副腎】

原発性アルドステロン症—高血圧患者に潜む原発性アルドステロン症を見逃さない!

著者: 和田典男

ページ範囲:P.1426 - P.1430

Point
◎原発性アルドステロン症は高頻度にみられる二次性高血圧である.
◎原発性アルドステロン症は合併症発症のリスクが高い.
◎高血圧患者からのスクリーニングが必要である.
◎レニン,アルドステロン測定法の変更が検査の陽性率に大きく影響する.
◎コロナ禍に伴う入院・手術の制限という制約下での対応が求められる.

副腎性Cushing症候群,サブクリニカルCushing症候群—満月様顔貌,中心性肥満などを見逃さない!

著者: 沖隆 ,   大西裕太

ページ範囲:P.1431 - P.1434

Point
◎満月様顔貌,中心性肥満など特徴的Cushing徴候を見逃さない.
◎高血圧・耐糖能異常の治療抵抗性患者にコルチゾール過剰が隠れている.
◎副腎偶発腫瘍患者に副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)・コルチゾールを含む内分泌検査を積極的に行う.
◎少量デキサメタゾン抑制試験を施行し,軽微なコルチゾール自律分泌をチェックする.
◎サブクリニカルCushing症候群で手術対象となる場合がある.

褐色細胞腫,パラガングリオーマ—交感神経刺激症候のある高血圧を見逃さない!

著者: 方波見卓行 ,   清水紗智 ,   松葉怜

ページ範囲:P.1435 - P.1439

Point
◎稀少疾患のため,疑うべき症候・状況に該当する例を洩らさず丹念に精査する.
◎診断検査に干渉する薬剤・食品・禁忌薬が多数あり,この点に常時留意する.
◎病理学的良悪性の判定はいまだ困難で,すべての例を潜在的悪性と考え,追跡する.
◎長期の経過観察が必要な疾患であり,初診時から副腎専門医に紹介すべきである.

原発性副腎皮質機能低下症,副腎不全—低Na血症を見逃さない!

著者: 田邉真紀人 ,   川浪大治

ページ範囲:P.1440 - P.1444

Point
◎原発性副腎不全は副腎自体の異常による副腎ホルモンの欠乏である.
◎後天的異常では自己免疫性Addison病,先天異常では21-水酸化酵素欠損症の頻度が高い.
◎症候は非特異的なものが多いが,色素沈着や低ナトリウム血症には留意すべきである.
◎ホルモン補充療法ではシックデイ時の患者教育,適正投与のモニタリングが重要である.
◎副腎クリーゼはヒドロコルチゾンの投与と補液を中心とした迅速な処置が必要である.

副腎偶発腫—遭遇したら,高血圧を見逃さない!

著者: 上芝元

ページ範囲:P.1446 - P.1449

Point
◎副腎偶発腫に遭遇したら,高血圧があるかどうかを見逃さない.
◎副腎偶発腫症例の4分の1はホルモン産生性であり,高血圧と関連がある.
◎副腎偶発腫が大きい場合(5cm以上)は,常に悪性を疑う.

【性腺疾患】

Turner症候群,Klinefelter症候群—月経不順や小精巣を見逃さない!

著者: 中尾佳奈子 ,   長谷川行洋

ページ範囲:P.1450 - P.1453

Point
◎表現型に幅があるため,まずは疑うことが重要である.
◎臨床徴候だけでは診断できず,確定診断には染色体検査が必要である.
◎合併症の適切なスクリーニングと早期介入が重要である.

Clinical Question

高齢者において成長ホルモン分泌不全や性ホルモン分泌不全を検索・治療する意義はありますか?

著者: 星野良朋 ,   竹下彰

ページ範囲:P.1454 - P.1457

Answer
間脳下垂体疾患の既往があれば成長ホルモン分泌不全症を,また性腺機能低下症の症状を有する男性では性ホルモン分泌不全を評価する.禁忌を除外し,適応があれば副作用に注意してホルモン補充療法を行うことは有益である.

潜在性甲状腺機能異常は治療するべきでしょうか?

著者: 小林佐紀子

ページ範囲:P.1458 - P.1462

Question 1
潜在性甲状腺機能亢進症は治療するべきでしょうか?

副甲状腺機能亢進症の手術適応を教えてください

著者: 垣田彩子 ,   鈴木敦詞

ページ範囲:P.1464 - P.1466

Answer
原発性の副甲状腺機能亢進症(HPT)は症候性であれば病的副甲状腺摘出術の適応であり,無症候性なら血清Ca値,骨病変,腎機能,年齢に基づいて手術を検討する.二次性HPTは内科的治療に抵抗性であれば手術適応となる.

非専門医は原発性アルドステロン症をどう診療すればよいですか?

著者: 成瀬光栄 ,   立木美香 ,   田辺晶代

ページ範囲:P.1467 - P.1469

Question 1
非専門医は原発性アルドステロン症(PA)疑いの症例をどこまで自分で検索し,どこから専門医へ紹介すべきですか?

副腎偶発腫瘍では全例でデキサメタゾン抑制試験が必要ですか?

著者: 曽根正勝

ページ範囲:P.1470 - P.1472

Answer
全例で行うことが望ましいが,朝のコルチゾールが正常または高値にもかかわらず副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が低値の場合などは,特に推奨される.

連載 読んだら,ちょいあて! POCUSのススメ・5

救急・災害医療で役立つ血管POCUS

著者: 太田智行

ページ範囲:P.1299 - P.1304

 災害発生時の避難所や車中泊の避難者において深部静脈血栓-肺塞栓症が頻発することを,報道などを通じて耳にしたことがあると思います.しかし,平時の診療で造影CT検査(PE-DVT study)に依存しきっていると,避難所のような場所では深部静脈血栓症-肺塞栓症の可能性に気づいても,診断ができないということになりかねません.また,日本では造影CT検査が若年者に何度も実施される傾向があり,過剰被曝の点で明らかに問題です.こうした背景には下肢静脈エコーができない施設・時間帯が多すぎることが考えられ,今回は多くの臨床家が習得すべき技術として,容易に実施可能な下肢静脈のPOCUSを紹介します.
 
*本論文中、関連する動画を見ることができます(公開期間:2023年7月31日まで公開)。

ここが知りたい! 欲張り神経病巣診断・5

脳出血③半身の知覚異常

著者: 難波雄亮

ページ範囲:P.1473 - P.1476

 前回まで,脳出血で半身の異常知覚をきたす症例の病巣診断について勉強しました.ほかにも異常知覚をきたす解剖学的な部位はいくつもあります.中枢神経のなかで錐体路徴候を伴わず異常知覚をきたす場所は,ほかにどこにあるでしょうか? 一緒に勉強していきましょう!

目でみるトレーニング

問題991・992・993

著者: 上月周 ,   石田正之 ,   中島崇作

ページ範囲:P.1477 - P.1484

書評

—国循脳卒中データバンク2021編集委員会 編集—脳卒中データバンク2021

著者: 宮本享

ページ範囲:P.1335 - P.1335

 「脳卒中データバンク2021」には,1999年に研究開始された日本脳卒中データバンクに,日本全国の130を超える施設から登録され蓄積された約17万例の急性期脳卒中の臨床情報解析が掲載されている.
 本書の第1部には,日本脳卒中データバンクの概要とデータ分析が記載されている.まず,脳卒中に対する医療政策を行うにあたって,本邦における脳卒中のデータベースがないことが大きな問題であることに20年以上前に注目し,本事業を立ち上げられた小林祥泰先生をはじめとする先達の慧眼に深甚なる敬意を表したい.標準化された診断名と評価尺度に基づいて登録された精度の高いデータに基づく分析であり,経年変化などの分析は本邦における脳卒中の変遷を示す貴重なデータと考えられる.

—吉永 繁高 著—百症例式 早期胃癌・早期食道癌内視鏡拾い上げ徹底トレーニング

著者: 市原真

ページ範囲:P.1381 - P.1381

 「コンセプトは1,000本ノックですが,さすがに1,000症例用意するのは大変ですし,紙面も足りませんので100本ノックでご容赦いただけましたら幸いです.」(「序」より)
 笑ってしまった.そうか,なるほど,本書はノックなのか.どれどれ.

information

第100回東京GIMカンファレンス

ページ範囲:P.1462 - P.1462

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目次

ページ範囲:P.1306 - P.1308

読者アンケート

ページ範囲:P.1485 - P.1485

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.1486 - P.1487

購読申し込み書

ページ範囲:P.1488 - P.1488

次号予告

ページ範囲:P.1489 - P.1489

奥付

ページ範囲:P.1490 - P.1490

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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