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雑誌目次

雑誌文献

medicina59巻1号

2022年01月発行

雑誌目次

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

著者: 津村和大

ページ範囲:P.10 - P.11

 わが国の糖尿病医療の歩みを振り返ると,それぞれの時代に抱えていた困難や課題を克服すべく,医学研究,医療者教育,市民啓発などに多くの力が注がれてきたことがわかります.昭和の時代には,適切な診断に基づく疾患概念の共有が進み,高い未受診率を改善するための健康教育も各地で展開されました.平成の時代に入ると,血糖マネジメント水準と慢性合併症の関連性を示す大規模臨床研究の成果やEBM(evidence-based medicine)の概念が臨床医の間で広く共有されるようになりました.糖尿病治療薬が数多く上市されたのもこの時代です.良い血糖マネジメントの必要性が認知された時期に,これを達成するための新しい治療薬を手に入れることができたのは,患者にとっても,医療者にとっても幸運なことでした.
 その一方で,指導と治療のばらつきが顕在化してきたのも事実です.増加の一途を辿る糖尿病患者に必要な医療を届けるために推進された地域連携体制の構築過程で,予想以上に大きな診療内容の違いが可視化されました.近年は,認知症・サルコペニア・フレイル・低栄養などの老年症候群と多彩な合併症・併存症を抱える高齢者糖尿病のマネジメント,そしてこれに応えるための,質の高い多職種連携なども求められています.

特集を読む前に あなたの理解度チェック!

ページ範囲:P.12 - P.16

●今月の特集執筆陣による出題です.糖尿病治療薬に関連する理解度をチェックしてみましょう!

座談会

糖尿病の薬,どう選ぶ?

著者: 野見山崇 ,   津村和大 ,   矢部大介

ページ範囲:P.18 - P.25

糖尿病の治療では,糖尿病の成因(機序)と病態(病期)に照らした1人ひとりの個性を見定め,合併症・併存症の状態,社会生活状況,人生観などを総合的に判断したうえで薬を選択していきます.さらに,近年はさまざまな作用機序の治療薬が上市され,その使い分けに悩む医師も多いのではないでしょうか.
そこで,現場のありふれた風景を想い描きながら,臨床判断の“押さえどころ”について糖尿病診療の最前線でご活躍の野見山先生,矢部先生にお話を伺います.(津村)

糖尿病の指導と治療の基本

糖尿病の指導と治療

著者: 津村和大

ページ範囲:P.26 - P.28

Point
◎糖尿病の成因・病態・合併症・併存疾患,人生観,社会経済状況などを総合的に判断して,1人ひとりの指導と治療を計画する.
◎食事療法と運動療法を基盤とし,薬物療法に偏重しない.
◎研究の知見(エビデンス)を正しく臨床判断に生かす.
◎保険診療の枠組みを理解したうえで,最善の選択をする.
◎新しい患者-医師関係を踏まえた適切な言葉遣いに心掛ける.

健康な人と変わらない人生

著者: 津村和大

ページ範囲:P.29 - P.31

Point
◎日常生活の質(QOL)の維持と寿命の確保が目標である.
◎あらゆる併存症が糖尿病に起因するわけではない.
◎高齢者では適切な目標設定が必要である.
◎糖尿病を自覚することは健康な人生への第一歩となる.
◎糖尿病医療におけるSDGsは早期診断・早期治療強化である.

糖尿病治療の設計図とタイムライン

著者: 津村和大

ページ範囲:P.32 - P.33

Point
◎「糖尿病」と診断したところで立ち止まらない.
◎周術期・感染症併発時には治療を強化する.
◎合併症・併存症の診断は治療薬選択に欠かせない.
◎患者と家族の心理的・技術的受け入れ状況を評価する.
◎高齢化に伴う治療の軌道修正を忘れない.

糖尿病の指導と治療の支援ツール

著者: 津村和大

ページ範囲:P.35 - P.37

Point
◎限られたスタッフの診療現場こそ,支援ツールを活用すべきである.
◎糖尿病連携手帳は汎用性の高い連携プラットフォームである.
◎組織づくりはソリューション・フォーカス(解決志向)の視点で取り組む.

カテゴリー別・糖尿病治療薬の特徴

ビグアナイド薬

著者: 中村昭伸

ページ範囲:P.38 - P.41

Point
◎メトホルミンは経口血糖降下薬のなかで最も基本となる薬剤である.
◎あらゆる種類の血糖降下薬において,メトホルミンとの併用は有用である.
◎メトホルミンの処方の仕方は,「少量から開始し徐々に増やす」である.
◎押さえておきたいメトホルミンの副作用は,「頻度が高い消化器症状」と「稀ではあるが重篤になる乳酸アシドーシス」である.

チアゾリジン薬

著者: 中村昭伸

ページ範囲:P.42 - P.45

Point
◎ピオグリタゾンに代表されるチアゾリジン薬は,インスリン抵抗性を改善させる経口血糖降下薬である.
◎ピオグリタゾン処方で押さえておきたい副作用は,体重増加と体液貯留である.
◎体液貯留による浮腫の出現と心機能の悪化を防ぐため,用量に注意する.
◎ピオグリタゾンは2型糖尿病を合併する非アルコール性脂肪肝炎(NASH)において投与することが推奨されている.

スルホニル尿素薬(SU薬)

著者: 松橋有紀

ページ範囲:P.46 - P.49

Point
◎SU薬は膵β細胞から血糖非依存的にインスリンを分泌させる薬剤である.
◎インスリン分泌不全が主な病態の,非肥満の2型糖尿病が良い適応である.
◎肥満を背景としたインスリン抵抗性が主な病態の症例に対しては,肥満を助長する可能性があり,良い適応とはいえない.
◎肝機能障害や腎機能障害,高齢者においては特に重症低血糖のリスクがあることから,慎重に投与し,積極的に減量(または他剤への変更)を検討する.

速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)

著者: 松橋有紀

ページ範囲:P.50 - P.53

Point
◎グリニド薬はスルホニル尿素薬(SU薬)と同様に,膵β細胞に存在するKATPチャネルのSUR1に結合することでインスリンを分泌させる薬剤であるが,SU薬に比し作用時間が短いことが特徴である.
◎食後高血糖が主体の2型糖尿病が良い適応である.インスリン分泌が高度に低下している症例は良い適応とはいえない.
◎少量のSU薬を含む糖尿病治療薬で血糖コントロールが良好な症例では,低血糖リスクを減らすことを念頭にグリニド薬へ変更している.

DPP-4阻害薬

著者: 松橋有紀

ページ範囲:P.54 - P.57

Point
◎消化管ホルモンの1つであるGLP-1を分解するDPP-4を阻害し,血糖依存的にインスリンを分泌する.
◎DPP-4阻害薬単独では低血糖のリスクが少ないが,SU薬との併用時にはSU薬の減量を検討する.
◎水疱性類天疱瘡など,自己免疫疾患の副作用が生じる場合があるため注意する.

α-グルコシダーゼ阻害薬

著者: 野見山崇

ページ範囲:P.58 - P.61

Point
◎α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)はノンレスポンダーが少なく,食後高血糖を抑制できる.
◎GIPの分泌を抑制しGLP-1の分泌を促進することで,DPP-4阻害薬の血糖降下作用を助長することができる.
◎耐糖能異常(IGT)から糖尿病への進行抑制や,IGT患者における心血管イベント抑制などのエビデンスを有する.

SGLT2阻害薬

著者: 野見山崇

ページ範囲:P.62 - P.66

Point
◎SGLT2阻害薬は患者の背景にかかわらず,血糖降下作用が得られる.
◎注意すべき疾患として,サルコペニア・フレイル,正常血糖ケトアシドーシスがある.
◎心血管イベント抑制など多くのエビデンスを有する.

インスリン

著者: 平田はるか ,   窪田創大 ,   矢部大介

ページ範囲:P.68 - P.73

Point
◎複数の経口糖尿病治療薬を用いても著明な慢性高血糖が持続する場合には,インスリン製剤の適応を検討する.
◎有害事象として重症低血糖に注意が必要であり,予防法・対処法について患者および家族などへの教育が重要である.

GLP-1受容体作動薬

著者: 平田はるか ,   窪田創大 ,   矢部大介

ページ範囲:P.74 - P.78

Point
◎GLP-1受容体作動薬は血糖改善作用に加え,一部の製剤を除き,食欲抑制による減量効果が期待できる.
◎嘔気や嘔吐,便秘など消化器症状を一過性に呈する患者が多く,事前に十分な情報提供が必要である.
◎GLP-1受容体作動薬は,短時間作用型と長時間作用型に分類され,血糖改善の作用機序が異なる.また,高分子量型と低分子量型で減量効果が異なる.
◎経口GLP-1受容体作動薬が十分な効果を発揮するには,正しく服薬することが肝心で,医師や薬剤師などによる服薬指導が重要である.

ミトコンドリア機能改善薬

著者: 遅野井健

ページ範囲:P.80 - P.83

Point
◎イメグリミンは,膵β細胞におけるインスリン分泌改善作用,膵外臓器におけるインスリン抵抗性の改善作用が期待される薬剤である.
◎イメグリミンの構造はメトホルミンと類似しているが,乳酸アシドーシスの発現は少ないとされている.
◎イメグリミンは,発症初期でドラッグナイーブな患者や,既に経口薬を服薬中の患者の追加投与が良い適応と考えられる.一方,中等度以上の腎機能障害者への投与は推奨されない.
◎イメグリミンの薬効判定には3〜6カ月が必要である.

現場の疑問を解決—薬物治療編

Question 1 一般的な2型糖尿病における処方開始のタイミングとは?

著者: 藤谷淳 ,   柴田大河

ページ範囲:P.84 - P.87

Point
◎初診からおおよそ3カ月間は食事運動療法のみでの経過観察を行う.
◎病型病態の把握,膵臓癌などの悪性腫瘍の除外,および合併症の評価を優先に行う.
◎初診時からインスリン注射が必要となる症例も存在する.

Question 2 第一選択となる糖尿病治療薬とは?

著者: 藤谷淳 ,   柴田大河

ページ範囲:P.88 - P.91

Point
◎75歳未満の2型糖尿病患者に対する第一選択薬はメトホルミンである.
◎75歳以上の高齢者および非肥満の2型糖尿病患者にはDPP-4阻害薬を考慮する.
◎BMI 30 kg/m2以上の高度肥満合併2型糖尿病の場合は,第一選択薬としてGLP-1受容体作動薬を検討する.
◎BMI 18.5 kg/m2未満のやせ型症例は,第一選択薬としてインスリン注射も考慮する.

Question 3 2剤目・3剤目を追加するまでの期間設定をどう決める?

著者: 藤谷淳 ,   柴田大河

ページ範囲:P.92 - P.94

Point
◎原則は3カ月程度の経過観察ごとに2剤目および3剤目の追加を検討する.
◎HbA1cの改善が得られない理由を必ず考えたうえで治療介入を継続する.
◎薬剤の効果が不十分と思われたら,躊躇せず次の薬剤投与を検討する.
◎2剤併用で目標血糖コントロールに到達しない場合は,基礎インスリンの補充を検討すべきである.

Question 4 インスリン治療に移行するタイミングは?

著者: 下野大

ページ範囲:P.96 - P.97

Point
◎インスリン療法の絶対的適応と相対的適応を理解し,適切にインスリン治療を開始する.
◎Cペプチドを測定してインスリン分泌能を評価し,治療法選択の参考にする.
◎治療の遅れ(すなわちclinical inertia)に気をつける.
◎血糖コントロールが改善しない場合には,緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)も考慮する.

Question 5 外来インスリン導入の設計図:基礎補充から? 摂食時補充から?

著者: 下野大

ページ範囲:P.98 - P.100

Point
◎2型糖尿病のインスリン療法の場合,基礎インスリンから始めることが多い.
◎摂食時の追加インスリンは,摂食量や摂食時間が不安定な場合も有用である.
◎SMBG(血糖自己測定)を行うことは,インスリン量の調整に役立つ.
◎食前および食後血糖の両方に作用する,GLP-1受容体作動薬との配合剤の使用も検討する.
◎経済的な負担を考慮する場合には,カートリッジ製剤やバイオシミラーを使用できる.

Question 6 メトホルミンの処方を控えるべき高齢者とは?

著者: 和泉清拓

ページ範囲:P.101 - P.103

Point
◎メトホルミンの使用にあたり,腎機能を確認し最高用量を超えないようにする.
   eGFR<30 mL/分/1.73 m2 →禁忌
 30≦eGFR<45 mL/分/1.73 m2 →最高用量750 mg/日
 45≦eGFR<60 mL/分/1.73 m2 →最高用量1,500 mg/日
◎高齢者は腎機能を過大評価しがちであり,注意が必要である.

Question 7 メトホルミンの至適用量とは?

著者: 臼井亮太

ページ範囲:P.104 - P.106

Point
◎メトホルミンは用量依存的に血糖改善効果を認める.
◎2010年にメトホルミンの最大用量が2,250 mg/日まで引き上げられた.
◎eGFR30以上45未満では750 mg/日が上限となる.
◎乳酸アシドーシス以外にもビタミンB12低下などにも注意を要する.
◎インスリン抵抗性のみならず,インスリン分泌不全への意識も必要である.

Question 8 SGLT2阻害薬:使用する優先順位は?

著者: 下野大

ページ範囲:P.108 - P.110

Point
◎2型糖尿病の薬物療法の選択は,病態に応じて行う.
◎SGLT2阻害薬を第一選択として使用する場合もある.
◎2型糖尿病治療においてSGLT2阻害薬は治療満足度が高い.
◎一部のSGLT2阻害薬は1型糖尿病にも使用できる.
◎「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」を参考にし,適切な症例に使用する.

Question 9 SGLT2阻害薬は心不全併存例では必須なのか?

著者: 下野大

ページ範囲:P.111 - P.113

Point
◎心不全は糖代謝異常者における生命予後を規定する重要な因子の1つである.
◎心不全あるいは心不全高リスクの糖代謝異常者にはSGLT2阻害薬が推奨されている.
◎SGLT2阻害薬と利尿薬を併用する場合には脱水予防に留意する.
◎腎機能低下患者では,SGLT2阻害薬による血糖降下作用は減弱する.
◎一部のSGLT2阻害薬は,慢性心不全・慢性腎臓病に適応がある.

Question 10 配合薬を使ううえで注意すべき点は?

著者: 津村和大

ページ範囲:P.114 - P.115

Point
〈メリット〉
◎服薬アドヒアランスの改善が期待される.
◎薬価の低減に資する.
〈デメリット〉
◎配合比率を調整することが難しい.
◎副作用発現では原因薬剤がわかりにくい.

Question 11 心臓・肝臓・腎臓の機能が低下しているときの薬物選択とは?

著者: 柴田大河

ページ範囲:P.116 - P.118

Point
◎心臓・肝臓・腎臓の機能低下症例では慎重投与,禁忌薬の存在に注意する.
◎併存症によって糖尿病の病態に生じる変化に注意する.
◎各臓器保護効果が期待できる薬剤の使用を検討する.

Question 12 造影剤を使用する検査時での糖尿病治療薬の調整方法は?

著者: 原口卓也

ページ範囲:P.120 - P.122

Point
◎ヨード造影剤を使用する際は,メトホルミン使用の有無確認と適正使用を忘れない.
◎メトホルミン含有配合剤の使用の有無も忘れずに確認する.

Qusetion 13 シックデイにおける糖尿病治療薬の調整方法は?

著者: 田中永昭

ページ範囲:P.124 - P.127

Point
◎食事ができないからといって安易にインスリン注射を中断すると,容易にケトアシドーシスに陥り,生命の危機に瀕することもある.
◎GLP-1受容体作動薬のうち,短時間作用型の場合には,注射を控えることが望ましく,再開時の開始用量にも注意が必要である.
◎シックデイ時の経口薬の休薬の判断は,食事量が1つの目安になる.
◎日頃からシックデイ時の対応について,医師と患者が十分話し合うことが重要である.

Question 14 緩徐進行1型糖尿病の治療薬選択は?

著者: 柴田大河

ページ範囲:P.128 - P.130

Point
◎早期に診断しインスリン治療を開始すべきである.
◎SU薬の使用は避けるべきである.
◎内因性インスリン分泌減少の程度に合わせてインスリン治療を変更する.

Question 15 妊娠希望の女性に対する薬物治療のポイントは?

著者: 柴田大河

ページ範囲:P.131 - P.133

Point
◎妊娠前の段階での厳格な血糖コントロールが必要である.
 ・血糖コントロール不良は先天異常や流産などのリスクを上昇させる.
 ・血糖コントロール目標はHbA1c 6.5%未満とすることが推奨される.
◎妊娠前の段階からインスリン以外の糖尿病治療薬の使用は推奨されない.
 ・食事療法および運動療法で十分な血糖コントロールを行う.
 ・上記で十分な血糖コントロールに達しない場合にはインスリン治療を行う.
 ・強化インスリン療法を選択する.

Question 16 介護施設入所中の糖尿病患者における注意点とは?

著者: 津村和大

ページ範囲:P.134 - P.135

Point
◎老年症候群が糖尿病治療の難易度を上げる.
◎介護施設における食事提供体制のばらつきは,低血糖リスクになる.
◎看護・介護支援体制のばらつきは,体調変化の発覚遅延リスクになる.
◎診療情報提供書を介した情報共有が重要である.

現場の疑問を解決—療養指導編

Question 1 糖尿病診療での一般的な通院間隔とは?

著者: 赤司朋之

ページ範囲:P.136 - P.138

Point
◎一般的には,糖尿病患者の外来診療における通院間隔は,1カ月に1回が目安となる.
◎発症からの期間や治療法,血糖のコントロールおよび合併症の状態により,通院間隔は適宜調整する.
◎受診中断を防ぐためにも,職業や生活環境に合わせて,受診しやすいように融通をきかせることも必要である.

Question 2 糖尿病専門医が「紹介していただきたい」と考える状態や疾患とは?

著者: 奈良光彦 ,   脇裕典

ページ範囲:P.140 - P.142

Point
◎たとえ同じ血糖推移であっても,患者がおかれた状況によって意味合いが異なる.
◎日本糖尿病学会では,専門医への紹介基準として,①血糖コントロール改善・治療調整が必要な場合,②教育入院が必要な場合,③慢性合併症のハイリスク者,または発症・進展が認められた場合,④急性合併症を生じた場合,⑤手術施行前の,5つを挙げている.

Question 3 糖尿病診療の地域連携を発展させるコツとは?

著者: 津村和大

ページ範囲:P.144 - P.145

Point
◎医療機関ごとの糖尿病診療の実力を把握する.
◎市民啓発事業などとの共催を通じて関係性を深める.
◎糖尿病診療連携手帳を活用する.

Question 4 糖尿病患者への糖負荷試験は必要か?

著者: 阿部咲子 ,   脇裕典

ページ範囲:P.146 - P.148

Point
◎75 g経口ブドウ糖負荷試験(75 gOGTT)は糖尿病の確定診断のための検査の1つであり,空腹時血糖値や随時血糖値あるいはHbA1c値の測定で判定が確定しなかった場合に施行される.
◎すでにその他の検査所見から診断が確定している糖尿病患者に75 gOGTTは行わない.

Question 5 合併症・併存症に対する検査はどの程度行うべきか?

著者: 赤司朋之

ページ範囲:P.150 - P.153

Point
◎三大合併症の検査は,合併症の程度に応じて,確実に定期的に行う必要がある.
◎併存症の検査も,健診を活用したり,既往歴や家族歴などの聴取を行ったりしながら,リスクに応じて定期的に行うことが望ましい.
◎糖尿病連携手帳を活用するなどして,計画的に検査を行い,その結果を一元的に管理することが重要である.

Question 6 管理栄養士がいない局面での栄養指導の工夫とは?

著者: 津村和大

ページ範囲:P.154 - P.155

Point
◎現在の食生活を基準とした改善提案は患者も理解しやすい.
◎効果的かつ平易な栄養指導ツールを活用する.
◎高齢者に対する誤ったエネルギー制限を行わない(蛋白質と脂質の摂取を促す).

Question 7 移行期医療で配慮すべきポイントは?

著者: 濱田淳平

ページ範囲:P.156 - P.158

Point
◎1型糖尿病では高等学校卒業時を成人科(内科)への移行時期とすることが多いが,2型糖尿病患児の移行期については,十分な議論はなされていない.
◎移行時期には患者の理解度に応じて,糖尿病療養指導士などのメディカルスタッフによる支援やチーム医療による心理サポートが必要である.
◎小児糖尿病キャンプは1型糖尿病患児の自立を促すだけでなく,2型糖尿病患児に対しても行動変容のきっかけとなる可能性があり勧められる.

Question 8 認知症が進んだ患者さんへの糖尿病治療は?

著者: 赤司朋之

ページ範囲:P.159 - P.161

Point
◎アドヒアランスの向上や,低血糖リスクの回避を考慮した内服薬の選択が必要である.
◎インスリン治療が必要な場合は,継続可能であることを重視し,どのようにして継続するか対策を考える必要がある.
◎糖尿病の状態,認知症の進行度,社会的背景,人生観などの全体像を捉えたうえで,治療法を考える.

Question 9 感染症を併発したときは?

著者: 楠見僚太 ,   脇裕典

ページ範囲:P.162 - P.164

Point
◎糖尿病患者は易感染性で重症化・遷延化しやすい.
◎食事摂取不能,高熱が続き尿ケトン体強陽性,血糖値が350 mg/dL以上のときには入院加療とする.
◎抗菌薬など感染症に対する治療のほかに血糖値を測定しながらの血糖コントロールが必要である.
◎感染症併発時の血糖コントロールはインスリンが基本である.
◎血糖管理は140〜180 mg/dLを目標とする.
◎スライディングスケールのみで漫然と対応しない!

Question 10 CGM・FGM・SMBGの使い分けは?

著者: 野見山崇

ページ範囲:P.166 - P.168

Point
◎SMBGの値は,基本的には直接の血糖値が示され,CGM,FGMでは推定値が示されている.
◎私見だが,実臨床ではSMBGを基準として治療を行うとよい.

Question 11 HbA1c値だけを指標に血糖コントロールを続けてもよい?

著者: 林恭加 ,   赤司朋之

ページ範囲:P.170 - P.172

Point
◎HbA1c値は過去1〜2カ月間の血糖コントロール状態を反映する指標である.
◎ただし急激な血糖値の変動を認める場合や,赤血球寿命が短縮・延長している病態ではHbA1c値は血糖コントロール状態を正確に反映していない可能性がある.
◎HbA1c値が同等であっても血糖の日内変動幅は異なる場合があり,治療に際しては注意が必要である.

Question 12 ブリットル型糖尿病ではインスリンポンプ療法が有効か?

著者: 宮崎あすか ,   中村昭伸

ページ範囲:P.173 - P.175

Point
◎インスリンポンプ療法(CSII療法)では,皮膚トラブルや経済的負担などのデメリットもあり,それらを十分説明し,患者の自己決定を尊重する.
◎ブリットル型(不安定型)糖尿病は1型糖尿病に多いが,2型糖尿病でもみられる.
◎インスリン頻回注射療法(MDI)で血糖コントロールに難渋する場合には,CSII療法は有効である.

連載 読んだら,ちょいあて! POCUSのススメ・10

胆囊炎を疑ったら

著者: 今村祐志 ,   畠二郎

ページ範囲:P.1 - P.4

 超音波の利点はいくつもありますが,分解能が高いため細かな画像所見が得られること,患者さんと話しながら検査が可能なため胆囊の圧痛を確認できることなど,胆囊炎の診断においても有用です.ぜひ,超音波を使ってみましょう.

治らない咳,どう診る・どう処方する?・1【新連載】

なぜ咳は長引くの?

著者: 中島啓

ページ範囲:P.177 - P.179

 咳嗽は実診療ではよく診る症状ですが,診断後や各種薬物治療後も,依然として続く咳に悩む患者を診る機会も多いのではないでしょうか.そんな長引く咳を訴える患者をどう診るのか,どう処方するとよいのかを考えていくにあたって,まず咳嗽そのものの機序について考えてみたいと思います.

主治医の介入でこれだけ変わる! 内科疾患のリハビリテーション・5 疾患別リハビリ・運動療法の実際

急性冠症候群

著者: 上月正博

ページ範囲:P.180 - P.187

 心筋梗塞の多くは狭窄度50%未満の血管の不安定プラークが破綻することで発生するため,血管における侵襲的治療を重視してきた医師の反省,すなわち,血管病の予後の改善が侵襲的治療のみでは達成できないという多くの多施設試験結果から,運動療法の効果が再認識されている.今回は心臓リハビリテーション(以下,リハビリ)の一環として,虚血性心疾患のリハビリについて解説する.

ここが知りたい! 欲張り神経病巣診断・10

脳出血(小脳出血)①手足の失調

著者: 難波雄亮

ページ範囲:P.188 - P.192

 手足には力が入るのにバランスがとれない,といった症状で受診される患者さんがいます.
 では,麻痺でないなら何でしょうか? 失行? 感覚障害(深部)? 脳は体のなかで複合的に感覚を統合してバランスをとる臓器です.今回は失調がある場合,どのような部位の障害が推定されるか一緒に勉強してきましょう.

続・ケースレポートを書こう! “論文の軸の設定”トレーニング・1【新連載】

ケースレポートにできる症例と「structureの原則」のおさらい

著者: 見坂恒明

ページ範囲:P.193 - P.195

 本誌2020年4月号〜12月号にかけ,『ケースレポートを書こう!〜acceptされるために必要なこと』を連載した.ケースレポートは,報告内容の骨格となる2つの新規性を何にするのか,つまり“論文の軸の設定”さえしっかり行えば,あとは「structureの原則」に沿って書いていくだけで,非常に読みやすい(査読者や読者に伝わる)ものができあがる1).逆に言えば,この“論文の軸の設定”がケースレポートの採否を左右すると言っても過言ではなく,実際,ケースレポート初心者にとって最大の障壁となっている2〜4)
 そこで本連載では,あらためて“論文の軸の設定”に焦点を当てて例示・解説していきたい.初回となる今回は,前連載の内容をもとに,ケースレポートにできる症例とはどのようなものか,そして「structureの原則」についておさらいしていこう.

目でみるトレーニング

問題1006・1007・1008

著者: 志水隼人 ,   平岡淳 ,   中島崇作

ページ範囲:P.196 - P.201

書評

—一般社団法人 日本蘇生協議会 監修—JRC蘇生ガイドライン2020

著者: 小林欣夫

ページ範囲:P.79 - P.79

 心肺蘇生は待ったなしです.心肺蘇生の開始が1分遅れるごとに救命率が10%低下すると報告されています.このために的確な心肺蘇生を行い,命を救わなくてはなりません.しかしながら,それだけでは不十分です.命を救うとともに,高次脳機能障害などを起こさせない,またはなるべく軽くしなくてはなりません.このために心肺蘇生を行う人の技量・知識が非常に重要です.
 日本蘇生協議会(JRC)は,医学系の18の学術団体と救急・蘇生教育を推進する関連5団体の計23団体で構成されている救急蘇生科学に関するプロフェッショナル集団です.2002年に設立され,心肺蘇生法に関する世界的なガイドライン作成の日本の窓口として国際蘇生連絡委員会に参画しています.国際蘇生連絡委員会は蘇生関連のトピックに関してエビデンスを網羅的検索・解析し,国際的なガイドライン作成方法であるGRADEシステムを用いてガイドラインを作成しており,これは国際標準となっています.日本蘇生協議会もこれに基づいて2010年,2015年にガイドラインを作成し,この度5年ぶりの改訂版の出版となりました.

—森田 達也 著,森 雅紀 執筆協力—緩和ケア・コミュニケーションのエビデンス—ああいうとこういうはなぜ違うのか?

著者: 頭木弘樹

ページ範囲:P.95 - P.95

 病院に行くとき,録音機を持って行こうかと迷う.説明を覚えきれないからだ.いい加減に聞いているわけではない.その逆で,1つひとつの医師の発言に集中し,ちゃんと理解しようとしている.それだけに咀嚼に時間がかかり,次々に繰り出される言葉を飲み込みきれなくなる.
 しかし,いまだに持って行ったことはない.医師のショッキングな発言が録音されるといやだからだ.消せばいいだけなのだが,録音されたらと思うだけで,もう胸が苦しくなり,やめてしまう.

—泉 孝英 編—日本近現代医学人名事典別冊【1868-2019】増補

著者: 冨岡洋海

ページ範囲:P.123 - P.123

 今夏,泉孝英博士の編による『日本近現代医学人名事典別冊【1868-2019】増補』が出版された.本書は,第26回矢数医史学賞を受賞した『日本近現代医学人名事典【1868-2011】』(医学書院,3,762名収載)の増補版として,2012年以降,令和に改元されるまでの2019年4月末までに物故された564名と,前著に追加すべき369名を加えた933名を収載した膨大な人名事典である.総勢5,000名弱の業績がひとつなぎになったこととなる.
 書物の性質として,事典の類に「書評」というのも,おかしな話と思われるかもしれないが,本書は単なる人名事典ではない.これには,明治・大正・昭和・平成の約150年間におけるわが国の医学・医療の歴史を残し,よりよい未来につなげたいと念ずる編者の思いが詰まっているからである.

—坂本 壮,田中 竜馬 編—救急外来,ここだけの話

著者: 増井伸高

ページ範囲:P.139 - P.139

◆Controversyは159個
 救急外来はギモンでごった返している.
・「敗血症性AKIを併発している患者への造影CTは?」

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目次

ページ範囲:P.6 - P.9

読者アンケート

ページ範囲:P.203 - P.203

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.204 - P.205

購読申し込み書

ページ範囲:P.206 - P.206

次号予告

ページ範囲:P.207 - P.207

奥付

ページ範囲:P.208 - P.208

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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