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雑誌目次

雑誌文献

medicina59巻10号

2022年09月発行

雑誌目次

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

著者: 志賀隆

ページ範囲:P.1606 - P.1607

 50代男性が前胸部痛にて搬送された.搬送の1時間前に初発の痙攣があった.隣の布団で寝ていた妻が痙攣に気がついて様子を見ていたところ,5分程度で止まった.その後,前胸部の痛みが始まった.搬送時に循環器内科医が診察ならびに心電図・心エコー図検査を行い,「冠動脈疾患ではない」との判断となった.その後,外科当直の整形外科医が,「胸部の単純CTを読影したが,胸骨の骨折はない」との判断をした.朝になり救急医が診察したところ,「呼吸性に変化する胸痛+D-ダイマーの上昇」と診断され,肺塞栓症を除外することになった.
 このように痛みの診療は奥深く,多くの医師を悩ませる.一般外来,時間外外来に「緊急性の強い痛み」「診断の難しい痛み」「コントロールが難しい痛み」などをもった患者が訪れることがある.もちろん,致死性疾患の鑑別診断がまずどのような患者にも必要である.また,「体性痛なのか?」「内臓痛なのか?」という視点も常に必要になる.

特集を読む前に あなたの理解度チェック!

ページ範囲:P.1608 - P.1612

●今月の特集執筆陣による出題です.痛みの診療に関する理解度をチェックしてみましょう!

アプローチの仕方

突然の痛み

著者: 坂本壮

ページ範囲:P.1614 - P.1617

Point
◎発症様式(Onset)を意識して問診しよう!
◎診察時の痛みの程度でアンダートリアージするのはNG!
◎失神も突然発症であることを忘れずに!

間欠痛

著者: 浅川麻里

ページ範囲:P.1618 - P.1620

Point
◎発症形式(onset)と時間経過(time course)に注目して,病態生理を推測する.
◎間欠痛は「波がある痛み」と表現され,痛みの強さや持続時間に規則性がある.
◎持続時間がバラバラで不規則である場合は,安易に間欠痛と考えない.持続痛を生じるはずである疾患が,自然軽快と増悪を繰り返している可能性を考える.

増悪する痛み—腹痛に焦点を当てて

著者: 須田竜一郎

ページ範囲:P.1622 - P.1625

Point
◎「第一印象」,「ショック徴候」,「腹部触診」で,大まかな疾患群の鑑別とCriticalな病態の識別を行う.
◎「病歴と詳しい理学所見」でCommonやCurableな病態の確定診断に迫る.
◎「見落としがちな疾患群」を最終チェック.

人生最大の痛み

著者: 中村真崇 ,   島惇

ページ範囲:P.1626 - P.1630

Point
◎常にバイタルサインの評価,異常への介入から診療を開始する.
◎鑑別疾患は致死的な疾患から想起し,病歴聴取,身体診察,検査,治療を進めていく.
◎細菌性髄膜炎を疑ったら,なるべく早く「血液培養→ステロイド投与→抗菌薬投与→必要性があれば頭部CT→髄液検査」の順番で診療を行う.
◎抗菌薬のIVP(intra-venous push)に関しては,ある程度の安全性が示されているが,院内のコンセンサスを得る必要がある.

慢性的な痛み

著者: 本田奈々瀬

ページ範囲:P.1631 - P.1636

Point
◎慢性の痛みは日本の人口のおよそ5人に1人が悩まされており,身体障害や経済的負担の主因となり,人生に関わる大きな問題である.
◎慢性の痛みにおいても,まずは緊急介入が必要な状態かどうかを判断する.
◎慢性膝痛では年齢と疼痛部位に応じた鑑別を,慢性頸部痛・腰痛では①非特異的な痛み,②脊椎由来の特定の痛み,③神経根症/脊柱管狭窄に関連した痛み,④脊椎由来でない関連痛の4つのカテゴリーで鑑別を考える.
◎痛みの慢性化は神経回路の過敏性が上がっている状態で,心理社会的要因の影響が大きい.慢性化リスクの高い患者には早期から心理社会面へのアプローチを行い,慢性の痛みを訴える患者にはセルフケアを促し多方面からのアプローチを行う.

各論—こんな痛みには要注意!

慢性の頭痛—片頭痛

著者: 福澤文駿 ,   鋪野紀好

ページ範囲:P.1637 - P.1641

Point
◎見逃してはいけない頭痛を鑑別する.
◎病歴から片頭痛を診断する.
◎適切な発作治療薬を投与し,予防薬の適応と選択についても評価する.

急性の頭痛—静脈洞血栓症

著者: 中尾寛宙

ページ範囲:P.1642 - P.1645

Point
◎経口避妊薬内服中の頭痛や,若年者の脳卒中をみれば静脈洞血栓症を鑑別に加える.
◎頭部CT検査では静脈洞にも目を向ける.血栓が疑わしければ頭部MRI検査を考慮する.
◎両側性脳出血や動脈支配域に合わない出血など「変わった」画像をみれば,静脈洞血栓症を想起する.

眼痛—急性閉塞隅角緑内障

著者: 福與裕子 ,   金井信恭

ページ範囲:P.1646 - P.1649

Point
◎患者が片側眼の強い疼痛を訴える場合,くも膜下出血や脳出血,一次性頭痛などの頭に起因する疼痛である可能性もあるので注意が必要である.
◎眼に起因する疼痛の場合,特に緊急度の高い疾患として急性閉塞隅角緑内障がある.他の眼疾患として,前部ぶどう膜炎,強膜炎,結膜炎,角膜炎,角膜損傷,眼球結膜下出血などを鑑別として挙げる.
◎急性閉塞隅角緑内障を疑う場合は,眼圧を下げる薬剤を投与したうえですぐに眼科医へコンサルトする.

咽頭痛

著者: 竪良太

ページ範囲:P.1650 - P.1654

Point
◎Centor scoreが2点以上であれば,溶連菌性咽頭炎を疑って溶連菌迅速抗原検査を施行する.
◎5 killer sore throatを常に想起し,疑う場合には確定診断より気道確保を優先する.
◎5 killer sore throatを疑うためには開口障害や流涎などの随伴症状を十分に聴取することが重要である.
◎咽頭炎のない咽頭痛の場合には,心筋梗塞・大動脈解離に注意する.

頸部痛—Crowned dens症候群

著者: 西田成 ,   林実

ページ範囲:P.1656 - P.1659

Point
◎高齢者の頸部痛,特に発熱を伴う場合はCrowned dens症候群を疑い,頸部CTを撮影する.
◎Crowned dens症候群に対しては非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やステロイド,コルヒチン投与を行う.

胸痛

著者: 中島聡志

ページ範囲:P.1660 - P.1663

Point
◎致死的な5つの胸痛(five killer chest pain)を常に想起する.
◎確定診断こそ最大の除外診断である.

急性の上腹部痛

著者: 宮田直輝

ページ範囲:P.1664 - P.1667

Point
◎上腹部痛に対してまず緊急性のある疾患か判断する必要がある.
◎ラインキープ,O2投与などを行いバイタルサインを安定させる.
◎十分な問診と丁寧な診察により,ある程度疾患を絞ることができる.
◎採血,腹部エコーや造影CTは病因精査を行ううえで重要なツールである.
◎治療として十分な補液,疼痛コントロールを行うことは重要である.

急性の下腹部痛—憩室炎

著者: 葛生健人 ,   吉田篤史

ページ範囲:P.1668 - P.1671

Point
◎下腹部痛を診断する際にまず行うべきは問診と診察であり,診断の検査前確率を上げることが大切である.
◎炎症の程度を把握するために血液検査所見は重要であり施行すべきである.
◎急性の下腹部痛であれば腹部X線写真のみではなく,CT検査を考慮すべきである.
◎腸管穿孔や膿瘍形成を疑った際は悪化する可能性も考え早期に外科へコンサルトを行う.

慢性の腹痛—機能性消化管障害

著者: 水本潤希

ページ範囲:P.1672 - P.1676

Point
◎慢性腹痛の診療には,良性疾患を見抜くスキルと,機能性疾患を適切に診断し治療的な患者医療者関係を構築するスキルが必要である.
◎長期間(典型的には6カ月以上)持続する腹痛で,食事や排便との関係に乏しく,疼痛により日常生活が制限されている場合,中枢介在性腹痛症候群を疑う.
◎良好な医療者患者関係に立脚した,認知行動療法(あるいはそれに準じる診療)と適切な薬剤治療の組み合わせが,機能性疾患のマネジメントに必須である.

背部痛—Stanford B型大動脈解離

著者: 建部将夫 ,   瀬尾龍太郎

ページ範囲:P.1678 - P.1683

Point
◎突然発症の背部痛は大動脈解離を必ず鑑別疾患に挙げ,疑って問診と診察を行う.
◎大動脈解離の最終診断は造影CT検査である.可能性があると考えるなら迷わず施行する.
◎それ以上解離腔が広がらないために大切なのは鎮痛,降圧(100mmHg≦収縮機血圧≦120mmHg),徐拍化(60回/分以下)である.

腰痛

著者: 狩野謙一

ページ範囲:P.1684 - P.1686

Point
◎red flag signをチェックして重症病態を見逃さない.
◎red flag signをチェックするためには問診が重要であり,OPQRSTに沿って問診する.

肩関節痛—腱板,関節唇を診ましょう

著者: 杉本勝正

ページ範囲:P.1687 - P.1691

Point
◎外傷機転の有無で肩痛の鑑別診断が大きく異なる.
◎心血管系,頸椎,腕神経叢の関与を見落としてはいけない.
◎肩後方脱臼,腱板損傷,関節唇損傷などはX線写真のみで診断困難であり,見逃されやすいので注意を要する.

肘関節痛

著者: 岩瀬嘉志

ページ範囲:P.1692 - P.1695

Point
◎肘関節痛で単純X線写真に明らかな骨折などがなければ靱帯損傷や関節炎などを疑う.
◎血液検査において炎症所見を認めたら関節炎を疑う.
◎肘疼痛があり肘周囲外傷,肘関節炎を疑った場合,良肢位で固定して精密検査,専門医受診を促す.

手関節痛

著者: 仲田和正

ページ範囲:P.1696 - P.1698

Point
◎手関節痛でコモンな疾患としてはColles骨折,舟状骨骨折,de Quervain病(狭窄性腱鞘炎),手関節炎(RA,CPPD)があり,時に月状骨壊死,三角線維軟骨損傷,尺側手根伸筋腱炎などがある.

股関節痛

著者: 上原健敬

ページ範囲:P.1699 - P.1703

Point
◎高齢者の転倒,股関節痛の受傷機転ではまず大腿骨近位部骨折の発生を疑う.
◎転位が少ない骨折では単純X線で診断が困難なことがあり,MRIでの精査を行う.
◎令和4年度の診療報酬改定にて大腿骨近位部骨折手術に対して早期手術加算が新設され,受傷後48時間以内に治療を行うことが求められている.
◎大腿骨近位部骨折は骨粗鬆症を基盤とする脆弱性骨折であることから,骨粗鬆症治療の導入・強化が必要であり,多職種が連携した骨粗鬆症治療の導入・継続支援が推奨される.

膝関節痛

著者: 澤近弘

ページ範囲:P.1704 - P.1706

Point
◎膝関節痛を診たら,関節痛あるいは関節炎なのか分類する.
◎膝関節炎であれば関節炎の時間経過に着目する.急性発症であれば感染症,偽痛風を念頭に考える.
◎偽痛風を疑った場合,関節X線にて関節裂隙の石灰化を検索する.
◎偽痛風発作のきっかけになるストレス,脱水に着目する.

足趾関節痛—痛風

著者: 谷口敦夫

ページ範囲:P.1707 - P.1711

Point
◎痛風は男性で最多の炎症性関節疾患で,尿酸塩結晶によって引き起こされる関節炎(痛風発作)を主徴とする.
◎痛風発作は急性単関節炎であり,急性単関節炎を呈する疾患を鑑別する.
◎炎症性関節疾患以外の鑑別疾患として,変形性関節炎,外反母趾・バニオン,蜂窩織炎がある.

足底部痛

著者: 天羽健太郎

ページ範囲:P.1712 - P.1715

Point
◎踵部に疼痛を有する疾患の総称として踵部疼痛症候群があるが,なかでも足底に痛みをきたす疾患を考える.診断には患者背景や病歴の聴取と痛みの種類と部位の確認が重要である.
◎誘因なく足底部が痛くなり,起床時や歩行時の痛みがあり,足底腱膜の踵骨付着部に圧痛があれば足底腱膜炎を疑う.X線検査では踵骨足底部の骨棘形成を認めることが多い.
◎マラソンなど運動量が多い場合は踵骨の疲労骨折の可能性があり,MRI撮影を行う.
◎足を踏む動作で急に痛くなり,歩行困難な場合は足底腱膜の断裂を疑い,対処として松葉杖を使用して足をつけない免荷とし,専門医受診を促す.

全身の痛み—リウマチ性多発筋痛症(PMR)

著者: 雫辰徳 ,   萩野昇

ページ範囲:P.1716 - P.1720

Point
◎「全身が痛む」のような漠然とした疼痛を患者が訴えたときは,入念な問診と診察を行い,疼痛がどの解剖学的構造物に局在するか推定する.
◎リウマチ性多発筋痛症は,肩・股関節を中心とした大関節を中心として発症する特発性・急性・多・滑液包炎である.
◎診断は除外診断による.よって診断に際して最も重要な検査は血液培養であり,「全身の疼痛」+「炎症反応上昇」では明らかなフォーカスの見当たらない菌血症を必ず否定する.悪性腫瘍スクリーニングも考慮する.
◎リウマチ性多発筋痛症は,プレドニゾロン15mg/日程度で速やかな症状の改善が得られることが多い.予想された治療反応性が得られなければ,他の鑑別疾患を検討する.

痛みの評価と鎮痛薬の使い方

痛みの評価と介入

著者: 竹下諒

ページ範囲:P.1721 - P.1725

Point
◎痛みの診療は疾患の診断だけでなく,適切な鎮痛が患者満足度につながる.
◎適切な鎮痛とは,痛み自体の迅速で適切な評価とそれに適した鎮痛法の選択である.
◎痛みはPain Scaleで定量的に評価し,鎮痛後の定期的な再評価も忘れない.
◎MCIDを意識した鎮痛を目指すことが適切な鎮痛につながる.

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)

著者: 木下真弓

ページ範囲:P.1726 - P.1731

Point
◎非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用する前に必ず痛みの部位や種類,原因精査を行う.
◎問診により,胃潰瘍や腎障害などの既往歴,アレルギーやNSAIDsの使用経験および,採血検査による肝腎機能障害や脱水の有無などを確認して使用する.
◎NSAIDsには天井効果があるので,増量しても鎮痛効果が乏しい場合にはオピオイド系鎮痛薬や鎮痛補助薬の投与を考慮する.
◎NSAIDsが現在服用中の内服薬に影響を与えることを見逃さない.

アセトアミノフェン

著者: 吉本昭

ページ範囲:P.1732 - P.1735

Point
◎アセトアミノフェンは非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に比べて安全性が高く,頻用される薬剤である.
◎鎮痛作用は決して強いとは言えないが,適正な量を使用することで鎮痛効果を得ることができ,他剤(オピオイドなど)と併用することでその効果を最大限に発揮できる.
◎大量投与では肝障害を引き起こす可能性があり,肝障害を有する患者には投与を避けることが望ましい.

トラマドールとGABA関連薬(ガバペンチノイド)

著者: 久保田敬乃 ,   西智弘

ページ範囲:P.1736 - P.1741

Point
◎非オピオイド鎮痛薬で治療困難な非がん性疼痛に対するトラマドールの漫然とした長期間投与は依存・乱用のリスクがあるため避けるべきであるが,慢性疼痛を含む非がん性疼痛鎮痛薬としての適切な処方は必要である.
◎トラマドールはがん性疼痛の適応はあるが,WHOがん性疼痛ガイドラインの3段階除痛ラダーからは削除された.
◎ガバペンチノイドは神経障害性疼痛薬物療法ガイドラインの第一選択薬である.
◎ガバペンチノイドについては薬物関連死の報告が散見されている事実もふまえた適切な処方が必要である.

麻薬性鎮痛薬

著者: 松本禎久

ページ範囲:P.1742 - P.1746

Point
◎「麻薬性鎮痛薬」は主にオピオイドを指すが「医療用麻薬」とは同義ではなく,「医療用麻薬」に含まれない「麻薬性鎮痛薬」もあれば,「麻薬性鎮痛薬」ではない「医療用麻薬」もある.
◎がん疼痛治療においては,弱オピオイドを経ずに強オピオイドを開始することが推奨され,各オピオイドの最小用量規格から開始する.
◎非がん慢性疼痛に対するオピオイド投与は,慎重に適応を判断する必要がある.
◎オピオイド投与時には,痛みおよび疼痛治療の適切な評価と対応を行い,不十分な投与量による苦痛や不適切な過量投与による不利益を避けなければならない.

外用薬

著者: 安座間由美子

ページ範囲:P.1748 - P.1751

Point
◎ブプレノルフィンは非麻薬性オピオイド鎮痛薬で,外用薬としては貼付剤と坐剤があり,それぞれ適応が違う.腎機能障害患者や高齢者でも比較的安全に使用することができる.
◎アルコール依存症患者でナルメフェン塩酸塩水和物を使用中の患者にブプレノルフィンを使用する場合は,前者を中断後1週間以上は間隔をあける.
◎他の外用の鎮痛薬としてアセトアミノフェン坐剤,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の貼付剤・坐剤,フェンタニル貼付剤,モルヒネ坐剤がある.同じ成分でも剤形によって適応・用法が違う.
◎ブプレノルフィン貼付剤とフェンタニル貼付剤を慢性疼痛症例に処方する場合には,薬物依存・乱用などのリスク管理の観点から,処方前にe-learningの受講が必要である.また,専門家の指導のもと治療するのが望ましい.
◎慢性疼痛の患者でも急性増悪している場合には,鎮痛薬処方前に必ず他の疾患が隠れていないか鑑別を行う.

連載 ローテクでもここまでできる! おなかのフィジカル診断塾・6

—おなかが痛い その6—脾破裂—デルマトームを意識して痛みの発生部位を把握しよう!

著者: 中野弘康

ページ範囲:P.1597 - P.1600

 本連載も第6回を迎えました.
 ここまでcommonな虫垂炎,膵炎,胆囊炎,前皮神経絞扼症候群(anterior cutaneous nerve entrapment syndrome:ACNES)を取り上げ,前回は突然の腹痛で聴診(bruit)が診断に役立った腹腔動脈解離を紹介しました.
 今回は,お腹以外の症状が診断に役立った印象的な症例をご紹介します.

治らない咳,どう診る・どう処方する?・9

鼻炎・副鼻腔炎の咳嗽・喀痰

著者: 中島啓

ページ範囲:P.1753 - P.1758

ポイント
・3週間以上持続する湿性咳嗽で,「後鼻漏」を疑う症状がある場合は,鼻炎・副鼻腔炎に伴う後鼻漏による咳嗽を疑う.
・アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎の後鼻漏に対する治療を行っても咳嗽が持続する場合は,喘息の合併を考慮する.喘息の合併を疑えば吸入ステロイド薬/長期作用性β2刺激薬(ICS/LABA)で反応をみる.
・それでも治療抵抗性の場合は,喘息以外の下気道疾患や胃食道逆流症(GERD)を鑑別に挙げて精査する.

ここが知りたい! 欲張り神経病巣診断・16

脳梗塞⑤半側空間無視の臨床/頸動脈狭窄症の評価

著者: 難波雄亮

ページ範囲:P.1760 - P.1765

 脳卒中のなかでも,心房細動に伴う脳梗塞(心原性脳塞栓症)は重度の神経障害を起こします.心房細動の有病率は全人口の1%,80歳以上で10%と高い割合となるため1),われわれが救急外来で心原性脳塞栓症に遭遇する確率は高いと思われます.今回は中大脳動脈領域に重度の症状をきたす脳梗塞について勉強しましょう.

続・ケースレポートを書こう! “論文の軸の設定”トレーニング・9

間質性肺炎に対して在宅HFNCを導入した75歳男性〜ある疾患の新規な治療方法,予想外の治療効果〜

著者: 合田建 ,   見坂恒明

ページ範囲:P.1766 - P.1769

 今回は,ケースレポートにできる症例(①ある疾患の新規な症状・所見・経過,②ある薬剤の新規な副作用・薬剤相互作用,③2つの疾患間に予想外の関連性,④ある疾患の新規な診断方法,⑤ある疾患の新規な治療方法,予想外の治療効果,⑥稀もしくは新規の病気・病原体)のうち,⑤に該当する症例を提示する.
 新規な治療方法は倫理的な問題もあり,遭遇する機会が少ないかもしれない.患者の状態や背景をよく吟味したうえで個別化された治療は,思わぬ効果をきたすことがある.また視点を変えることで,新規性が見えてくることもある.
 次の症例提示1)を読んで,第1新規性,第2新規性(または臨床的有用性)について考えてみよう.

主治医の介入でこれだけ変わる! 内科疾患のリハビリテーション・13 疾患別リハビリ・運動療法の実際

脂質異常症

著者: 上月正博

ページ範囲:P.1770 - P.1775

 脂質異常症の本態はリポ蛋白の産生または異化の障害であり,脂質異常症は動脈硬化の最も重要な危険因子である.運動療法はリポ蛋白組成を抗動脈硬化の方向に改善させる.また,身体活動量を増やして運動耐容能を高めることで,脂質異常症患者の生命予後を改善させる.今回は,脂質異常症患者に対するリハビリテーション(以下,リハビリ)・運動療法を解説する.

目でみるトレーニング

問題1030・1031・1032

著者: 岩崎靖 ,   名嘉村敬 ,   梶原祐策

ページ範囲:P.1776 - P.1782

書評

—稲葉 吉隆,女屋 博昭,清水 淳市,前田 章光 編—がんCT画像読影のひきだし

著者: 松尾宏一

ページ範囲:P.1621 - P.1621

 がん医療の現場では,多種職・多診療科によるキャンサーボードなどのカンファレンスが広く行われ,薬剤師や看護師などの医療チームのメンバーが,これまで以上にCT画像を見る機会が増えている.しかしながらメディカルスタッフが読影に関する教育を受ける機会は乏しく,放射線科医が普段から「どのように捉え」,「何を予測しながら」読影しているか知ることは難しい.
 本書のポイントは「序」にあるように,到達目標を「自力でCT読影ができる」という高いレベルに置くのではなく,若手のメディカルスタッフが「症例報告会における医師の議論やカルテの記載内容を理解し,患者さんの病態をより深く理解できるようになる」という,取り組みやすくかつ実践的なレベルに設定したことだ.そのため,全編において難解な理論については深く立ち入らずにシンプルな内容に徹し,CT画像に詳しくない読者でもスムーズに内容を理解できる.とはいえ,初学者が学習すべきことはしっかり押さえられており,その結果,本書のターゲットであるがん医療に携わるメディカルスタッフにとって非常に理解しやすい入門書となっている.

—齋藤 昭彦 編—レジデントのための小児感染症診療マニュアル

著者: 谷口俊文

ページ範囲:P.1655 - P.1655

 一人の成人内科専門医および感染症専門医としての視点で本書を読んでみた.青木眞先生の『レジデントのための感染症診療マニュアル』もそうだが,本書の最も読み応えのあるところは「総論」だ.小児と成人の感染症診療のアプローチははっきりと違う.ここでは「小児の免疫の特徴」に多くのページを使っている.これらの特徴をしっかりと把握することにより,成人とは違う病態の気付きなども得られる.また基礎的な病態生理にもかなりしっかりと触れられている.総論でここまでしっかりと網羅している感染症の本はなかなか見当たらない.それだけ小児感染症の実践で基礎的な知識が必要であるということなのだろう.
 読み進めると,所々に散りばめられたメモ欄には,小児科ならではの疾患やクリニカル・パールが詰まっており,これを拾い読みするだけでも勉強になる.各論に入ると,さまざまな治療方法が感染症ごとにまとめられている.欧米で使用できる薬なども日本では使用できず,歯がゆい思いをされている先生方も,日本で小児感染症のトップランナーたちがまとめた実践的な抗菌薬使用方法は,読んでいても納得することができるのではないだろうか.

—野木 真将,橋本 忠幸,松尾 貴公,岡本 武士 著—チーフレジデント直伝! デキる指導医になる70の方法—研修医教育・マネジメント・リーダーシップ・評価法の極意

著者: 小杉俊介

ページ範囲:P.1677 - P.1677

 「指導医」と聞くと「自分なんか指導医とはまだ言えないし」と思われる若手医師も多いと思います.しかし,研修医1年目であっても学生が実習に来ることもあるし,研修医2年目は1年目から気軽に相談を受けることは日常茶飯事だと思います.このように若手医師もいろいろなシチュエーションで実は「指導(教育)」をしています.
 しかし,本邦では,例えば厚労省が行っている指導医講習会も卒後7年目以降の医師が主な受講対象者となり,若手の医療者が「指導」について体系的に学ぶ場はあまりなく,「指導」については教わることなく見様見真似で行っていることが多いと思います.

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目次

ページ範囲:P.1602 - P.1604

読者アンケート

ページ範囲:P.1783 - P.1783

バックナンバーのご案内

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購読申し込み書

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奥付

ページ範囲:P.1788 - P.1788

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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