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雑誌目次

雑誌文献

medicina59巻2号

2022年02月発行

雑誌目次

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

著者: 本村和久

ページ範囲:P.220 - P.221

 「良薬口に苦し」というが,薬と言えば,口に入れる内服薬のイメージが強いと思う.内服薬は,その使用方法が「飲むだけ」であり,味や飲みにくさとか,剤形にしても,カプセルか口腔内崩壊錠かなど想像しやすいと思うが,注射薬や吸入薬,外用薬は意外とイメージしにくいかもしれない.今回の特集は「外用薬・自己注射薬」であり,疾患や診断といったカテゴリーには入らない,薬の剤形に注目した異色の特集になっているのではないだろうか.
 テーマは,「適“剤”適所」で,内服薬以外の薬の適応と使い方である.坐薬や湿布など市販薬としても,一般診療でもよく使用されるものから,自己免疫疾患やアナフィラキシーなど特殊な病態で使うものまで,その対象となる幅は非常に広い.医師は処方箋を渡すが,薬を直接渡すわけではない.患者さんは実際に手にとって薬を使用することになるが,医師と患者さんとで薬に対する認識のギャップもあるかもしれない.また,注射薬管理など看護師や薬剤師が中心となって薬の使い方を指導しているものも多くある.医師が知っているようで,意外と知らないこともあるのではと,気がつくきっかけになればと思う.

特集を読む前に あなたの理解度チェック!

ページ範囲:P.222 - P.226

●今月の特集執筆陣による出題です.外用薬および自己注射薬に関連する理解度をチェックしてみましょう!

吸入薬

気管支喘息での使い分け

著者: 長野宏昭

ページ範囲:P.228 - P.235

Point
◎喘息の症状コントロールは,吸入ステロイド(ICS)が毎日継続して,確実に吸入されていることが重要である.
◎吸入薬を出しているにもかかわらずコントロールが不十分な場合には,アドヒアランスもしくは吸入手技の不良を一度は考える.
◎その人にとって最も適切な「オンリーワン」の吸入デバイスを,家族や薬剤師の力を借りながら一緒に見つけることが重要である.

COPDでの使い分け

著者: 根井雄一郎

ページ範囲:P.236 - P.241

Point
◎慢性閉塞性肺疾患(COPD)の吸入薬には長時間作用性抗ムスカリン薬(LAMA),長時間作用性β2刺激薬(LABA)またはその合剤(LABA/LAMA)を用いる.喘息の合併が疑われる場合は,さらに吸入ステロイド薬(ICS)併用も検討する.
◎吸入薬は内服薬と異なり,吸入方法がデバイスによって異なる.適切なデバイス選択が行われないと,薬剤の効果を十分に発揮しない場合がある.
◎COPDの重症化に伴い,吸入流速が落ちてしまうことで効果的な薬剤吸入が行えない場合がある.
◎吸入流速低下や手指の機能低下がある場合,適切な補助デバイスを用いることで効果的に吸入が行えるようになる場合がある.
◎患者の状況,特にLAMA単剤で治療を受けている患者では短時間作用性β2刺激薬(SABA)を運動や労作前に適切に使用することで,呼吸困難や運動耐容能の改善を図ることが可能になる.

吸入薬Q&A

著者: 前田光平

ページ範囲:P.242 - P.245

Question 1
吸入薬を適正に使用できない患者の割合はどの程度ですか?

注射薬 【生物学的製剤】

気管支喘息での使い分け

著者: 長野宏昭

ページ範囲:P.247 - P.251

Point
◎生物学的製剤は最重症持続型の難治性喘息に適応があり,従来の吸入薬(高用量ICS+LABA±LAMA)を行っても症状が残る症例に使用を検討する.
◎気管支喘息に使用可能な生物学的製剤は4種類あり,作用機序,併存症,通院頻度などで使い分けるようにする.
◎高額な薬剤でもあり,開始時は呼吸器内科に相談,高額医療の申請が望ましい.
◎従来の吸入薬のアドヒアランスや喘息以外の疾患の合併がないかも疑う.

関節リウマチでの使い分け

著者: 中西研輔

ページ範囲:P.252 - P.256

Point
◎関節リウマチ治療では,どの生物学的製剤(bDMARDs)を選択するかよりも,治療目標達成を目指して定期的に治療を見直すことが重要である.
◎bDMARDsの選択は,患者と医師の協働的意思決定に基づいて行うべきである.
◎bDMARDs治療は,患者個人および医療経済的費用負担が大きいことを考慮する.

炎症性腸疾患での使い分け

著者: 座喜味盛哉

ページ範囲:P.258 - P.263

Point
◎炎症性腸疾患(IBD)はさまざまな病態を有し,主として腸管を傷害する疾患であり,患者数は年々増加傾向にある.
◎IBD治療ではステロイドや免疫抑制薬など,宿主の免疫を抑制することが治療の中心と考えられてきた.
◎近年,サイトカインを標的とする生物学的製剤による治療が広く使用されつつある.
◎生物学的製剤にはさまざまな種類があり,投与経路,投与時間,通院頻度など患者背景を勘案して決定する.

アトピー性皮膚炎での使いどころ

著者: 常深祐一郎

ページ範囲:P.264 - P.267

Point
◎インターロイキン(IL)-4およびIL-13を中心として引き起こされる2型炎症は,アトピー性皮膚炎の病態で主要な役割を果たしている.
◎デュピルマブはIL-4受容体およびIL-13受容体を構成しているIL-4受容体アルファサブユニット(IL-4Rα)に結合し,IL-4およびIL-13を介したシグナル伝達を阻害する.
◎デュピルマブはアトピー性皮膚炎の皮疹や瘙痒を著明に改善し,QOLを向上させる.
◎デュピルマブは『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021』において,外用療法での寛解導入・維持が困難な中等症〜重症のアトピー性皮膚炎に対する寛解導入・維持療法として推奨度1(強い推奨)となっている.

【糖尿病治療薬】

インスリン製剤の使い分け

著者: 利根淳仁

ページ範囲:P.268 - P.273

Point
◎生理的なインスリン分泌は,「追加分泌」と「基礎分泌」に分けられる.
◎種々のインスリンアナログ製剤の登場で,生活スタイルに合った柔軟な使い分けが可能になった.
◎各インスリン製剤の特性を把握し,適切なインスリン製剤を選択することが大切である.

GLP-1受容体作動薬の使いどころと使い分け

著者: 大西由希子

ページ範囲:P.276 - P.279

Point
◎GLP-1受容体作動薬は,低血糖をきたさずに血糖コントロールを改善する2型糖尿病治療の注射製剤である.
◎食欲抑制効果もあるので,肥満の2型糖尿病患者にはインスリン治療より先に検討する価値がある.
◎食欲抑制効果の少ないGLP-1受容体作動薬は高齢サルコペニアの2型糖尿病患者に適する.

糖尿病治療薬Q&A

著者: 西村博之

ページ範囲:P.280 - P.283

Question 1
高齢者にインスリン製剤の使用方法をうまく伝えるコツはありますか?

【その他の注射薬】

骨粗鬆症での使い分け

著者: 池間正英

ページ範囲:P.284 - P.288

Point
◎骨粗鬆症治療薬には骨吸収抑制薬と骨形成促進薬があり,病態や重症度に応じた使い分けが必要である.
◎骨形成促進薬の適応は,主に骨折の危険性の高い骨粗鬆症である.
◎骨粗鬆症治療薬の一部では,治療中断により骨密度の急激な低下を認めることがあり,注意が必要である.

アドレナリン自己注射薬の使いどころ

著者: 本村和久

ページ範囲:P.289 - P.293

Point
◎アナフィラキシーに対するアドレナリン自己注射薬(エピペン®)の適応は「アナフィラキシーを疑う全身・呼吸器・消化器症状が1つでもあれば」である.
◎エピペン® の使用にあたっては,救命処置における自動体外式除細動器(AED)と同様に“救急車を呼んでから”注射する.
◎新型コロナウイルスワクチンは100万回接種あたり1.5〜4件のアナフィラキシーが報告されており,接種会場においてはエピペン® の用意が重要である.

片頭痛・群発頭痛での使いどころ

著者: 本村和久

ページ範囲:P.294 - P.298

Point
◎急性期治療では経口薬が使えない場合の選択肢として,スマトリプタンの皮下注もしくは点鼻液が有効である.
◎群発頭痛では,治療薬の第一選択としてスマトリプタン皮下注を考慮する.
◎新しい注射薬(予防薬)であるガルカネズマブ,フレマネズマブ,エレヌマブは効果が高いが高価でもある.

注射薬Q&A

著者: 井上岳

ページ範囲:P.300 - P.303

Question 1
自己注射療法を導入する際,何に気をつければよいですか?

塗布薬 【ステロイド薬】

接触皮膚炎での使い分け

著者: 古結英樹

ページ範囲:P.304 - P.307

Point
◎接触皮膚炎,いわゆる“かぶれ”の治療はステロイドの外用が主体である.
◎症状に応じた適切な外用薬(ランク,剤形)を選択する.
◎ステロイドの副作用も含めて,変更するタイミングを計る.

アトピー性皮膚炎での使い分け

著者: 古結英樹

ページ範囲:P.308 - P.311

Point
◎アトピー性皮膚炎の治療は,ステロイドの外用および保湿剤の適切な使用が主体である.
◎皮疹のこまめな観察とスキンケアの指導も欠かせない.
◎副作用および合併症を早期に診断できるよう努める.

ステロイド外用薬Q&A

著者: 鶴田雄一郎

ページ範囲:P.313 - P.316

Question 1
ステロイド外用薬は副腎不全のリスクがあるって本当ですか?

【抗菌薬】

外用抗菌薬の使いどころと使い分け

著者: 谷口智宏

ページ範囲:P.318 - P.321

Point
◎内科外来において,外用抗菌薬の使いどころはほとんどない.
◎外用抗ウイルス薬の使いどころもほとんどない.
◎外用抗真菌薬は白癬症に対して有効だが,使い分けはほとんどない.

塗布薬Q&A

著者: 鶴田雄一郎

ページ範囲:P.322 - P.325

Question 1
塗布薬には軟膏,クリーム,ローションなどさまざまな剤形があります.どのように選べばよいですか?

貼付薬

変形性関節症での使い分け

著者: 普天間朝拓

ページ範囲:P.327 - P.331

Point
◎整形外科に限らず,患者から鎮痛貼付薬(主に湿布薬)の処方を希望される場面は少なくない.貼付薬の種類による患者満足度に大きな違いはないと思われるが,使用方法や合併症によって,患者満足度は大きく変わってくる.
◎変形性関節症に対する貼付薬の使用は,決して治療の中心になるものではないが,その簡便さ,副作用の少なさといった点で患者からの評価は好意的である.
◎特に変形性膝関節症において非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)貼付薬はベネフィットが大きく,膝以外の変形性関節症についてはエビデンスが低いものの,内服に比べて消化器障害のリスクが低く,総じて安全と評価されている.

慢性疼痛(がん性・非がん性)での使い分け

著者: 安座間由美子

ページ範囲:P.332 - P.335

Point
◎本邦で慢性疼痛に使用可能な貼付薬には,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)とブプレノルフィン,フェンタニルがある.
◎いずれの貼付薬も侵害受容性疼痛には良い適応であるが,慢性一次性疼痛での使用は推奨されていない.
◎慢性疼痛の種類によって保険適用が限られる薬剤もあるため,使用する症例を適切に選択する必要がある.
◎慢性疼痛の診療にあたっては,痛みをなくすことに執着せず,患者とともにQOLを重視した治療目標を設定する.
◎非がん性慢性疼痛にオピオイドを使用する場合は,乱用や依存に注意が必要であり,専門家による治療が望ましい.

貼付薬Q&A

著者: 大井一弥

ページ範囲:P.336 - P.338

Question 1
テープ剤とパップ剤はどう違うのですか? どのように使い分ければよいですか?

点眼薬

結膜炎(細菌性・アレルギー性)での使い分け

著者: 若原直人

ページ範囲:P.340 - P.345

Point
◎充血と眼脂が主体なら細菌性(もしくはウイルス性)結膜炎,瘙痒が主体ならアレルギー性結膜炎の可能性が高い.
◎“細菌性結膜炎”の多くは実際にはウイルス性である可能性が高く,頻用される抗菌点眼薬の効果は限定的と考えられる.漫然とした処方は避けるべきである.
◎アレルギー性結膜炎の第一選択薬は抗アレルギー点眼薬であり,各種抗アレルギー薬の間に効能の差はそれほどない.改善しなければステロイド点眼薬を用いる.
◎ステロイド点眼薬を処方するうえで,眼圧が上昇する可能性があることと,角膜感染症を誘発することを知っておく.

緑内障での使い分け

著者: 若原直人

ページ範囲:P.347 - P.351

Point
◎緑内障と急性緑内障発作は,異なる疾患と考えたほうがわかりやすい.
◎40歳以上の20人に1人は緑内障であるが,その8割は正常眼圧であることから,スクリーニングには眼圧検査ではなく視神経乳頭陥凹拡大の有無をチェックする.
◎緑内障の第一選択薬はプロスタグランジン関連薬もしくはβ遮断薬であり,眼圧が下がらなければそれらも含めた各種点眼薬を併用する.
◎急性緑内障発作では縮瞳させるためにピロカルピンの点眼を頻回に行う.
◎抗コリン薬の使用を制限すべきなのは閉塞隅角の場合であり,緑内障患者の多くは使用しても問題ない.

点眼薬Q&A

著者: 石岡みさき

ページ範囲:P.352 - P.354

Question 1
点眼液は自宅でどう保管するよう指導すればよいでしょうか?

点鼻薬

アレルギー性鼻炎での使い分け

著者: 須藤敏

ページ範囲:P.355 - P.360

Point
◎アレルギー性鼻炎は通年性アレルギー性鼻炎(主にダニによる)と花粉症に分けられ,くしゃみ,水様性鼻漏,鼻閉の3つが主徴である.
◎アレルギー性鼻炎に効果がある点鼻薬として,鼻噴霧用ステロイド薬と点鼻用血管収縮薬が挙げられる.
◎鼻噴霧用ステロイド薬には性状が液体状と粉末状のタイプがあり,アレルギー性鼻炎の3主徴のいずれに対しても治療効果は高く,全身への副作用は少ない.
◎点鼻用血管収縮薬は鼻閉にのみ有効である.長期間使用すると薬物性鼻炎の原因となるので,使用期間を2週間程度に限定する.

点鼻薬Q&A

著者: 須藤敏

ページ範囲:P.361 - P.364

Question 1
点鼻薬の使い方はどのように指導すればよいですか?

坐薬

解熱・鎮痛・制吐での使い方

著者: 比嘉哲史

ページ範囲:P.365 - P.368

Point
◎坐薬は,「内服が困難でも投与できる」「侵襲的処置が不要」「食事による影響を受けにくい」ということに加えて,薬物動態においては「直腸から吸収される」「肝での初回通過効果を回避できる」という特徴がある.
◎肝初回通過効果の回避により生体内利用率が高まると最高血中濃度(Cmax)に影響するが,最高血中濃度到達時間(Tmax)への影響は小さいため,坐薬は即効性があるわけではない.
◎アセトアミノフェンは坐薬よりも経口薬のほうがTmaxが早い.
◎ジクロフェナクナトリウムは経口薬よりも坐薬のほうがTmaxが早い.坐薬は内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)後の膵炎予防目的に使用する.
◎ドンペリドンは坐薬よりも経口薬のほうがTmaxが早い.錐体外路症状への影響が小さいことから小児で使用しやすいが,妊婦では使用が禁忌である.

便秘での使い方

著者: 比嘉哲史

ページ範囲:P.369 - P.370

Point
◎坐薬の便秘薬は,排便困難型の便秘に対してレスキューとして使用する.
◎ビサコジルは作用発現60分以内の即効性のある刺激性下剤である.
◎炭酸水素ナトリウム・無水リン酸二水素ナトリウム配合剤は,直腸の伸展刺激を利用した,より生理的な便秘薬である.
◎坐薬の便秘薬が慢性的に必要な際は,他に介入を要する疾患が隠れていないか注意する.

坐薬Q&A

著者: 比嘉哲史

ページ範囲:P.371 - P.372

Question 1
挿入直後に,坐薬が形を残したまま出てきてしまいました.再挿入してもよいですか?

連載 読んだら,ちょいあて! POCUSのススメ・11

CV穿刺するならエコーを最大限活用しよう!

著者: 鈴木昭広

ページ範囲:P.209 - P.214

 「ありゃー! なんでそっち行っちゃうかな……」.あなたが病棟でパソコンに向かっていると,後ろから後輩のぼやきが聞こえてきました.「どうしたの?」と尋ねると,撮ったばかりの胸部X線写真を指さしながら「やっとの思いで入れたCV(central venous)ラインが,変な方向に行っちゃって……」.今回は,CV穿刺の際に,エコーを最大限活用する方法について紹介します.
 
*本論文中、関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年1月31日まで公開)。

ここが知りたい! 欲張り神経病巣診断・11

脳出血(小脳出血)②体幹の失調/脳出血の手術適応は?

著者: 難波雄亮

ページ範囲:P.373 - P.378

 前回は小脳半球の症状について学びました.小脳の症状はまだ不明な点が多いです.典型的な症状というものが病巣部位と一致しないこともあります.前回は手足の測定障害をメインに解説しましたが,今回は体のバランスがとりづらい症例について検討してみましょう.体幹のバランスについては注意深く問診・診察しないと見抜けないことが多いです.それでは一緒に勉強していきましょう!

治らない咳,どう診る・どう処方する?・2

初診での咳嗽の診かた

著者: 中島啓

ページ範囲:P.379 - P.385

ポイント
・咳嗽は,急性咳嗽(発症から8週間),遷延性咳嗽(発症から3週間〜8週間),慢性咳嗽(発症から8週間以降)に分類する.
・急性咳嗽では,まずCOVID-19の可能性を考える.嗅覚・味覚障害などCOVID-19特有の症状,COVID-19患者などへの曝露歴,リスクの高い行動歴,診療の場が流行地域である場合などが,COVID-19を疑うサインとなる.
・遷延性咳嗽・慢性咳嗽は,胸部X線で異常を認めるか否かで鑑別診断を考えていく.

続・ケースレポートを書こう! “論文の軸の設定”トレーニング・2

アシクロビル脳症の70歳男性〜ある疾患の新規な症状・所見・経過〜

著者: 見坂恒明

ページ範囲:P.386 - P.389

 今回は,ケースレポートにできる症例(①ある疾患の新規な症状・所見・経過,②ある薬剤の新規な副作用・薬剤相互作用,③2つの疾患間に予想外の関連性,④ある疾患の新規な診断方法,⑤ある疾患の新規な治療方法,予想外の治療効果,⑥稀もしくは新規の病気・病原体)のうち,①に該当する症例を提示する.なお,①〜⑥のうち,筆者自身が最も論文化しているのが①であり,“論文の軸の設定”において,特に重箱の隅をつつく新規性を見出すことで,最も論文化しやすいタイプの症例である.
 では,次の症例提示1)を読んで,第1新規性,第2新規性(または臨床的有用性)について考えてみよう.

主治医の介入でこれだけ変わる! 内科疾患のリハビリテーション・6 疾患別リハビリ・運動療法の実際

心不全

著者: 上月正博

ページ範囲:P.390 - P.396

 心不全は何らかの心臓機能障害,すなわち,心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果,呼吸困難や倦怠感,浮腫が出現し,それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群である1).今回は心不全のリハビリテーション(以下,リハビリ)について解説する.

目でみるトレーニング

問題1009・1010・1011

著者: 福山一 ,   平岡淳 ,   大久保佳昭

ページ範囲:P.397 - P.402

書評

—清田 雅智・的野 多加志 監訳—2週間で学ぶ臨床感染症

著者: 和足孝之

ページ範囲:P.275 - P.275

 何を隠そう僕は翻訳本が好きではない.なぜかと言うと,1つは受験英語の弊害で多くの翻訳本は直訳が多く,原著者は一体何を伝えたいのか,ロジックが逆に分かりづらくなることが多いからだ.また,色々な訳者が自由に翻訳してしまうことでさらに統一感がなくなる.
 しかし,この本は全般的な文章のわかりやすさでは群を抜いており,まったく問題がなかった.おそらく引用文献と原文と訳者の日本語とのすり合わせという緻密な作業をまったく厭わなかったであろう清田雅智先生と的野多加志先生達のプライドが練り上げた成果であるのは間違いない.相当な苦労があったとお見受けする.

—三潴 忠道 著—はじめての漢方診療 十五話 第2版[WEB動画付]/—三潴 忠道 著—はじめての漢方診療ノート 第2版

著者: 貝沼茂三郎

ページ範囲:P.317 - P.317

 私が三潴忠道先生から『はじめての漢方診療 十五話』に書かれている内容について直接講義を受けたのは25年前のことである.当時の資料は現在の『はじめての漢方診療ノート』に掲載されている図表の一部が印刷されたものであり,三潴先生の診療が終わってから連夜直接講義を受けたことを今でも懐かしく覚えている.そして現在,私が漢方に傾倒するための基礎をしっかりと築くことができたのはこの連日の講義のおかげである.そのため,その時の講義内容が『はじめての漢方診療 十五話』という形で書籍になってから私は自身が行う勉強会のテキストとして本書を使用し,自分一人で読んだ回数も含めると相当な回数,この書籍にはお世話になってきた.そこで今回,どのように改訂されたのかわくわくしながら第2版を拝読した.
 通読してみてまず感じたことは初版では文面になく,勉強会で三潴先生から教えていただいたことが第2版では随所によりわかりやすく解説として加筆されていた.さらにA5判からB5判への変更,小見出し,キーワード,まとめがつくなどのレイアウトの変更もあり,解説者がいなくても独学で内容をより深く理解できるようになったと感じる.また三潴先生は漢方を広めるために西洋医学的な診断ならびに客観的な評価を重視しているが,その点が第2版でも反映されている.具体的には時代の流れに合わせて,また各専門領域の医師が見ても漢方薬の有用性を客観的に評価することができるよう,症例をいくつか差し替えている.この改訂もまたこれから漢方を学ぶものにとってはその理解を深めるために重要なことであると考える.

—福原 俊一,福間 真悟,紙谷 司 著—臨床研究21の勘違い

著者: 菊地臣一

ページ範囲:P.346 - P.346

 昔日,己の臨床研究デザインの拙さをイヤと言うほど突き付けられたことがありました.臨床研究デザインの基本を学ばなければ世界で闘うことはできないと思うきっかけになった,恥ずかしい,そして悔しい痛切な経験でした.この本を手にしたとき,わが国の臨床研究の水準もここまできたのかと,万感胸に迫るものがあります.今の私には,わが国における臨床研究の現状がどのくらいかわかりません.したがって,以下に記すことが見当違いであれば見逃してください.
 病院に勤務しながら独りで臨床研究をしていた頃の話です.当時,回帰曲線の作成をコンパス,糸,そして手計算でやっていました.自ら理解して実践しないと論文作成は不可能でした.今は,キーボードに触れるだけで,一瞬でできてしまいます.

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目次

ページ範囲:P.216 - P.218

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奥付

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基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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