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雑誌目次

雑誌文献

medicina59巻6号

2022年05月発行

雑誌目次

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

著者: 竹村洋典

ページ範囲:P.790 - P.791

 医師はすべからく,医学部・医科大学において,定められた医学教育を受けている.しかし,そこで学んだ知識や技能だけでは実際の臨床現場で太刀打ちできないことも多く,卒業後に臨床現場でオンザジョブにて習得するものも多いと思われる.しかし,それらは医療施設が立地する地域によって,またはその時代によって違いがあるかもしれない.また時にはあまりに個別的・独善的なものになりかねない.かといって,それらをまとめて記述した書籍はなかなか見つからない.実際,書きにくいことも多々あるだろう.
 私がこれまで直面してきたそれらの疑問に答えてくれる内容をぜひとも読んでみたい,知ってみたい,そうした希望,知的好奇心からこの特集を組ませていただいた.臨床上,頻繁に遭遇する,しかも従来の医学教育で取り上げられていない内容を厳選に厳選を重ねてピックアップした.第1章「ジェネラリストはここまで診よう!」では,いわゆる内科の範疇を超越して,ジェネラリストとして診ざるをえない,また診るべき他科の診療方法を述べてもらっている.その分野の専門医ではなくジェネラリストだからこそ行うべき,ジェネラリストでも行える内容・コツが満載されている.第2章「いろいろあります日常診療」では,日常診療でしばしば遭遇する悩ましい問題に対して,ジェネラリストならばすべき対処法を網羅的に解説している.「なるほど!」と膝を叩きたくなるような内容ばかりである.そして第3章「知りたい! 仕事とキャリアの話」では,さまざまなジェネラリストのキャリアをご解説いただいた.幅のあるジェネラリストへのすべての入口・キャリアパスが記載されている.きっと,あなたの未来が開けて見えるのではないかと思う.さらにコラムでは,その大所高所からの視点に,何度読んでも味が染み出る.

特集を読む前に あなたの理解度チェック!

ページ範囲:P.792 - P.796

●今月の特集執筆陣による出題です.ジェネラリストが知っておくべきことに関する理解度をチェックしてみましょう!

ジェネラリストはここまで診よう!

身体疾患と精神疾患を同時に診るときに気をつけることは?

著者: 竹村洋典

ページ範囲:P.798 - P.801

Point
◎身体疾患も診療するジェネラリストの精神疾患の診療は,精神科医のアプローチと異なる.協働するにあたっては,治療構造の枠組みを意識する.
◎疲労感などの不定愁訴の鑑別には身体疾患と同時に「うつ病」を入れる.
◎患者の不安症状にはきちんと対応し,治療に当たっては副作用に気を付ける.
◎患者の心の状態は身体疾患の表現に影響を与える.
◎精神疾患の診療にはジェネラリストと精神科医との顔の見える関係構築や,多職種とのタスクシェア・タスクシフトが必要である.

小児を診るときに気をつけることは?

著者: 堀越健

ページ範囲:P.802 - P.805

Point
◎小児診療は非常に幅広いが,その大半は急性期症状に対する診断と治療である.
◎月齢・年齢ごとの特徴と鑑別を把握すること,診察のコツを習得することが重要である.
◎保護者との丁寧なコミュニケーションは小児診療には欠かせないスキルである.

女性を診るときに気をつけることは?

著者: 伊達岡要

ページ範囲:P.806 - P.810

Point
◎女性を診るときは,まずライフステージを把握する.
◎産婦人科専用器具や設備がなくとも代替手段は存在する.
◎月経にまつわる女性の機会損失に目を向けてみよう.

プライマリ・ケアで必要な小外科手技とは?

著者: 堀端謙

ページ範囲:P.812 - P.817

Point
◎診療所や小病院で遭遇する可能性の高い小外科疾患は,表在性損傷である.
◎創傷処置の手順をよく知れば,内科医でも対処可能である.
◎縫合以外にも創閉鎖の方法がある.
◎破傷風予防と予防的抗菌薬投与に関して知っておく.

医師が留意すべき歯科の問題とは?

著者: 樺沢勇司 ,   伊藤奏

ページ範囲:P.819 - P.824

Point
◎う蝕は世界で最も高い有病率であり,依然として問題視されている.
◎歯科疾患による経済への影響は大きく,日本では悪性新生物の次に国民医療費が多い.
◎う蝕による口腔の健康格差が日本を含む世界中でみられており,格差是正の必要性が指摘されている.
◎歯磨きだけではう蝕予防効果はなく,フッ化物を使用することが必須である.

困ったときに漢方薬を使いたくなるけど,何を処方すればいいの?

著者: 田中博幸

ページ範囲:P.825 - P.830

Point
◎かぜの漢方治療は,体質や発病後の時期によって薬を使い分けるため,きめ細かく治療効果が高い.
◎慢性胃腸症状には六君子湯(りっくんしとう)と大建中湯(だいけんちゅうとう),疲労倦怠感には補中益気湯(ほちゅうえっきとう)を用いる.
◎漢方特有の概念である腎虚と水毒を解説し,それぞれの代表処方の八味地黄丸(はちみじおうがん)と五苓散(ごれいさん)を紹介した.
◎焦燥,抑うつの代表処方の抑肝散(よくかんさん)や加味逍遙散(かみしょうようさん)により,ベンゾジアゼピン系薬の減量や中止が可能となる場合がある.

高齢者の栄養で留意すべきことは?

著者: 奥村圭子

ページ範囲:P.831 - P.834

Point
◎高齢者は加齢に伴い,食欲や食事量の低下から意図しない体重減少が起きやすい.
◎高齢者のライフスタイルに応じた栄養介入は効果的である.
◎管理栄養士を直接雇用しなくとも,必要に応じて外部と連携し栄養介入する方法がある.

運動やリハビリは重要だけど,どう処方すればいいの?

著者: 若林秀隆

ページ範囲:P.835 - P.839

Point
◎リハビリテーション(以下,リハ)処方の要諦は,①リハの必要性を判断できる,②リハ処方箋でリハをオーダーできる,の2点である.
◎リハの必要性を判断するには,国際生活機能分類(ICF)で生活機能を評価することが有用である.
◎診察時に手段的日常生活活動(IADL),高度日常生活活動(AADL)およびICFの「参加」の変化を確認すると,リハの必要性の見落としが少ない.
◎リハの必要性に迷うときは,躊躇せずリハをオーダーすべきである.
◎不十分なリハ処方箋でも,リハをオーダーしないよりは望ましい.

患者が人生の最期を迎えるとき,医師がすべきこと,できることは?

著者: 木澤義之

ページ範囲:P.841 - P.844

Point
◎すべての重い病をもつ患者に対して,そのニーズに応じて緩和ケアを行うことはジェネラリストを含むすべての医療従事者の責務である.
◎緩和ケアの重要な要素の1つとして,goals of care discussion(治療とケアの目標の話し合い)がある.その機会はすべての重い病をもつ患者とその家族に提供されるべきである.
◎goals of care discussionでは,①病状の理解を確認すること,②どれくらい今後の病気の予後や見通しを知りたいかを確認すること,③患者の価値観(大切にしていたいこと,支えとなるもの)を把握すること,④希望する医療・ケアとその理由を把握すること,の4点が重要であり,「Hope for the best, Prepare for the worst」を合言葉に患者(と家族)の希望を支えながら進めることが重要である.
◎家族を巻き込むこと,あらかじめ意見の強いメンバーがいるときには,その人をのけ者にするのではなく,家族面談などを積極的に行うこと.

いろいろあります日常診療

患者と医師との齟齬はどうやって埋めたらいいの?

著者: 北村大

ページ範囲:P.848 - P.852

Point
◎患者の健康観や疾患(disease)を罹患した経験(illness)への理解が,齟齬の解消に繋がることがある.
◎診察医だけで齟齬が埋まらないときは,他の医師の視点,コメディカルからの情報収集など協力を得る.
◎他のスタッフからの協力をもってしても齟齬が埋まらないときは,無理せず他医に担当を代わる選択肢も考慮する.

患者の家族がもめていたら,どう対処すればいいの?

著者: 川口満理奈 ,   松下明

ページ範囲:P.853 - P.858

Point
◎家族図を描き,現在起きていることを想像する力を養う.
◎ライフサイクルの発達課題を参考に,患者の苦悩を理解する.
◎コロナ禍における家族へのアプローチには,現場での家族面談以外の手段として,電話でのコミュニケーションやオンライン面談も選択肢となる.

認知症患者に胃瘻をつくっていいの?

著者: 赤石雄

ページ範囲:P.860 - P.863

Point
◎認知症患者が嚥下障害をきたす割合は13〜57%とされているが,認知症の原因によって嚥下障害の機序に違いがある.
◎発表されているシステマティックレビューでは,進行した認知症患者において経管栄養(胃瘻含む)は,生存期間の延長,栄養状態の改善,褥瘡の予防に有益性を示せていない.
◎shared decision makingの活用が,胃瘻造設に関する医療者と患者家族の議論の質向上に寄与する可能性がある.

他院や他科からの依頼で困ったとき,どう対処すればいいの?

著者: 上原孝紀

ページ範囲:P.864 - P.867

Point
◎患者に逆転移を抱いたときは特に,思考の早期閉鎖に留意する.
◎身体症状症の患者は,潜在意識で治りたくない思考・行動(ノセボ効果やドクターショッピング)および慢性・横ばいの経過が特徴である.
◎治りたくない行動を取る精神疾患の除外が,診断困難例の推論では必須である.
◎診断力向上には,複数での振り返り,共有の反復が有用である.

同僚から訴えられたら,どう対処すればいいの?

著者: 大磯義一郎

ページ範囲:P.868 - P.872

Point
◎セクハラ,パワハラを指摘された行為者は,まず自身の行為が現在の社会通念に照らし,現在の通常人が許容しうる範囲にあるかを確認する.
◎懲戒委員会などにかけられた場合には,まず自身のどの行為が対象事実なのかを特定することが重要である.
◎納得がいかない場合には,専門の弁護士に相談する.
◎稀ではあるが,虚偽診断書など事件の捏造が見受けられる.犯罪なので行わないこと.

最近よく聞く“社会的処方”って何?

著者: 亀井利克

ページ範囲:P.874 - P.879

Point
◎生活課題の複雑化などに伴い,医学的管理のみでは本来的な健康課題の解決につながらない患者が増加している.
◎地域の支援機関を通じて,医療機関が地域住民や専門職,行政などと連携して課題解決に取り組む「社会的処方」が注目されている.
◎社会とのつながりを処方する「リンクワーカー」の役割と人材の育成が課題である.
◎基礎自治体(市町村)において,医療・地域・行政などの連携による社会的処方・地域共生社会に向けた取り組みが始まっている.

医師に必要な予防医療の知識って?

著者: 佐々木隆一郎

ページ範囲:P.881 - P.884

Point
◎寿命の延伸,治療方法の進化などによって,地域では予防可能な疾患のハイリスク者が増加しており,予防医療の積極的実施が必要である.
◎予防医療は,長期間全人的診療を行う「かかりつけ医」の役割である.
◎予防医療は,健診/検診データなども加え,ハイリスク者の早期発見と迅速な対応(診断,治療,紹介)および感染症予防のための対処(予防接種)が必要である.

医師に必要な社会保障制度の知識って?

著者: 松田晋哉

ページ範囲:P.885 - P.887

Point
◎医師が日常的に関わる社会保障制度として,医療保険制度と介護保険制度がある.
◎わが国の医療保険制度は仕事の状況や居住地,年齢によって加入すべき保険者が義務的に決まる(強制加入制度).
◎介護保険制度は居住する市町村あるいはその広域連合が保険者となる.
◎医療と介護とをつなぐツールとして,主治医意見書が重要である.

生活困窮者を診るときに配慮すべきことは?

著者: 小池宙

ページ範囲:P.888 - P.891

Point
◎患者の「常識」を大切にする.
◎医師がさまざまな人に頼る.
◎患者やその家族と伴走する.

外国人を診るときに知っておくべきことは?

著者: 冨田茂 ,   二見茜

ページ範囲:P.893 - P.896

Point
◎多言語問診票やリーフレット,医療通訳サービスなど利用できるリソースを準備し,非英語圏の外国人住民には英語よりも,やさしい日本語で話すことを心がける.
◎国籍や宗教が同じでも文化や習慣は個人によって異なり,画一的対応ではなく患者・家族に必要な配慮を尋ねる必要がある.
◎健康保険,フリーアクセス,お薬手帳,母子手帳など患者の母国にない仕組みがある.
◎外国人住民の多くは健康保険に加入しているが,健康保険の有無にかかわらず医療費のインフォームド・コンセントを心がける.
◎外国人患者はいつ来院するかわからない.平素から準備をしておこう.

災害が起こる前・起こった後に医師ができることは?

著者: 遠矢希 ,   大谷典生 ,   石松伸一

ページ範囲:P.897 - P.901

Point
◎災害医療において,一般内科医の需要は大きい.
◎平時から,治療・投薬の中断が危険な患者や,在宅・訪問診療中の患者リストを作成しておく.
◎患者に災害時の対応を指示しておく.
◎災害時に増加する疾患を理解する.
◎長期的なフォローアップと継続的な関わりが重要となる.

知りたい! 仕事とキャリアの話

多職種とどうタスクシェア・シフトすればいいの?

著者: 春田淳志

ページ範囲:P.904 - P.911

Point
◎医師の働き方改革で,タスクシェア・シフトが開始された.
◎タスクシェア・シフトする業務範囲を明確にするだけでなく,各職種の役割やコンピテンシーを明示することが求められる.
◎医師は多職種連携コンピテンシーを意識しながら,タスクシェア・シフトに従事することが求められる.

開業するときにやっておくべきこと,知っておくべきことは?

著者: 松村真司

ページ範囲:P.913 - P.916

Point
◎どのような形態の開業においても,基本的な診療能力が備わっていることが前提である.
◎開業しようとする地域におけるニーズと周辺のリソースを把握しておく.
◎開業のミッション(理念),ビジョン(目標)を明確にする.
◎遵守すべき法令に関する基礎知識を学ぶ.
◎自身の健康管理の方法を確立するとともに,支援体制を確保しておく.

病院勤務医として働くときに知っておくべきことは?

著者: 保浦修裕 ,   綿貫聡

ページ範囲:P.917 - P.920

Point
◎他部門との交渉には,日頃からの相互理解の精神が必要である.
◎部門間の衝突(コンフリクト)の際に用いるべきマネジメントスキルがある.
◎自施設における時間外労働時間の施設水準を確認する.
◎自身の勤務体系・労働時間を確認し,健康を守り,働き方を見直す.

へき地医療の面白さって?

著者: 山田隆司

ページ範囲:P.921 - P.924

Point
◎へき地では,まずは断らずに,「何でも」「どんな患者でも」「どんなときにでも」快く受け入れる.
◎同僚,患者,地域住民から学ぶ姿勢をもつ.
◎質の高いプライマリ・ケアは,へき地でこそ学ぶことができる.

在宅医療を行うときに知っておくべきことは?—在宅医療に潜むリスクと将来性

著者: 三木誓雄

ページ範囲:P.926 - P.929

Point
◎終末期患者の看取り難民問題は,在宅医療の普及の遅れが主たる原因である.
◎在宅医療の普及を妨げる要因は,職種間の連携の困難さと,在宅医療を支える体制の複雑さである.
◎提供する医療の質を高め,多職種が一体となり,在宅医療を支える体制を構築できれば,在宅医療は新たな第三の医療となりうる.

医師会に入ると,どんないいことがあるの?

著者: 土谷明男

ページ範囲:P.930 - P.933

Point
◎医師会は行政と協働して地域医療を支える.
◎医師会は社会制度と医療とを具体的に結びつける.
◎医師会の活動を通じて,医療についての社会的判断力が涵養される.

学校医になるために知っておくべきことは?

著者: 原朋邦 ,   原拓麿

ページ範囲:P.934 - P.937

Point
◎学校医は,学校保健安全法とその施行規則に定められた公的な職業である.
◎2020年3月,学校における医療的ケアの実施体制の整備に関して,新たな学校医の役割が加わった.
◎近年,疾病構造に大きな変化が起こり,教育問題はすなわち健康問題であることが多く,学校保健での課題がクローズアップされてきている.
◎総合性に富み,問題解決能力の高い医師こそ学校医に適している.
◎公立小中学校の学校医は医師会の推薦で任命されることがほとんどであるが,今後は推薦基準が変わるであろうと推測される.

嘱託産業医になるために知っておくべきことは?

著者: 石橋幸滋

ページ範囲:P.938 - P.941

Point
◎50人以上の従業員がいる事業場は産業医を選任する義務があり,専属産業医と嘱託産業医の2種類がある.
◎産業医になるためには,認定産業医もしくは労働衛生コンサルタントの資格が必要である.
◎産業医の役割は,労働環境や労働条件を改善して病気を予防するだけでなく,労働者自らが生活のなかで健康づくりができるよう指導することである.
◎産業医は,長時間労働者や高ストレス者への面接・指導,心の健康教育などを通して,労働者のメンタルケアを行うことが求められている.

Column

そもそも,なぜ人間にとって医療が必要なのか?

著者: 細谷辰之

ページ範囲:P.845 - P.847

最初の逡巡
 「人間にとって医療が必要である」と断言できる根拠を見出すのは容易ではない.命あるものは例外なく死に至るのであって,「必ず訪れる死を少しばかり先延ばしにしたから何だ」という問いに,誰もが納得できる解を提示できる知力は筆者にはない.しかし,あらゆる生物の営みが,死を免れないのにもかかわらず,生きようとする意思に満たされているように見えることは,死とうまく付き合う方法の一つとして医療が存在する意義は,ありそうだ.また,医療の果たす役割は,死を先延ばしにすることだけにとどまらない.苦痛を緩和し,障害の程度を和らげ,「死」を迎えるまで続く「生」をより快適なものにする「力」が期待できる.「生」とは何か? 「死」とは何か? この問いに戸惑いながら本稿を進めたい.

総合診療医の養成はオールジャパンで臨むべき

著者: 千坂一也

ページ範囲:P.902 - P.903

 今,わが国の医療を取り巻く環境は,過去には経験しえない未曽有の状況にあると言える.特に大きなインパクトを与えている要因は,超高齢化・少子化に起因する急激な人口減少であり,2040年には現在の熊本県の人口にほぼ匹敵する約170万人が亡くなると推計されている.こうした変化は,単に疾病構造の変化や死者数の増加に止まらず,高齢者が死に至るまで繰り返される治療や,「急性期 ↔ 回復期 ↔ 療養期 ↔ 在宅(施設)」間の患者の移動,それに伴う医療費・介護料,さらにマンパワー需要の増大を意味し,これまで以上に医療のサステイナブルが問われている.

連載 ローテクでもここまでできる! おなかのフィジカル診断塾・2

—おなかが痛い その2—前皮神経絞扼症候群—画像検査で異常がみつからない腹痛

著者: 中野弘康

ページ範囲:P.781 - P.785

 腹痛は日常診療で避けて通れない症状の1つです.腹痛の患者さんを診ないでもよいのは,大学病院をはじめとしたごく一部の特殊な環境にいる医師に限られるのではないでしょうか.しかも腹痛患者は内科外来・救急室・病棟などセッティングを問わずやってきます.
 本邦ではCTスキャンという優れた検査機器が潤沢にあるため,腹痛患者を診たらCTへ送るという構図が成立している施設(医師?)が多いのではないでしょうか.聞いた話では,腹痛で受診した患者さんの病歴を聞く前に,CTをオーダーしてしまう医師もいるとのことです.これではいつまで経っても臨床能力は涵養されません.こと腹痛診療においては,基本に忠実に病歴・身体所見をフルに活用することが求められます.
 
*本論文中、関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年4月30日まで公開)。

治らない咳,どう診る・どう処方する?・5

気管支喘息の咳嗽・喀痰

著者: 中島啓

ページ範囲:P.943 - P.949

ポイント
・喘息の咳嗽・喀痰に対する治療の原則は,喘息自体の治療強化である.
・使用中の吸入薬の効果が乏しい場合は,吸入デバイスの変更も選択肢となる.
・喘息治療を強化しても咳嗽・喀痰の改善が乏しい場合は,診断の見直し,吸入手技・アドヒアランス,増悪因子・合併症を評価して,真の重症喘息であるかを見極める.

続・ケースレポートを書こう! “論文の軸の設定”トレーニング・5

メトトレキサート内服中に椎体の溶骨性変化をきたした76歳男性〜ある薬剤の新規な副作用・薬剤相互作用〜

著者: 平田千尋 ,   見坂恒明

ページ範囲:P.950 - P.953

 今回は,ケースレポートにできる症例(①ある疾患の新規な症状・所見・経過,②ある薬剤の新規な副作用・薬剤相互作用,③2つの疾患間に予想外の関連性,④ある疾患の新規な診断方法,⑤ある疾患の新規な治療方法,予想外の治療効果,⑥稀もしくは新規の病気・病原体)のうち,②に該当する症例を提示する.
 次の症例提示1)を読んで,第1新規性,第2新規性(または臨床的有用性)について考えてみよう.

ここが知りたい! 欲張り神経病巣診断・12

脳梗塞①錐体路障害/脳梗塞の病型

著者: 難波雄亮

ページ範囲:P.954 - P.958

 前回までは脳出血について学んできました.大まかな神経回路はこれまで学んできたことを回想していただければ病巣も推定できるはずです.出血が梗塞に変わっても,病巣診断には関係ありません.脳出血は出血部分の浮腫の影響で神経所見が複雑なこともあります.しかし脳梗塞では支配血管に一致して神経症状をきたすため,出血に比較すると神経所見はわかりやすい傾向があります.それでは始めましょう!

目でみるトレーニング

問題1018・1019・1020

著者: 西脇宏樹 ,   岩崎靖 ,   梶原祐策

ページ範囲:P.960 - P.966

主治医の介入でこれだけ変わる! 内科疾患のリハビリテーション・9 疾患別リハビリ・運動療法の実際

慢性閉塞性肺疾患(COPD):息切れを減らす方法

著者: 上月正博

ページ範囲:P.967 - P.973

 慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)は,わが国では70歳以上の6人に1人が罹患する国民病であり,肺機能の低下とともに日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)が低下する.前回はCOPD患者における運動耐容能向上の方法を述べたが,今回は,患者にお勧めできる「息切れを減らして動作が楽に行えるようになる方法」を紹介する.

書評

—竹之内 盛志・萩野 昇 著—ジェネラリストが知りたい—膠原病のホントのところ

著者: 佐田竜一

ページ範囲:P.818 - P.818

 時は2022年である.医学知識はkeywordを拾い上げれば,googleを介して大抵のことを検索できる.もう少し系統だった網羅的知識を得たければ,UpToDate®やDynamed®などの二次文献ツールを使えばよい.最近は多くの日本人医師が,自分の知識を整理したサイトを作ってくれている.さらに,Antaa SlideやMediiなどの双方向性のサイトから,困ったことを専門医に相談できる窓口すらある.
 私はもう医師18年目のロートル医師だが,自身の研修医時代と比べ,医学知識のaccessibilityは格段に上がった,はずである.にもかかわらず,膠原病診療は今なお複雑で,苦手意識をもつ医師が多い.膠原病診療がいまだに難しい理由は明確で,以下3点が挙がる.

—日本神経学会,日本頭痛学会,日本神経治療学会 監修 頭痛の診療ガイドライン作成委員会 編—頭痛の診療ガイドライン2021

著者: 竹内勤

ページ範囲:P.873 - P.873

 頭痛の診療ガイドラインは,2002年に『慢性頭痛治療ガイドライン2002』として初版が発刊されて以来,わが国の頭痛診療の標準化に大きな役割を果たしてきた.今回,2013年の改訂版『慢性頭痛の診療ガイドライン2013』から大幅な改訂がなされ,また,タイトルも『頭痛の診療ガイドライン2021』として関連学会が共同監修したもので,まさに頭痛診療を全て網羅した大作である.これを主導した先生方のご努力は大変なものであったと思うが,そのご功績に盛大なる拍手をお送りしたい.
 今回のガイドラインは,『Minds診療ガイドライン作成の手引き』2014年版に準拠して作成され,一部のクリニカルクエスチョン(CQ)では患者さんやメディカルスタッフが参加するGRADEシステムが導入された.また,二次性頭痛の項目が新たに加えられ,この数年間で飛躍的な進歩を見せた抗CGRP抗体や抗CGRP受容体抗体などによる最新治療までも触れられている.最新の手法を取り入れ,最新のエビデンスに基づいて,頭痛診療の広範な領域を包含し,ていねいなCQによって構成された,素晴らしい診療ガイドラインである.

—辻本 哲郎 著—これで解決! みんなの臨床研究・論文作成

著者: 家研也

ページ範囲:P.892 - P.892

 臨床研究や論文執筆に取り組むうえで,避けて通れない「壁」がある.この壁はさまざまな場面で,姿かたちを変えて繰り返し出没してわれわれの心を折ろうとする.私自身,研究に取り組み始めた当初から,数えきれない壁を経験した.研究テーマ探し,文献検索,研究計画書作成,データ収集,統計解析,論文の書き方,投稿先探し,rejectに心が折れる経験,意地悪な査読の対処,そもそも忙しくて研究が進まない! など,多岐にわたる.思い返すと,それらの場面で壁を乗り越える手助けを常に誰かがしてくれた.それは指導医・メンターに限らず,仲間,後輩,時に書籍であったりもした.このように,初心者が臨床研究を論文化するまでは手取り足取りの指導が必要な場面だらけである.
 本書は臨床医でありながら50編近くの原著論文を筆頭著者として世に送り出し,さらに多くの後輩の研究を指導してきた辻本哲郎先生による,気持ちがいいまでの「実践の書」である.臨床研究デザインや統計解析,論文作成に関する本は多数存在するが,本書の特徴を端的に表すと「身近で面倒見のよい先輩」である.研究初心者がつまずく壁1つひとつについて,具体的にステップを示してくれる.特にコラムが秀逸で,臨床研究の現場のリアルがそこにある.臨床現場の一隅で隙間時間に取り組む研究の場で,面倒見のよい先輩が失敗談やコツを共有し,曖昧だった概念の理解を助け,次に何をしたらよいか具体的に示してくれる,そんな頼れる先輩を常に座右に置いておけるような一冊である.

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目次

ページ範囲:P.786 - P.788

読者アンケート

ページ範囲:P.975 - P.975

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.976 - P.977

購読申し込み書

ページ範囲:P.978 - P.978

次号予告

ページ範囲:P.979 - P.979

奥付

ページ範囲:P.980 - P.980

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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60巻13号(2023年12月発行)

特集 一般医家のための—DOAC時代の心房細動診療

60巻12号(2023年11月発行)

特集 内科医が遭遇する皮膚疾患フロントライン—「皮疹」は現場で起きている!

60巻11号(2023年10月発行)

増大号特集 患者さんの質問にどう答えますか?—言葉の意味を読み解きハートに響く返答集

60巻10号(2023年9月発行)

特集 ミミッカー症例からいかに学ぶか

60巻9号(2023年8月発行)

特集 症例から読み解く—高齢者診療ステップアップ

60巻8号(2023年7月発行)

特集 浮腫と脱水—Q&Aで学ぶジェネラリストのための体液量異常診療

60巻7号(2023年6月発行)

特集 整形外科プライマリ・ケア—内科医が知りたい整形外科疾患のすべて

60巻6号(2023年5月発行)

特集 Common diseaseの処方箋ファイル—臨床経過から学ぶ20症例

60巻5号(2023年4月発行)

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59巻13号(2022年12月発行)

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特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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