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雑誌目次

雑誌文献

medicina59巻8号

2022年07月発行

雑誌目次

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

著者: 鋪野紀好

ページ範囲:P.1198 - P.1199

 私がシニアレジデントだった頃の話である.初期臨床研修を無事に終えて,当時は,基本領域はおろか,専門研修制度すら存在しなかった「総合診療」の道に進むことを選択した.自分はもともと臨床推論が好きで,それは今思い返せば,幼い頃に学校の図書室で読み漁ったシャーロック・ホームズの影響なのかもしれない.臨床推論を駆使して,患者の診断に迫ることに強い魅力を感じて,自分には総合診療しかないと思った.
 母校のシニアレジデントになって最初の衝撃は,「シニアレジデントは単独で検査のオーダーを出してはならない」という掟だった.臨床研修までは,病棟管理のための採血や画像のオーダーを行い,それをもとに指導医にコンサルテーションして,診療を進めることに慣れていた自分は唖然とした.勘のよい読者なら,この時点で私が言わんとしていることに気付いているかもしれない.この「鉄の掟」の裏にはあるメッセージが隠されていたのだ.検査をオーダーするにしても,その結果が病歴聴取や身体診察から得られた臨床情報をどれだけ変えるのか,あるいはどんな疾患を想起してそれに対して検査計画を組むのか,そこのロジックを明確にしなければ,どんな検査を行っても正しい診断に行き着けるほど甘くはなく,場合によっては大きなエラーを引き起こす可能性すらあるからだ.検査の前までにどこまで考えられるか,私はこのシニアレジデントの期間に大いに学ぶことができ,それが今自分自身の臨床推論能力につながっているのは間違いない.その指導体制や文化を築いてくださった本学の生坂政臣教授には日々恩義を感じ,それを自分が多くの学生,研修医,専攻医などに換言していかなければならないと強く思う毎日である.

特集を読む前に あなたの理解度チェック!

ページ範囲:P.1200 - P.1204

●今月の特集執筆陣による出題です.臨床検査に関する理解度をチェックしてみましょう!

座談会

臨床検査でのエラーを回避するために

著者: 鋪野紀好 ,   佐田竜一 ,   三澤美和

ページ範囲:P.1206 - P.1213

臨床教育でも卓越した実績を残されている佐田先生,三澤先生に,①臨床現場で検査エラーを回避するために普段留意されていること,②教育的な観点から,普段,学生や研修医を指導されているうえでの工夫,③検査の選択時に留意されていること,の3点についてお話を伺いたいと思います.(鋪野)

総論

臨床検査における診断エラー

著者: 鋪野紀好

ページ範囲:P.1214 - P.1217

診断プロセスにおける診断エラーの影響
 診断プロセスは大きく分けて,情報収集,情報統合・解釈,確定診断の一連の循環から形成されている(図1)1).この診断プロセスに基づき,医師は患者と診断に関する対話を行い,治療を行う.それがアウトカムとして正確かつタイムリーな診断となる場合もあれば,残念ながら診断エラーとなってしまうこともある.この診断エラーは患者のアウトカムや医療システムのアウトカムへ負の影響を及ぼしてしまう.
 米国の調査では一般外来の成人受診患者の約5%が診断エラーを経験していると報告されている2).年間の患者数に算出すると,約1,200万人が診断エラーを受けたことになり,診断エラーは決して「他人事」ではない.さらに本邦における医療訴訟のうち,診断エラーに関連した訴訟は約30%を占めており3),医療全体に大きな負のアウトカムを及ぼしていることがわかる.

各論 <尿検査>

Case 1.尿潜血陽性だから尿管結石?

著者: 坂本壮

ページ範囲:P.1218 - P.1221

症例
62歳男性
主 訴 右側腹部痛

Case 2.尿路感染症の鑑別は容易?

著者: 菅野耀介 ,   本郷舞依

ページ範囲:P.1222 - P.1225

症例
20代女性
主 訴 発熱

Case 3.尿中薬物スクリーニング検査陽性だけど本当に薬物中毒?

著者: 名和宏樹 ,   日下伸明

ページ範囲:P.1226 - P.1230

症例
50代女性
主 訴 発熱,意識障害

<血液・凝固・線溶系検査>

Case 4.HbA1c正常だけど糖尿病?

著者: 鋪野紀好

ページ範囲:P.1232 - P.1234

症例
40代女性
主 訴 血糖値高値

Case 5.D-ダイマー正常の大動脈解離?

著者: 原田拓

ページ範囲:P.1236 - P.1239

症例
50代男性
主 訴 胸痛

<生化学検査>

Case 6.TP上昇しているけど圧迫骨折?

著者: 友田義崇

ページ範囲:P.1240 - P.1242

症例
70代男性
主 訴 腰痛

Case 7.LDHだけ高いけど…

著者: 吉村文孝 ,   國友耕太郎 ,   志水太郎

ページ範囲:P.1244 - P.1246

症例
33歳男性
現病歴 職場検診を受けた際に,血液検査でLDHの上昇を指摘された.再検査を指示され,当院を受診した.

Case 8.低ALP血症は無視して大丈夫?

著者: 横田雄也

ページ範囲:P.1248 - P.1251

症例
80代女性
主 訴 口角びらん,口内炎

Case 9.複数の検査値異常の裏に潜む病態は?

著者: 田宗秀隆

ページ範囲:P.1252 - P.1254

症例
52歳男性
主 訴 アルコール離脱せん妄治療中の不穏

Case 10.心筋トロポニン陽性だけど心筋梗塞ではない?

著者: 小野亮平

ページ範囲:P.1256 - P.1260

症例
70代男性
主 訴 胸部圧迫感,呼吸困難

Case 11.高齢者のCRP高値は感染症一択?

著者: 高瀬義祥

ページ範囲:P.1262 - P.1265

症例
80歳男性
主 訴 発熱,食欲低下

Case 12.PaO2とSpO2が乖離する?

著者: 繁田知之 ,   佐々木陽典

ページ範囲:P.1266 - P.1269

症例
70代男性
主 訴 呼吸困難

<内分泌・代謝検査>

Case 13.BNP上昇しているけど心不全増悪?

著者: 舩冨裕之 ,   舩越拓

ページ範囲:P.1270 - P.1272

症例
60代女性
主 訴 無症状

Case 14.コルチゾール正常だから副腎機能は大丈夫!?

著者: 藤井真理 ,   官澤洋平

ページ範囲:P.1274 - P.1277

症例
61歳女性
主 訴 食思不振

<免疫学的検査>

Case 15.ANCA陽性!それって本当に血管炎?

著者: 三澤美和

ページ範囲:P.1278 - P.1282

症例
70代男性
主 訴 発熱,食欲不振,全身倦怠感

Case 16.IgG4が上がっていれば,IgG4関連疾患でしょ!!

著者: 島田侑祐 ,   小坂鎮太郎

ページ範囲:P.1283 - P.1287

症例
50代女性
主 訴 発熱,全身リンパ節腫脹

<感染症検査>

Case 17.RPRとTPHAが陰性なら,梅毒は否定できる?

著者: 飯野貴明

ページ範囲:P.1288 - P.1291

症例
50歳男性
主 訴 陰茎硬結

Case 18.プロカルシトニン陰性なので細菌感染症ではない?

著者: 坂口公太 ,   和足孝之

ページ範囲:P.1292 - P.1295

症例
82歳女性
主 訴 発熱

Case 19.血液培養陰性であれば菌血症ではない?

著者: 相原秀俊 ,   多胡雅毅

ページ範囲:P.1296 - P.1299

症例
70歳男性
主 訴 発熱

Case 20.β-Dグルカン陽性なら真菌感染症?

著者: 宮上泰樹

ページ範囲:P.1300 - P.1303

症例
70代女性
主 訴 入院中の発熱

<糞便検査・穿刺液検査>

Case 21.発熱・腹痛と嘔吐・下痢だったら感染性腸炎じゃないの?

著者: 佐田竜一

ページ範囲:P.1304 - P.1307

症例
50代女性
主 訴 上腹部痛,嘔吐,下痢

Case 22.Guillain-Barré症候群ってどう診断するの?

著者: 長野広之

ページ範囲:P.1308 - P.1311

症例
30歳女性
主 訴 ふらつき

Case 23.血性心囊液はすべて重症を意味する?

著者: 斎藤雅也 ,   熊川友子

ページ範囲:P.1312 - P.1314

症例
31歳男性
主 訴 咳嗽,労作時呼吸困難

<画像検査>

Case 24.構音障害と右口角下垂の疑いで夜間に救急搬送,来院時には症状消失.1人でみていたらどうする?

著者: 馬場優里 ,   森川暢

ページ範囲:P.1316 - P.1319

症例
80代女性
主 訴 右口角下垂,構音障害

Case 25.頻回の下痢,それって本当に急性胃腸炎?

著者: 加藤真優 ,   川又望実

ページ範囲:P.1320 - P.1323

症例
84歳女性
主 訴 下腹部痛,下痢

Case 26.生魚摂取後の心窩部痛,それって本当に胃アニサキス症?

著者: 中島浩一 ,   常石大輝

ページ範囲:P.1324 - P.1327

症例
73歳男性
主 訴 胃が痛い

Case 27.その上部消化管出血,PPI処方するだけでいい?

著者: 高見秀樹

ページ範囲:P.1328 - P.1331

症例
70代男性
主 訴 意識消失

Case 28.胆囊壁肥厚があれば胆囊炎?

著者: 岡田健太 ,   長崎一哉

ページ範囲:P.1332 - P.1336

症例
50代女性
主 訴 発熱,嘔吐

Case 29.IVCが拡張していれば輸液は不要?

著者: 堤俊太 ,   濱井彩乃

ページ範囲:P.1337 - P.1341

症例
72歳男性
主 訴 血便

Case 30.造影CT正常だけど急性大動脈解離?

著者: 関根一朗

ページ範囲:P.1342 - P.1345

症例
89歳女性
主 訴 胸背部痛

Case 31.ヘルニアか?慢性疼痛か?身体症状症か?

著者: 大武陽一

ページ範囲:P.1346 - P.1349

症例
40代男性
主 訴 左足全体のしびれ

Case 32.転倒後の股関節痛の高齢者,X線検査で何もなければ打撲?

著者: 岩田秀平

ページ範囲:P.1350 - P.1353

症例
70代女性
主 訴 左股関節痛

Case 33.気管分岐角開大をみたら何を考える?

著者: 三枝万紗

ページ範囲:P.1354 - P.1359

症例
72歳女性
主 訴 左上肢腫脹

Case 34.下腹部痛で卵巣腫大があれば卵巣腫瘍茎捻転?

著者: 磯部真倫

ページ範囲:P.1360 - P.1363

症例
19歳女性
主 訴 下腹部痛

付録

本特集掲載症例の臨床検査エラーのフェーズ

ページ範囲:P.1205 - P.1205

連載 ローテクでもここまでできる! おなかのフィジカル診断塾・4

—おなかが痛い その4—急性胆囊炎—Murphy徴候だけじゃない!

著者: 中野弘康

ページ範囲:P.1189 - P.1192

 これまで非常にcommonな急性虫垂炎,知らないと診断できない前皮神経絞扼症候群(anterior cutaneous nerve entrapment syndrome:ACNES)を取り上げ,前回はこれまたcommonな急性膵炎を取り上げました.今回も,前回に続いてcommonな急性胆囊炎を紹介しますが,少し毛色を変えてみたいと思います.
 急性胆囊炎はよくみる疾患で,よく勉強している医学生や研修医からは“胆囊炎と言えばMurphy徴候でしょ!”という声が聞こえてきそうですが1),今回は,あえて視診の大切さを述べたいと思います.“胆囊炎で視診”って想像がつきますか? それでは参りましょう.

治らない咳,どう診る・どう処方する?・7

肺炎の咳嗽・喀痰

著者: 中島啓

ページ範囲:P.1364 - P.1369

ポイント
・細菌性肺炎の急性期で膿性痰を認める場合には,鎮咳薬は控える.
・肺炎で咳嗽が遷延する場合には,まず肺炎随伴性胸水・肺膿瘍などの合併症の出現や,COPD・喘息など基礎疾患の顕在化を考える.
・適切な治療を行っても改善が得られない肺炎をnon-resolving pneumoniaといい,その原因として市中肺炎の三大ミミッカーである結核,特発性器質化肺炎,浸潤性粘液産生性肺腺癌を押さえておく.

ここが知りたい! 欲張り神経病巣診断・14

脳梗塞③前脈絡叢動脈領域の梗塞/前脈絡叢動脈の臨床

著者: 難波雄亮

ページ範囲:P.1371 - P.1377

 神経診察を行っていくなかで,初診でも取り組みやすい診察所見があります.「運動系」と「感覚系」の2つの診察です.感覚系は患者の主観も入るため判断に迷うこともありますが,運動系は明らかな異常があれば有意に所見をとれます.この2つの診察所見を軸に他の症候を組み合わせて病巣を推定することは,病巣診断を推定するテクニックとして使えます.しかし,慣れないうちは,網羅的に神経診察をして病巣を大まかに推定することをお勧めします.今回はこの運動系・感覚系の所見にプラスして,視野の障害が加わった症例について勉強しましょう.

続・ケースレポートを書こう! “論文の軸の設定”トレーニング・7

難治性吃逆をきたした87歳男性〜ある疾患の新規な症状・所見・経過〜

著者: 八幡晋輔 ,   見坂恒明

ページ範囲:P.1379 - P.1383

 今回は,ケースレポートにできる症例(①ある疾患の新規な症状・所見・経過,②ある薬剤の新規な副作用・薬剤相互作用,③2つの疾患間に予想外の関連性,④ある疾患の新規な診断方法,⑤ある疾患の新規な治療方法,予想外の治療効果,⑥稀もしくは新規の病気・病原体)のうち,①に該当する症例を提示する.1つの症例だけで疾患と症状の関連性を断定することは困難であり,ともすれば“偶然”で片付けられ,せっかく頑張って作成したケースレポートがお蔵入りしてしまうということをよく耳にする.今回は比較的よくある疾患に,これまであまり関連性が示唆されていない症状がみられた場合に,“論文の軸”を意識しながら,どう論文化すればよいか学んでほしい症例である.
 では,次の症例提示1)を読んで,第1新規性,第2新規性(または臨床的有用性)について考えてみよう.

主治医の介入でこれだけ変わる! 内科疾患のリハビリテーション・11 疾患別リハビリ・運動療法の実際

糖尿病

著者: 上月正博

ページ範囲:P.1384 - P.1390

 わが国の平成28年国民健康・栄養調査報告では,糖尿病が強く疑われる者は1,000万人,糖尿病の可能性を否定できない者が1,000万人存在し,合計2,000万人いるとされる.
 糖尿病がもたらす障害の基本は血管障害である.糖尿病性大血管症として脳血管障害,冠動脈疾患,末梢動脈疾患がある.また糖尿病細小血管症として網膜症,神経障害,腎症がある.ほかに足病変などがあり,障害は多様でかつ全身に及ぶ.さらに,高齢化と相まって糖尿病患者はさまざまな障害を抱えることになる.

目でみるトレーニング

問題1024・1025・1026

著者: 西岡亮 ,   及川愛 ,   梶原祐策

ページ範囲:P.1392 - P.1397

書評

—清水 隆裕 著—外来で診る—“わかっちゃいるけどやめられない”への介入技法—動機づけ面接入門編

著者: 尾藤誠司

ページ範囲:P.1243 - P.1243

 自分を含めて,医師など医療の専門家が患者さんの行動変容を促そうとするとき,絶望的なコミュニケーション不全に陥ることがしばしばあります.そして,この「絶望的なコミュニケーション不全」の源泉にある医療者側の考えとして,「A.自分は正しいことを正しく相手に伝えた → B.相手は私のメッセージを正しく理解し,私のメッセージに従ってふるまってくれるはずである」という思い込みがあると私は考えています.残念ながら,実際のコミュニケーションの場面ではAとBは一致することはめったにないですし,ほとんどの場合その二つは大きくかけ離れています.なぜその二つは大きくかけ離れるのか? その一つは,メッセージはそれなりに工夫しなければ相手にちゃんと受け取ってもらえないということ,もう一つは,自律的な存在である大人は,受け取ったメッセージをそのまま行動に移すということはしないということです.私自身も,このことを理解し,臨床で活用できるようになるまでかなりの年月を必要としました.この年月の中で「動機づけ面接法」というスキルに出合い,実に実効性の高い理論と実践技法に感心した記憶があります.
 外来で患者さんに対して「行動変容」の支援を行う場面としては,喫煙習慣や食生活への介入,あるいはゲーム依存などの依存習慣への介入などが想定されます.依存症については,最近よく聞かれることとして「『ダメ,絶対』ではダメ」というメッセージがありますが,おそらく,今までのヘルスケア専門家は「ダメ,絶対」という以外にスキルを持っていなかったのかもしれません.動機づけ面接法の外来診療における応用は,「『ダメ,絶対』ではダメ」の時代において,患者さんの意識や行動に関わろうとする医療者に必須のスキルだと思います.

—Paul Farmer 著 岩田 健太郎 訳—熱、諍い、ダイヤモンド

著者: 本田仁

ページ範囲:P.1255 - P.1255

 この書籍は西アフリカで起こったエボラウイルス病(EVD)アウトブレイクの歴史書です.前半はEVDのナラティブレビュー,中盤は西アフリカの歴史,政治とエボラウイルス感染症のアウトブレイク発生の関係,さらには本の題名にもなっている,諍いとダイヤモンドとEVD(熱)との関係,終盤はシエラレオネの現状やEVDについての先進国やMSFなど非政府組織機関の関わりについて,社会医学の観点から鋭い考察がなされています.
 Part Ⅰでみる,EVDのアウトブレイクが起こっていることの記述はとても生々しく,当時の現地の惨状が伝わってきます.読んでいて心臓の鼓動が早くなる内容です.エボラ出血熱と呼ばず,なぜ,Ebola viral disease,エボラウイルス病(EVD)と呼ぶのか,患者は実際どのような臨床像を呈するのか,米国感染症業界のジャイアントである,アントニー・ファウチ医師との友情,さらにはシエラレオネでEVDの対応で命を落とした医療従事者の話,臨床的に有効と思われる点滴などの支持療法の必要性とそれを実施する上での資源が限られた環境における障壁などが細かく記載されています.

—福原 俊一,福間 真悟,紙谷 司 著—臨床研究 21の勘違い

著者: 吉村芳弘

ページ範囲:P.1273 - P.1273

 目次を眺めたら我慢できなくなり,寝食を忘れて最後まで一気に読んだ.時が経つのを忘れるほど読書に熱中したのは久しぶりだ.著者の一人である福原俊一先生は過去の自著『臨床研究の道標』(健康医療評価研究機構,2013年)のなかで,臨床の「漠然とした疑問」を「研究の基本設計図」へ昇華する方法を説いた.本書は実質的にその続編に位置される(と私は思う).臨床研究を行っている,あるいはこれから行おうとしている医療者への鋭いメッセージが健在である.
 「すべての疑問はPECOに構造化できる?」「新規性=よい研究?」「『後ろ向き』なコホート研究?」「横断研究は欠陥だらけ?」「比較すれば問題なし?」「多変量解析は万能?」「バイアスって何?」「p値が小さいほど,効果が大きい?」などなど…….

—福井 圀彦 原著 前田 眞治,下堂薗 恵 著—老人のリハビリテーション 第9版

著者: 川平和美

ページ範囲:P.1391 - P.1391

 日本は世界で一二を争う高齢化率の超高齢社会である.人口の高齢化の進行のなかで医療と福祉の連携体制強化に努めてきたが,今回の新型コロナウイルス感染症の拡大ではその備えの弱点が明らかになっている.また新型コロナウイルスに感染したハイリスクの高齢者への医療で並存疾患の悪化への対応に苦労していることから,高齢者へのリハビリテーション医療の体制強化への関心が高まっている.
 本書は初版の発刊から50年近くの長い歴史をもつが,常に高齢者の疾病構造の変化とそれに伴う医療体制やリハビリテーション治療の変遷に対応して内容の拡充を継続しており,リハビリテーション医療に従事する者あるいはそれを志す者にとって,常に新しい知識と技術が得られる必読の書となっている.

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目次

ページ範囲:P.1194 - P.1197

読者アンケート

ページ範囲:P.1399 - P.1399

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.1400 - P.1401

購読申し込み書

ページ範囲:P.1402 - P.1402

次号予告

ページ範囲:P.1403 - P.1403

奥付

ページ範囲:P.1404 - P.1404

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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60巻12号(2023年11月発行)

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60巻11号(2023年10月発行)

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55巻11号(2018年10月発行)

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55巻10号(2018年9月発行)

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55巻9号(2018年8月発行)

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55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

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