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文献詳細

雑誌文献

medicina59巻9号

2022年08月発行

文献概要

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

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著者: 髙麗謙吾1

所属機関: 1小倉記念病院循環器内科

ページ範囲:P.1414 - P.1415

 人生100年時代と言われる現在において健康寿命の延伸は重要な課題であり,心血管疾患への対策が必要であることは2019年12月に脳卒中・循環器病対策基本法が施行された日本においても,またその他の先進諸国でも同様である.予防や早期介入が重要であるが,動脈硬化性心血管疾患のリスク評価においては,年齢・性別・喫煙・生活習慣病の有無による分類が有用とされている.スクリーニング検査としての心電図検査は,欧米諸国では安静・運動負荷ともにあまり推奨されていないが,日本では今も広く行われている.その是非はここで議論しないが,心電図は簡便で非侵襲的であり,不整脈を診断できるだけでなくさまざまな心血管疾患の診断に役立つ.
 12誘導心電図はよく行われる検査であるが,その波形を読むことは簡単ではない.不整脈専門医として心電図読影を依頼される筆者自身も,諸先輩方に読影の相談をすることは少なくない.本音を述べると,不安をなくして自信をもちたいのは筆者自身である.元々苦手意識をもっていた自分のことを振り返ってお話しすると,心電図への苦手意識が強い場合には,あまり最初から細部の読影にこだわり過ぎないことをお勧めする.頻脈か徐脈か,頻脈であればQRS波形が幅広いか狭いか,徐脈であればP波とQRS波の関係はどうか,QRS波の軸や胸部誘導の連続性はどうか,胸部症状のある患者であればST変化がないか,それくらいで十分である.目を皿のようにして眺めれば急性肺血栓塞栓症を見逃さないというものでもない.また心筋梗塞の診断もリスク因子の有無や心エコー所見と併せて判断しているのに,さも心電図だけで診断がついたように自信たっぷりに「STが上がっている」と言ってしまっていることもある.心電図は不整脈診断においてはゴールドスタンダードだが,その他の心疾患においては診断ツールの1つに過ぎない.しかも,その1つひとつの所見は白黒がはっきりせず,グレーな所見ということもある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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