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雑誌目次

雑誌文献

medicina6巻1号

1969年01月発行

雑誌目次

EDITORIAL

日本人の狭心症と心筋硬塞症—疫学的見地から

著者: 木村登

ページ範囲:P.27 - P.27

 およそ文明国といわれる国で,心筋硬塞症を主とする虚血性心臓病による死亡が,死因の第1位でない国は少ない.その少ない国のなかに日本がはいる.
 フランスも日本と同様に,心筋硬塞症による死亡が死因統計では少ないが,これは診断のしかたの特異性によるものであって,実際の数とは違うというのが国際的評価である.

今月の主題

狭心症と心筋硬塞—主として病因および病態生理について

著者: 加藤和三

ページ範囲:P.28 - P.33

 狭心症・心筋硬塞の病因・病態生理は種々の角度から考察されねばならない.というのは,基本的な原因である冠動脈硬化のほかにも,多数の因子が当疾患の発生機転に関与しているからだ.そしてこの発生機転を基盤から理解することが臨床にとって不可欠の条件である.

狭心症と心筋硬塞—その診断と治療

著者: 難波和 ,   広沢弘七郎 ,   池田正男 ,   太田怜

ページ範囲:P.34 - P.44

現在,臨床的には狭心症・心筋硬塞はどのような背景をもって定義されているか.また,その診断基準,効果的な治療はいかなる点に求められるのか.‘中間型’の存在やCCUの進歩などとあわせて,診断・治療上の問題点をさぐってみると……

新春座談会

10年後の癌の診断—癌制圧の夢を語る

著者: 多賀須幸男 ,   大星章一 ,   梅垣洋一郎 ,   仁井谷久暢 ,   坪井栄孝

ページ範囲:P.100 - P.113

もし,癌の撲滅が,早期発見・切って取るという方法のみとしたら,早期発見のために,人は何カ月ごとに検査を受けていたらいいのだろうか.その意味で,ほんとうに早期発見は可能であるか.治療方法がそれであるかぎり,診断は,"切って取る"方向に向かって形態学中心に進歩していかなければならない.だが,癌を全身疾患として治療することは可能であろうか……

診断のポイント

慢性肝炎の診断基準

著者: 王子喜一

ページ範囲:P.45 - P.46

慢性肝炎という病名について
 慢性肝炎という病名は単に肝炎のある状態を表現する言葉にすぎないとする極端な意見もあったが,現今ではもはや日常診療上のひとつの既定疾患単位となっている.しかしその定義については人によって意見が異なり,まだ決定的な見解が示されていない.
 Popper1)などの病理学者は急性ウイルス性肝炎→肝細胞壊死→持続性肝細胞変性→慢性肝炎→グリソン氏鞘炎と線維化→肝硬変という病理学的経路を考え,かかる慢性肝炎は肝硬変症に至る1つの課程にすぎないとしている.高橋教授2)などの臨床内科学者は3カ月またはそれ以上の経過で肝機能検査や肝生検像に異常があって慢性肝炎の診断を受けたものでも,1年後では機能的にも形態的にも治癒しうる症例が実在し,むしろ遷延性肝炎なる病名が適すると述べ,原発性慢性肝炎という病名も全面的に肯定するものでないとの立場をとっている.

肺真菌症

著者: 大平一郎

ページ範囲:P.47 - P.48

真菌症発病増加の原因
 真菌症には幾多の種類があり,放線菌症を除いては元来比較的まれな疾患とみなされていたが,洋の東西を問わず本症は最近増加の傾向にある.その原因として近年治療医界における化学療法の急速な進展や副腎皮質ホルモン剤の普及があずかって力がある.さらに交通貿易などの著しい発達に伴い,多くの病原性真菌が容易に撒布吸入され,発病の機会を多くもたらし,また本症に対する関心がしだいに高まりつつあることも本症増加の一因としてあげられるであろう.
 しかしわが国で発病する本症の種類は案外少なく,放線菌症を除いては,その大多数はカンジダ症であり,次がアスペルギルス症,わずかにクリプトコッカス症をみる程度である.これ以外にはごくまれにムコール症,ノカルジア症が報告され,ヒストプラズマ症に至ってはわが国での存在は疑義がある現状である.したがってわが国では真菌症,特に肺真菌症を診断する場合は肺・気管支のカンジダ症あるいはアスペルギルス症を念頭におくことが必要であり,稀に存在するクリプトコッカス症,その他の真菌症はほとんど考慮する必要はない.

出血時間延長

著者: 山田外春

ページ範囲:P.49 - P.51

まず栓球減少症を考える
 出血時間の延長をみたとき,まず考えねばならぬ病態は栓球減少である.かかる場合,臨床症状として皮下出血,歯肉出血,鼻出血,血尿などが見られるのであるが,特に皮膚および粘膜の点状出血斑に注意することがたいせつである.また女性の場合には往々子宮出血が起こり,特に月経に引き続いての出血が著しい場合があり,また男女共に消化器,呼吸器,胸腔,腹腔その他あらゆる臓器に出血が起こりうるし,脳出血が直接死因となることが少なくない.栓球減少症においては,Lee-White法で測定した凝血時間測定後の血餅の退縮の不良なことが認められ,栓弾図(TEG)にてmaが減少している.
 この栓球減少症は本態性栓球減少性紫斑病(ITP)と症候性栓球減少症に大別される.

治療のポイント

脳卒中患者の生活指導—特にリハビリテーションの立場から

著者: 杉山尚

ページ範囲:P.52 - P.53

 与えられた"生活指導"というテーマから考えて,いわゆる医療処置は除き,卒中発作直後からのリハビリテーションの立場からの生活指導について紙数の許すかぎり具体的に記述してみよう.

乳児の感冒性消化不良症—診療のコツ

著者: 中村兼次

ページ範囲:P.54 - P.55

感冒性消化不良症とは
 乳児の急性消化不良症(下痢症)は,栄養の過誤,暑熱,感染,体質,アレルギーなど各種の原因で起こるとされる.しかし,何といっても日常最も多いのは感染によるものであろう.感染性の下痢には病原大腸菌,サルモネラ菌,赤痢菌などで起こるものもあるが,感冒性消化不良症とは,感冒と同時あるいは回復期に下痢症を起こす場合をいう.かつては乳児の下痢は梅雨期から初夏にかけて多くみられ,死亡率も高位にあったが,近年では,生活レベルの向上の故か,夏の下痢症は激減し,代わりに冬の感冒性下痢症が圧倒的に多くなってきている.

肝障害患者の化学療法

著者: 市井吉三郎

ページ範囲:P.56 - P.57

 肝疾患の重要な部分をしめる急性ウイルス性肝炎に対して,特異的な化学療法のない現在,肝障害患者における化学療法の主な対象は,肝障害に直接的ないし間接的に影響をおよぼしている細菌感染巣,腸内菌叢である.一方では抗生物質はもともと生体にとって異物であり,したがってそれによって肝障害が惹起される場合もあるので,ここに既存の肝障害に対する抗生物質の選択が問題になってくる.このように肝障害と化学療法は密接な関連を有し,実地医療面で慎重な使い分けが要求されるわけである,しかしあまりの慎重さに,化学療法としての所期の治療目的が達成されなくては無意味である.それゆえに,肝障害,および細菌感染に対する正しい判断と抗生物質の特性をよく知ることがたいせつで,これがとりもなおさず治療法のポイントにつながるものと思う.

甲状腺機能低下症

著者: 橘敏也

ページ範囲:P.58 - P.60

甲状腺機能低下症の症状と評価
 甲状腺機能低下症が進行すると,粘液水腫myxedemaの症状をきたす.すなわち,浮腫,易疲性,全身倦怠,ねむ気,心身にわたる活動性の低下,皮膚・頭髪の荒れ,嗄声,難聴,便秘,膝腱射の減退,筋肉のひきつりなど多彩な症状を呈する.
 しかしこれらの症状は非特異的である上に,粘液水腫の患者は,心身の活動性が低下しているために,訴え,表情に乏しいために見のがされやすい.時にはしかしかえって多愁訴性,異常な精神症状のために神経症あるいは精神病と誤られることすらある.

病歴のとりかた

肝疾患

著者: 平山千里

ページ範囲:P.61 - P.63

 肝疾患は,種々の内因性および外因性の障害因子によって成立するものであり,その成因分析は,一部の肝臓病を除くと比較的困難である.一方,臨床検査技術の進歩に伴い,肝障害の有無のスクリーニングは比較的容易になってきており,現在,多数の"原因不明"の肝障害患者が検出されつつある.
 従来,肝疾患における病歴は,原因不明ということが前提となっていたため,比較的軽視される傾向にあった.しかし最近引き続き,肝臓の障害因子が明らかにされたため,肝疾患の診断面における病歴の占める位置は重要となってきた観がある.また,肝疾患の非代償期症状が,黄疸や腹水のほかに,消化管出血や意識障害まで含まれるようになったため,これらの症状解析に病歴のもつ意義が広く認識されてきた.小稿は,肝疾患の病歴をとる場合注意すべき点についてふれるとともに,著者が最近経験した数症例について述べて御参考に供したいと思う.

Leading Article

内科専門医制度の今後

著者: 小野田敏郎

ページ範囲:P.64 - P.66

制度の佳き発足
 内科専門医制度が誕生した.ずいぶん長い間,専門医制度のことが論ぜられながら,なかなかその実現を見なかったのには,この国にはそれなりの理由があったのであろうが,それを越えてこの制度が生まれ出でたことは,けっこうなことといわなければなるまい.
 専門医制度については,各学会において慎重に審議研究されて,それぞれにルールが定まり,また定まりつつある.これらの制度の特徴はアメリカのそれと同じく民間の団体がそれぞれ独自の考えによってつくられたことにある.なにごとも法律によらなければ夜の明けないこの国に,まことに画期的なことである.

診療手技

骨髄穿刺

著者: 天木一太

ページ範囲:P.6 - P.8

 骨髄穿刺はむずかしい検査法ではない.だれでも,どこでも,重症患者でも侵襲を気にしないで実施することができる.ところが現状は,専門医の行なった場合以外,申し分なくよく行なわれた骨髄穿刺標本というものは,むしろまれであって,著しく価値の少ない標本もよくみられる.今までの日本の医学教育,とくに実習の面での指導が不十分であったためもあり,一般医のこの方面への無関心にもよるものであろう.

救急診療

交通外傷患者の初診の技術

著者: 佐藤文明

ページ範囲:P.10 - P.11

1.頭蓋内血腫の有無の判断
 交通外傷といっても範囲があまりに広い.ここでは,急性閉鎖性の頭部外傷患者の初診にあたって,まず何を考えどのように処置すべきかをおおざっぱに述べてみよう.最もたいせつなことは,早急に手術を要する状態であるのか,またはそのまま内科的処置によって様子を見るべきであるかの鑑別である.つまりひと口にいえば,頭蓋内血腫の有無の判断ということになる.
 意識障害の程度とその推移 第1に問題となるのは意識障害の程度とその推移である.受傷時に意識障害がほとんどなく,その後もひき続き清明であれば,まず大きな脳損傷や頭蓋内血腫の発生を否定してよかろう.周知のように,受傷時に意識障害がほとんどなく,後になってしだいに意識障害を生じてきた時(lucid intervalのある時),あるいは受傷に伴う意識障害が回復しつつあったのに再び障害の程度が強くなってきた時には,一応頭蓋内血腫の発生を疑ってみなければならない.

カラーグラフ

骨髄穿刺標本—とくに急性白血病の細胞

著者: 天木一太 ,   永田靖雄

ページ範囲:P.18 - P.19

 血液病の診断は骨髄を穿刺すればわかると思っている人がある.実はたいていの血液病は,病歴,診察および血液像の方が大切なのである.骨髄観察が重要なのは,悪性貧血,急性白血病,骨髄腫,癌の骨髄転移,再生不良性貧血骨髄線維症などである.今回は急性白血病の代表的なものを示した.本症では骨髄所見が血液像に反映しないので,骨髄穿刺は診断上,治療薬剤決定上,また予後判定上意義が深い.

グラフ

電気泳動像のいろいろ

ページ範囲:P.21 - P.23

冠動脈撮影法

著者: 群馬大学鴫谷内科心臓グループ

ページ範囲:P.24 - P.25

 冠動脈撮影の目的は,冠動脈の走行・形態を明らかにするにある.主として動脈硬化,血栓症の存否・程度・分布の診断がもっとも問題となる.ことに心電図で証明しえない狭心症,心筋硬塞を疑われる患者はもっともよい適応症である.また冠動脈外科のためにはぜひとも発展させなくてはならない診断技術である.このほか意外な病変,たとえば冠動脈の先天性奇型,AV-Fistelなどの診断には不可欠である.ただし,現状ではなおRiskを伴うので,症例の選択は慎重なほどよく,技術のいっそうの改良が望まれる.

今月の表紙

冠動脈造影像

著者: 鴫谷亮一

ページ範囲:P.26 - P.26

 表紙の図はいわゆる非選択的冠動脈造影法による冠動脈の正面像である.すなわち股動股動脈よりSeldinger法で8-9F側孔付のカテーテルをいれ大動脈起始部より1-3cmの高さに先端をおき,冠拡張剤Dipyridamolを静注し,心拍連動X線注入制御装置により,まず造影剤を心収縮末期に注入し,1心拍後のP波に一致する時相に撮影してある.造影剤としては80%のAngioconray 0.5cc/kgを12-14kg/cmの圧で注入してある.この方式でイヌにおける85回の撮影でも1頭の死亡もなく,ヒトの50回の撮影でも直接危険にいたった事故は1回もなかった.ただし1例,血栓による股動脈閉塞を起こし,その手術後麻酔からさめることなく死亡した.
 こんにちSonesの選択的に行なう方法の優秀性が認められ,ひろく行なわれているが,われわれの方法の利点は左右の冠動脈のバランスがみられること,他の副所見すなわち奇形,他の大動脈の分枝の硬化状態などを得られる点にあるが,写真にもみるとおり,像の鮮鋭度は選択的なものに劣り,かつ動的にみられない欠点がある.左右のバランスという点では,たとえばHypoplasiaおよびその傾向などの問題である.

症例 胃X線写真の写しかた・読みかた・5

陥凹型早期胃癌(III+IIc)のX線診断

著者: 熊倉賢二

ページ範囲:P.75 - P.77

 厳格に判定すれば,早期癌陥凹型(III型)はまれであり,私どもにもほとんど経験例がない.そこで今回は,III+IIcの症例を供覧することにしますが,焦点は,潰瘍の良性・悪性の鑑別診断ということになります.

全身性疾患と腎・5

Alport症候群と腎

著者: 木下康民

ページ範囲:P.78 - P.81

Alport症候群の臨床症状
 Alport症候群はHereditary nephritis with nerve deafness,Familiäre idiopathische Haematurie mit Schwerhörigkeitともいわれる.何代にもわたって同一家系内に起こる遺伝性の腎疾患で,しばしば神経性難聴と,ときに眼の水晶体の先天性異常を伴うことを特徴としている.
 本症は多くの場合,最初は幼児期または思春期に発見される.本疾患は妊娠とか,また感染症によって症状が発現ないし悪化するが,Rampini1)によるとウイルス感染によって病状が進行する.一般に症状は男性に現われ,経過は重篤で,40歳くらいまでに尿毒症で死亡する.女性では進行が緩慢で,生涯を通じて潜在性にとどまる例も少なくない.

チュレーン大学の内科専門医のためのオリエンテーション・ブックレット・1

スケジュールおよびカンファレンス

著者: チュレーン大学内科学教室 ,   高階経和

ページ範囲:P.82 - P.85

この欄の連載にあたって
 これから紹介するのはオリエンテーション・ブックレット(入局案内書)であって,私がいたルイジアナ州ニューオルリンズ,チュレーン大学内科のインターン,レジデントおよびフェローのために作られたものである.
 日本でも今年から内科専門医の教育病院が決定され,新しく内科専門医の訓練が始められることになっている.しかしながら,いわゆる日本の各大学をみても,内科専門医にかぎらず,各部門の専門医の訓練について,一貫したシステムがなかったというのが現状である.したがって,これから数回にわたって述べていくこの"オリエンテーション・ブックレット"が読者の頭のなかに,内科専門医というものが,どういった訓練を受けなければならないか,そしてまた,どういった内容のものを習得する必要があるのかといったことについて,きわめて具体的なアイデアを与えてくれるものと確信する.

阪大・阿部内科—研修医のためのWard Conference・1

SLE(Systemic Lupus Erythematosus)—赤沈促進—蛋白尿—梅毒血清反応陽性の底流をさぐる

著者: 阿部裕 ,   三木謙 ,   折田義正 ,   小林正 ,   安田純一 ,   川越裕也 ,   松田佳宣

ページ範囲:P.86 - P.90

 現今,臨床研修の改変により医学生が卒業後ただちに病棟に勤務する状況となったが,その研修指導に際しては,多忙な回診の間に常に学部教育の成果を基礎としてpractieに強く密着し,かつ最新の各領域の知見の要点を随所におりこむ必要が感ぜられるようになった.換言すれば,学部教育と専門的診療の間を埋めつなぐ研修システムといえる.そのための具体的な解決法として,私は病棟の整理と設備の充実をはかるとともに,各専門医による病棟主任の協力下に,充実した指導体制の強化に努力しているが,さらにその一環として,回診後,各症例についての診断・治療・病態生理と診療技術など多方面にわたる問題点をとらえ,Wardに設けた討論室にて研修医とともに活発なConferenceを行なっている.

脳波のよみ方・1

脳腫瘍

著者: 本田正節

ページ範囲:P.91 - P.95

脳波学の発達と現状
 脳波はBergerが1920年代に発見してから,各国でその基礎的研究が行なわれていたが,第2次大戦のころから航空士の適性検査などに用いられ,戦後になって戦争中に発達した電子管を応用して多素子の脳波計が作られるようになり,一般の臨床に応用されるようになった.臨床各科における多くの知見が集積された結果,脳波学の発達はまことにめざましいものとなった.
 最近,臓器移植の問題から,"死の定義"ことに"脳死の定義"を脳波に頼る(日本脳波学会では脳波のみで脳死を決定するのには賛成していない)傾向が一般に行なわれるので,にわかに脚光をあびることになった.

臨床家の生化学

動脈硬化と中性脂肪

著者: 和合健二

ページ範囲:P.96 - P.99

 最近コレステロールと並んで,中性脂肪の動脈硬化との関係が問題になっているが,これら脂質のAtherogenecityを主としてリポ蛋白の観点から考察した.

診療相談室

収縮期雑音と拡張期雑音の鑑別は

著者: 加藤生 ,   森杉昌彦

ページ範囲:P.117 - P.117

質問 収縮期雑音と拡張期雑音をもっとも簡単に鑑別する方法はないでしょうか.

統計

都市と農村の死因

著者: 菅沼達治

ページ範囲:P.14 - P.14

 どのような死因が都市に多いか,または農村に多いかをみるわけですが,ここでは全国を7大都市(東京都の区部,横浜,名古屋,京都,大阪,神戸,北九州の各市)とその他の市部・郡部の3つに分けてみることにします.この3地域間の死亡率にふれる場合にたいせつなことは,それぞれの年齢構成が違うという点です.図に市部(7大都市を含む)と郡部の人口ピラミッドを示しました.近年における若年労働人口の都市への流出によって,郡部では10歳前後の子どもと老人が多く,市部では15-39歳の人口の割合が多くなっています.
 死亡率を論ずる場合,最も問題となるのは,60歳以上の老年人口であります.この人口は男では3.3%,女では3.2%ほど郡部のほうが多く,図では大きな差はみられませんが,この超過分が死亡率に著しい影響を与えます.1例をあげますと,全癌ですが,普通に死亡率とよばれている年齢を考慮しない粗死亡率では,郡部を100とすると,7大都市78.5,その他の市部86.8で,いかにも大都市に癌死亡が少ないかの感を与えますが,年齢110.5,その他の市部105.3となり,粗死亡率とは全く逆な関係がでてきます.

medicina Journal

公的病院の病床規制の緩和

著者:

ページ範囲:P.15 - P.15

 "公的性格を有する病院が,開設したり,病床を増設したりする場合に,その地域が厚生省告示で定められた一定数値を上回っているときには,開設地の都道府県知事は許可を与えない"ということが,医療法第7条の2によって定められている.
 これがいわゆる公的病院の病床規制といわれる制度で,都道府県,市町村,国保組合,日赤,済生会,厚生連などの開設する病院がこの規制にふれることになっている.

話題

循環器病への高い関心を痛感—第68回九州医師会医学会循環器科分科会から

著者: 西木昭二

ページ範囲:P.16 - P.16

 絶好の秋日和に長崎市で第68回九州医学総会が開催された.
 演題は74題もあり,多方面に興味ある発表であった.1日に74題を発表されるために,時間が1題5分であったので,各演者は苦労したことと思う.総会が発表演題を会員数に比例して制限しているためかと思うが,それにもまして九州でいかに循環器病に関心が高く,臨床と研究成果があがっているかを感じさせられた.

全国教室めぐり

社会へ貢献する医学をモットーに―慈恵医大・阿部内科

著者: 磯貝行秀

ページ範囲:P.67 - P.67

新しい教室づくり
 私たちの教室は,昭和39年4月1日に新設された,まったく新しい教室で,慈恵医大付属病院青戸分院のなかで診療・研究が始められた.それから3年有余,新興の意気に燃え,現在まで新しい教室づくりに明け暮れてきたのである.創立当時の教室員は教授以下13名で,診療・研究および卒業後の臨床教育に,着実な成果をあげるため,綿密な計画が教授を中心としてたてられ,それにもとづいて能率的な作業が進められてきた.教室にとっては,青戸分院時代は真に忘れがたい揺籃時代であったといえよう.第2内科の古閑義之教授の定年退職に伴い,教室は青戸から港区の大学本院へ移動し,現在にいたっている.

ルポ

水俣病ととりくむ"湯の児リハビリテーションセンター"(熊本県水俣市)

著者: 岡田高明

ページ範囲:P.68 - P.70

 湯の児リハビリテーションセンターは,当初水俣病患者の機能訓練を目的として計画されたものであるが,現在は,全国でもはじめての地方公共団体立リハビリテーションセンターとしてゆきとどいた運営がなされている.

これからの開業医

離島僻地と医師

著者: 石井清英

ページ範囲:P.72 - P.73

生命の振興と医師
 "生命の振興"こそ道徳の根源であり,医療概念の拡大によっても明らかなとおり,"生命の振興"に直接たずさわる者が医師たちである.真の医師は生命振興の専門家でなければならないし,人間をその環境を含めて全体として把握し,その生前から死後まで一貫して把握する医師こそ,真に偉大な医師である.しかしながら世界的な傾向として,世間の名声や評価が,呼吸器系とか,消化器系その他の修理工的な医師に対してのみ高いことは悲しい事実である.またわが国では地域社会の人びとが自己の生命のみに注目して,他の人びとを顧みることが少なく,医師たちの生命すら軽視する事実も見のがすことはできない.これが離島や僻地の医療問題とからんでくる.
 私たちが住む長崎県を含む九州地方は,離島僻地が多いことはご存じのとおりである.そのような場所にはそれぞれ独特の環境があって,住民の医療に生涯をささげる決意をもって赴いた医師が,あるいは去り,あるいは移り,あるいはさびしく倒れていく状態である.

石井先生のご一文を読んで

すべての生命は最高の医学に保護される権利をもつ

著者: 乗木秀夫

ページ範囲:P.74 - P.74

生命に優劣はない
 先生が,この文であげられた例については,なんぴとも否定しないし,さらに数多くの同様な例を身近にもっている人も多いことと思う.
 医学は,与えられた生命に対して,より正しく,より長く,より強固に維持する責任をもつ学問である.そして,すべての生命を無限として,いかなる場合でも,軽重をつけない.この理論から,一般社会では,捨てるべき例外論法が,生命を対象とする医学では尊ばれる一例報告となっていても,なんのふしぎを感じない.

臨床メモ

"ときどきいやーな感じ"という訴え

著者: 春日豊和

ページ範囲:P.113 - P.113

 "ときどきいやな感じ"という訴えは学生時代のノートにも,成書にもただの1行も記載されておらず,またこの訴えに対する解釈もなんらなされていないのが実際である.またこの訴えはたいへん主観的な訴えで,統一された概念ではない.訴えの内容に関する個人差や地方差にもかなりの差異があるものと思われる.したがってかかる訴えをどう解釈し,どうこれに対処すべきかではなくて,どう対処しているかを述べるのが妥当であり,したがってささやかな自分の臨床の場からする経験的事実のみを申しあげたい.
 外来で,かかる訴えを聞くことはまれではない.この訴えが単一愁訴として聞かれる場合と複数愁訴の1つとしての場合とがあるが,紙数の関係でこまかいことは省略する.私はかかる訴えをする患者の病態病因を従来の経験から3つの群に分けえられると思う.この訴えのしくみは一過性の血管系の反応と解するが,第1として循環系の機能的,ないし器質的な因子による場合,第2として心因(精神面)ないし自律神経系を中心とする因子,第3はこれらにはいらない機能的,ないし器質的な疾患による場合の3つである.もちろん,1,2の因子が相互にからまり,組み合わされてかかる訴えの因をなしていることがあることはいうまでもない.

検査メモ

CRP

著者: 守屋喜美雄

ページ範囲:P.60 - P.60

 C反応性蛋白(CRP)は,炎症や組織の退行性変化があると,他のいかなる反応物質よりも早く,病初から患者血清中に現われ,病状悪化とともに増量し,極期を過ぎると減少します.赤沈よりも炎症に対して特異性があり,一般に赤沈の回復より早く陰性化します.
 膠原病,心筋硬塞,悪性腫瘍などの診断のさいに,好んで利用されますが,この反応は陽性の場合に意義があり,陰性であるからといってかるがるしくこれらの疾患を否定してはなりません.たとえば,癌でもCRP陰性のことがあります.

膵疾患の検査

著者: 守屋喜美雄

ページ範囲:P.95 - P.95

 膵疾患の検査には,診断の決めてになるものが少ないので,一般には除外診断や治療的診断によることが多いようです.なお,消化器病としての膵疾患では,血糖および尿糖には異常ないのがふっうです.

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略語の解説 13

著者: 阿部正和

ページ範囲:P.13 - P.13

GH growth hormone:成長ホルモン 下垂体前葉から分泌されるホルモンの1つ.下垂体前葉ホルモンのほとんどが上位ホルモンとして他の内分泌腺の働きを刺激するものであるのに,成長ホルモンだけは,特定の標的器官がなく,全身的に作用する.この点がきわめて特異的である.
GOT glutamic oxaloacetic transaminase:グルタミン酸オキザル酢酸トランスアミナーゼ アミノ酸の一種であるグルタミン酸からアミノ基をとってオキザロ酢酸に渡す働き,すなわちアミノ基転移を触媒する酵素である.この反応に関与する物質の頭文字をとってGOTと名づけられたものである.同様にGPTはグルタミン酸とピルビン酸(焦性ブドウ酸)との間のアミノ基転移をつかさどる酵素である.GOTは肝細胞および心筋細胞に多く,GPTは肝細胞に圧倒的に多く含まれている.したがって,急性の肝障害,心筋硬塞の発作時には,これらの酵素が血清中に増加してくる.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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