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雑誌目次

雑誌文献

medicina6巻10号

1969年10月発行

雑誌目次

EDITORIAL

高血圧の予後

著者: 佐々千之

ページ範囲:P.1099 - P.1099

 生命保険における被保険者の選択上,現在の最大関心事は,高血圧をいかに大量に契約するかということである.古くから使われてきた査定標準によれば,どの年齢でも,血圧値が高くなれば死亡率は増悪するというのが常識であった.
 米国の生命保険会社の大数調査(1959年)によると,上記の査定標準を裏書きするように,血圧値と死亡率とはきれいな正の相関を示している.それは,どの年齢群でも,最大・最小血圧いずれの場合でも同様である.

今月の主題

老人の高血圧

著者: 守一雄

ページ範囲:P.1100 - P.1107

 一般に年をとると血圧が上がると考えられてはいないだろうか.老年者の高血圧は動脈硬化症や本態性高血圧,慢性腎炎によることが多いが,老人には老人特有の生理機能があり,これを十分に考慮して管理にあたらなければならない.

血圧測定の基本的問題

著者: 平尾正治 ,   長谷川恒雄 ,   土屋幸彦 ,   日野原重明

ページ範囲:P.1108 - P.1114

 最近では,会社や学校において集団検診が盛んになり,一般の人々も多く検診を受けるようになった.そのさい,血圧測定が正しくされていないと,受診者にむだな心配をさせたり,重要疾患を見おとしかねない.測定法の基本的問題について.

Leading Article

高血圧症研究の進歩への期待

著者: 鴫谷亮一

ページ範囲:P.1136 - P.1137

学問的統一を欠く血圧測定法
 本態性高血圧症はその真の原因が不明のままでありながら,その治療法は明らかに進歩し,その死亡率も著明に低下した特異な疾患である.しかもその頻度が高く,ことに本邦においては医師の指導的活動によって最も多数の人命と社会福祉に貢献し得る大切な分野でもある.本症が高血圧を主症状とすることは申すまでもないが,臨床的血圧測定法の真の理論が必ずしも解明されていないことも,ある意味では奇妙なことである.しかもその方法の学問的統一が今日に到るまで,国際的にも国内的にも確立されていないのも不思議なことに思われる.理論が不完全であればあるほどその手技の細部にわたる厳密な統一が必要である.
 一方高血圧を主症状とする患者の中に相当数の症候性高血圧症がある.近年その診断法も次第に精密になって来たが,最終的には後腹膜気腹術,大動脈造影法,腎生検法など患者に対する負担の大きい,時に危険すらあり得る方法で決定しなくてはならない.しかもその装備の経済的,技術的面は全国的計画性をもって考えられなくてはならない.この辺にも今日の医学教育問題医療行政問題の重大な根がある.

診断のポイント

くも膜下出血

著者: 高橋和郎

ページ範囲:P.1115 - P.1116

くも膜下出血とは
 くも膜下出血とは,脳表面の血管の破綻によりくも膜下腔に出血をきたすことである.原因としては,動脈瘤が最も多く,このようなものを原発性くも膜下出血と呼ぶ.これに対し,出血性素因,脳腫瘍,血管奇型(血管腫),脳出血,梅毒性血管炎などで脳実質内に出血をきたし,それが脳室あるいは脳表面に破れて,くも膜下腔におよぶ場合は,続発性くも膜下出血と呼ぶ.一般にくも膜下出血といわれるものは出血が,主としてくも膜下腔にあるもの,すなわち,原発性くも膜下出血,あるいは血管腫などで主としてくも膜下腔に出血するものを指す.ここではこれらの場合につきその診断の要点を述べる.

線溶活性

著者: 佐藤智

ページ範囲:P.1117 - P.1118

 線溶という略語が,日本の医学界で通用しはじめてから久しく,これに関連する研究発表は枚挙にいとまがないが,臨床面では意外に測定されていないのはなぜだろうか.
 全身紫斑を伴う出血でかつぎこまれた患者の血漿に,トロンビンを加えて凝固させたものが翌朝にとけてしまい(線溶活性亢進),抗プラスミン剤の大量投与で,紫斑も,血尿も,口腔内出血も直ちに消失してしまった症例をみては,線溶に興味をもたざるをえない.このようにドラマティックでなくても,特発性腎出血で苦しむ人に,また月経前期に毎月喀血,血痰を出す婦人に線溶活性亢進をみとめ,抗プラスミン剤投与で"血をみなくなる喜び"をともに味わうときに線溶に心ひかれる.線溶活性は出血のみならず,アレルギーに,炎症に,ホルモンに,動脈硬化に,いろいろな分野に関連をもつ.

内分泌性高血圧

著者: 吉永馨

ページ範囲:P.1119 - P.1120

 内分泌性高血圧というのは,内分泌腺の腫瘍などからホルモンが過剰に分泌されるため,高血圧を呈する疾患である.臨床上これに該当するホルモンは副腎皮質および髄質ホルモンである,これら高血圧症の臨床的特徴を述べて,診断の参考に供したいと思う.

治療のポイント

高コレステロール血症の食事療法

著者: 内藤周幸

ページ範囲:P.1122 - P.1123

 高コレステロール血症の食事療法を行なうにあたっては,まず少なくとも,かくれた原疾患(とくに,糖尿病,肥満,高血圧,内分泌性疾患,ネフローゼなど)の有無,および高脂血症の型(Fredricksonの分類,または少なくともトリグリセリドの増加が同時にあるか否か)の2つの点を診断する必要がある.

免疫抑制剤療法

著者: 螺良英郎

ページ範囲:P.1124 - P.1125

免疫抑制療法のあらまし
 免疫現象にもとづく病的状態を広く免疫病(Imnunological diseases)とよんでいる.免疫病にはアレルギー疾患から,現在内科的に病因・診断・治療のうえで問題の多い結合織病まで含められている.免疫抑制療法は広義には,これらすべての免疫病の治療をさしているわけであるが,実際には自己免疫性疾患群を主な対象としている.外科の領域では疾病ではないが,臓器移植に際しての拒絶反応の抑制を免疫抑制療法とよんでいる.
 なぜこのような治療法が問題となっているのか,その理由として1)免疫生物学や免疫化学の研究が進んだ結果,自己免疫病や移植免疫による反応などの発生機序が少しずつ明るみに出てきたことによって病因に直接結びつく治療法が求められつつあること,2)従来副腎皮質ステロイド剤が免疫抑制剤の1つとして汎用せられてきたが,本剤のみでは根治に導きえないこと,長期連用する結果,さまざまの不快な副作用の出現に悩まされ,さらにはステロイド剤から脱却・離脱することがきわめて困難であること,などの理由による.

心房細動の電気的治療法

著者: 東光平

ページ範囲:P.1126 - P.1127

本法の優秀性
 心房細動(持続型)の治療には従来キニジン(Quinidine)が用いられ,今日なお不動の地位を保っているが,その使用に際し,ときに好ましくない結果を生ずることがあるために,より良い除細動法の開発が要望されていた.1962年Lownが高圧直流をきわめて短時間(数1/1000秒)通電することにより,細動その他の不整脈を除去することに成功し,とりわけ除細動効果の著しいことから短期間中にめざましい普及をみるにいたった.本法の優れた点は,①安全度の大きいこと,②適応範囲の広いこと,③除細動成功率の高いこと,④速効性であること,⑤心筋に対する障害の少ないこと,⑥患者に対し精神的かつ肉体的負担の少ないこと、などである.

肩から腕の痛み—その生活指導

著者: 佐々木智也

ページ範囲:P.1128 - P.1129

痛む期間を乗りきる生活指導
 痛みのある病気はつらいもので,たとえ生命に危険がなく,やがて完治するとわかっていても患者には耐えがたいものである.肩から腕にかけての痛みはその代表で,ほとんどの例は予後良好であるが,痛みは耐え難く,日常の生活に多く使用する上肢が使えないことで,不便もひとしおである.
 そこで,医師たるものは,単に病気だけをみないで,一個の人格を有する患者のための生活指導をし,痛む期間を多少とも楽に乗り切るように考えてあげなければならない.生活指導の具体的な項目はごくつまらぬようにみえても,患者にとってはありがたい注意である.ここでは,肩から腕にかけての痛みを起こす代表的な病気である五十肩rotater-cuff syndromeについておもに説明し,ほかの病気については足りない点を補うようにするが,このような病人のあったときに本文をそのまま患者に見せていただくことを主眼として平易に解説する.

カラーグラフ

内視鏡カラーテレビジョン

著者: 池田茂人 ,   多賀須幸男

ページ範囲:P.1090 - P.1091

 最近,著しく小型化されたカラーテレビジョンカメラの開発により,われわれは現在用いられているいろいろのファイバースコープとの接続をはかり,新しい方式の内視鏡カラーテレビジョンを行なっている.
 カラーテレビジョンの方式には,通常のカラーテレビの方式(同時方式)と,テレビ撮像管の前で,赤,緑,青のフィルターを回して色を分解し,これを1本の撮像管に入れて順々に写し出す順次方式がある.順次方式のテレビカメラは装置が大きくかつ重く,また明るい光量が必要であるが,われわれは同時方式で3本のプラムビコンという撮像管を用いた,きわめて小型化されたカラーテレビを開発した.これは小型,軽量で,感度も高くしかも同時方式という一般カラーテレビと同じ方式である(図2).

負荷試験=方法と評価

レジチン試験とコールドプレッサーテスト

著者: 菅井芳郎

ページ範囲:P.1076 - P.1078

レジチン試験
 レジチンは末梢でカテコールアミンを阻止するアドレナリン作動遮断剤であり,かつ直接血管拡張作用をも有すると考えられている.したがって,カテコールアミン過剰による高血圧症において,特異的な降圧作用を示すことによって,もっぱら褐色細胞腫(Pheochronocytoma)の,特に持続性高血圧型と本態性高血圧との鑑別診断に用いられている.
 方法 まずこのテストは,血圧が少なくとも収縮期160市170mnHg,拡張期血圧100-110mmHg以上のときに行なうべきで,正常血圧時では価値が少ない.

診療手技

気管切開

著者: 岩井一

ページ範囲:P.1080 - P.1082

気管切開が考えられる疾患
 気管切開は非緊急時に実施できれば非常に単純かつ容易な手術である.気管切開の必要が予測されれば,安全を期してできるだけ早期に実施しておくよう心がけるべきである.救急の場合は別であるが,入院させて管理している例に緊急気管切開を行なうなどということはあまりほめたことではない.
 気管切開が考慮されるべき疾患は次のようである.

救急診療

造影剤注射によるショック

著者: 中島哲二

ページ範囲:P.1084 - P.1085

 対象 造影剤も多種あり,いろいろな副作用が存在するが,ここではヨード系造影剤注射による反応性ショックを対象とする.
 発生軽度の副作用はまれではないが,ショックをおこすほどのものは少ない.最近の統計では,薬物ショック死289例のうち3例で,薬剤別にみると11位で,麻酔剤・抗生剤・ピリン剤などよりはるかに少ない.しかし頻度が少なくとも,おこることは事実であるから,この副作用を軽視してはならない.

グラフ

血圧の直接測定(動脈)

著者: 加藤和三 ,   藤井諄一

ページ範囲:P.1093 - P.1096

 血圧の直接測定は一般臨床上はあまり行なわれていないが,その信頼度は間接法より高い,とくに肥満・るいそうの強いもの,脈拍ないし血圧変動の著明なものでは,通常の間接法によっては正確な血圧値が得られず,直接測定が望まれる.また血行力学的研究ばかりでなく,日常診療においても血圧の連続記録や圧波形分析が有用なことが少なくない.最近における装置の進歩・簡便化と相まって,もっと一般化してよいと考えている.

県民健康の殿堂"広島医師会館"新築落成

ページ範囲:P.1097 - P.1098

 広島医師会館(大内五郎会長、全会員約2700名)は広島市観音本町1丁目1番1号に,昭和44年7月13日落成した.この会館は鉄筋6階建て(一部3階)延べ7130m2で.総工費約7億円,昨年6月から着工していた.新会館は①地域医療に密着した予防医学センター,②看護婦養成,③現職医師の研修の3つの柱をかみ合わせて設計されていて,社会に窓を開いた医師会館として地域への還元に力を入れる.
 6階建ての事務棟は,1階が診療・予防検診部門,2,3,4階が広島市医師会高等看護学院・同准看護学院の事務室・実習室・教室や市医師会事務局にあてられ,5階が県医師会事務局や会議室,6階には公衆衛生センターが設けられている.

症例 全身性疾患と消化器・7

婦人科疾患と胃腸

著者: 日野貞雄

ページ範囲:P.1147 - P.1150

症例1
Krukenberg's tumor
48歳,女性,無職

症候性高血圧症の発見法—症例を中心として

著者: 白倉卓夫

ページ範囲:P.1151 - P.1159

根治できる症候性高血圧症—診断が重要な課題
 わが国の死亡率第1位を占める脳卒中の根底にある高血圧症の治療は,その予防とも関連してきわめて重要である.今日,全高血圧症患者の約90%は,原因不明の本態性高血圧症で,残りの約10%は原因のはっきりしている症候性高血圧症であると推定されているが,この数は診断法の進歩により増加する可能性もあり,事実なお高い数字を出している学者もある.この10%の症侯性高血圧症患者数は,高血圧症患者の総数からいってけっして少ないものでない,特にこのうち,手術により根治しうる症候性高血圧症の診断は,私ども診療に従事するものにとって非常に重要な課題である.これら多くの症候性高血圧症患者が,診療の第一線に立っている医家の,本高血圧症に対する関心の低さに加えて,時閉的制約,診療用腸械器具の不備などから,その原因究明の努力がおろそかにされ,根治できない本態性高血圧症として,一生涯医者通いをさせられるならば,これは反省せねばならない問題である.このような観点から,私どもの高血圧専門外来の受診者のうち,症候性高血圧症が疑われた各種症例をえらんで,その臨床症状と経過を紹介するとともに,最近の診断法についてふれ,さらに私どもが得た2,3の知見について述べ,諸家のこの方面への参考に供したいと思う.

他科との話合い

声のかれ

著者: 里吉営二郎 ,   北村武 ,   藤本吉秀

ページ範囲:P.1177 - P.1185

 嗄声を訴えてくる患者はとかく軽く扱われがちであるが,見のがすと危険なものも少なくない.悪性のものを見分ける上での注意など,内科・外科・耳鼻科の立場から.

阪大・第1内科 研修医のためのWard Conference・10

肺血管病変と心膜炎との合併例—無疹性SLE

著者: 阿部裕 ,   榊原博 ,   松谷公夫 ,   南口利美 ,   中村愛三郎 ,   川越裕也 ,   折田義正 ,   末松俊彦 ,   明山燿久

ページ範囲:P.1160 - P.1167

 阿部 SLEは近来その症例数の増加をみ,まれな疾患ではなくなりつつある.とくに免疫学的検査技術の進歩の結果.自己抗体の検索が比較的簡単に行なえるようになり,皮膚疹のない非典型例も容易に,かつ早期に診断されるようになった.また膠原病一般に対する知識の普及,治療手段としての各種副腎皮質ホルモン,抗生物質の開発などによる予後の改善も,本症増加の要因であろう.
 本日は心肺血管系に特異な病像を呈したSLEを取りあげ,その病態・発病誘因・その他について討論を行ないたい,まず主治医より症例を説明してください.

シンチグラムのよみ方・5

脾臓

著者: 鳥塚莞爾 ,   刈米重夫 ,   高橋豊 ,   倉尚哉

ページ範囲:P.1169 - P.1176

 脾シンチグラム作成には,他の諸臓器のシンチグラム作成のように単に経口または静注投与するだけで目的臓器に放射活性の集積が得られるようなRI標識物質がない.したがって脾シンチグラム作成を目的とする場合は,後述するように,RI標識赤血球を適度に障害し,脾臓の有する異常血球の選別摂取において最も鋭敏かつ巧緻といわれる機能を利用して,選択的にRI標識赤血球を脾臓に摂取せしめる方法が行なわれる.

臨床家の生理学

最低・最高血圧のはかり方とその意義

著者: 沖野遙

ページ範囲:P.1132 - P.1135

正確な血圧を知ることは,血液循環の把握にとって欠かせない.しかし血圧値の高・低は,流れる血液の量や円滑な物質代謝を直接表現したものではない.では,最高・最低血圧はいかに定義されるか,またその測定法の基礎は……

診療相談室

アルカリフォスファターゼが上昇する肝炎と閉塞性黄疸の鑑別

著者: 上野幸久

ページ範囲:P.1189 - P.1189

質問 肝炎のときにしばしばアルカリフォスファターゼの上昇した例があるが,いかなる機転で生ずるのでしょうか.また胆石症のような閉塞性黄疸との鑑別は?(札幌市・I生)

略語の解説 22

6-MP〜NPH insulin

著者: 阿部正和

ページ範囲:P.1087 - P.1087

6-MP
mercaptopurine:メルカプトプリン抗癌剤の1種で,主として白血病の治療に利用されている.核酸代謝の拮抗剤である.最近は免疫抑制剤として自己免疫疾患の治療に用いられることもある.

統計

昭和42年簡易生命表から

著者: 小畑美知夫

ページ範囲:P.1130 - P.1130

 ある年次の死亡状況がそのまま続くと仮定した場合に,現在ある年齢の者があと平均何年生きられるかという年数を示したものが「平均余命」です.生まれてから死ぬまでの年数を寿命といいますから,生まれたばかりの者,すなわち0歳の平均余命をとくに「平均寿命」といっています.この平均寿命の値は,その集団の死亡状況を総合的,かつ端的に示すもので,集団の衛生状態をあらわす重要な指標の1つになっております.
 ここで生命表というのは,ある人口集団の死亡状況を各種の指標によって数量的にあらわしたもので,ある年齢から,ある年齢までの間に死亡する確率に基づいて,一定数(通常10万人とします)の出生者が死亡減少していく状況を理論的に描きだしたものです.

今月の表紙

高血圧症の眼底(螢光造影)

著者: 清水弘一

ページ範囲:P.1088 - P.1088

 高血圧症眼底の螢光造影所見である.図の右下隅に乳頭の一部がみえ,そこから左上方に太い静脈枝と,その下に並んで走る動脈枝とがみえている.乳頭のすぐ近くで静脈枝が動脈枝をのりこえているが,その際に,静脈枝はくびれをみせ,さらに走向が弓状に屈曲している(humping現象).
 画面の中央を横走する動脈枝は,迂曲化と径の変動がいちじるしい,segmentary narrowingとよばれている所見である.この動脈枝と交叉している細い静脈枝は,いずれも交叉部で「く」の字に曲がり,同時に内径の狭窄をも伴っている,この動脈枝が,高血圧症のために軸方向に伸展し,そのために屈曲したと考えてよい所見である.

全国教室めぐり

医学のパイオニアを志して—長崎大・第1内科

著者: 前田蓮十

ページ範囲:P.1139 - P.1139

原爆被災から再建へ
 第1内科は,大正14年3月創設以来45年の歴史を経ました.初代故角尾 晋名誉教授は本邦肝臓病学草分けのおひとりで,厳格,重厚な学風を長崎の地に培われました.不幸にして昭和20年8月原爆により殉職,同時に教室員多数も運命をともにしました.当時助教授であった横田素一郎名誉教授(現長崎原爆病院長)はその後を継がれ,戦後の教室再建に全力を注がれました.廃嘘の中から1本の試験管を拾い集めることから始まったその復興は,同教授の温厚な人柄のもと教室員一同一致団結してようやく軌道に乗りました.
 第3代高岡教授は,昭和34年東大沖中内科助教授よりご赴任になられ,教室の伝統に新風を吹きこまれて早くも10年が経ちました.

ルポルタージュ 西ドイツの医療・3

薬剤師と薬局

著者: 水野肇

ページ範囲:P.1140 - P.1141

"薬剤師と結婚したい"
 昨年,西独のある新聞で,ハイスクールの女生徒を対象に「将来,どういう職業の人と結婚したいか」というアンケートを求めた.この結果は「薬剤師と結婚したい」というのがいちばん多く,第1位だった.ちょっと日本の薬剤師さんからみるとウソのような話ではある.
 たしかに,西独の薬剤師の社会的地位も収入も高い.正直いって,日本とはくらべものにならないぐらいである.そこには,900年まえに医薬分業が行なわれ,300年ぐらいつづいている薬局が,あちこちの街にあるぐらいで,輝ける伝統をもち,しかも,ドイツ特有のギルドに支えられていることが,その大きな理由であろう.しかし,それにしても,この社会的地位と収入の高さは,ちょっと信じかねる人も多いだろうから,薬局を具体的に紹介しよう.

アメリカ医学の実相(最終回)—1968年夏の渡米ノートから

New York Hospital

著者: 日野原重明

ページ範囲:P.1144 - P.1146

New York Hospital
 House Staffの研修プログラム New York HospitalにおけるHouse staffの研修プログラムは以下のごとくである.
 straight medical internship:

メディチーナ・ジャーナル=日医

ヨーロッパからみた日本の医療事情—武見会長,視察旅行を終え帰国

著者: 木島昂

ページ範囲:P.1138 - P.1138

 日医・武見会長は,去る7月18日,パリにおける第23回世界医師会総会出席とヨーロッパ各国の医療事情視察(約1カ月)の旅を終え帰国した.空港での帰国挨拶以来,ヨーロッパ諸国の医療事情については理事会,日医ニュース,放送など数回発表された.その内容はファミリー・ドクターから産学協同,医学教育,薬品の包装の問題まで幅広い.ことに会長自身の視察と同時に,かつて在日し日本の医療に接した経験のある各国の知識人から,自国と日本の医療比較〜批判論を聴取した収穫は大きい.それらを総合すると,日本の開業医制度の長所,大学関連教育病院の不足と学閥支配,医療機関の機能分化の危険性などが浮きぼりにされている.つまり,ヨーロッパという外側から日本を逆にながめて,きびしく医療事情に価値判断を与えたことになる.2,3の問題点を私なりに拾ってみよう.

話題

眼底の血管造影データの集積を再検討—第1回国際螢光眼底シンポジウムから(6月9-14日,Albi,フランス)

著者: 清水弘一

ページ範囲:P.1121 - P.1121

 今年の6月9日から14日まで,フランスの小都市Albiで,第1回の国際螢光眼底シンポジウムInternational Symposlum on Fluorescein Angiographyが開かれた.螢光色素であるフルオレセインナトリウムを造影剤として静注することにより眼底の血管造影ができることがCirculation誌上に発表されたのは1961年のことであり,それから約10年になろうとする現在,そろそろ各国からデータを持ち寄って,国際会議を開いてもよかろうというのがことのおこりである.眼科のなかでも,眼底の血管だけに関するかなり狭い領域であるにもかかわらず,fluorescein angiographistとでもよんでよい専門家が総勢約500人も参加し,にぎやかな会になった.この分野で特にきわだった仕事をしているのは,アメリカのIowaとMiani,ドイツのEssen,オーストラリアのMelbourne,イギリスのLondon,オランダのAmsterdam,それに日本なのであるが,おもだった顔ぶれはほとんどみえている.
 6日間続いたシンポジウムでは,毎日,午前・午後と,それぞれ違った中心テーマについての発表・議論がなされた.眼底疾患は,なにかの意味で血管病変と関係があるので,眼底診断学に関する事柄は当然であるが,血液のrheology(「流れ学」)の問題視神経を扱った神経眼科の問題なども当然対象となり,また,糖尿病性網膜症についても1日が割当てられ,検討された,国際会議というものは,一般には,参加者が未発表のまったくの新知見を持ってきて発表することはほとんどなく,すでにどこかでpaperになっている業績の焼きなおしのようなものを出すお祭り的な色彩が強いものであるが,まだ開発の途上にある分野だけに,このシンポジウムは,目新しい内容が多く,議論も活発に行なわれた.

臨床メモ

下痢—むつかしい扱い方

著者: 松島富之助

ページ範囲:P.1159 - P.1159

 "1日3-4回の下痢をしているので,ミルクを少なくし,離乳食も中止しているのですが,いっこうによくならないのです……"という訴えを聞くことが多い.熱もなければ,機嫌もよくて,食べたくてキーキー声をあげて泣きわめいている乳児である.下痢止めをもらってもあまり効果がなく,2週間から1カ月ぐらいもこんな症状が続いているというのである.
 これは明らかに逆な治療方法と思われる.空腹になった腸や胃は激しい蠕動運動を起こし,腸の粘膜からは濃い粘膜が分泌されるので,"空腹による下痢"を誘発してくる.黒みがかった粘液便でしかも量は少ないが,粘液便があると"消化不良症"の便と古い教科書や育児書に書いてあるので,病気扱いされて,食餌制限を受けがちである.しかも機嫌が悪いのは,空腹によるものではなくて,一般状態が悪いためと解釈されることがしばしばである.

病気のあとの甘えん坊

著者: 松島富之助

ページ範囲:P.1185 - P.1185

 おとなでも,病気をすると急に気が弱くなるが,小児ではその変わりぐあいが激しい特徴をもっている.
 急にあまえん坊になって夜泣きをしたり,歩かなくなってすぐに抱っこやおんぶを要求するようになったり,いままでやめていた哺乳びんやおむつが必要になったりする小児は2-3歳ごろ特に多くみられる.病気で注射されたことを覚えていて,おびえる気持はもちろんあるであろう.しかし注射を受けたか否かにかかわらずあまえん坊になるのは,母親からじゅうぶんの看病をされたことのほかに,ふつうの生活に早くもどりたい気持がおさえられているために,反抗したり,あまえたり,無気力になると考えられる.

検査メモ

糖尿病の診断基準について(1)

著者: 守屋美喜雄

ページ範囲:P.1150 - P.1150

 糖尿病の診断には,糖負荷試験の異常を確かめることが最もたいせつですが,その診断基準が学者によって異なるため,実地医家はたいへん不自由をしてきました.しかし,去る7月に開かれた第12回日本糖尿病学会において診断基準案が発麦され,今秋には最終決定をみることになりました.多数の学者が時間をかけて検討した案なので,おそらく原案どおりに正式決定すると思います.その内容はおよそつぎのとおりです.なお,以下の数字は,すべて血糖値をmg/dlで表現したものです.
1.100gブドウ糖経口負荷試験の場合

文献抄録

乳児栄養の実際—Amer. J. Dis. Child 117, 483-492 (Apri1) 1969

著者: 木村和郎

ページ範囲:P.1129 - P.1129

 ある地方で,お母さんの乳児栄養のやり方を調べ,医師の指導内容と比較した.調査事項は母乳栄養,人工栄養,離乳と全乳の開始年齢,消毒,ビタミン類,およびその他の問題である.
 調査の結果判明したことは,乳児栄養実施法の大部分は厳格にこれを行なうことは不当だということと,および,一般的にいって,母親たちは,医師の厳しい指導を受けなくとも,じゅうぶんよくやるようだということである.

薬剤の相互作用—ある薬剤によって,他の薬剤が作用の場に運ばれるのを阻害されること—JAMA 208;1898 (Jun) 1969

著者: 若林保司

ページ範囲:P.1168 - P.1168

 薬剤は相互にその作用を強く修正しあうともいえるが,そのメカニズムはますます多くなっている.これらの相互作用のうち,ある薬剤が他の薬剤によってその薬理学的作用点に到達するのを阻害される場合,この薬剤の治療効果はブロックされるといってよい.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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バックナンバー

60巻13号(2023年12月発行)

特集 一般医家のための—DOAC時代の心房細動診療

60巻12号(2023年11月発行)

特集 内科医が遭遇する皮膚疾患フロントライン—「皮疹」は現場で起きている!

60巻11号(2023年10月発行)

増大号特集 患者さんの質問にどう答えますか?—言葉の意味を読み解きハートに響く返答集

60巻10号(2023年9月発行)

特集 ミミッカー症例からいかに学ぶか

60巻9号(2023年8月発行)

特集 症例から読み解く—高齢者診療ステップアップ

60巻8号(2023年7月発行)

特集 浮腫と脱水—Q&Aで学ぶジェネラリストのための体液量異常診療

60巻7号(2023年6月発行)

特集 整形外科プライマリ・ケア—内科医が知りたい整形外科疾患のすべて

60巻6号(2023年5月発行)

特集 Common diseaseの処方箋ファイル—臨床経過から学ぶ20症例

60巻5号(2023年4月発行)

特集 臨床医からみたPOCT

60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

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60巻2号(2023年2月発行)

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60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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