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雑誌目次

雑誌文献

medicina6巻11号

1969年11月発行

雑誌目次

EDITORIAL

リウマチ熱患者の管理—その問題点と課題

著者: 加藤新

ページ範囲:P.1217 - P.1217

 リウマチ熱患者の管理を,第1に活動性の急性リウマチ熱,第2に活動性消退後のリウマチ性心臓病,この2つの部門に分けて,それぞれの問題点を指摘してみたい.
 すると第1の部門については,1)急性リウマチ熱の経過において心臓障害を残さしめない,もしくは少なくも最小限にするためには,治療法をどうするか?—心臓障害防止上適切な治療法選択の問題,2)リウマチ熱既往者における再発予防法としては,どの方式がよいかの問題,3)さらに初回発症そのものを予防する問題以上の3項目が含まれる.次に第2の部門については,1)弁膜症の外科的治療に際し,病理組織学的所見として比較的高率にAshoff体が認められたところから,従来行なわれた通常の臨床検査ではとらえがたいリウマチ性炎症の潜在的持続という事実が提起した問題,2)ことに心臓予備力が減じている場合に,予後を悪化させるうっ血性心不全の生起と亜急性細菌性心内膜炎の合併,ならびに偶発的一般感染症を,どう予防し治療するかの問題,3)血流動力学的障害としての弁膜症だけが残り,リウマチ活動性は解消したと診断した場合は,運動許容度など,社会環境内において患者個人別に考えられるべき再適応の問題が含まれるであろう.以上の諸問題点は,今後も常にリウマチ熱の臨床医学的知見の進歩と歩調を合わせてくり返し再検討されてゆかなければならないはずである.

今月の主題

リウマチ性心臓病の予防

著者: 本間光夫

ページ範囲:P.1218 - P.1225

 リウマチ性心臓病は依然として存在し,再発をくり返しているが,成人の場合ペニシリンが,よく亜急性心炎の進展を阻止しうる.リウマチ熱のペニシリン療法,リウマチ性心炎の抗炎症剤療法など,リウマチ性心臓病の化学療法剤による予防について.

リウマチ熱,リウマチ性心臓病—発見から管理まで

著者: 高階義登 ,   大国真彦 ,   土肥豊 ,   佐々木智也

ページ範囲:P.1226 - P.1234

 リウマチ熱,リウマチ性心臓病の診断・管理は,他のリウマチ性疾患と同様,医者・患者の認識度も低いようである.一般的な常識を両者が身につけ,社会的理解も深めてゆくと同時に,見おとされがちな不顕性のものに今後の焦点をあわせてゆくべきであろう.

Leading Article

大学病院のあり方

著者: 尾前照雄

ページ範囲:P.1254 - P.1256

 現在の大学病院の機能を考えてみると,医学教育(undergraduate education),卒後研修(postgraduate training),研究者の養成,関連病院就職への窓口といった,学生が医師として育ち,社会活動を行なうに至るまでのほとんど全過程がこの中に集約されていることに気づく.このことは,また日本の臨床医学と医学研究が"大学病院のあり方"をぬきにしては,ほとんど考えられぬことをも意味している.現在,インターン廃止運動に端を発した青医連の運動,あるいは全国無給医の運動は"大学病院のあり方"に対して深刻な批判と問題提起を行なっている.このような時期に,編集者から"大学病院のあり方"について,忌憚のない意見を述べるようにとのご依頼であったが,私にはその資格もなく,また具体的な考えを持ち合わせているわけでもない.ただ,教授会と若い医師層ないし学生の中間層の立場にあるものとして2,3の考えを述べ,読者諸賢のご批判,ご叱正を仰ぎたいと思う.
 この問題のなかには当然先に述べた大学病院の機能すべてが含まれるわけであるが,その前に大学病院の性格ないし位置づけが当然問題にされねばならないし,ついで教育・研究のあり方ということになるであろう.

診断のポイント

自己免疫性肝疾患

著者: 荒木嘉隆

ページ範囲:P.1235 - P.1238

自己免疫性肝疾患の概念
 自己抗体あるいは自己免疫現象はいろいろな疾患にみられているが,それが病気の原因かあるいは単なる結果にすぎないかは,すべての個々の疾患でそれ程はっきりしているわけではない.このことは肝疾患の場合にもあてはまるのである.
 それは,肝障害の結果,単にそれに付随して自己免疫現象がおこっているのではなくて,それによって確実に肝疾患がおこされうるという立証が現在なお不十分なためである.このことは,自己免疫性肝疾患という概念を考えてみたり,またその言葉を使う場合に,一応心にとめておく必要がある.しかし,"自己免疫性プロセスが,肝障害を進展させる原因になっていることを強く疑わせる1群の肝疾患"があることも確かである.

小児仮性コレラ

著者: 本広孝

ページ範囲:P.1239 - P.1240

決定的でない原因
 乳幼児下痢症は従来夏期に多発傾向を呈していたが,最近5年間の当科外来3歳以下下痢児は326名で春期(3・4・5月)63名19%,夏期(6・7・8月)63名19%,秋期(9・10・11月)51名16%,冬期(12・1・2月)149名46%と夏期に比して2倍以上の頻度で,最近の乳幼児下痢は冬の疾患として特徴づけられている.症状は軽症化が著明で,抗生物質の普及,食品衛生管理の適正化,環境の改善,衛生指導の向上がその一因をなしている.月年齢別にみると,離乳初期の5カ月が最も多く26名8%,次いで果汁を与えはじめる3カ月23名7%,3カ月から12ヵ月で194名と全体の6O%を占め,離乳期の乳児に多くみられた.
 これら下痢症の原因は食餌性・体質性・腸管感染性・腸管外感染性などに分けられるが,冬期下痢症のうち,白色調を呈する下痢便に加え,嘔吐,上気道カタル症状を3主徴とし散発あるいは集団発生をきたす下痢である.本症は60年まえ伊東祐彦教授により小児仮性コレラとして提唱されたものである.近年は白色便性下痢症あるいは白痢とよばれ特異な座を占め,腸球菌説,体質異常説,感冒説,ウイルス説,腸球菌をのぞく細菌説など原因が諸家により報告されているがまだ決定的でない.

治療のポイント

ブレオマイシンの臨床効果

著者: 武正勇造

ページ範囲:P.1242 - P.1243

 ブレオマィシン(Bleomycin)は梅沢らによりStreptomyces verticillusの培療濾液から得られたもので,エーリッヒ癌等動物実験によってすぐれた抗腫瘍性を認めた抗生物質である.市川らが初めて臨床試験を行ない,陰茎癌に著効を認めて,皮膚癌を初めとする扁平上皮癌に有効な薬剤とされている.

リウマチ熱の間歇期

著者: 大国真彦

ページ範囲:P.1244 - P.1245

リウマチ熱の間歇期とは
 リウマチ熱はある程度自己限定性の疾患と考えられている.すなわちリウマチ熱の炎症そのものは,たとえ放置されていても大部分は4-6カ月位の経過で自然に治まるものである.
 しかし一方リウマチ熱はその2/3において心炎を伴い,心炎がある例はリウマチ性弁膜症を残しやすい.すなわち欠損治癒である.

尿路結石の待期療法

著者: 岡元健一郎

ページ範囲:P.1246 - P.1247

腹部疝痛→尿管石を思い出すこと
 腹部癌痛は多い症状であるが,泌尿器科医として希望することは本症状を呈する疾患として尿管石があることをぜひ思い出していただきたいことである.腎結石,尿管石を上部尿路結石というが,病痛は後者に多く,前者は鈍痛であることが多い.疝痛は尿管石が発見される最大の自覚症状である.上部尿路結石の3大徴候として結石疝痛,血尿,既往の結石排出が教科書にあげられているが,後者は悪性結石症を除いては少なく,血尿も肉眼的血尿はむしろ少ない.もちろん,顕微鏡的血尿は存在するので,最近の試験紙法で尿の潜血反応をみれば陽性にでる.しかしなんといっても特有の症状は尿管から膀胱,尿道方向に放散する発作性の疝痛である.
 この疼痛が右下腹部におこるとしばしば急性虫垂炎とまちがわれやすい.嘔吐,冷感,腹壁緊張を伴うこともあるからますますそうである.時には急性虫垂炎の手術をうけ,さらに疼痛が止まらないために始めて尿管石が発見されることもある.尿管石は下部尿管に篏頓することが多い(55.4%鹿大)ので,とくに下腹部の疝痛では本症の存在をつねに念頭におくことが臨床家にとっては大切だと思う.

目で見る臨床検査シリーズ

下痢便の観察

著者: 柳下徳雄

ページ範囲:P.1208 - P.1209

 下痢を起こす疾患は数多いが.その際にみられる下痢便は,病変部を通過してきた旅行者ともいうべきものである.したがって,これを詳細に観察すれば,疾患別の特異性がかなり認められ,診断の有力な手がかりが得られる.もちろん,確定診断は,糞便の培養検査や顕微鏡検査・直腸鏡検査・レントゲン検査などの結果にまたなければならないが.特徴を心得て下痢便を観察すれば,少なくとも.検査を依頼する方向が、ぐっと的確になるはずである.

糞便の肉眼観察と検査

著者: 林康之

ページ範囲:P.1248 - P.1249

 X線検査法および内視鏡検査技術の進歩普及とともに古典的ともいえる糞便検査はやや軽視されてきつつある.特に小児科患者をのぞいては採取・運機・検査・廃棄などすべての段階で何かと取り扱いに障害が多く,一般にスクリーニングテストとしての潜血反応,虫卵検査のみが実施されるのみになりつつある.しかも,検体である糞便は直接検査室へ送付され,主治医の眼は通っていない.さらに検査項目としての外観,色調は主治医でなく検査室で記入することを要求されることすら起こってきている現状である.
 糞便の外観・色調の観察は尿検査同様にかなりの診断的情報が得られ,主治医の立場からすれば一見してただちにこの糞便はどの項目を検査して診断を確かめるかが理解される.いかに患者の観察とその表現が正確であっても,また検査にあたった技師の報告が正しくとも,主治医ほどの医学的知識や経験にもとずく判断は期待できない.糞便の外観・色調などの観察は検査業務というよりはむしろ医師の診療上の判断業務に属すべき性格のものである,したがって,血液あるいは体液の複雑な時間を要する分析検査を検査技師に依頼することとは異なる.

負荷試験=方法と評価

Fischberg濃縮試験

著者: 樋口順三

ページ範囲:P.1194 - P.1195

もっと広く行なわれてよい検査
 腎機能検査といえば,すぐにPSP排泄試験やクリアランス試験などがあげられ,濃縮力試験についてはあんがい忘れられている場合が多い.PSP試験やクリアランス試験は試薬の静注,時間的採尿・採血,さらにその測定など実施にあたってめんどうな操作を伴うので,実地医家では検尿で蛋白が出ていても,こうした手間のかかる検査を行なえないのが現況である.それに比べてFischberg濃縮試験は,比重計さえあればだれにでもできる簡単な検査で,しかもその結果は次のようないろいろの意味をもっており,手軽に行ないうる腎機能検査の1つとして実地医家のかたにもルーチンの検査としてもっと広く行なわれてよい検査法であろう.

診療手技

眼底検査

著者: 松井瑞夫

ページ範囲:P.1196 - P.1198

 眼底を検査する方法には,倒像検査法と直像検査法とがある.倒像検査法は眼科医には必須のものであるが,他の臨床各科の医師が眼底検査を行なうには,直像検査法がよい.この直像検査法は,電気直像検眼鏡を用いて行なうものであり,手技の習得が比較的容易であり,拡大率も15倍ないし16倍と大きく,十分な散瞳を行なったうえで行なうときには,完全な暗室は不要であり,通常の診察室の窓の光をカーテン・ブラインドなどでさえぎり,部屋の照明を消して,うす暗い程度にすれば十分である.

救急診療

輸血ショック

著者: 鳥居有人

ページ範囲:P.1200 - P.1201

 現在行なわれている輸血の方法としては,保存血輸血がそのほとんどを占めている.血液型の判明している保存血が病院へ送付され,院内の輸血部・検査室もしくは受持医が,患者血液との間で交叉試験を行なって,その適合性を確認するため,不適合輸血(溶血性副作用)はまれである.しかしその発見が遅れれば,重篤な輸血ショックとなり,死の転帰をとる場合もある.これは医療上の過誤により惹起された緊急事態であり,人手不足の場合など,的確な処置を実施するのはなかなか困難である.

特別座談会

医局問題を語る

著者: 池田貞雄 ,   森田興二 ,   北村明 ,   松村幸司 ,   川上武

ページ範囲:P.1257 - P.1264

 医学部紛争は,いまだになんらの解決も得られないまま,全国的な大学紛争にまで拡大する情勢を見せる一方,授業再開という事態を迎えたところもあるが,医学部問題の中枢とも見られる医局問題に焦点をあて,若い革新派の意見を聞いてみた.この中から,わが国の医療全体の動きを読みとることができないだろうか.

グラフ

抗ヒアルロニダーゼ値と抗ストレプトキナーゼ値の測定

著者: 熊谷直秀

ページ範囲:P.1211 - P.1216

 リウマチ熱でないものを誤ってリウマチ熱と診断すること(overdiagnosis)は,その後の長期管理(少なくとも5年間,小児では満18歳となるまで)を義務づけることになり,また誤ってリウマチ熱を見おとすならば(underdiagnosis),後になって知らぬまに心臓弁膜症に移行させる危険がひそんでいる.リウマチ熱診断のためのJonesの再改訂規準(1965)では,先行溶連菌感染症の証明を不可欠のものとし,陽性率の低い細菌学的証明よりも血清学的証明のほうをすすめている・そのために,従来のASL-O(抗ストレプトリジン)値測定のほかに,抗ヒアルロニダーゼ値,抗ストレプトキナーゼ値測定の併用が望ましいとされた・最近,わが国でも抗ヒアルロニダーゼ値測定の簡単な試薬キットが市販され,抗ストレプトキナーゼ値測定の試薬キットも近く市販される.

症例 全身性疾患と消化器・8

肝硬変症に合併する胃の病変

著者: 村井俊介 ,   額賀厚徳

ページ範囲:P.1265 - P.1267

症例
 内○蒔○ 56歳 男 酒屋経営
 入院時主訴 吐血

 現病歴 4年前強い倦怠感と軽い黄疸が出て当院内科に入院した.このとき種々の検査を行ない,また肝生検を受けて門脈性肝硬変の診断を受けた.症状は容易に緩快し,外来治療を受けていたが,昨年夏には腹水が貯溜したので1カ月ほど再入院している.このときは利尿剤を用いて軽快している.

前縦隔洞胸腺奇形腫の2例

著者: 後藤勝弥 ,   桑原寛 ,   梶山孟浩 ,   浅山良吉

ページ範囲:P.1268 - P.1272

 術前に前縦隔洞奇形腫の診断を下し,手術によりそれを確認するとともに,原発臓器に関し,胸腺との間に関係を見いだした2症例を報告する.本腫瘍の胸腺原発説はSchlumberger1)が1946年に提唱して以来,しだいに有力となり,近年わが国においても注目されはじめているが,ここに報告する2症例も,この説に1つの根拠を与えるものと思われる.

犬糸状虫感染症

著者: 吉村裕之

ページ範囲:P.1274 - P.1279

 近年,犬糸状虫(Dirofilaria immitis)で代表されるDirofilaria属線虫の人体寄生にもとづく感染症(Dirofilariasis)の症例が次々に各地から報告されつつあり,人畜共通感染症(Zoonosis)の観点から注目されてきた.本命題はFaust(1957)によるreviewに続いてBeaver & Orihel(1965)およびOrihel & Beaver(1965)のアメリカ(U. S. A)における臨床例の追加とその形態学的再検討が吾人の関心を喚起する機縁となっている.筆者ら(1968)もまたわが国における犬糸状虫のヒト肺臓寄生の最初の症例を経験したが,ここ2-3年においてカナダやソビエトなどからも次々と新しい報告がなされていることは注目に価しよう.

阪大・第1内科 研修医のためのWard Conference・11

総胆管結石症—その成因と診断を中心に

著者: 阿部裕 ,   小林正 ,   鎌田武信 ,   中村允人 ,   横井浩

ページ範囲:P.1282 - P.1288

多くなりつつあるコレステロール系結石
 阿部 胆石症は外来受診患者の約4.5%くらいをしめており,また剖検では8%前後に発見され頻度の高い疾患である.また従来わが国ではビリルビン系石が多いとされていたが,1965年の亀田の統計によると,コレステロール系石46.6%,ビリルビン系石41.5%とコレステロール系石が多くなりつつある傾向が認められる.ことに都市にその傾向が強く,これは食生活の変化によるものと考えられる.胆石症をめぐる問題点としては臨床的にはこのほか,胆石の成因,胆石と胆嚢癌との関連,膵炎や冠動脈疾患との関係,silent stoneの問題,手術適応の問題など数多くの事項があげられるが,きょうは胆石症の患者をめぐってその成因と診断上の問題をとりあげて最近の考え方,あるいは見解を整理してみよう.まず主治医の小林君より症例を呈示してもらおう.
小林 症例は表1のとおりです.

シンチグラムのよみ方・6

腎臓

著者: 鳥塚莞爾 ,   浜本研 ,   森田陸司

ページ範囲:P.1289 - P.1295

 腎シンチグラム作成にはレノグラム作成に用いられる131I-hippuranおよび131I-diodrastが用いられたが,これら薬剤はすみやかに尿中に排泄されるために,腎実質を十分に描写させることは困難で,腎シンチグラム作成の放射性医薬品としては不適当であった.1956年にBorghgraefらにより動物実験で203Hg-neohydrinが腎尿細管に集まることが明らかにされ,1960年McAfee, Wagnerらにより203Hg-neohydrinを用いて,ヒトの腎シンチグラムが作成された.また最近,scinticameraの出現により腎シンチグラム作成に不適当とされた131I-hippuranを用い,30秒-1分間の曝射による連続撮影で,腎の形態および機能を同時に知ることが可能になった.

臨床家の化学療法学

抗生物質の臓器内濃度と臨床効果

著者: 大久保滉

ページ範囲:P.1250 - P.1253

 化学療法を合理的に行なうために,抗生物質の臓器内濃度を精細に検討する必要がある.感染臓器をつきとめたうえで薬剤を選択すべきことはいうまでもないが,その投与後の臨床効果の実証はむずかしく,今後に残された問題である.

診療相談室

口内炎の原因と治療

著者: 西山茂夫

ページ範囲:P.1307 - P.1307

質問 口内炎の原因と治療,特に反復性について教えて下さい.(福岡市・S生)

medicina CPC

アルコールと眠剤嗜癖を主徴とした例

著者: 石田元男 ,   大貫寿衛 ,   田崎義昭 ,   米山達男 ,   金子仁 ,   河野実 ,   富永一

ページ範囲:P.1298 - P.1304

下記の症例を診断してください.

略語の解説 23

NPN-PAN

著者: 阿部正和

ページ範囲:P.1203 - P.1203

NPN
 nonprotein nitrogen:非蛋白性窒素 蛋白質以外の,含窒素成分の総括名.たとえば,尿素,尿酸,クレアチン,クレアチニン,アンモニア,アミノ酸などに含まれる窒素を総称したもの.血中のNPNは20-40mg/dlで,腎疾患,肝疾患,心不全,重症貧血にさいして増加する,わが国では,以前Rest-N,残余窒素とよばれていたものである.

統計

国民健康調査からみた疾病構造の変化

著者: 小畑美知夫

ページ範囲:P.1205 - P.1205

 この調査は,国民の傷病の種類と量,傷病の治療状況,治療費額などを把握し,衛生行政,医療行政に必要な基礎資料を得ることを目的として調査するもので,昭和23年以降毎年10月に行なわれています.この調査の傷病の定義は,1つは身体または精神が異常状態になったため,なんらかの治療処置をした場合,もう1つは身体または精神が異常状態になったため,治療処置はしないが,1日以上床につくか,1日以上日常の業務を中止した場合となっております.

今月の表紙

滑膜の電顕像

著者: 塩川優一

ページ範囲:P.1206 - P.1206

 関節腔は滑膜Synovial tissueによりおおわれている.滑膜の表層にある滑膜細胞Synovial cellは光顕でみるとどれも同じようにみえるが,電顕では構造上明らかにA・Bの2型に分けられる,A型細胞はいちじるしく多くの空胞を有し,細胞の表面には複雑なひだがあって,ときには指のような形の突起を形成する.細胞質にはGolgi体と少数のミトコンドリアを有する.A型細胞の機能は主として貪食であって,たとえばフェリチンのような電子密度の高い物質を関節腔に注入すると,顆粒状になって滑膜細胞の空胞中に出現する.
 B型細胞は多数の小胞体と多数のリボゾームを含む.この細胞は貪食機能は示さず,主として合成の機能を示すものと考えられている.たとえばムコ多糖類ピアルロン酸はB型細胞で合成され,関節腔中に分泌されて滑液の成分になるものである.またこの細胞にはフィブリノリジン,アミラーゼ,リパーゼを分泌する作用がある.

トピックス

SMONに対するATP・ニコチン酸大量点滴療法の効果

著者: 星允 ,   桜川宣男 ,   本間義章 ,   椿忠雄

ページ範囲:P.1224 - P.1225

 SMON(Subacute myelo-optico-neuropathy)でみられる知覚障害,ことにしびれ感は激烈で耐えがたく,各種の治療法が試みられているが,難治であるとされている,筆者らはSMONおよびその他の神経疾患に対し,ATP・ニコチン酸を大量点滴投与し,しびれ感に対しかなりの治療効果をあげえたので,その成績の一部を紹介する.

メディチーナ・ジャーナル=厚生省

韓国におけるコレラ—その現状と影響度

著者: 実川渉

ページ範囲:P.1281 - P.1281

流行経過
 今年のコレラ発生は,例年にくらべ,早期かつ大規模に進展し,わが国検疫当局は早くよりその蔓延を警戒していたが,9月に入り,ソウル放送は韓国西海岸地方に疑似コレラが発生したことを報じた.9月3日ただちに外務省を通じ公式発表をまったところ,その晩になって在韓大使館より,本疾患は腸炎ビブリオによる食中毒である旨伝えてきた.翌4日韓国日報は「死をよんだアサリ貝—ビブリオによる食中毒」という見出しで本件を報じた.しかしながら,発生はその後も続き,地域も限局せず拡大しているところから,なおコレラの疑いはあるとして,わが国検疫陣の警戒体制は解かれなかった.9月9日,韓国保健社会部(わが国の厚生省にあたる)は,本疾患の急速な波及状況にかんがみ,コレラに準ずる防疫体制をとることを発表し,コレラ汚染地区として,全羅北道群山市等2道1市郡を指定し,世界保健機関(WHO)に通報する旨公表したが,その原因菌についてはアジア型でもエルトール型でもない新しい型の菌であると述べた.
 なぜこのように,原因菌について説を変えたり,あいまいな態度をとったか? 多分に政策的な感がしたが,一方にはNAGも疑われ,この解決は,流行菌株について直接検査する以外にないとして,9月15日筆者らは韓国にとび,現地調査を行なうとともに原因菌の分与をうけ19日に帰国した.

話題

—腫瘍髄伴症候の臨床—第7回癌治療学会総会(9月4-6日:新潟市)シンポジウムから

著者: 里吉營二郎

ページ範囲:P.1273 - P.1273

 腫瘍の患者を観察していると,時折,腫瘍そのものや転移などによって起こってくる症状以外に内分泌異常を思わせる症状,たとえばCushing症候群,Addison様症状,女性乳房などを見いだすことがある.また種々の電解質の異常,血液成分の異常,神経系では小脳の変性,"多発性神経炎,筋炎など,腫瘍に伴って現われてきたと思われる種々の疾患のあることが以前から報告されてきている.これらのうちには腫瘍と直接な関係があるか否か不明のものもあり,因果関係がまだ十分明らかにされていないものもあるので,現在ではこれらのものを"腫瘍の随伴症候"とよんでいる.この問題の研究は近年一部の人々からたいへん注目をあびているが,これは随伴症候のあるものは腫瘍の産生する物質によって起こることが明らかにされ,腫瘍細胞そのものの研究の手がかりになると思われる一方,従来原因不明であった種々の神経疾患を解明する糸口になると考えられるからであろう.
 今年の癌治療学会では新大・椿教授,がんセンター・熊岡博士の司会によってこの問題が取り上げられた.もちろん現在やや解明の進んだものを中心に7人の演者によってそれぞれの問題が討議されたものであるが,広い範囲に及んでいるので,興味ある点を中心に簡単に触れてみたい.

臨床メモ

かぜひきの子どもの扱い方

著者: 松島富之助

ページ範囲:P.1279 - P.1279

 子どもは病気にかかると,いわゆる赤ちゃんがえり現象が起こって,甘えん坊となり,せっかくでき上がった自立の習慣がくずれて,排尿・便がダメになったり,哺乳瓶がほしくなったり,指しゃぶり,夜泣き,食欲不振,などがあらわれやすい特徴がある.
 これらの症状は,病気が治ったあとの子どもの扱い方によって,すぐとれてしまうものと,長くのこるものとがあるので,母親に対して,医師は上手な子どもの扱い方も,治療と並行して話してやる必要がある.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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