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雑誌目次

雑誌文献

medicina6巻12号

1969年12月発行

雑誌目次

EDITORIAL

Functioning Tumor

著者: 石川七郎

ページ範囲:P.1335 - P.1335

 日本語で"活動性腫瘍"といえばよいのにfunctioning tumorとよぶのは,この範囲の知識が少ないので,まとまりのつかないまま外国語を使っているのだと思う.こういうことは,過去にも,他の事例でたくさんあったし,今の状況では私もfunctioning tumorとよぶほうがピッリすると感じる.
 "活動性腫瘍"ということばは,古くから内分泌臓器腫瘍のあるものに使われてきた.すなわち,元来の内分泌腺腫瘍は機能的には2型あって,腫瘍性増殖だけの場合と,それに固有の内分泌機能亢進を伴うものとがある.代表的なものは甲状腺腺腫,膵ラ島腫瘍,副腎皮質腺腫などであろう.それらのあるものに,ホルモン活性値の上昇と本質的な症状とを伴えば,これを"活動性"といい,病理組織学的の裏づけも得られる.

今月の主題

原発性肺癌の随伴症候

著者: 本間日臣

ページ範囲:P.1336 - P.1341

 肺癌に伴う特異な全身症状の主なものについて解説した.これらの症状についての概念をもつことは,肺癌の診断,治療のみならず,未知の病態生理解明への手がかりを得るという点から大切であると考える.

最近注目されつつあるFunctioning Tumor—その概念の整理

著者: 井村裕夫 ,   吉田尚 ,   藤田拓男 ,   阿部令彦 ,   阿部正和

ページ範囲:P.1342 - P.1350

 Functioning Tumor,ちょっと魅力的な言葉の響きをもつが,いったいどんなものか.最近とくに注目されるようになってきたので,ここらで概念の整理をしておく必要性が生まれてきた.適当な日本語訳もない現在,その検討からはじめなければならなかったのが,この話し合いである.

Leading Article

薬剤の検査成績に及ぼす影響

著者: 林康之

ページ範囲:P.1370 - P.1374

臨床検査技術の進歩とともに生じる薬剤影響についての研究課題と問題点
 近年の病態生化学研究の進歩は.薬物療法の発展に寄与するところが大き.く,相つぐ新薬の出現となりつつある.これらの新薬が患者に幾多の恩恵を与,えたであろうことは否定できないが.一方では日常臨床検査成績に多種多様の.影響を及ぼしていることを知る必要がある.
 薬物とは,1)もともと生体内には存在しない.2)中間代謝産物として存在の可能性はあるがかならずしも常在しない.3)常在成分ではあるがきわめて微量である,という以上3項のうちのいずれかに該当ずる性質のものである.1)項に属する薬物は毒物として代謝処理(解毒作用)され,2).3)項に属する薬物は生理的な代謝系路にしたがって処理排出されるであろう,その処理,代謝過程において薬理学的効果を現わすと同痔に体液成分の変化をきたすことは十分推定できるところで,現実に臨床検査技術の進歩とともに.従来なおざりにされていた部門の解明が必要となった.

診断のポイント

ASL-O陽性の持続するとき

著者: 入交昭一郎

ページ範囲:P.1351 - P.1352

ASL-Oとは
 溶血レンサ球菌(以下溶レン菌と略す)が菌体外に分泌する物質にはStreptolysin O,Streptolysin S,Streptokinase,Hyaluronidase,Streptodornase,Ribonuclease,Proteinaseなどいろいろなものが知られ,人体が溶レン菌の感染を受けるとこれらの物質が人体内で溶レン菌より産生され,抗原性のあるものについてはそれに対する抗体が出現してくる.Anti-Streptolysin O(ASL-O)は字のごとくStreptolysin Oに対する抗体で,先行溶レン菌感染の有無を知るうえに最もポピュラーで今日広くその測定が行なわれている.
 溶レン菌にはA,B,C,D,E,F,G,H,K,L,M,N,Oの13群があり,StreptolysinOは大多数のA群溶レン菌感染のほかにC群,G群の感染の場合にも産生される.したがってASL-O値の上昇は厳密にいえばA群溶レン菌感染症のみに特有ではなくC群,G群の場合にもみられるが,実際的にはA群溶レン菌感染症の血清学的診断法としてASL-O値測定が行なわれている.

悪性貧血

著者: 内野治人

ページ範囲:P.1353 - P.1354

 悪性貧血という疾患は,2つに分けて考える.1つは古典的な意味における,い  わゆるAddison-Biermerの悪性貧血Pernicious anemiaであり,もう1つは巨赤芽 球性貧血Megaloblastic anemiaという病名で代表される一群の疾患である.

Vanishing Lung

著者: 村尾誠

ページ範囲:P.1355 - P.1357

"VanishingLung"という表現
 肺のX線写真をみていると,肺紋理が見られない部分に気づくことがある.ある症例では,このような肺組織の消失とみられる所見が年月を経てしだいに拡大し,1肺葉さらに全肺野に及ぶことがある.このような所見を,はじめて"vanishinglung"とよんだのはBurke(1937)1)であるといわれる2).X線像での「消えゆく肺」に対応する病理学的変化を考えてみると,まず肺嚢胞症とくに嚢胞性肺気腫bullous emphysemaが念頭に浮かぶ.また気管支性嚢胞,気胸,肺動脈閉塞症の特殊な例も同様な所見を示しうるであろう.近似的な表現として,giant bullae,pneumatocele,cotton-candy-lung,progressive Lungendystrophie3)などの名のもとに発表されている症例の数も少なくない.したがって,X線像としてvanishing lungをとりあげる場合には,いくつかの異なった病変を包括する可能性があるので,むしろvanishing lung syndromeとして取り扱うべきものであろう.

治療のポイント

慢性関節リウマチの生活指導

著者: 間得之

ページ範囲:P.1358 - P.1359

患者の教育と治療に対する動機づけ
 慢性関節リウマチ(以下RA)とわれわれが診断するには,現在のところ,1958年に,American Rheumatism Associationの委員会によって示された診断基準にしたがっていることは衆知のことであるが,いずれの疾患にせよ,その診断が確立されてはじめて治療方針なり,生活指導なぢが生まれてくることはいうまでもない.RAに関しては,上記A. R. A. の診断基準によるとしても,Classical RA,Definite RA,Probable RA,Possible RAの4つにわけられており,前2者は成書に記載されるRAの諸症状を一応そなえているが,後2者については文字通りprobableあるいはpossibleの域をでないものであるから,後2者については,そのfollow upが重要で,あとになって前2者に入るものと,RAとは別の疾患であることが判明するものとが混じっていることに注意し,後2者については,その旨を告げて,医師の手をはなれないように指導せねばならない.一方,本稿の主題となる,ClassicalないしDefinite RAの患者を前にしては,RAそのものの経過が長いものであること――すでに承知している患者も多いが――またその経過中には幾多の波があることを説明し,短期間における症状の消長に一喜一憂する愚を指摘し,長期療養の心がまえをもたせなければならない.

カネンドマイシン

著者: 河盛勇造

ページ範囲:P.1360 - P.1361

カネンドマイシンとは
 カネンドマイシン Kanendomycin(以下KDM)は,放線菌Streptomyces Kanamyceticusの変異株が産生する新しい抗生物質である,このStreptomyces Kanamyceticusというのは,カナマイシン(KM)を作る放線菌であるから,当然KDMとKMはきわめて近い関係にあることが想像されるが,事実KDMの化学構造は,2'-amino-2'-deoxy-Kanamycinと決定されている.
 現在広く臨床に用いられているKMのほか,いくつかのKM群に属する抗生物質が,すでに報告されており,このうちKM-BとこのKDMの異同が種々論議されている.KM-Bはその毒性のために,臨床応用がちゅうちょされたものであるが,現在までのKDM投与例にはそれほど強い副作用が認められていないので,相違があるもののように思われる.しかし,これが物質そのものの差か,純度の問題か,私ども臨床家には明らかにしえない.とにかく,KDMはKM群に属する新しい抗生物質として登場したわけである.

減感作療法—アレルゲンエキスの使い方と注意

著者: 野口英世

ページ範囲:P.1362 - P.1363

減感作療法の意義
 減感作療法という場合には,当然抗原抗体反応に基づく疾患を対象とし,特異的という意味で,従来より行なわれている非特異的変調療法については本稿ではふれない.
 特異的という意味からも本療法の前提となるのはいうまでもなくアレルゲンの決定であり,このためには詳細な問診を始めとし,皮膚反応,粘膜反応,誘発試験,除去試験などを行なうことが必要であり,検査の不徹底が好結果を得ない原因との反省も報ぜられている1).アレルゲンが明らかな場合はできるだけこれに接しないようにする.これだけで軽快することも多く(たとえば職業性喘息‐ホヤ喘息),ために大局的にみてアレルゲンの発見除去は本療法に優先する.その理由は1)減感作療法は長期間の治療を要するが,アレルゲンの除去の方がはるかに簡単な場合も多い.2)減感作療法はアレルゲンエキスの種類によっては稀に重篤な全身症状を誘発することがあるが,アレルゲンの除去はアレルゲンが多数の食品にわたるような場合の栄養障害を除いては特別の障害をきたさない.3)一度獲得した過敏性でも,必ずしも永続的ではなく,アレルゲンを除去して再感作を防いでいると,該アレルゲンに対する過敏性はやがて消失あるいは減退する.しかしながら,室内塵や花粉のごとき吸入性抗原による喘息やアレルギー性鼻炎などにおいてはアレルゲンの除去は長期的に望むべくもなく,このような場合には本療法が実施される.

Silent Stone—手術すべきか

著者: 坂部孝

ページ範囲:P.1364 - P.1365

 胆道系に明らかに結石を有しているにもかかわらず,臨床的になんら症状を現わさない場合を無症状胆石(asymptomatic gallstone, silent stone)と解しても,厳密な意味で完全に無症状であることを確認するのは困難である.しかし,このような症例は,内科的には他の疾患の検査中または健康診断によって,外科的には開腹手術時に偶然発見される場合が多い.

臨床家の生化学

結合組織の生化学—ムコ多糖を中心に

著者: 村田克己

ページ範囲:P.1366 - P.1369

 一見,生物活性に乏しく,代謝率が低いと考えられていた結合組織も,最近,特に生物化学的な立場から興味がもたれ,研究が重ねられてきた.広範な研究対象をもつ結合組織の生化学の一端を,ムコ多糖を中心にして紹介したい.

目で見る臨床検査シリーズ

輸血検査

著者: 河合忠

ページ範囲:P.1408 - P.1410

 白血球・血小板について検査も近年注目されはじめたとはいっても,日常行なわれる免疫血液学的検査のほとんどすべては赤血球の凝集反応として観察するわけである.したがって,ここでは赤血球凝集反応における判定上注意すべき点についてまとめてみよう.

カラーグラフ

輸血検査

著者: 河合忠

ページ範囲:P.1326 - P.1327

 免疫血液学的検査の大部分は赤血球を抗原として用いる凝集反応である.しかも,凝集反応には地帯現象があり適切な条件で抗原浮遊液と抗体溶液を混合しなければならない.また,赤血球の凝集状態を注意ぶかく観察しないと弱凝集,部分凝集などを見のがしやすい.
 赤血球の凝集反応を観察するにはスライド法と試験管法とがあり,それぞれの方法に長所と短所があるので目的に応じて使い分けることが必要である.

負荷試験=方法と評価

ブドウ糖経口負荷試験(Glucose Tolerance Test)

著者: 馬場茂明

ページ範囲:P.1312 - P.1313

糖尿病判定のための諸条件
 糖尿病とはインスリン作用の不足にもとづく代謝異常疾患であるが,その診断は遺伝歴,既往歴,糖尿病に特有な症候などをもとに,その代謝異常,あるいはインスリン分泌異常などを参考として診断されうるものである.これらの諸条件中ともすると血糖測定のみで診断できるとする誤解がある.
 糖尿病とは究極的にはインスリンの不足と,それに伴う明確な代謝異常を認めるものであるが,糖尿病前症(Prediabetes)とよばれる時期より,潜在性糖尿病,軽症糖尿病へと顕性糖尿病に至る連続的移行が認められ,とくに軽症とか初期の糖尿病の診断はきわめて判定の困難な場合が少なくない.

診療手技

腎生検

著者: 波多野道信

ページ範囲:P.1314 - P.1316

禁忌症および適応症
 禁忌症は,絶対的禁忌症と比較的禁忌症とに分けられる.
 絶対的禁忌症 非協力者,呼吸停止30秒不可能者,高度の全身衰弱,腎硬塞,高度の静脈圧を示すうっ血腎,高度の萎縮腎(腎不全)心不全,片腎,腎周囲炎,腎周囲膿瘍,化膿性腎疾患,腎動脈瘤

救急診療

自発性気胸

著者: 三上次郎

ページ範囲:P.1318 - P.1319

原因
 自発性気胸とは特別外部より刺創その他の刺激を与えることなく.胸腔内に空気の貯溜する疾患で,昔時はその80%まで肺結核に付随して起こるといわれていたが,最近は非結核性,特に胸膜表面に近いブラ・ブレブ(嚢胞)の破壊によるといわれている.これらブラ・ブレブの多くは先天的なもので,年齢的にも青年に多く,男性が女性に比し多い.しかし時に老人の肺気腫,慢性気管支炎,気管支拡張などに合併して起こることがあるが,このような場合には重症型が多いので注意を要する.

グラフ

機械による心筋硬塞の治療—基礎研究と臨床用装置について

著者: 三浦勇 ,   丁栄市

ページ範囲:P.1329 - P.1334

 ここに紹介するのは,心筋硬塞の治療に機械を応用せんとする一連の研究と,臨床用装置の概要である.Coronary Care Unit(CCU)開設以来,急性心筋硬塞症における不整脈死はいちじるしく滅少したが,反面,循環不全による死亡は相対的に増加し,結果として全体の死亡率はいぜんとして高い数字を示している(図1参照).
 心筋硬塞に続発する循環不全は,心筋壊死が原因である以上,本質的には治癒させることができる性質のものであるが,傷害心筋に治癒の傾向が出現するまでに数日を要するため,疲弊した心筋はその間,循環を支えることができず,同時に冠血流量の減少によって心筋自体の傷害も拡大し,悪循環を形成して患者の多数は死にいたるのである.

症例 全身性疾患と消化器・9

慢性肺気腫と消化性潰瘍

著者: 村井俊介 ,   額賀厚徳

ページ範囲:P.1383 - P.1387

症例1 飯○秀○ 75歳 男
 50年来の多量喫煙者(1日40本)であるが,10年まえからよく咳が出た.特に冬はいちじるしい.昨年夏から息ぎれがひどくなった.本年1月咳痰が強く,起座呼吸の状態になり,しばしばチアノーゼをみるようになったので,1月7日当内科に入院した.胃腸症状は特になかったが,食思不振,便通正常,睡眠不良.

Sodium polystyrene sulfonate(Kayexalate)による高K血症の治療効果

著者: 柴垣昌功 ,   日野原重明

ページ範囲:P.1388 - P.1392

Kayexalateの意義と試用報告例
 血清カリウム濃度が上昇すると.やがて心筋の伝導障害,心室性急拍症などが現われ,放置すれば,患者はショック,心不全.あるいは急性心停止などで短時間のうちに死亡する.それゆえ,高K血症は腎不全の最も危険な症状の1つであり.その死因に占める割合も大きい.
 高K血症に対しては,以前からアルカリ塩,カルシウム塩,あるいはブドウ糖-インスリンの点滴静注が用いられ,劇的な効果をみる場合が多いが,その作用時間は短く,静注をやめると、2-3時間後には再び高K血症が現われ,長時間にわたって静注を続ければ,乏尿のためにすでにナトリウムや水のたまっている患者を心不全に追い込む危険が大きい,したがって,これらの治療は救急処置としては価値を認められるが,ある程度の期間にわたって,持続的に高K血症を治療する目的には不適当なことが多い.

阪大・第1内科 研修医のためのWard Conference・最終回

甲状腺機能亢進症—二次性糖尿病の病態生理と治療の面から

著者: 阿部裕 ,   繁田幸男 ,   王子亘由 ,   小塚雄民 ,   岡田義昭 ,   中村幸二

ページ範囲:P.1398 - P.1401

二次性糖尿病としての甲状腺機能亢進症
 阿部 本日ここで呈示される症例は,甲状腺機能亢進症であるが,糖尿病が合併している.このように明確な基礎疾患があってそれが原因となり続発してくる糖尿病を二次性糖尿病とよんでいるが,本症例については,甲状腺ホルモンの糖質代謝に対する生理作用やインスリン分泌との相互関係など,二次性糖尿病の1つのモデルとしてその病態生理に関する論議の進められることを期待する.またこのような場合の治療の進め方も臨床的に重要な問題であり,その具体的な方策と理論的な裏づけについても討論を行ないたい.ではまず主治医の小塚君に本症例の概要を述べてもらうことにする.
 小塚 この症例の病歴・現症と主な臨床検査,入院後の経過の概要をまとめると下のようになる.

シンチグラムのよみ方・最終回

膵臓,その他の臓器

著者: 鳥塚莞爾 ,   藤井正博

ページ範囲:P.1393 - P.1397

膵臓
 膵臓は,その解剖学的位置の関係で同じ濃度の組織を有する臓器によりその周囲が囲まれているために,X線写真では描写不能であり,膵疾患は現在なお診断の困難な疾患である.膵炎はしばしば他の腹部の疾患と間違われ,膵癌も比較的進行し黄疸が発生してはじめて診断されることなどはわれわれのしばしば経験するところである.したがって膵scan可能の薬剤の出現は核医学研究の主要な課題の1つであった.
 膵臓は生体の中で蛋白合成の最もさかんな臓器の1つである.そこで1961年Blauらは適当なγ線で標識されたアミノ酸について検討し,methionineのSを75Seで置換した75Se-selenomethionineの生合成に成功した.そして本薬剤は動物実験において投与量の6%は膵臓に集まり,また膵臓と肝臓の1gあたりの摂取率の比は8-9倍というところから膵臓のscanning薬剤として用いられるに至った.75Seは半減期は128日,主なるγ線のenergyは270 keVである.

他科との話合い

老人の急性腹症

著者: 日野和徳 ,   佐分利六郎

ページ範囲:P.1402 - P.1407

 種々の要因からくる急性腹症,まして老人のものともなれば,対処する態度まで問題になってくる.まず内科医として,また外科医にまわす前に,なにを確認しておけばいいだろう.

診療相談室

甲状腺機能亢進症患者の妊娠出産による危険度とその対策

著者: 大貫稔

ページ範囲:P.1422 - P.1422

質問 甲状腺機能亢進症患者の妊娠出産による危険度とその対策についてご教示ください.(長野市・K生)

medicina CPC

原発巣不明の癌性腹膜炎

著者: 富永一 ,   金子仁 ,   田崎義昭 ,   牧野永城 ,   大貫寿衛 ,   米山達男 ,   河野実

ページ範囲:P.1411 - P.1417

下記の症例を診断してください.

略語の解説 24

PAP-PF

著者: 阿部正和

ページ範囲:P.1321 - P.1321

PAP
 primary atypical Pneumonia:原発性非定型肺炎 肺の病変を伴う急性気道感染症の一症候群,胸部のX線所見が著しいわりには臨床所見が重篤でない.原因が不明のところからPAPとよばれてきたが,現在ではその多くがマイコプラズマ(細菌でもウイルスでもない)によって起きることがほぼ明らかにされた.マイコプラズマによって起きるPAPは半分以上を占め,ごくわずかなものがアデノウイルスにより,一部原因の不明なものがあると理解しておけばよい.なお,赤血球寒冷凝集反応が陽性になるものは,マイコプラズマ肺炎であるといってよい.

統計

最近の医師数の動向

著者: 小畑美知夫

ページ範囲:P.1323 - P.1323

 最近各地で医師不足が指摘されており,また各地で新しい医科大学の設置気運が活発になってきました.今回はこのような実情に対して,わが国の最近の医師数についてふれたいと思います.なおここでいう医師数は,毎年先生方から届出られる医師届出票をもとにして集計されております.

今月の表紙

Pulmonary hyperostosis

著者: 御巫清允

ページ範囲:P.1324 - P.1324

 Sehinzの教科書にはOsteopathia hypertrophicanstoxicaとしてあげている.あまり使われないがBamberger-Marie病といわれることもある.胸郭内慢性炎症,胸郭内腿瘍,縦隔腫瘍,心突患(慢性うっ血)などのある場合にみられる長・短警状骨の左右対称性骨幹部肥厚をいう.肥厚は骨幹の中央近くが最も著明で,骨端にゆくにしたがって薄くなり,骨端部にみられることはない.おかされるのは前腕,下腿,大腿,上腕中手,中足,基部指骨,中部指骨などの順にみられ,畜末節,腸骨,肋骨,鎖骨などにはほとんどみられない.
 臨床的には症状のまったくないことが多く、中手,中足,指趾骨などでは関節の動きが制限されたり,腫脹が外からみられたり,時として自発痛があったりして気づかれることが多いため,実地上は指趾,中手足骨に発見することが最も多い.組織学的には骨膜の肥厚とそのリンパ球浸潤および骨膜に垂直に生じた櫛の歯状の小骨梁形成が特徴的である.その病因についてはほとんど知られていない.

全国教室めぐり

より合理的,近代的な教室を目指して—鹿児島大・第1内科

著者: 稲森幸浩

ページ範囲:P.1375 - P.1375

 私たちの教室に金久教授が就任されて,満10年を迎えたが,先任教授の残された研究基盤と伝統を引き継がれ,現教授の専攻分野である精神身体医学的アプローチやその臨床的応用もほぼ地についたものにされたと考えられる.
 昨今,全国的に講座制のありかたが多方面より論議されているが,金久教授は進取の気風が強く,かかる問題にも深い理解を示しておられる.したがって医局員個々の意志を尊重されるので,教室の運営は一種の集団合議制に近いかたちで行なわれており,それが教育,研究,診療に反映されている.

ルポ 西ドイツの医療・4

岐路に立つドイツ医学

著者: 水野肇

ページ範囲:P.1376 - P.1377

 交錯する栄光(過去)と焦燥(現在)
 18世紀後半から,19世紀前半にかけてドイツ医学は世界の医学の頂点に立ち,リードしてきた.ウイルヒョウ,ペッテンコーフェル,ミュラー,ドマークといった人たちが相ついで輩出した.日本の多くの医学生は,こういった人たちに師事し,ドイツ医学と同じようなものをもち帰ってきた.
 しかし,戦後の医学は長足の進歩をとげた.というより,長足の進歩をとげた自然科学に大きく医学が左右されるようになり,それをより多く吸収した医学の分野に著しい進歩がみられたというべきだろう.

仙台・広南休日診療所—医師・休日・市民

著者: 木島昂

ページ範囲:P.1380 - P.1382

当番医の日記
 仙台市人口52万人,市の西南をゆったり流れる広瀬川.いわゆるその川向こうに長町という一画がある.東北一の国鉄貨物操車駅"長町駅"のあるところといったほうがわかりいいかもしれない.人口9万人ばかりの一見平凡な町並みだが,その町のほぼ中心に休日専門の診療所〈広南休日診療所〉がある.診療所とはいっても,想像を絶する粗末なプレハブの小屋である,しかし,休日には朝から患者が押しかけ当番医は休日診療の意義をわきまえて,明るい表情で診療に精を出している.診療所の生いたち,性格などはあとまわしにして,そこに保管されてある当番医日記のページをめくってみよう.私が訪ねたのは6月22日,どしゃぶりの日曜日.日記は診療所開設の42年度分を"1年草"と名づけ,目下3冊めの"3年草"のページが半分埋められていた.
 42・4・50(筆者注・開設第1日め)

臨床メモ

小児喘息というが……

著者: 松島富之助

ページ範囲:P.1357 - P.1357

 "ゼーゼー"と,起きあがって苦しそうに咳をしている子どもをみている父親や母親の気持ちは,胸をしめつけられるようである.
 夜中にたたき起こされて,"いやな患者だな!"と思っても,この風景をみていると怒りはどこへやら,同情の気持ちで一杯となってしまう.

X線メモ

薬理X線検査法(Pharmakoradiographie)

著者: 恵畑欣一

ページ範囲:P.1340 - P.1340

 消化管X線診断の際に用いられている補助手段のうち薬理的手段(Pharmacologic approach)というのは,種々の薬剤の薬理的効果を利用して診断能を高める方法で,これを薬理X線検査法といっています.その目的とするところは.
 (1)X線学的につかまえられた形態的な変化が器質的変化によるものか,あるいは機能的変化であるのに器質的変化であるように見えているものかの鑑別(例:食道痙攣と食道癌との鑑別-Buscopan使用).緊張,蠕動を低下させる薬を多用しますが,ときには昂進させる薬も用います.

斜方向撮影—厚さの増減と撮影条件の決めかた

著者: 恵畑欣一

ページ範囲:P.1341 - P.1341

 胃・食道・大腸・肺・脊椎等,斜方向撮影の重要性についてはいうまでもありませんが腰椎をとりあげてみましょう.
 スコッチテリアの像が見られて,椎間関節,各椎弓,などがはっきりします.椎間孔,関節突起,突起間部,仙腸関節なども他の方向よりもはっきりします.斜方向X線撮影の条件は胸部では45°斜方向で2倍,腹部,腰椎などでは2.5倍にしてX線を出すと適した濃度が得られます.ただ食道撮影の時の斜方向は正面の撮影よりも条件は少なくなります.脊椎,心臓が重なりますので正面撮影の方が1.5倍よけいに出さなければだめです.

話題

—多彩なテーマに彩られた国際学会—第12回国際放射線学会から(10月6-11日・東京)

著者: 吉村克俊

ページ範囲:P.1420 - P.1420

 第12回国際放射線医学会議は東京で,東洋ではじめて開催された(会長:国立がんセンター病院長塚本憲甫博士).参会者総数4921名,海外70力国からは3721名に及んだ.
 特別講演:E. E. ポーチン教授(英)「放射線防護の数量的根拠」,L. B. ラステッド教授(米)「電子計算機のX線診断への応用」,M. ツビアーナ教授(仏)「放射線生物学とその癌治療への応用」,J. ベッカー教授(独)「超高圧放射線治療法—その適応と成績」,筧弘毅教授(千葉大)「日本における核医学の発展」,シンポジウム:診断13,治療8,核医学5,生物学6,物理および技術3,合同セッション8,教育問題1の計44,含まれる演題総数296,その他一般演題が約700題であった.

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「medicina」第6巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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バックナンバー

60巻13号(2023年12月発行)

特集 一般医家のための—DOAC時代の心房細動診療

60巻12号(2023年11月発行)

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60巻11号(2023年10月発行)

増大号特集 患者さんの質問にどう答えますか?—言葉の意味を読み解きハートに響く返答集

60巻10号(2023年9月発行)

特集 ミミッカー症例からいかに学ぶか

60巻9号(2023年8月発行)

特集 症例から読み解く—高齢者診療ステップアップ

60巻8号(2023年7月発行)

特集 浮腫と脱水—Q&Aで学ぶジェネラリストのための体液量異常診療

60巻7号(2023年6月発行)

特集 整形外科プライマリ・ケア—内科医が知りたい整形外科疾患のすべて

60巻6号(2023年5月発行)

特集 Common diseaseの処方箋ファイル—臨床経過から学ぶ20症例

60巻5号(2023年4月発行)

特集 臨床医からみたPOCT

60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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