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雑誌目次

雑誌文献

medicina6巻5号

1969年05月発行

雑誌目次

EDITORIAL

Banti症候群—概念と歴史的考察

著者: 日野志郎

ページ範囲:P.521 - P.521

 100年あまりまえ,Griesingerが脾性貧血を白血病から区別した.弟子のGretselがそれを報告(1866)したが,溶血性黄疸やポジキン病をまだ鑑別しえなかった.Banti(1894)はそれらを除外して,今日のいわゆるBanti病の概念をまとめあげた.臨床的には,Bantiの述べた病像と経過に一致する原因不明の疾患をみることはまれでないが,組織学的には必ずしもBantiのいう線維腺症(Fibroadenie)を呈しない.摘脾して組織像をみないとBanti病の診断がつけられないということもあるので,臨床的にはBanti症候群といっておくのが便利である.
 一方では脾臓機能亢進症という概念がうちだされ,Doanら(1946)やDameshekら(1947)が強く主張した.そのうち原発性のものはおよそBanti症候群に一致するけれども,その定義からすると,摘脾が良効を奏し正常血液像に戻らねばならない,やはり,摘脾の結果をみてからでないと診断できないことになる脾臓の機能がまだよくわかっていないことを考えあわせると,この診断名を用いるのにはためらいを感ずる.

今月の主題

Banti症候群

著者: 服部絢一

ページ範囲:P.522 - P.529

Banti症候群は,その病因についてまだ実証に欠けるものがあり,貧血の成因についても,鉄欠乏の説明ができない不十分な段階にある.こうした中で,筆者は過去5年間の臨床統計662例をまとめて,その要点を概説し,教室の1,2の実験結果をあげながら筆者の見解を述べてみたい.

特別掲載

医学教育再建のために—Harvard大学医学部の教育体制に学ぶもの

著者: 田中圭

ページ範囲:P.505 - P.520

 内科の再編成,外科の再編成,あるいは大学病院のあり方……など,目下,いろいろな立場から,いろいろな角度から,医学教育の再検討が各大学でたけなわである.その再検討のための"基本的課題"が論じられているのが本稿である.教育・研究・診療の結びつきが,Harvard大学ではどのように行なわれているか,そしてそこから,日本の医学教育についてなにをくみとるべきか……本稿の提言が,再建のひとつの素材となることを願う.

診断のポイント

直腸癌

著者: 伊藤一二

ページ範囲:P.540 - P.542

痔核・大腸炎の誤診が多い
 直腸癌の大半(78%)は歯状線より10cm以内の所に発生し,したがって直腸指診のみで容易に診断をつけうる比較的診断しやすい癌であり,また胃癌などと異なり,限局的に発生するものが多いため,根治の希望の高い癌の1つである.事実,リンパ節転移を認めないDukes分類のAおよびBでは術後5年生存は80%以上の好成績が得られている.
 しかし現状では必ずしもこのような早期に発見されるとは限らず,われわれの統計をみても,直腸癌手術例の57%にはすでにリンパ節転移が認められ,また17%の高率に手術時すでに肝転移が認められており,これら進行癌の予後はきわめて不良である.したがって,手術による根治度の高い直腸癌をより早期に発見する手段および体制を確立することが急がれるわけである.特に重要なことは,直腸癌患者が比較的早期より直腸肛門に関する症状を訴えて医師を訪れているにもかかわらず,簡単な検査法を怠ったため,痔核あるいは大腸炎と診断され,あたら早期発見の時期を失した症例がわれわれの統計でも40%にみられたことで,今後医師側として大いに反省すべきことであろう.以下われわれが日常行なっている診断方法を簡単に述べる.

高ビリルビン血症

著者: 古谷健太郎

ページ範囲:P.543 - P.545

黄疸とビリルビンの相関
 昔から黄疸はMeulengracht指数法で測定されてきた.しかし健康人血清の黄色調は,その75%をビリルビン(以後"ビ"と略す)に,また25%をlipochromeに負うといわれる.したがって黄疸の存在を正しく知るためには,血清"ビ"の定量をしなければならない.そして血清"ビ"濃度が1.0mg/dl以上に増加しているときは,高"ビ"血症であるし,すなわち黄疸である.黄疸をみるとき,Popperらにもとづく分類表(下記)をもとに鑑別をすすめるのも,よい方法である.
 またこの総"ビ"は間接"ビ"と直接"ビ"とからなっている.間接"ビ"は網内系で血色素からつくられ,流血中では血清Albuminと結合して存在する"ビ"であって,これが肝細胞内にとり込まれて抱合されると直接"ビ"になる.

頸椎症候群(cervical syndrome)

著者: 三好邦達

ページ範囲:P.546 - P.548

多岐にわたる定義
 わが国ではこれは頸部症候群,頸椎症候群,頸腕症候群あるいは頸肩腕症候群などと呼称され,必ずしも名称が一致してはいない.
 Jacksonによればcervical syndromeという言葉は,頸部神経根が椎間孔あるいはその周辺の前枝と後枝とにわかれる前の部分で刺激されたり圧迫されたりする結果として起こる一連の症候群と臨床所見を意味するものとしており,椎間孔周辺の他の組織—反回脊髄硬膜神経,椎骨動・静脈およびその分枝も同時に侵されることがあるとしている.一般には,頸神経,腕神経叢,自律神経,血管などの刺激による頸・肩.腕の神経痛様疹痛を主体とし,手指などにしびれ感,知覚鈍麻,運動障害などの不全麻痺や自律神経障害を起こしてくる病状を総称したものと考えられている.

治療のポイント

腎臓と香辛料

著者: 阿部達夫

ページ範囲:P.549 - P.550

香辛料は必ずしも禁忌ではない
 香辛料には強香辛料と弱香辛料とがあり,カラシ,唐ガラシ,ワサビ,コショウ,ショウガ,サンショウなどは前者に属し,大根オロシ,セロリ,ネギ,ラッキョウ,セリ,ミツ葉,茸類などは後者に属する.香辛料は調味料のひとつで,熱量源とはならないが,その使用により食事の風味をまし,食欲を亢進させる.とかく腎臓食は食塩その他の制限により不味になるので、香辛料を適宜に使用しうれば好都合といわねばならぬ.

パーキンソン症候群—薬物療法を中心として

著者: 荒木淑郎

ページ範囲:P.551 - P.552

パーキンソン症候群の分類と主要症候
 パーキンソン症候群(Parkinson's Syndrome)は,臨床的には便宜上,次の3群に大別されている.
 1)原因不明の振戦麻痺idiopathic paralysis agitans

緑膿菌感染症

著者: 滝上正

ページ範囲:P.553 - P.554

菌数の多少で診断を下せぬ
 緑膿菌(以下Psと略す)感染症は,内科領域においては,きわめて少ない疾患である.Psを臨床材料から分離する頻度はかなり高い.しかし,材料中にPsが証明されたからといって,直ちにそれに病原性を求めてはならぬ.
 尿路感染症では尿の定量培養法が行なわれ,100,000個/ml以上のPsを証明したときには,Psに病原性を求めることができるとされているが,この数に満たなくても,経過・化学療法施行の有無などを参考にして,病原性を考えねばならぬこともある.また,尿中に2回以上にわたりPsを証明すれば,たとえ菌数は上記に満たなくても病原性を疑うことになる.喀痰,大便,胆汁などにあっては,さらに慎重を要する.増菌法を用いると,Psは健康成人の60%において,大便内に証明される一また喀痰にあっては,入院患者の場合,増菌法を用いると約30%にPsが証明される.

突発性発疹症(exanthema subitum, roseola infantum)

著者: 村田文也

ページ範囲:P.555 - P.556

 突発性発疹症は実地医家が日常しばしば遭遇する疾患である.年齢的には生後4カ月ないし1年の乳児に多い.突然発熱し,3-4日間高熱が続いたあと分利状に下熱するとともに麻疹様の発疹を呈する.発疹後再び発熱することはない,発疹は2-3日で消退し,色素沈着を残さない.下痢を伴うことがあり,まれに痙攣を起こすこともあるが,一般に予後良好である.
 筆者は外来で患児を隔離しているが,伝染力は麻疹や水痘に比べてはるかに弱いので隔離は不要という考えも成り立つであろう.

負荷試験=方法と評価

ACTH試験

著者: 七星正久

ページ範囲:P.482 - P.483

 ACTH試験は副腎機能低下症の診断に必須のものである.またCushing症候群の副腎病変の鑑別,すなわち過形成か腫瘍かの鑑別に利用される.
 しかしその術式については,使用するACTH製剤,投与形式,反応指標などの違いにより,多くの方法が報告されている.主として副腎に対する刺激の強さ,確実さの点から,スクリーニングテストとしての意義しかないものと,確定診断的な意義を有するものとがある.

診療手技

髄液のとり方

著者: 桑原武夫

ページ範囲:P.484 - P.486

 髄液の採取法として通常行なわれるのは腰椎穿刺である.ときに後頭下穿刺が行なわれる.特別な場合は,頭蓋に小孔をあけ,ここから側脳室穿刺を行なうこともある(乳児で大泉門が開いているときは,ここから直接側脳室穿刺が可能である).以下,腰椎穿刺と後頭下穿刺の実際の手技を述べ,適応,禁忌を簡単に述べよう.

救急診療

糖尿病昏睡

著者: 後藤由夫

ページ範囲:P.488 - P.489

糖尿病昏睡の種類とその原因
 糖尿病患者が昏睡状態にあるときにはその原因を鑑別することが治療方針をきめるのに必要である.インスリンが極度に不足してケトシースになり,図1のようにして昏睡になる,普通いわれている糖尿病昏睡のほかに,ケトーシスのない昏睡も起こる.その1つは血糖が800mg%以上に上昇し,また血清Na値が高値となって血漿滲透圧が上昇するために起こるhyperosmolar nonke-totic diabetic comaといわれるものである.この昏睡がどうして起こるか明らかではないが,ケトーシスを伴う昏睡が若年者でやせ型のインスリン依存性糖尿病に多いのに対し,50歳以後の軽症例に起こり,しかも治療後にはインスリンなしでも糖尿病がよくコントロールされる.このほかにケトーシスを伴わない昏睡としてはlactic acidosisによるものがある.この場合には組織の酸素欠乏をきたす原因,たとえば薬剤(サルファ剤,サルチル酸剤,ビグアナイド剤など),循環障害,出血などが誘因となる.

カラーグラフ

Flexible気管支ファイバースコープによる肺癌の診断所見

著者: 池田茂人

ページ範囲:P.496 - P.504

 気管支鏡検査が始まってから約70年の間,硬性気管支鏡に終始してきた検査法が,いまや革命的な変革ともいえるFlexible気管支ファイバースコープの開発によって,新しい時代を迎えようとしている.今後の呼吸器疾患の診断に1つの大きな武器となるであろう.

症例 全身性疾患と消化器・2

甲状腺機能亢進症と胃腸

著者: 日野貞雄

ページ範囲:P.569 - P.571

 症例 28歳,女性.
 現病歴 4カ月前より胃のぐあいが悪く,疲れやすい.はじめ空腹時重圧感のみであったが,しだいに心窩部痛となり,背側へ放散.食後臍周囲に重圧感あり,腹鳴あり.便通は下痢ぎみにれは1年ぐらいまえからある)で1日1-2行.軟,ときに水様に近くなる.しかし排便時痛はない.1カ月前には夜間痛2-3日存在した.近医の加療を受けるが,好転せず.3カ月で約3kgやせる.

チュレーン大学の内科専門医のためのオリエンテーション・ブックレット・5

内科の各専門部門—関節炎・心臓病・内分泌部門

著者: 高階経和

ページ範囲:P.572 - P.574

I.関節炎部門
 この部門はDri Maurice Jeffreyの指示のもとに行なわれるものであり,臨床的検査に対して入院患者および外来患者の両方に対して行なわれるものである.特に関節炎の患者に対する処置が行なわれる.Dr. Jeffreyとかれのスタッフ・ドクターは,関節炎の患者に対するコンサルテーションは,いつでも喜んで受ける.しかも諸君が援助を必要とするときに,これらの患者の診療の進めかたについて,諸君に助言を与えてくれるだろう.われわれのレジデントのひとりは,この部門にサインをしているので,かれはまず諸君のコンサルテーションに答えることができるだろうし,その後,毎火曜日の3時に始まる6階の関節炎病棟において,諸君のコンサルテーションの病棟主任とともに,関節炎回診によって,より詳細に診察を受られる.Dr. Jeffreyは,患者の状態が緊急を要するときには,いつでも患者を診察するだろう.
 この部門は,小児麻痺病陳の5階にある完全なPhysiotherapy室をもっている.この室は入院患者の看護を第1の原則としてつくられたものであるが,退院した外来患者に対しても処置を続けて行なっている.しかし外来患者の処置というものは限定しなければならず,そうしなければ関節炎の外来で処置される患者がふえ,それだけ入院患者の治療というものが優先できなくなるからである.関節炎部門は,また濃厚治療を必要とする患者に対して,小児麻痺ビルディングの6階に,この特別な病室をもっている.関節炎の外来は,月曜日と木曜日の午前9時からハッチンソン.ビルディングの3階において行なわれ,いかなる病院あるいはクリニックからの患者も治療のため,あるいは臨床的確定診断のために紹介されてやってくる.これらの外来は,ある目的のために外来を一定の数にしているが,これは,より注意深く臨床的な検査を行ない,そして治療を行なうためには,ある一定量の数の患者を必要とするからである.新患は水曜日の午後に約束診察される.Dr. JeffreyやDr. Schindl,Dr. Weissによって,ハッチンソン・ビルディング7階において診られるが,かれらは関節炎における専円医であり,またDr. Kerrはこれらの問題に興味をもっている整形外科医である.

阪大・阿部内科 研修医のためのWard Conference・5

腎性高血圧—aortitis syndromeによる症例の診断から治療まで

著者: 阿部裕 ,   苅田全世 ,   三木謙 ,   折田義正 ,   浜中康彦 ,   桜井勗 ,   田中寿英 ,   木村煕 ,   吉川博通 ,   望月茂樹 ,   高安健

ページ範囲:P.575 - P.580

 阿部 われわれは日常,多くの高血圧患者に接し,治療を行なっているが,発症が若年のもの,あるいは各種降圧剤に反応しないものには特に注意する必要がある.最近高血圧診断の技術の進歩,関連分野を含めた新しい概念の統一がいちじるしく,治療範囲も一段と拡大された.本日示す症例はこれらの立場より診断を行ない.内科的治療と泌尿器科的手術の協同が有効であったもので,その経過をふりかえり,討論したい.
 浜中 症例の概略は次ページの表1のとおりである.

臨床家の生理学

キニンの生理と病理

著者: 鈴木友二

ページ範囲:P.557 - P.560

 キニンのもつ生理活性やその正常・異常遊離のときの生体生理・病変との結びつきなどは,近年ようやく展開をみせてきた.キニンに関する知識は,臨床上注目されるものである.

診療相談室

心臓カテーテル法の種類と臨床的適応

著者: 太田怜

ページ範囲:P.595 - P.595

質問 心臓カテーテル法とはいかなるものでしょうか.その種類と臨床的適応をご教示ください. (熊本市・K生)

medicina CPC

表在性リンパ節のおかされなかったホジキン肉芽腫

著者: 藤原美砦 ,   高月清 ,   景山直樹 ,   築山一夫 ,   前川善水 ,   木島滋二

ページ範囲:P.581 - P.587

下記の症例を診断してください.

略語の解説 17

IPPB-KS

著者: 阿部正和

ページ範囲:P.491 - P.491

IPPB
 intermittent positive pressure breathing:間歇的陽圧呼吸法 吸気の際に陽圧を利用して酸素,あるいは適当な薬剤を吸入させようとする方法である.気管支喘息,肺性心,肺気腫の治療に利用されている.低酸素症の程度によって,酸素,あるいは酸素と空気との混合物を吸入できるように装置されている.
 本法を1日に30分-1時聞,2-3回ぐらい行なうと,発作の軽減,症状の改善をみることができる.症状によっては,酸素中に各種の薬剤を混合して使用することもある.

統計

医師1人当たり1日の診療患者数

著者: 菅沼達治

ページ範囲:P.492 - P.492

 厚生省では,医療施設を利用する患者の量を把握し,病類・受療の種類・治療費の支払方法などの観点からその実態を明らかにするために,毎年7月のある水曜日に,全国の病院の1/10,診療所の1/100について"患者調査"を行なっています.ここではこの調査によって,医師は1日にどのくらいの患者を診療するかをみてみましょう.なお,病院は精神・結核・伝染病院を除く一般病院であり,表と図には看護婦の取り扱い患者数も付記しました.
 表のとおり,総合病院では17.7人ですが,その他の病院では約20人多い37.2人となっていて、両者の間にはかなりの開きがみられます.しかし,入院:外来の比は,両者とも1:1.6前後であります.一般病院全体として医師1人当たりの取り扱い患者数の年々の動きをみると図のとおりで,昭和36年以後は20人を越えてやや増加をみせており,42年は26.6人となっています.数値をかかげることは省略しましたが,病床の規模による差はあまりみられません.しかし,規模が大きくなるにつれて,当然のことながら外来患者に対する入院患者の比は大きくなってきます.

今月の表紙

バンチ症候群の病理組織所見

著者: 福田芳郎

ページ範囲:P.494 - P.494

 表紙の図は,いわゆるバンチ症候群の臨床診断がつけられ,剖検あるいは手術的に切除された肝,脾の組織像である.肝の病変としては肝線維症,肝硬変症,日本住血吸虫症などがみられるが,本邦では全体の約2/3が肝線椎症を示している.すなわちグリソン鞘を中心とする密な線維化であって,同時にグ鞘内の門脈枝に"つぶれ",つまり狭窄,消失がみられる.また肝小葉に歪みがあり,グ鞘と中心静脈の近接化などがみられ,肝内門脈系を主とする血液循環系に異常のあることが示唆され,臨床的に門脈圧の亢進がしばしばみられる.
 脾は巨脾,すなわち正常の10倍以上,1000g以上にもなりうるが,その構成全組織要素の増大により脾腫を形成するが,約80%の容積を占める赤脾髄の増大がいちじるしく,髄索からの細網組織の増加,洞様構造の新生(静脈洞増殖)ということにより大きくなるものと思われる.Bantiのあげた赤脾髄のFibroadenieはこのような変化を示しており,その他に病理組織学的にあげられている脾の特徴として動脈周囲性線維化,脾材内出血,Gamna-Gandy小結節,脾材の開疎(Aufsplitterung)などがある.

全国教室めぐり

伝統の消化器病学に新風を—九大・桝屋内科

著者: 東隆介

ページ範囲:P.561 - P.561

 第3内科は大正5年1月創設されて以来52年の歴史をもち,しかも創設以来の名誉教授がご健在であり,初代小野寺名誉教授は飯塚病院長,福岡県対癌協会長,第2代沢田名誉教授は北九州市立小倉病院長,市立がんセンター所長としてなお第一線でご活躍中でありましたが,去る43年11月3日,第52回開講記念会の直前,小野寺名誉教授が急逝され,教室員,同門生一同深い悲しみのうちに教室葬としてお送り申しあげ,故先生のご業績に恥じない内科にすべく,誓いを新たにいたしました.

ルポ アメリカ医学の実相(3)—1968年夏の渡米ノートから

ロチェスター市Mayo ClinicとSt. Mary病院を訪ねて

著者: 日野原重明

ページ範囲:P.562 - P.563

ロチェスター市のMayo Clinic
 バスでRochesterの町にはいり,ホテルにおちついたのは午後3時であった.さっそくまえから連絡をしていた渉外部のMr. Andersonに電話した後,16年前に訪れたPlummer Buildingを訪れた.私が前回ここを訪れたときにはこの向かいに現在立派に建っているMayo Buildingはまだ建築中であった.これは1955年に一応10階建ての立派な建物として完成したが,現在これに9階を増築して,来年中に完成の予定である.内部工事はまだ完成していないが,外からみると完全にできあがったようにみえ,夕陽に白く光って美しい.

病院大型化に派生する諸問題—岡山市川崎総合病院の医科大学新設をめぐって

著者: 水野肇

ページ範囲:P.564 - P.566

 病院の大型化は,利潤はあがるがその維持をむずかしくするという自己矛盾を内蔵する.優秀な施設を有しさらに機能向上・従業員確保に苦闘する川崎病院をルポしてみた.

メディチーナ・ジャーナル・厚生省

論議をよぶ国民医療対策大綱案

著者:

ページ範囲:P.568 - P.568

健保特例法との関連
 自民党医療基本問題調査会(西村英一会長〉は,同調査会小委員会がまとめた「国民医療対策大綱」案を発表したが,同大綱については発表後いち早く関係各団体がそれぞれ意見を表明し,抜本改正をめぐってふたたび論議が活発化してきた.
 健保特例法が2年まえに成立した当時,抜本対策を確立するという含みをもっていたいきさつもあって,厚生省事務局試案,鈴木試案と続き,今回の国民医療対策大綱が発表されたわけである.しかし,今回の案が実際に陽の目をみるためには,自民党の正式決定としての了承が必要であり,これがさらに政府にもちこまれて事務局にクリヤーされ,さらに関係審議会の決定を経ることが必要である.おそらく,筆者が現在書いている時点から推測すれば,今国会提出は不可能であるとみてよい.

話題・春の内科関係学会から

第11回日本内視鏡学会—学会を充実させたシンポジウム形式

著者: 多賀須幸男

ページ範囲:P.590 - P.591

 <春の内科関係学会から>
春の学会に出席できなかった方がたのために,内科関係学会のなかから,内視鏡学会,小児科学会,医学放射線学会の話題をまとめました.内科・循環器・消化器病学会については,次号に座談会を血液学会,伝染病学会については話題をお届けします.

第72回日本小児科学会総会—臨床面へ接近してきた発表内容

著者: 山本高治郎

ページ範囲:P.591 - P.592

 第72回日本小児科学会総会は,さる4月3日から6日まで,計4日間にわたって,九大永山教授を会頭として,福岡市において開催された.第1会場(市民会館大ホール),第2会場(同小ホール),第3会場(県農協会館),第4会場(市農協ビル)の4カ所が用意され,はじめの2日間は11の分科会(未熟児・新生児,アレルギー,腎臓病,循環器,内分泌学,代謝,感染免疫,ウイルス病,呼吸器疾患,血液,神経学)を主体とした一般演題が,これら4会場において分散発表された.

第28回医学放射線学会—学園紛争の影響もなく多かった演題と活発な討議

著者: 赤木弘昭

ページ範囲:P.592 - P.593

今総会の特徴・講座担当者会議
 4月8,9,10日の3日間,第28回日本医学放射線学会総会は米子市公会堂と鳥取大学医学部記念講堂の会場で,鳥取大学阿武保郎教授を会長としてひらかれた.シンポジウムとしては,I・胃エックス線検査法の検討(入江教授司会),II.悪性腫瘍の放射線治療における薬物の併用(山下教授),III.頭蓋内疾患のアイソトープ診断(覧教授),IV.電子計算機の放射線医学の応用(立入教授)の4主題と一般演題430題,うち口演155題,展示189題,紙上発表186題の発表が行なわれた.
 今回の総会の特徴としては評議員会にさきだち講座担当者会議がひらかれ,各大学における放射線医学教育の現況と将来計画,教材の交換,教育カリキュラムなど討議され,続いて午後の評議員会も従来になく討論は活発をきわめ,ついに1時間ほど時間が延長した.注目すべき議題としては,理事会よりの各地方部会への諮問事項の報告,すなわち理事会の若返り,中央放射線部のありかた,特に中放と放射線科との関係が問題になり,放射線科の理念の確立と放射線科医としての他科に対する技術的な指導性と包容性が要求された.同様の事項は評議員提案事項にもみられ,放射線科専門医制度に対する理念と養成方法,認定方法,他科との関連が問題となり,さらには診療科としての放射線科の存在が討議され,放射線科医の社会的・行政的な面まで問題が発展した.

臨床メモ

"からだが宙に浮いた感じ"とは

著者: 本多虔夫

ページ範囲:P.529 - P.529

 "からだが宙に浮いた感じ"とは非常に非特異的な訴えで,それを訴える人により,その意味するところがかなり異なる.したがってこれが主訴である場合には,検者はいくつかの質問をして,患者の真の訴えをひきだす必要がある.
 まず第1に考えられるのは疲労,あるいは全身性消耗性疾患からくる衰弱感であり,この場合には当然,食欲不振,体重減少,睡眠不足,発熱の有無,すなわち全身症状の有無に注意が必要である.

肩こりの手当

著者: 山本浩

ページ範囲:P.542 - P.542

 "肩こり"といえる程度のものならば,その手当はかんたんである.要は原因を除去することと局所の循環をよくすることである.—と,ここまではカンタンであるが,実際にはそうそうスッキリとはいかない.
 "原因の除去"というが,原因がそうカンタンに見当たらないからである.肩だからといって肩の使いすぎとは限らない,俗に肩の凝るような話—というコトバがある通り,精神的要素も少なくない.くだらん仕事に疲れたときのほうが,馴れない庭仕事でマメをつくったときの肩こりよりも長く続くこともある.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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