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雑誌目次

雑誌文献

medicina6巻7号

1969年07月発行

雑誌目次

EDITORIAL

慢性食中毒

著者: 重松逸造

ページ範囲:P.741 - P.741

 食中毒というのは,本来,食品の摂取に起因する急激な中毒症状の発現に対して用いられたことばであろうが,最近の米ぬか油事件にみられる有機塩素中毒や,水俣病のメチル水銀中毒,イタイイタイ病のカドミウム中毒などは,微量の病因物質が飲食物を通じて比較的長期間体内に蓄積した結果中毒するに至ったと考えられるもので,これらを慢性食中毒とよんでみた.この種の中毒は,産業の発展に伴う自然食品の汚染,あるいは食品工業の発達による新化学物質の使用の機会が増加してきた今日,今後も発生が予想されるもので,その調査研究と対策の樹立は緊急を要するものと考えられる.
 慢性食中毒はいったん発生すれば経過も長く,治療に手間どるため,一次的な予防,すなわち病因物質の除去に対策の重点がおかれねばならないことはいうまでもないが,被害を最小限度にくい止めるためには,早期発見ということも重要である.しかし従来の例でも,患者発生の当初は中毒に由来すると気づかれないことが多く,この点中毒発生の監視機構を根本的に再検討する必要があろう.具体的には医師や一般入に対する慢性食中毒のPR,情報処理機構の整備,有害食品発見のための検査システムの確立などを考慮すべきである.

今月の主題

食中毒の現状と診断

著者: 斎藤誠

ページ範囲:P.742 - P.749

 食中毒は,主として公衆衛生の分野で理解されることが多く,臨床医家にとって身近な疾患でありながら,意外に関心をもたれていない.この現状をふまえ,変貌しつつある食中毒の現状,臨床像を把握し,診断の要点を知る必要があろう.

食品添加物による食中毒

著者: 谷村顕雄

ページ範囲:P.746 - P.747

 保存料,漂白剤,酸化防止剤のような比較的毒性の強い食品添加物については使用基準が設けられており,食品に使用する際にはいかなる食品にどれだけ使ってよいという制限がある.したがってこの使用基準が忠実に守られていれば,食品添加物による中毒ということは考えられない.本文の対象になる食中毒としては,食品製造業者が故意にあるいは不注意により中毒量以上の添加物を使用した場合や,子どもなどが誤って口に入れ事故を起こした場合などが考えられる.食品添加物による発癌あるいは催奇型の問題もきわめて重大であるが,本文ではふれないことにする.
 食品添加物は昭和44年6月現在358種類もあるが,ここでは比較的われわれに身近な,また食中毒例が報告された一部のものについて述べる.

急性胃腸炎は存在するか

著者: 芦沢真六 ,   奥平雅彦 ,   善養寺浩 ,   高橋忠雄

ページ範囲:P.750 - P.758

下痢・腹痛・嘔吐を訴える患者は,とかく"急性胃腸炎"という病名で安易に片づけられている傾向があるようだ.だが,実際に急性胃腸炎というものは存在するのだろうか.このような患者をみたときに,何を考え,どうすればいいのか,病理・形態・細菌学的な裏づけをもとめてみると……

Leading Article

研修病院のありかた

著者: 神崎三益

ページ範囲:P.778 - P.780

 私がこのごろつくづく考えることは,日本は他の分野のことは知らないが,少なくとも医療の社会においては相当のおくれをとっている,確かに後進国だということである.
 もっとも,おくれているのは医学のことではない,医学を応用する医療,なかんづくその制度においてだ.そうであればこそ,自民党でも政府でも国民医療の基本を考えなおそうとしている.

診断のポイント

低血圧

著者: 長尾透

ページ範囲:P.759 - P.760

 低血圧の際,まず大きく分けて,2つ考える.急激な重い全身症状があって,その続発症状として,血圧が下がった場合と,ふだんから血圧が低く,一般に激しい症状を伴わない場合とがある.

アルカリフォスファターゼ—成長と活性値

著者: 加藤英夫

ページ範囲:P.761 - P.762

生体と酵素の作用
 生体内での物質代謝は酵素の作用によって支配されて,円滑に営まれている.それらの数多くの酵素は遺伝子によって生成され,またその生成が調節されている.
 教室での酵素に関する研究成績および多くの内外の文献から考察すると,生体内の酵素は主として臓器内にあるが,血清中にもある程度流れており,これらの活性値は動物によってだいたい一定している.しかし正確にみると,臓器内あるいは血清中の酵素の活性値は胎児,新生児,乳児,幼児,学童,成人でかなり差異があるものであって,成長に従って変動するものであり,換言すれば成長,発育すなわち加齢(aging,老化)によって変動するものであるといえる.

治療のポイント

Adams-Stokes症候群の新しい治療

著者: 五十嵐正男

ページ範囲:P.765 - P.767

 Adams-Stokes発作は極度の徐脈や急拍などの不整脈のために心拍出量が極端に減少し,脳の虚血をきたして,意識障害の発作をくりかえすものをいう.
 一般に脳の血液の循環が5秒以上断たれると意識障害が始まり,10秒以上になると痙攣が始まってくる.したがってこの発作は,脳虚血状態の強さおよび持続時間の長さに応じて,わずか数秒間の意識消失だけの軽いものから,てんかんのように卒倒し,痙攣を始めるものまであるが,洞調律が回復せず,そのまま死亡する不幸なものもある.

減カロリー食

著者: 松木駿

ページ範囲:P.768 - P.769

カロリー減の上限と下限
 断食および著しい減カロリー食の実験から,肥満症に対し負の窒素出納なしに熱量を減らしうる限界は,1日およそ600Calとされており,600Cal以下では負の窒素出納をまぬがれず,減カロリー食というより断食の範疇に属するものとみなされ,肥満症の治療としては当然望ましくない.したがって減カロリー食の熱量の下限は1日600Calということになる.
 減カロリー食の熱量の上限はどうかというと,消費熱量をわずかに下回る程度の熱量を与えて,長期間をかけて体重減少させてもよいわけであるが,実際にそれでは患者があきてしまって成功しにくい.患者は,いざ減カロリー食を始めるとなると,短期間に多くの体重減少を希望するものである.

夏と乳児と水

著者: 巷野悟郎

ページ範囲:P.770 - P.771

"あつい","水が飲みたい"といえない乳児
 日本の夏は一般に高温多湿である.東京を例にとると,6月から9月ころまでの平均最高気温は25℃以上で,とくに7,月8月は30℃に達し,平均湿度も80%くらいまでに上昇している.気温が30℃で湿度が80%という環境は,生下時体重の小さい未熟児が裸で収容されてちょうどよい保育器内のそれに匹敵する.
 このように気温も湿度も高い気候は,われわれおとなにとっては不快であり,食欲不振や疲れやすいなどの不定愁訴をきたしやすい.しかし多くの場合,おとな自身が食欲にあった食事を選択したり,涼しいところで休養をとるなど,生活にくふうをこらして,自分の健康に気をつけることができる.

麻薬の臨床的な使いかた

著者: 酒井威

ページ範囲:P.772 - P.774

 紙面がたいへん少ないので,非常に短く切りつめて記述することとする.

目で見る臨床検査シリーズ

血液検査—Ⅰ.赤血球形態を中心として

著者: 寺田秀夫

ページ範囲:P.775 - P.777

日常検査のなかで最もたいせつな検査
 血液学的検査は臨床検査のなかでも日常の患者の診療にあたって必ず一度は行なわれるもので,血液疾患のみならずすべての疾患と関連を有する.
 たとえば老人や中年の人で急激に進行する貧血のみられた場合は,まず悪性種瘍が疑われ,慢性腎炎の患者で明らかな貧血があれば進行した症例と考えられる.

カラーグラフ

血液検査法—Ⅰ.赤血球形態からの診断

著者: 寺田秀夫

ページ範囲:P.732 - P.733

 近年,放射性同位元素を用いる血球回転,クームス試験や免疫グロブリンを中心とする免疫血液学的検査法,酵素や核酸代謝に関する生化学的検査法の導入,電子顕微鏡を用いる血球形態の観察など,血液学的検査にも多くの進歩がみられるが,1枚の血液塗抹標本を美しく仕上げ,それを詳細に観察することは血液病診断の基本であり,それにより大部分の血液疾患が診断されうるのである.

負荷試験=方法と評価

負荷脳波

著者: 大熊輝雄

ページ範囲:P.718 - P.720

 安静時の記録では脳波異常が出現しないか,あるいは軽度にしか出現しない場合に,脳波異常を顕著に出現させるために行なう操作を,脳波の賦活法activationと呼ぶ.このさい種々の負荷を与えて検査するので,負荷脳波とも呼ばれる.

診療手技

小児の輸液療法

著者: 山本高治郎

ページ範囲:P.722 - P.724

重要度増す静脈内輸液
 小児の診療において,静脈内輸液が重要な地位を占めることは多言を要しない.特に近年は,輸液理論の進歩,使用器貝の改善と相まって,ますます広範に用いられる傾向にある.他方,皮下大量輸液は,その便宜性にもかかわらず,種々の欠点のために,しだいに顧みられなくなりつつあるのが現状である.

救急診療

はげしい頭痛

著者: 斎藤佳雄

ページ範囲:P.726 - P.727

"はげしい頭痛"を訴える患者をみたときは
 日常診療において慢性の頭痛と遭遇することはきわめて多いが,急性のはげしい頭痛は比較的まれである.しかもこれらは他の症状を伴い頭痛はその1つの症状にすぎないことが多い.そこでいたずらに対症療法のみにとらわれず,その真の原因を探究し原病の治療に努めなければならない.次にこれらはすぐ脳外科的処置を必要とするか,あるいは内科的治療で治りうるかをすみやかに目安をつけることも必要である.まずはげしい頭痛を訴える患者をみた時に,次の疾患名を思いうかべる必要がある.

グラフ

内科的胆管穿刺造影法—手技および症例

著者: 大藤正雄 ,   土屋幸治

ページ範囲:P.735 - P.740

 黄疸の鑑別や不明の胆道病変の診断に,胆管を穿刺し直接に造影剤を注入して診断する方法は胆道外科の分野で広く行なわれ,臨床的に有用な手段とされている.しかし,これまで,手術を前提として外科的に実施されてきた.著者らは,胆管穿刺造影法を穿刺術式のくふうとX線テレビの応用により,より安全に実施可能であると考えている,ここにその術式と症例について紹介したい.

Permanent Endocardial Pacing法

著者: 五十嵐正男 ,   多田寛 ,   西条正城

ページ範囲:P.794 - P.797

 Adams-Stokes症候群などの重症な不整脈の治療に,約10年前から人工ペースメーカー移植が行なわれている.
 はじめは開胸をし,電極を左心室外膜に縫合するEpicardial pacing法が行なわれていたが,手術侵襲が大きく,その適応がかぎられていた.しかし最近では開胸をせずに,頸静脈や頭静脈を経由してカテーテル電極を右心室内膜に密着させ,胸壁皮下,ないしは大胸筋下に埋没したペースメーカーに連結するEndocardialpacing法が,手術侵襲が少ないことからしだいに普及されてきているので,それを紹介する.

症例 全身性疾患と消化器・4

脳出血と胃潰瘍

著者: 日野貞雄

ページ範囲:P.789 - P.793

症例
 56歳,男性,会社役員
 既応歴 10年前外地より帰り,胸やけ,酸性曖気,空腹痛あり.治療により1カ月後治癒.3年前もたれ,食欲不振など胃弱症状と,異常発酵によると思われる腹部膨満,下痢傾向があった.消化器病専門家の診察をうけ,胃部レ線検査をうけたが,大したことなしといわれた.加療により短期間で治癒.

他科との話合い

老人と皮膚病

著者: 小林健正 ,   小藤田和郎

ページ範囲:P.815 - P.821

 老人には,老化現象に伴って起こる特有の皮膚病が多く,治療にてこずることが多い.それらは,癌や糖尿病などの内臓疾患の現われである場合と,むしろ皮膚科の治療を要する場合とがある.老人という特異性を考慮しながら,原因をみきわめることがたいせつである.

阪大・阿部内科 研修医のためのWard Conference・7

体質性過ビリルビン血症—ビリルビン代謝を中心に

著者: 阿部裕 ,   川越裕也 ,   鎌田武信 ,   垣下栄三 ,   山野睦三 ,   椋田知行

ページ範囲:P.809 - P.814

 阿部 黄疸は従来,肝前症(溶血性および非溶血性),肝性(肝細胞性および肝内胆管性),および肝後性(閉塞性)と大別されてきたが,近年ビリルビン代謝の詳細や黄疸患者のビリルビン代謝異常に関して多くの新知見がえられ,これに伴って黄疸発生機序も,ビリルビン代謝を基礎として細胞レベルで理解されるようになってきた.今日は体質性黄疸を話題として,ビリルビン代謝とその観点よりみた黄疸の発生機序についての考え方を整理してみよう.
 山野 症例は次ページの表1のとおりです.

チュレーン大学の内科専門医のためのオリエンテーション・ブックレット・7

内科の各専門部門—結核病学・熱帯病学・腎臓病学部門

著者: 高階経和

ページ範囲:P.806 - P.808

結核病学部門
 この部門はDr.Morton Ziskinの指導のもとに行なわれるものであって,最近は化膿性の肺疾患における臨床の諸問題や,肺生理学における研究を行なっている.コンサルテーションは病棟にいる患者の中で,いかなる肺性疾患をもっている者に対しても行なうことができる.また診断的価値のある者や非常に興味のある症例についての検討がなされる.Dr. Ziskinは,毎木曜日の午後1時30分から,これらの症例のすべてについて胸部疾患回診を行ない,急性の問題がある場合には,いかなる時間であっても,彼の意見を得ることが必要とされている.
 栄養外来は,各水曜日の9時にハッチンソン・ビルディング7階において行なわれる.栄養回診は月曜日の14時にドクターズ・インフォーメーションのところから始まる.コンサルテーションを行なうことができる特別な検査については次の通りである.血清中のビタミンB12値,血清ビタミンCの値,ビタミンB6欠乏症におけるビタミンB6の尿中の排泄量それからビタミンB1欠乏症に対するビタミンB1負荷試験,キサンチン尿酸排泄およびビタミンB2欠乏症に対するトリプトファーン試験,あるいはビタミンA欠乏症に対する血清ビタミンA値,悪性貧血や消化吸収障害症状に対するSchillingテスト,放射性トリオレインや消化器吸収症候群に対するオレインサン吸収や膵臓疾患およびポルフィリン血症に対する尿中ポルフィリンの定量などである.諸君は,ビタミン欠乏症をもっていると思われるすべての症例に対しては,栄養部門にいるレジデントに相談をすること.
 胸部疾患コンサルテーションの際には,この部門にいるレジデントが,たえず緊急コンサルテーションに役だっている.胸部疾患外来は,ハッチンソン・ビルディングの7階で火曜日の13時から行なわれている。肺性疾患をもったどんな種類の愚者でも,一般内科外来,あるいは内科病棟からこの外来に送ることができる.彼らは患者が入院している間にコンサルテーションを必要とする場合には,その要望に答えるし,また患者が退院する場合には,病棟の医師が患者自身を一般外来に返すと同時に,胸部外来(特別外来)にも受診するようにと勧める必要がある.

臨床家の生理学

輸液—量と組成の決定方針

著者: 山内真

ページ範囲:P.822 - P.827

 輸液治療は,不正確な諸種のデータに頼って治療を誤るより,体液バランスの構成・不足量の推定法などの基礎知識を得れば正しく行なうことができるものである.

診療相談室

高齢者が手足末端のしびれ,痛みを訴えるとき

著者: 加瀬正夫

ページ範囲:P.831 - P.831

質問 高齢者で手足末端のしびれ,痛みを訴えるとき,何を考えるべきでしょうか. (長崎市・K生)

medicina CPC

右脳神経症状,小脳症状と左運動知覚麻痺の続いた症例

著者: 築山一夫 ,   高月清 ,   景山直樹 ,   前川善水 ,   藤原美砦 ,   木島滋二

ページ範囲:P.799 - P.805

下記の症例を診断してください.

略語の解説 17

LD50-LVH

著者: 阿部正和

ページ範囲:P.729 - P.729

LD50
 lethal dose 50 per cent, median lethal dose:試験動物の50%が死ぬのに必要にして,かつ十分な薬物あるいは毒素の量.薬物の副作用,または投与量を決定する場合の参考資料とされる.

統計

日本脳炎の最近の動向

著者: 小畑美知夫

ページ範囲:P.798 - P.798

 そろそろ日本脳炎の季節になってきました.日本脳炎の最近の動向を,厚生省で毎年公刊しております「伝染病および食中毒統計」により患者の発生状況を,「人口動態統計」により死亡者の状況をみましょう.
 伝染病の患者数はご承知のとおり,先生方から届出られる患者数をもとにして作成されております.

今月の表紙

サルモネラと腸炎ビブリオ

著者: 善養寺浩

ページ範囲:P.730 - P.730

 わが国における細菌性食中毒の代表的な原因菌は表題の2つの細菌であろう.発生頻度,症状の重さにおいて最近の赤痢よりさらに重要視される.
 チフス・パラチフス菌に代表きれるサルモネラ属に包含される菌型は,1965年現在のKauffmann-White抗原表に集録されているものでも,45のO群に分けられ,962型に達しており,現在では1000型をはるかに越えている.このほかに,サルモネラ属に類縁というより同一属とみなすほうが妥当と思われるアリゾナの34型がある.アリゾナを含めサルモネラは病原性から,

全国教室めぐり

教授以下少壮陣容・基礎訓練の重視—久留米大・奥田内科

著者: 谷川久一

ページ範囲:P.781 - P.781

 久留米大学第2内科は昭和3年3月,松岡文七教授によって開講され,第2代の松藤宗次教授に次いで,昭和38年5月より奥田邦雄教授が教室を主宰され現在に至っている.九大出身の多い本学教授陣の中で満大出身の教授は特異な存在といえよう.1歩1歩築きあげられた実力と飾りけのない人柄が,それを可能にしたともいえる.

ルポ アメリカ医学の実相・5—1968年夏の渡米ノートから

Methodist病院(ロチェスター),Northwestern大学メディカルセンター(シカゴ)を訪ねて

著者: 日野原重明

ページ範囲:P.782 - P.784

Methodist 病院--患者のための医療看護を課題として
 Mayo Clinicの外来の見学を終えてから地下道を通ってRochester Methodist Hospitalを訪問した.ここは1954年にできたMethodist教会系の病院であり,1966年末に増築して525床の病床と新しい設備を備えた近代病院となっている.Mayo Clinicで診断された患者で入院を要するものは,前日訪問したSt.Mary's Hospitalかこの病院かに送られる.Mayo Clinicのstaffはこれらの病院で病院における活動に従事するわけである.
 この病院は,患者のために"いかにしてよいmedicalcareを与えられるか"を研究することが病院の課題とされている.したがって医療や看護に非常な重点がおかれ,その設計も患者のcareがゆき届くように配慮されている.各フロアーには円形の特別病棟があり,中央にnurse stationがあって周囲の患者をよく見渡しながら世話ができるようになっている.とくに重症室や手術後の患者(ICU),または心筋硬塞の患者の病室(CCU)など,この円形の病棟の各階におかれている.

インタビュー

東南アジアにおける結核対策の現状

著者: 東義国 ,   木島昂

ページ範囲:P.785 - P.787

 東南アジア諸国における結核は,そのほとんどの地域で,人々の奥深くに強く根を下ろしているといってもよい.たまたま,WHOの結核管理業務に長く従事してこられた東氏が日本に立ち寄られた機会に,その業務と対策の過去・現在・将来をきくことにした.

メディチーナ・ジャーナル・厚生省

イタイイタイ病をめぐる最近の話題

著者: 長谷川豊

ページ範囲:P.788 - P.788

"公害病認定"の意義—学問と行政の接点
 富山県神通川流域に発生したいわゆるイタイイタイ病について,厚生省が"公害に係る疾患"であると断定してから早や1年余を経過した.これを契機として,その後続いて熊本の水俣病,新潟の阿賀野川水銀中毒についても公害認定が行なわれ,公害行政の進展に一時期を画したことはなお耳新しい.
 しかしながら公害病認定ということはこれらの疾病が医学的に完全に解明されたということとイコールではない.学問的には未解明の点がまだ残されているけれども,わからない点があるからといっていつまでも放置しておけない,学問は学問として,公害行政としては一刻も早く対策を行ない,患者を救済しなければならないという行政上の判断によるふみきりである.

臨床メモ

変貌するサルモネラ症

著者: 磯貝元

ページ範囲:P.758 - P.758

 古くからの食習慣の特異性もあって本邦では以前から細菌性赤痢,腸チフスなどの急性経口感染症の発生が高く,各種の食中毒もこの例にもれず毎夏各地で猛威をふるってきたが,ここ数年来,反尿処理などの衛生施設の改善,食生活の西欧化,食品保存技術の進歩,化学療法の発展などが相まってようやくはっきりと退潮を示しはじめてきた.しかしなにごとにも例外はあるもので,同じ食中毒に属してはいるもののサルモネラ症だけは最近の動向に逆行して,かえって増加する傾向をみせはじめており,その将来が注目される.この様相は欧米でも注意されており,アメリカで本症の年間届出患者数がこの10年で3倍近く増加したという統計もある.わが国での最近の発生状況を調べてみると,①発生はいぜん夏期が多いが,ここ数年他の季節にも患者が出はじめている,②保菌者が多数存在し,かつ下水中などからも容易に分離されるので,われわれの身近に多数の菌が存在すると推測される,③幼少年層に患者が多発する傾向が強くなってきた,④物資の広域流通機構の発達によって,汚染食品による大規模かつ広範な集団発生が起こりやすくなっているなどが従来と異なった疫学的特色となっている.
 細菌学的にも,新しい菌型が各地でつぎつぎと分離されており,S.cubanaやS.havanaなど日本初登場の新顔が多数みいだされ,菌型の多様化が問題となっている.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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55巻10号(2018年9月発行)

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55巻8号(2018年7月発行)

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55巻7号(2018年6月発行)

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55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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