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文献詳細

雑誌文献

medicina60巻2号

2023年02月発行

文献概要

連載 主治医の介入でこれだけ変わる! 内科疾患のリハビリテーション・18 疾患別リハビリ・運動療法の実際

サルコペニア・フレイル

著者: 上月正博12

所属機関: 1公立大学法人山形県立保健医療大学 2東北大学

ページ範囲:P.423 - P.428

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 サルコペニア(sarcopenia)はRosenbergによってギリシャ語のsarx(筋肉)とpenia(減少)からの造語を用いて1989年に提唱された.筋量の減少により身体機能低下,入院リスク,死亡リスクが高まること,またこれに伴う握力や歩行速度の低下が臨床上重要であることが明らかとなり,2010年にはEWGSOP(European Working Group on Sarcopenia in Older People)がサルコペニアを「進行性かつ全身性の筋量および筋力の低下であり,身体機能障害,QOL低下,死のリスクを伴うもの」と定義づけるコンセンサスを発表した1).サルコペニアの最も重要な要因としては加齢が挙げられ,危険因子としては,活動量不足,疾患(代謝疾患,消耗性疾患など),栄養不良が挙げられる.
 一方,フレイル(frailty)は,「加齢に伴って身体機能,精神認知機能,社会性が低下し,全般的な活動性が減少した状態」を指す.フレイルは,加齢に伴う「衰え」を多面的(身体的,精神認知的,社会的)に捉えた概念であり,健康(robust)と要介護状態(disability)の中間として位置づけることができる(図1)2).つまり,フレイルは要介護状態の前段階(pre-disabled state)と考えられる.身体機能低下,精神認知機能低下,社会機能低下はいずれも密接に関連しており,1つの機能低下がほかの機能低下を次々に引き起こす〔フレイルの悪循環(vicious cycle of frailty)〕.すなわち,筋力が低下すると歩行機能が低下して外出の機会が減り,社会的に閉じこもり状態となり,ついには認知機能まで低下する.

参考文献

1)Cruz-Jentoft AJ, et al:European consensus on definition and diagnosis;Report of the European Working Group on Sarcopenia in Older People. Age Ageing 39:412-423, 2010
2)葛谷雅文:老年医学におけるSarcopenia & Frailtyの重要性.日老医誌 46:279-285, 2009
3)日本サルコペニア・フレイル学会:サルコペニア診療ガイドライン2017年版のCQとステートメント http://jssf.umin.jp/jssf_guideline2017.html(2022年12月閲覧)
4)角田 亘:サルコペニア・フレイル.日本リハビリテーション医学教育推進機構,他(監修),久保俊一,三上靖夫(総編集):回復期のリハビリテーション医学・医療テキスト,pp 253-257,医学書院,2020
5)日本サルコペニア・フレイル学会:サルコペニア診断基準の改訂(AWGS2019発表) http://jssf.umin.jp/pdf/revision_20191111.pdf(2022年12月閲覧)
6)日本サルコペニア・フレイル学会:アジアサルコペニアワーキンググループ(AWGS)サルコペニア診断基準2019 http://jssf.umin.jp/pdf/revision_20191111.pdf(2022年12月閲覧)
7)Satake S, Arai H:The revised Japanese version of the cardiovascular health study criteria(revised J-CHS criteria). Geriat Gerontol Int 20:992-993, 2020
8)Lopez P, et al:Benefits of resistance training in physically frail elderly;A systematic review. Aging Clin Exp Res 30:889-899, 2006
9)サルコペニア診療ガイドライン作成委員会(編):サルコペニア診療ガイドライン2017年版一部改訂,ライフサイエンス出版,2019 https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001021/4/sarcopenia2017_revised.pdf(2022年12月閲覧)
10)Tieland M, et al:Protein supplementation increases muscle mass gain during prolonged resistance-type exercise training in frail elderly people;A randomized, double-blind, placebo-controlled trial. J Am Med Dir Assoc 13:713-719, 2012
11)Kim CO, et al:Preventive effect of protein energy supplementation on the functional decline of frail older adults with low socioeconomic status;A community-based randomized controlled study. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 68:309-316, 2013
12)上月正博:食べてやせる! 若返る! 病気を防ぐ! たんぱく質・プロテイン医学部教授が教える最高のとり方大全,文響社,2021
13)上月正博:国立大学教授・腎臓の名医が教える 運動を頑張らなくても腎機能がみるみる強まる食べ方大全,文響社,2022

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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