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連載 医学古書を紐解く・5
Philologyのすすめ—中島文雄『英語学とは何か』,渡部昇一『古語俗解』,Nuck A.『Adenographia Curiosa et Uteri Foeminei Anatome Nova』
著者: 清田雅智1
所属機関: 1飯塚病院 総合診療科
ページ範囲:P.952 - P.953
文献購入ページに移動私が古書を読んだり,集めたりする背景には「何かを知りたい」という動機がある.“philology”という言葉はあまり馴染みがないかもしれないが,日本語では“文献学”と訳される.英語学者の渡部昇一先生は『小論集成』の中で「学問における文献学とは“Ad Fontes”である」と記述している1).Fontesというのはラテン語で“泉”という言葉の複数形で,Ad Fontesというのは「源泉を辿っていく」「オリジナルを探っていく」といった意味になる.ちなみに渡部先生は同じく英語学者の中島文雄先生による『英語学とは何か』という本の序文を書いているのだが,その内容が医師にも通じるところがあって興味深いので紹介したい2).
まず「専門を選ぶということは,どうしても領域を狭くしなければいけない」という記載がある.これは医師であれば共感できると思われるが,渡部先生はそれを解決する手段として,文献学的なアプローチが大事なのではないかと指摘し,「文献学者は自身の専門学科において一流でなければならない一方で,他の学問においても二流すなわちBetaでなければならない」という昔の文献学者の言葉を紹介している.私は感染症を専門にしようと努力してきたが,総合診療医として,感染症以外の領域もできるだけBetaを目指す心意気でこれまでやってきたので,この言葉には大いに感じるところがあった.
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