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文献詳細

雑誌文献

medicina60巻6号

2023年05月発行

文献概要

連載 医学古書を紐解く・5

Philologyのすすめ—中島文雄『英語学とは何か』,渡部昇一『古語俗解』,Nuck A.『Adenographia Curiosa et Uteri Foeminei Anatome Nova』

著者: 清田雅智1

所属機関: 1飯塚病院 総合診療科

ページ範囲:P.952 - P.953

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Philologyと総合診療
 私が古書を読んだり,集めたりする背景には「何かを知りたい」という動機がある.“philology”という言葉はあまり馴染みがないかもしれないが,日本語では“文献学”と訳される.英語学者の渡部昇一先生は『小論集成』の中で「学問における文献学とは“Ad Fontes”である」と記述している1).Fontesというのはラテン語で“泉”という言葉の複数形で,Ad Fontesというのは「源泉を辿っていく」「オリジナルを探っていく」といった意味になる.ちなみに渡部先生は同じく英語学者の中島文雄先生による『英語学とは何か』という本の序文を書いているのだが,その内容が医師にも通じるところがあって興味深いので紹介したい2)
 まず「専門を選ぶということは,どうしても領域を狭くしなければいけない」という記載がある.これは医師であれば共感できると思われるが,渡部先生はそれを解決する手段として,文献学的なアプローチが大事なのではないかと指摘し,「文献学者は自身の専門学科において一流でなければならない一方で,他の学問においても二流すなわちBetaでなければならない」という昔の文献学者の言葉を紹介している.私は感染症を専門にしようと努力してきたが,総合診療医として,感染症以外の領域もできるだけBetaを目指す心意気でこれまでやってきたので,この言葉には大いに感じるところがあった.

参考文献

1)渡部昇一:上智大学最終講義 科学からオカルトへ:A.R. ウォレスの場合.渡部昇一:渡部昇一小論集成(下),pp 557-605,大修館書店,2001
2)渡部昇一:中島文雄『英語学とは何か』—解題にかえての回想.中島文雄:英語学とは何か,pp 3-22,講談社,1991
3)渡部昇一:古語俗解,pp 160-166,文藝春秋社,1983
4)井村 洋,清田雅智:右鼠径部のしこりの原因は? Dr. 井村のクリニカルパールズ(第41回).DOCTOR'S MAGAZINE 205:18-21,2016
5)Nuck A:Adenographia Curiosa et Uteri Foeminei Anatome Nova cum Epistola ad Amicum de Inventis Novis, pp 130-138, 1691 https://www.google.co.jp/books/edition/Adenographia_curiosa_et_uteri_foeminei_a/IzWqJ6gpVY0C?hl=ja&gbpv=0(2023年1月閲覧)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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