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雑誌目次

雑誌文献

medicina60巻7号

2023年06月発行

雑誌目次

特集 整形外科プライマリ・ケア—内科医が知りたい整形外科疾患のすべて

著者: 田島康介

ページ範囲:P.976 - P.977

 本誌をご覧の皆さま,初めまして.私は,整形外科医として10年,その後医局人事で救急科に出向し救急医としても10年のキャリアを積み,現在は東京都足立区にある三次救急病院で整形外傷疾患を統括する立場の整形外科専門医であり,救急専門医でもあります.救急医としては,整形外科疾患だけを選り好みして診療を行っていたわけではなく,当然のことながら内科疾患にも対応していました.救急の現場では,内科医と整形外科医が話し合う場合,疾患の緊急性に対する認識の違いや,あるいは全身のことを考える内科医と,局所のことを考えてしまう整形外科医との間でどうしても話が噛み合わないこともあります.私は長年救急の診療現場に携わってきたために,両者の考え方ともよく理解できますので,お互いの思考の交通整理をすることも私の大きな役割の1つでした.そのような背景からか,内科雑誌として歴史のある『medicina』の特集企画立案のお話をいただけたことは大変光栄に思います.
 プライマリ・ケア医/内科医が整形外科疾患や整形外科系の主訴を訴える患者に対応する場合,そもそもそれが内因性の愁訴なのか,整形外科的な愁訴なのかを判断するには,整形外科系の疾患についての知識も必要となります.

特集を読む前に あなたの理解度チェック!

ページ範囲:P.978 - P.981

●今月の特集執筆陣による出題です.整形外科疾患に関する理解度をチェックしてみましょう!

各医療機関の立場から 〈開業医の立場から〉

整形外科の開業医の立場から

著者: 田邊剛 ,   田邊亜矢

ページ範囲:P.982 - P.986

Point
◎整形外科疾患を疑った際の紹介先は開業医・病院勤務医のどちらでも構わないが,歩行困難・坐位困難な患者の場合は,手術適応の有無にかかわらず病院勤務医への紹介が適切である.
◎整形外科は専門分野が細分化されているが,整形外科専門医はすべての整形外科疾患の窓口となるため,紹介に際しては専門分野を気にしなくてもよい.
◎整形外科疾患を疑った際は「この程度の症状で紹介状を書いてよいのか?」という疑念は持たず,気軽に紹介いただきたい.

内科の開業医の立場から

著者: 大湾喜行 ,   矢澤聰

ページ範囲:P.988 - P.990

Point
◎筋骨格系の症状を訴える患者に対して,多様な鑑別診断のなかから内科的な疾患を除外することが重要である.
◎腰痛の際には,重大な疾患の警告症状(red flag sign)を見逃さない.
◎関節痛のアプローチとして,原因部位,炎症性か機械性かの判別と,感染の有無の判別を行い関節炎以外の疾患を鑑別することが重要である.

〈中核病院・大学病院の立場から〉

大学病院の整形外科医の立場から—病診連携を考える

著者: 石井秀明 ,   池上博泰

ページ範囲:P.992 - P.995

Point
◎軽微な外傷エピソードのなかにも手術的治療を必要とする骨折などが潜んでいることがある.骨脆弱性を有する高齢者だけでなく若年者でも注意が必要である.
◎紹介してから受診・治療開始までのスピード感を考慮すると,外傷エピソードがある症例の紹介先は急患への対応が可能な外傷センターを有する大学病院,あるいは手術的治療が可能な中小病院が望ましい.
◎大病院(中核病院や大学病院)と中小病院・診療所の間で紹介・逆紹介の循環が円滑に行われることで,それぞれの特性を活かした効率の良い医療が提供できる可能性がある.

救命センターの救命救急医の立場から

著者: 日比野将也 ,   植西憲達

ページ範囲:P.996 - P.1001

Point
◎ありふれた疾患を診ていても「どのような急変があり得るか?」「こうなったら転院搬送」「稀ではあるが◯◯を見逃さないよう,この所見に注意」と意識することが急変予防への対応につながる.
◎壊死性筋膜炎は進行が速く,治療の遅れが患者の機能予後・生命予後悪化に直結する.蜂窩織炎との鑑別が難しいが特徴的な所見を押さえておき,患者とも共有することで早期治療につなげられる.
◎「呼吸数がいつもより速い」「今日は元気がない」など,患者の微妙な変化に敏感であることは,迅速な急変対応への備えにつながる.

ここまでやりたい,処置や手技

関節穿刺

著者: 田島康介

ページ範囲:P.1002 - P.1006

Point
◎関節穿刺では,シリンジで陰圧をかけながら愛護的に刺入することで,針先が関節内に到達すると内容物が吸引される.
◎正常な関節では数ccの関節液が存在するのみで,通常は穿刺で吸引できない.
◎関節液の貯留により関節痛を発している場合は吸引による関節内圧の減弱により疼痛は直ちに大きく改善され,また内容物の性状や色調により診断に大きく寄与する.
◎膝関節穿刺は内科医もぜひ習得しておきたい手技である.

創傷に対する処置の考え方

著者: 田島康介

ページ範囲:P.1007 - P.1010

Point
◎日常診療において,処置を要する創傷患者に遭遇することは珍しくない.
◎いわゆる「擦り傷」程度のものから,縫合を要するものまでさまざまな創傷があるが,確実な感染予防がとりわけ肝要である.

局所麻酔と縫合

著者: 田島康介

ページ範囲:P.1011 - P.1015

Point
◎創部の縫合は専門診療科(整形外科,形成外科,皮膚科など)を受診させてもよいが,縫合のための器材と技量がある医療機関の場合は,自分で縫合を行っても問題ない.
◎顔面であれば整容面から形成外科受診が望ましい.
◎他施設を紹介する場合であっても,一次洗浄と抗菌薬投与は考慮されたい.

爪の「脱臼」と処置

著者: 田島康介

ページ範囲:P.1016 - P.1017

Point
◎指を扉に強く挟むなどして,指尖部の挫滅とともに爪の根元が「脱臼」することがある.
◎高度な汚染がない限り,いきなり爪を取り去るのではなく,よく洗浄して爪を可及的に戻すほうがよい.

主訴別編

肩が痛い,腕が上がらない

著者: 大木聡

ページ範囲:P.1018 - P.1023

 肩の痛みや可動域制限は頻度が高い.特に肩関節由来の夜間痛は「横になると痛む」「痛みで目が覚める」という症状が出るため,ADLの障害が著しい.これらの痛みの多くは保存的な加療でも治療可能なため,初診の段階で正しく診断することが重要である.

肘が痛い

著者: 森澤妥

ページ範囲:P.1024 - P.1031

 「肘が痛い」という患者の訴えを聞いたときに見逃すと危険な徴候について記す.
●肘の変形(→骨折・脱臼を疑う→外傷の有無の聴取)
●小児で肘を痛がり,バンザイできない(→上腕骨顆上骨折,肘内障)
●肘の著明な腫脹(→外傷,感染などを疑う)
●肘の発赤,熱感(→蜂窩織炎,化膿性肘関節炎,痛風,偽痛風)
●手のしびれ(→肘部管症候群)
以上を確認し,必要な場合は画像検査,採血を行い,整形外科を紹介する.

手首が痛い

著者: 鈴木拓

ページ範囲:P.1032 - P.1037

 「手首が痛い」という患者の訴えを聞いたときに見逃すと危険な徴候は以下の2つである.
●手首の強い腫脹,疼痛(骨折を疑う)
●手首の熱感,腫脹,疼痛(化膿性手関節炎,結晶誘発性関節炎などを疑う)
以上を確認し,当てはまるようなら診察や画像検査,採血などを行い,必要に応じて整形外科を紹介することをためらってはいけない.

手指が痛い,動かない

著者: 鈴木拓

ページ範囲:P.1038 - P.1042

 「手指が痛い,動かない」という患者の訴えを聞いたときに見逃すと危険な徴候は以下の3つである.
●指の強い腫脹,疼痛(骨折を疑う)
●指が伸びない(伸筋腱断裂を疑う.尺側偏位であれば緊急性はない)
●指の熱感,腫脹,疼痛(感染,爪周囲炎などを疑う)
以上を確認し,当てはまるようなら診察や画像検査などを行い,必要に応じて整形外科を紹介することをためらってはいけない.

首が痛い,回らない,肩甲背部が痛い

著者: 井上知久

ページ範囲:P.1044 - P.1048

 「首が痛い,回らない,肩甲背部が痛い」という患者の訴えを聞いたときに見逃すと危険な徴候(危険信号:red frag)は,以下の通りである.
●発症年齢<20歳または>55歳
●がん,ステロイド治療,HIV感染の既往
●栄養不良
●体重減少
●広範囲に及ぶ神経症状
●発熱
 上記事項を確認し,当てはまるようなら画像検査や採血を行い,必要に応じて医療機関に紹介することをためらってはいけない.

腰が痛い

著者: 土肥透

ページ範囲:P.1050 - P.1053

 「腰が痛い」という患者の訴えを聞いたときに見逃すと危険な徴候(危険信号:red flags)は以下の通りである1)
●時間や活動性に関係のない腰痛→悪性腫瘍や感染,解離性大動脈瘤や内臓疾患を疑う.
●発熱を伴う腰痛→化膿性脊椎炎,腸腰筋膿瘍(p.1136「化膿性脊椎炎・腸腰筋膿瘍」を参照),腎盂腎炎などを疑う.
●がん,ステロイド治療などの既往→転移性脊椎腫瘍や骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折(p.1124「脊椎の骨折」を参照)を疑う.
●重篤な神経症状を伴う腰痛→重症の馬尾神経障害を疑う.
 上記徴候がある場合は,画像検査や血液検査を実施し,必要に応じて整形外科など専門の医療機関を紹介することを心がける.

上肢がしびれる,麻痺する

著者: 丹治敦

ページ範囲:P.1054 - P.1058

 上肢がしびれるという患者の訴えを聞いたときに見逃すと危険な徴候(危険信号:red flag)は,運動麻痺と筋萎縮である.運動麻痺と筋萎縮の有無を確認し,認められる場合は,保存療法に固執することなく,然るべきタイミングで整形外科に紹介するべきである.

下肢がしびれる,麻痺する

著者: 池澤裕子

ページ範囲:P.1060 - P.1064

 下肢のしびれはさまざまな疾患で生じる.急性発症した両側の下肢しびれに麻痺(筋力低下),感覚障害を伴う場合は,緊急に対応を要する.しびれのみの場合や筋力低下があっても軽度であれば,頻度の高い疾患をまず念頭に置き身体所見や血液検査,画像検査などで絞り,診断がつかない場合は電気生理学的検査で精査する.脊椎由来の疾患や絞扼性神経疾患が疑われれば,手術で改善が得られるため,整形外科の受診を勧める.

股関節が痛い

著者: 西脇徹

ページ範囲:P.1066 - P.1071

 本稿では,股関節周囲の疾患・外傷について記載する.股関節周囲の痛みのみならず,時には大腿部痛や膝痛を訴えることもある.また,股関節周囲の痛みを訴えていても,脊椎など他の疾患による可能性もある.患者を診察する際に,まず原因が股関節に起因するか所見をとることが大切である.普段から関節の所見をとることに不慣れな場合には,Scarpa三角(鼠径靱帯,縫工筋,長内転筋で囲まれる部分)の圧痛の有無,股関節の内外旋を含めた可動域の健患差,関節可動時の痛みの有無を確認すれば,股関節に起因するかおおよそ検討がつく.また画像検査は,健側を含めた正面像に加え,必ず側面像など複数方向から撮影することが大切である.

膝が痛い

著者: 髙木博

ページ範囲:P.1072 - P.1077

 中高年の患者から「膝が痛い」との訴えを聞いたときに,まず頭に浮かぶのは年齢的な変化によって発症する変形性膝関節症のための痛みであろう.しかし,膝関節の所見として見逃してはいけないのは,
●膝関節の発赤・熱感(→化膿性膝関節炎・偽痛風・痛風などの炎症性疾患を疑う)
●全身の発熱(→化膿性膝関節炎を疑う)
●荷重ができないほどの疼痛(→骨折を疑う)
などで,画像検査や血液検査で異常所見の有無を確認し,速やかに整形外科を紹介すべきとなる症候である.

下腿が痛い

著者: 田島康介

ページ範囲:P.1078 - P.1084

 「下腿が痛い」という患者の訴えを聞いたときに見逃すと危険な徴候(危険信号:red flag)は,以下の3つである.
●下腿全体の変形(→骨折を疑う)
●下腿の著明な腫脹(→石のように硬いときはコンパートメント症候群を想起)
●下腿の熱感,発赤だけでなく,バイタルサインの異常(→壊死性軟部組織感染症を疑う)
以上を確認し,当てはまるようなら画像検査や採血を行い,必要に応じて医療機関を紹介することをためらってはいけない.

足が痛い

著者: 吉本憲生

ページ範囲:P.1086 - P.1090

 足部は大小さまざまな28個の骨から構成されており,それぞれが関節を形成し,靭帯や筋肉,腱などの軟部組織で支持されている1).それぞれの関節や腱,靭帯が変性・損傷を受けるとさまざまな症状を引き起こす.構造物が多いためさまざまな疾患があるが,本稿では代表的な疾患に関して概説を述べる.

あちこちの関節が痛い

著者: 日比野将也

ページ範囲:P.1092 - P.1102

 内科外来をしていると,問診票に「主訴:あちこちの関節が痛い」と書かれ,痛みを示す体のシェーマには首,両肩,両肘,腰,両膝,両足関節のすべてに◯がつけられているような患者に遭遇することがしばしばある.患者は関節が痛いからといって必ずしも整形外科を受診するわけではなく,「どこが悪いのかよくわからないから内科を受診する」のである.多発関節痛あるいは関節炎を呈する疾患は実に多く(表1)1, 2),幅広い視野を持って診療に当たる必要がある.本稿では,そのすべてを解説することは不可能であるため代表的な疾患のみ解説する.疾患に特異的な病歴聴取および身体診察と,効率の良い検査で診断を絞っていくことがポイントである.
 診断の流れを図1に示す.

小児—急に腕を動かさなくなった,急に歩かなくなった

著者: 田島康介

ページ範囲:P.1104 - P.1110

※本稿での「小児」は,自分で明確に症状を訴えることができない年齢(およそ就学前まで)を言う.
 小児は自分の症状を正確に訴えることができない.保護者が「手首を痛がってます」と言っていても,診察すると肘を痛がっていたり,保護者が「足首を痛がります」と言っていても,診察すると実は股関節を痛がっていたり,ということは日常的に体験する.患児の主訴が何であるかを,保護者の発言に惑わされずに丁寧に診察することが肝要である.

疾患編

骨・軟部腫瘍—プライマリ・ケア医が知っておくべき診療のポイント

著者: 小林英介

ページ範囲:P.1112 - P.1117

Point
◎骨・軟部腫瘍に日常診療で遭遇することは少ないものの,悪性腫瘍の可能性を示唆する所見を看過しないような診療,診察を心掛けるべきである.
◎軟部腫瘍の診察においては「大きさ」「増大速度」「可動性の有無」という3つの所見を問診・診察することが肝要である.また治りにくい潰瘍は悪性腫瘍の可能性がある.
◎骨腫瘍の診断において若年者では悪性腫瘍,中高年では転移性骨腫瘍の可能性があることを考慮すべきである.
◎骨腫瘍の診断では単純X線撮影は有用である.「骨皮質の消失」「腫瘍周囲の骨硬化像」「骨膜反応」の所見の有無を確認することは悪性腫瘍の鑑別に有用である.

軟部組織の疾患

著者: 湯川貴史

ページ範囲:P.1118 - P.1123

Point
◎壊死性筋膜炎は皮膚壊死を発症した段階では救命できないことがあり,早期の診断と治療が求められる疾患である.
◎壊死性筋膜炎は病変に不釣り合いな激しい四肢の痛みを訴える.
◎壊死性軟部組織感染症の治療はデブリードマンなどの外科的治療で感染巣を除去し,感染コントロールすることが必須である.

脊椎の骨折

著者: 玉木亮

ページ範囲:P.1124 - P.1129

Point
◎脊椎骨は受傷初期には単純X線写真による診断が困難なことがある.確定診断においてはCTやMRIによる画像診断が必要になることがある.
◎各脊椎骨折には典型的な受傷機転を有することが多く,受傷機転の問診は重要である.
◎各脊椎骨折は保存加療において専用の装具が必要になることが多く,骨折を確認できれば整形外科に紹介する必要がある.
◎脊椎骨折において麻痺が生じているかを診断することが重要である.
◎脊椎骨折の部位にかかわらず,神経麻痺が生じている症例では緊急手術の適応になる可能性がある.その際は脊椎外科医のいる高次機能病院へ即時に転送する必要がある.

脊髄の疾患

著者: 辻崇

ページ範囲:P.1130 - P.1135

Point
◎脊髄の疾患には,脊髄腫瘍,脊髄空洞症,脊髄血管奇形,脊髄損傷,炎症性脱髄疾患などがある.
◎脊髄腫瘍,脊髄空洞症,脊髄血管奇形,脊髄損傷は外科治療の適応の是非を含めて脊椎脊髄病専門医への紹介を検討する.
◎炎症性脱髄疾患に関しては神経内科または小児科医への紹介を検討する.

化膿性脊椎炎・腸腰筋膿瘍

著者: 辻崇

ページ範囲:P.1136 - P.1139

Point
◎化膿性脊椎炎は中年以降に多い疾患で,高齢化,易感染性宿主の増加に伴い,発症数は増加傾向にある.
◎38℃以上の発熱と疼痛を伴う急性型は約半数であり,発熱のない慢性型が約1/4あり診断が難しい症例も多い.
◎抗菌薬投与と局所の安静が治療の基本で,抗菌薬の投与期間は6週間が原則となる.
◎抗菌薬開始前に血液培養を提出することが望ましい.また,穿刺可能な膿瘍が存在する場合にはCT(またはエコー)ガイド下穿刺を検討する.発熱や疼痛が顕著ではない慢性型の場合,血液培養の陽性率が低いため,感染局所からの検体採取を積極的に検討する必要がある.

関節リウマチなどの膠原病

著者: 王興栄

ページ範囲:P.1140 - P.1145

Point
◎関節リウマチ(RA)は人口の0.4〜0.5%,30歳以上の人口の1%に罹患し,比較的よく遭遇する関節炎の代表疾患である.
◎社会の高齢化に伴い2020年代では60歳台の発症が最も多く,近年では高齢発症関節リウマチ(elderly onset RA)が注目されている.
◎RAは発症後2年以内に急速に関節破壊が進行することから,早期治療介入が重要となる.
◎メトトレキサートや生物学的製剤の使用により疾患活動性は制御されつつあるが,薬物療法が進歩しても関節破壊が進行する中疾患活動性と高疾患活動性のRAが約2割いることを忘れてはならない.

連載 ローテクでもここまでできる! おなかのフィジカル診断塾・15

—おなかが膨満している その8—肝硬変のフィジカル—各論3 おなかばかりに気を取られてはならない!

著者: 中野弘康

ページ範囲:P.967 - P.971

 これまで3回にわたり,アルコール性肝硬変の患者さんをもとに,全身所見・局所所見に分けて,診るべきポイントを述べました.そして,背景肝の線維化が高度な,門脈圧亢進症の強い患者さんで聴取される静脈性雑音,Cruveilhier-Baumgarten murmurs(C-B murmurs)についても紹介しました.
 今回は,厳密には腹部のフィジカルではありませんが,“肝硬変が内科医の病気である”ことを私自身がしみじみ感じた,忘れられない症例を紹介します.この患者さんとの出会いがきっかけで,肝硬変=全身を診ることの大切さを認識できました.私にとっては忘れられない症例です.このエピソードは『総合診療』にも以前紹介する機会がありましたので,よろしければそちらもご笑覧いただければ幸いです1)
 
*本論文中、関連する動画を見ることができます(公開期間:2025年6月30日まで公開)。

ERの片隅で・3

異常な正常血圧

著者: 関根一朗

ページ範囲:P.1146 - P.1147

 静かに降り始めた雨を見て、研修医たちが出勤時に傘を持ってこなかったことを嘆いている。そんななか、ER内で救急搬送を告げるアナウンスが流れた。「5分後、救急車入ります。45歳男性 意識障害。仕事中に意識障害をきたし救急要請。現在、左片麻痺と右共同偏視あり、血圧108/65、脈拍95…」
 救急隊からホットラインで伝えられた傷病者情報の記載用紙を見た研修医は「脳卒中だな」と言ってNIHSS(脳卒中重症度スケールの1つ)を復習し始めた。

医学古書を紐解く・6

Sister Mary Joseph's NoduleとHamilton Bailey—Bailey H.『Demonstrations of Physical Signs in Clinical Surgery』

著者: 清田雅智

ページ範囲:P.1148 - P.1149

古書を買うきっかけ
 今回は,私が古書を収集し始めたきっかけになった逸話を紹介したい.
 サパイラ(Joseph D. Sapira)の『Art & Science of Bedside Diagnosis』には,実はいくつか誤りがある.その1つがリンパ節の章にある「Paraumbilical Nodes(Sister Joseph Node)」という項目で,臍周囲に腫瘤を認めたら,それはがんの遠隔転移を示唆しているという所見である1).解剖学的に臍にリンパ節はないため,分類上の誤りがあると思うのだが,この項目に「カトリックの尼僧の名前に“Mary”と付ける伝統があるためか,しばしば“Sister Mary Joseph's nodule”と誤って呼ばれる」という主旨の一文があり,私はこれがどうにも頭に引っかかって,調べることにした.

主治医の介入でこれだけ変わる! 内科疾患のリハビリテーション・22 疾患別リハビリ・運動療法の実際

腰痛

著者: 上月正博

ページ範囲:P.1150 - P.1157

 腰痛は日常診療でもよく遭遇する訴えであり,厚生労働省による国民生活基礎調査でも常に訴えの上位に位置している.腰痛に関しては2019年に日本整形外科学会,日本腰痛学会から『腰痛診療ガイドライン2019 改訂第2版』が公開された1).本稿では腰痛に対する具体的なリハビリテーション(以下,リハビリ)・運動療法について概説する.

明日から主治医! 外国人診療のススメ・3

在日ネパール人と医療:ネパール人を診よう

著者: サッキャサンディープ

ページ範囲:P.1158 - P.1162

 ネパール出身であり18歳で来日した筆者は,現在,河北総合病院の循環器内科で診療を行っている.当院には日本人だけでなく,ネパール人をはじめとして多くの外国人患者が来院している.また,筆者は母国のネパール人を対象に2016年より健康相談会を実施しており(図1),さらに,在日外国人の診療を多く行っている高田馬場さくらクリニックでも診療に携わっている.本稿では,これらの経験に基づくネパール人の健康問題・診療に関して役立つ情報を述べる.

目でみるトレーニング

問題1057・1058・1059

著者: 和才直樹 ,   金久保祐介 ,   相原秀俊

ページ範囲:P.1163 - P.1168

書評

—中島 芳樹 監訳 上村 明 訳者代表—小児と成人のための超音波ガイド下区域麻酔図解マニュアル

著者: 鈴木玄一

ページ範囲:P.1059 - P.1059

 この本は第3版で,このたび初めて日本語版が出版された.著者は区域麻酔を超音波ガイド下で施行することにより,成功率が向上し,より正確に必要な部分のみのブロックが可能になり,新生児から高齢者まで恩恵を受けたと述べている.その他,新生児などに対する超音波ガイド下の内頸静脈カテーテル留置法を解説し,さらに区域麻酔以外に超音波ガイド下での肺・気道・視神経管・胃噴門部エコーについて簡潔な概要にも触れている.区域麻酔以外に麻酔科医が覚えておいて大変役に立つことだろう.
 超音波の基本的な原理の理解は当然として,p.19に記載された超音波ガイド下神経ブロックのコツは,ぜひとも目を通していただきたい.

—笹原 潤,宮武 和馬 編—臨床整形超音波学

著者: 田中康仁

ページ範囲:P.1065 - P.1065

 すべての運動器医療にかかわる方々に,本書をお薦めいたします.
 超音波画像構築技術の進歩やリニアプローブの開発により,整形外科診療にパラダイムシフトが起こり,今や超音波は日常診療に必須のものとなってきました.操作が簡単になり,誰でも手軽に目的とするものが描出できるようになったことで,裾野はますます広がっています.しかし,なかにはまだ,超音波の有用性を感じながら,ご自身で超音波プローブを触ったことがないという方もいらっしゃるのではないでしょうか.本書ではそのような方にもわかりやすいように第1章では「はじめの1歩—まずはのぞいてみよう」ということで,超音波画像の基本的なプローブの操作の仕方や描出方法など,全身の各部位について,誰でもわかるようにやさしく記載されています.

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目次

ページ範囲:P.972 - P.974

読者アンケート

ページ範囲:P.1169 - P.1169

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.1170 - P.1171

購読申し込み書

ページ範囲:P.1172 - P.1172

次号予告

ページ範囲:P.1173 - P.1173

奥付

ページ範囲:P.1174 - P.1174

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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