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書評
—志賀 隆,伊田 瞳,かげ 著 かげ イラスト—夜の勤務のサバイバル
著者: 西村正治12
所属機関: 1豊水総合メディカルクリニック 2北海道大学
ページ範囲:P.1257 - P.1257
文献購入ページに移動 本書のタイトルからしてユニークである.いったい何が書いてあるのかと興味をそそる.本書は夜間当直や夜勤のある医療従事者,特に医師向けに書かれたマニュアル本の類である.しかし,そこらのマニュアル本とは全く異なる.救急医,睡眠専門医,看護師の3人がそれぞれの立場から夜勤をするうえでのさまざまな問題・課題を取り上げてわかりやすく解説している.その取り上げた問題・課題がユニークなのである.全体は「夜の勤務チーム」「夜勤における睡眠」「患者さんが安定するための先手の予防策」「夜のトラブルにどう対応するか」と題する4つのPARTに分かれており,それぞれのPARTでいかにも夜勤にありがちな具体的な問題に答えてくれる.評者にとってはとりわけPART 2が秀逸に思われた.患者の睡眠障害を扱うだけではなく,夜勤者自身の睡眠衛生についても解説している.「よい睡眠とは?」「必要な睡眠時間は?」「夜勤者の睡眠に起こっていることとは?」「交代勤務障害とは?」「自分の睡眠を守り,患者の睡眠を守る」などのテーマは患者の不眠症対策くらいしかこれまで頭に浮かばなかった評者にとって衝撃的な問題・課題提起であり,とても勉強になる.PRAT 1では「夜勤における準備」「チーム医療のあり方」「リーダーシップとフォロワーシップとは?」など,PART 3では「患者の身体抑制」「不眠患者に対する睡眠薬の使い方」「悪化しそうな患者の気づき方」などが説明されている.PART 4はいわゆる当直医向けマニュアル本のごときテーマを取り上げている.「急変時の対応」「患者が頭を打った」「発熱した」「呼吸が苦しい」「意識が急変した」等々のテーマについてその対応の仕方をわかりやすく簡潔に説明している.すべての問題・課題について数ページから5〜6ページで纏められており,はじめにキーポイントが数行の箇条書きで挿入され,末尾には必ず1〜3個の重要文献がついている.それぞれの問題・課題について,救急医,睡眠専門医,看護師のいずれか1人が署名入りで解説しているが,そこに執筆担当者とは別の立場から漫画的なイラスト入りで他の著者のコメントが加えられている.そのため,読者はどの問題・課題についても異なる専門をもつ3人のメッセージを知ることで,理解がさらに深まる仕掛けとなっている.
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