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雑誌目次

雑誌文献

medicina61巻1号

2024年01月発行

雑誌目次

特集 その知見は臨床を変える?—エキスパートが解説! 内科における最新論文

特集にあたって

著者: 谷口俊文

ページ範囲:P.10 - P.11

 内科医療は日進月歩であり,最新の研究成果が次々と発表され続けているため,われわれ医師の診療観や患者アプローチは日々刻々と変化しています.今回の特集では,臨床を大きく変える可能性の高い研究はもちろん,内科全般で注目を集めた最新の研究論文を幅広く紹介し,各領域の専門家に解説していただきました.これにより,最新論文が実臨床にどのような影響を与えるのかを少しでも感じ取っていただければ幸いです.
 選定対象とした論文は,内科関連の学会誌や一般医学誌に掲載された重要なエビデンスはもちろんのこと,社会的に大きな注目を集めた研究,SNS上で大きな話題となった研究も含め,内科医にとって注目すべき最新トピックスを網羅することを心がけました.呼吸器,感染症,代謝,腎臓,循環器,膠原病,消化器,脳神経内科といった内科の各領域のトピックスをバランスよく取り上げており,日々の診療に当たっておられる先生方にとって有益な情報源となることを目指しました.

特集を読む前に あなたの理解度チェック!

ページ範囲:P.12 - P.17

●今月の特集執筆陣による出題です.内科領域の最新トピックスに関する理解度をチェックしてみましょう!

呼吸器

気管支喘息治療の最新トピック

著者: 丸毛聡

ページ範囲:P.18 - P.23

Point
◎重症喘息のコントロールは2型炎症を制御する生物学的製剤の登場で大幅に改善したが,非2型炎症を呈する重症喘息への治療戦略はなく,アンメットニーズである.
◎抗TSLP抗体であるテゼペルマブは,幅広い抗炎症効果と気道過敏性改善効果を有し,2型炎症を呈する重症喘息に高い有効性を示すだけでなく,非2型炎症を呈するタイプにも有効である.
◎テゼペルマブを含めた生物学的製剤により重症喘息の治療はさらに高いレベルを求めることができ,今後は臨床的寛解・完全寛解が課題となる.

COPDにおける最新のトピックス

著者: 清水薫子

ページ範囲:P.25 - P.29

Point
◎慢性閉塞性肺疾患(COPD)におけるグローバルな指針に,Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(GOLD)がある.
◎これまでGOLDでは増悪頻度と症状の程度からCOPD患者をABCDの4グループに分類していたが,GOLD2023では増悪に焦点を当てABEの3グループ評価となった.
◎Group BおよびGroup Eでは初期薬物治療の選択肢として長時間作用性β2刺激薬(LABA)+長時間作用性抗コリン薬(LAMA)併用療法が位置付けられた.

過敏性肺炎に関する最新のトピックス

著者: 飯島裕基

ページ範囲:P.30 - P.36

Point
◎予後の観点から,病型分類が急性・慢性から線維性・非線維性へ変更された.
◎抗原曝露歴,気管支肺胞洗浄液(BALF)所見,画像所見,病理所見などから総合的に診断する.
◎抗原回避が最重要だが,改善しない症例に対してはステロイドや抗線維化薬が用いられる.

慢性咳嗽に対する新薬の使いこなし方

著者: 原丈介

ページ範囲:P.37 - P.44

Point
◎慢性咳嗽の診断は,治療薬の効果に基づく,治療的診断である.治療抵抗性の慢性咳嗽の病態を説明する概念として,cough hypersensitivity syndrome(CHS)が提唱された.
◎CHSに対する治療薬として,P2X3受容体拮抗薬であるゲーファピキサント(リフヌア®)が発売された.

感染症

肺MAC症に対する最新の治療法

著者: 森本耕三

ページ範囲:P.46 - P.49

Point
◎肺非結核性抗酸菌症の治療は,『成人肺非結核性抗酸菌症化学療法に関する見解—2023年改訂』を参考に行う.
◎喀痰塗抹陽性あるいは空洞が存在する症例では,watchful waiting(注意深い観察)よりも治療を開始することが推奨されている.
◎週3回療法,エタンブトール(EB)の減量,リファンピシン(RFP)の減量やRFPを除いた治療(マクロライド+EB)により,治療継続率を高めていく.
◎アリケイス®(アミカシンリポソーム吸入用懸濁液)は,嗄声などの局所の副作用頻度が高いが,マネジメント可能なことが多く,さまざまなリソースを使って導入・マネジメントする.

結核に対する最新の知見

著者: 矢幅美鈴

ページ範囲:P.50 - P.53

Point
◎結核の標準療法は通常6カ月であるが,海外では4カ月治療のレジメンも推奨されつつある.
◎薬剤耐性結核を疑う場合は耐性遺伝子検査を行うことで,より早期に適切な診療が可能になる.
◎潜在性結核感染症(LTBI)はわが国でもイソニアジド(INH)+リファンピシン(RFP)の3〜4カ月療法が可能になった.

肺炎治療を変えるべきなのか?

著者: 皿谷健

ページ範囲:P.54 - P.58

Point
◎重症市中肺炎に対するステロイド治療の効果は一定の見解がないが,敗血症性ショックを除いたCAPE-COD trialでは重症市中肺炎に対するヒドロコルチゾンの早期投与でprimary outcomeである28日死亡率の改善を示した.
◎薬剤耐性の観点から,世界は市中肺炎に対し抗菌薬短期投与へ向かっている.PTC trialでは中等度の市中肺炎(入院が必要だが,救急病棟への入院は不要)において3日間のAMPC/CVA(経口or静注)または第3世代セフェム(CTRX or CTM)の静注で臨床的改善が得られた場合,以後5日間の治療の有無にかかわらず(3日治療 vs. 8日治療),治療開始15日目の治癒率は同等である.

肺炎球菌の予防

著者: 丸山貴也

ページ範囲:P.59 - P.63

Point
◎肺炎球菌は莢膜型により約100種類に分類される.
◎肺炎球菌は肺炎,菌血症,髄膜炎など,生命を脅かす疾患の原因となりうる.
◎肺炎球菌ワクチンには莢膜多糖体型(PPSV)と蛋白結合型(PCV)に分類され,それぞれに特徴がある.
◎小児のPCVの導入により,肺炎球菌感染症が減少する一方で,ワクチンに含まれない莢膜型が増加している.

梅毒をリプライズ—あたらしい「治療」と「予防」

著者: 平井由児

ページ範囲:P.64 - P.68

Point
◎梅毒は,陰部潰瘍やバラ疹などの典型的症状だけでなく,扁桃炎,脱毛,眩暈,胃部不快感など多彩な症状から「偽装の達人」とも呼ばれる.
◎従来のペニシリン内服治療のほかに,ベンザチンペニシリン筋肉注射製剤(ステルイズ®)により世界標準の治療が可能となった.
◎病期に応じた治療後のフォローアップ期間で非トレポネーマ検査(RPR)を評価し,初診時RPR≦1/2(自動化法)となれば治癒と判断できる.
◎コンドームは梅毒に限定しないユニバーサルな性感染症の予防法である.
◎HIV予防内服(PrEP)使用者とPLWH(people living with HIV)を対象としたドキシサイクリンの梅毒を含む性感染症予防(DoxyPEP)が報告されている.

HIV感染症の治療と予防(PrEP)—プライマリ・ケアでも治療できるHIV診療の新時代

著者: 仲村秀太

ページ範囲:P.69 - P.74

Point
◎CD4数にかかわらず,すべてのHIVと共に生活する人々(PWH)に対して抗レトロウイルス療法(ART)が導入されるべきである.
◎インテグラーゼ阻害薬と逆転写酵素阻害薬の併用がARTの初回治療レジメンとして推奨されている.治療薬の特性を理解するとともに患者のライフスタイルに適した処方の選択が治療成功にとって重要である.
◎PWHは高血圧や糖尿病など生活習慣病のリスクが高い.HIVコントロールとともにプライマリ・ケアとしての視点が重要である.
◎曝露前予防内服(PrEP)は性交渉によるHIV感染リスク減少に非常に有効である.
◎持効型注射薬カボテグラビルは8週間に1回の筋注製剤として治療とPrEPの両面から注目を浴びている.
◎ARTでウイルス量が検出感度未満(200 copies/mL未満)に維持されれば,性行為による他者へのHIV感染リスクはゼロである(Undetectable=Untransmittable:U=U).

糖尿病・内分泌・代謝

2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム—日本での処方実態を勘案した初のアルゴリズム

著者: 近藤龍也

ページ範囲:P.75 - P.80

Point
◎日本糖尿病学会は,糖尿病診療に必要な事項を適宜アップデートすることを決定し,「コンセンサスステートメント策定に関する委員会」を設置した.
◎本委員会は,2020年3月の「糖尿病患者の栄養食事指導」に続き,2022年9月に「2型糖尿病の薬物治療のアルゴリズム」1)を発出した.
◎本アルゴリズムは,①欧米人と日本人の2型糖尿病の病態の違い,②両者間での治療戦略の違い,③日本人糖尿病に対する初回処方の実態,などを反映して作成された.
◎従来からの糖尿病病態に応じた治療薬選択というコンセプトをもとに,より実臨床で扱いやすいよう,Step 1:病態に応じた薬剤選択,Step 2:安全性への配慮,Step 3:additional benefitsを考慮するべき併存疾患を挙げ,Step 4:患者背景を考慮して薬剤を選択するフローになっている.
◎2023年夏の第2版における改定点なども含めて解説する.

糖尿病マネジメントにおけるハイブリッドクローズドループインスリンポンプと持続グルコースモニタリングの活用

著者: 小谷紀子

ページ範囲:P.82 - P.87

Point
◎ハイブリッドクローズドループ(hybrid closed loop:HCL)インスリンポンプは1型糖尿病の血糖管理に有効である.
◎インスリンを必要とする糖尿病では持続グルコースモニタリング(continuous glucose monitoring:CGM)を用いた血糖管理を検討すべきである.

肥満症に対する薬物療法の最新知見—新薬登場による治療法の変化

著者: 藤城緑

ページ範囲:P.88 - P.92

Point
◎減量療法は,肥満に起因する複数の疾患を一挙に改善させることが可能である.
◎肥満症治療の目的達成のためには,減量した体重を維持することが重要である.
◎日本で「肥満症」を適応症として承認されている薬剤は限られている.

新たな脂質異常症治療薬—PCSK9阻害薬とベムペド酸のエビデンスと展望

著者: 若菜紀之

ページ範囲:P.94 - P.98

Point
◎脂質異常症治療薬として従来はスタチンやエゼチミブが主流であったが,PCSK9阻害薬とベムペド酸が登場した.
◎PCSK9阻害薬は長期投与の安全性も確認されている.また,動脈硬化性心血管病(ASCVD)の二次予防で効果が示されており,心血管死や主要心血管イベント(MACE)の発症率低下も示されている.
◎急性冠症候群(ACS)患者は非責任病変を有しその予後が懸念されているが,PCSK9阻害薬によりプラークの安定化効果が示され薬物インターベンションが新たな治療法として期待されている.
◎CLEAR-OUTCOME試験でベムペド酸の効果と安全性が示唆され,スタチン不耐性患者の選択肢として期待されている.

腎臓

糖尿病性腎臓病および蛋白尿を伴う非糖尿病性腎臓病患者におけるSGLT2阻害薬の役割

著者: 長洲一

ページ範囲:P.99 - P.102

Point
◎SGLT2阻害薬は蛋白尿を有する糖尿病性腎臓病(DKD)およびnon-DKDに腎保護効果を有する.
◎フィネレノンは蛋白尿を有するDKDへの腎保護効果を有する.
◎SGLT2阻害薬の多面効果を考慮するとフィネレノンとの併用に期待したい.

心疾患リスクとしての痛風をどのように治療すべきか

著者: 秋山由里 ,   菅野直希

ページ範囲:P.103 - P.106

Point
◎痛風を合併しない高尿酸血症と痛風を合併する高尿酸血症では,後者のほうが心血管疾患の発症リスクが高い.
◎痛風の発症機序としてはNLRP3インフラマソームと呼ばれる自然免疫機構が重要な働きをしている.
◎心血管疾患発症予防としてコルヒチンが注目を集めているが,治療に結び付けるには今後さらなる研究が望ましい.

保存期の末期腎不全(ESKD)に対するRAS阻害薬の中止が腎不全の進行に及ぼす影響

著者: 北野史也 ,   緒方聖友

ページ範囲:P.107 - P.111

Point
◎保存期末期腎不全(ESKD)患者におけるRAS阻害薬の中止について,STOP-ACEi試験をもとに検討した.
◎腎不全進展抑制について中止/継続で有意差はみられず,本剤の中止は許容される場合がある.
◎本剤中止による心血管イベントの増加については不明確だが,血清K高値例での中止は検討される.
◎本剤の中止/継続は,有害事象の発生リスクに注意して総合的に判断する.

わかっているけどできない.クリニカルイナーシャよりもっと重篤なイナーシャ,それは生活習慣の改善

著者: 下澤達雄

ページ範囲:P.112 - P.115

Point
◎運動によりミトコンドリア機能が回復し,血管機能が改善する可能性がある.
◎生活習慣の改善に向けた個別指導の重要性が再認識されている.
◎面談に加え,アプリなどを用いた指導は有用であることが期待できる.
◎高血圧の予防には若年からの指導がこれからは必要である.

循環器

安定狭心症の治療は何が変わったのか

著者: 村石真起夫 ,   小船井光太郎

ページ範囲:P.116 - P.121

Point
◎安定狭心症は,形態的な病変評価だけでなく,機能的虚血の程度を評価することの重要性が注目されるようになってきた.
◎2020年のISCHEMIA trialは,安定狭心症に対し十分な内服管理を行っていれば,血行再建をしなくても予後が変わらないという結果の大規模試験であった.
◎しかし,症状の改善や心筋梗塞の予防,心不全患者/低心機能患者への血行再建の意義は存在し,慎重な解釈が必要である.
◎病変部位・虚血の程度・症状・患者背景など総合的に考え,血行再建の意義を患者と共有のうえで(shared decision making),血行再建を勧めることが重要である.

心不全(HFpEF)の治療の最前線

著者: 武井眞

ページ範囲:P.122 - P.125

Point
◎心不全症例は増加の一途をたどり,慢性期管理は一般医家でも今後必要とされてくる.
◎従来有効な薬物療法が報告されてこなかった左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF),左室駆出率が軽度低下した心不全(HFmrEF)において,SGLT2阻害薬の有効性が報告された.
◎SGLT2阻害薬を心不全症例に用いるにあたり特有の有害事象に留意する必要がある.

高血圧診療における機械学習を用いた個別化戦略—高ベネフィット・アプローチ

著者: 井上浩輔

ページ範囲:P.126 - P.130

Point
◎厳格な降圧治療が心血管イベントリスクを下げることは知られている一方で,その効果にばらつきがあるかについては十分わかっていない.
◎大規模ランダム化比較試験のデータに因果フォレストという機械学習モデルを応用することで,心血管疾患リスクの高い個人が必ずしも厳格な降圧管理による恩恵を受ける個人と同じではない,ということが明らかになった.
◎「高ベネフィット・アプローチ」は効果の高い集団にターゲットを絞って介入するアプローチであり,従来の「高リスク・アプローチ」と比較して5倍程度大きな効果を示した.
◎高ベネフィット・アプローチを用いて,リスクのみならずベネフィットに着目することで,本来治療・介入を受けるべき個人を最も効率的に選定することが可能となる.
◎高ベネフィット・アプローチは,生活習慣病・心血管疾患の予防による健康寿命の延伸のみならず,真の個別化医療に基づく効率的な医療資源の分配と健康格差の是正にも貢献する.

膠原病と類縁疾患

関節リウマチの最新治療

著者: 安田卓矢 ,   萩野昇

ページ範囲:P.131 - P.135

Point
◎関節リウマチの治療目標は速やかな臨床的寛解達成であり,禁忌事項のほかに年齢・腎機能・肺合併症を考慮してメトトレキサート(MTX)の適応の有無と開始量を判断する.
◎オゾラリズマブは日本初のナノボディー製剤であり,速やかな効果発現が期待できるが,安全性については慎重に判断する必要がある.
◎MTXの皮下注射製剤は,経口薬に比べて嘔気などの消化器症状が少なく,生物学的製剤/JAK阻害薬に比べ安価である.

Ⅰ型インターフェロンから紐解く全身性エリテマトーデス(SLE)治療

著者: 髙橋達郎 ,   岩本太郎 ,   古田俊介

ページ範囲:P.136 - P.142

Point
◎全身性エリテマトーデス(SLE)は若年女性に好発する多臓器に障害をもたらす自己免疫疾患である.
◎SLE患者の短期予後は改善したものの,長期予後は一般集団と比較し依然として悪い.
◎SLEの発症と病態形成にはⅠ型インターフェロン(IFN)経路が大きな役割を果たしている.
◎既存のⅠ型IFN経路を標的とした治療薬は有用だが,治療抵抗例も多く,新規薬剤の開発が望まれる.
◎治療中のSLE患者は帯状疱疹の発症ハイリスク群であり,ワクチンによる予防が推奨される.

消化器

急性膵炎へのアプローチ—積極的輸液の有効性

著者: 向井俊太郎 ,   糸井隆夫

ページ範囲:P.143 - P.146

Point
◎初期輸液療法は急性膵炎に対する重要な基本治療である.
◎症例によっては積極的輸液療法が有用だが,体液過多をきたすリスクがある.
◎精細なパラメーター評価に基づいたテーラーメイド輸液療法が求められる.
◎超早期の積極的輸液療法の有用性の検証が必要である.

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)のマネジメント

著者: 玉城信治

ページ範囲:P.147 - P.151

Point
◎肥満を伴うNAFLDに対しては7%以上の減量で肝病態の改善が期待できる.
◎GLP-1アナログやSGLT2阻害薬がNAFLDに対して有効であり,糖尿病合併NAFLDに対してこれらの薬剤が第一選択となってきている.
◎脂質異常症合併のNAFLDに対しては選択的PPARαモジュレーターが有効である可能性が本邦から報告されている.

神経内科

片頭痛のマネジメント—新薬登場による治療法の変化

著者: 柴田護

ページ範囲:P.152 - P.156

Point
◎片頭痛は繰り返す頭痛発作を主徴とする,中枢神経系と三叉神経系の機能異常によって引き起こされる慢性神経疾患である.
◎片頭痛による生活支障度は高く,莫大な経済的損失を生み出している.
◎片頭痛の頭痛発生機構には,三叉神経一次ニューロンレベルでのカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)が重要な役割を果たす.
◎CGRPおよびCGRP受容体に対するモノクローナル抗体が片頭痛予防療法として使用されている.
◎5-HT1F受容体作動薬ラスミジタンは片頭痛発作の頓挫に有効であり,トリプタンと異なり血管収縮作用がない.

MOG抗体関連疾患—本邦での疫学・臨床像と診断基準

著者: 中村正史 ,   中島一郎

ページ範囲:P.157 - P.161

Point
◎MOG抗体関連疾患とは,ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白(MOG)に対する抗体が陽性になる中枢神経脱髄疾患である.
◎多発性硬化症やアクアポリン4抗体陽性視神経脊髄炎関連疾患とは異なる疾患であることが明らかになりつつある.
◎2023年に診断基準が提唱され,血清でMOG抗体が陽性であること,MOG抗体陽性だけでなく臨床像も重要であることが示された.
◎2021年にわが国で行われた全国疫学調査の結果,推計患者数や臨床像が判明した.

アデュカヌマブ,レカネマブを踏まえたAlzheimer型認知症治験薬の今日までの流れ

著者: 辻本昌史 ,   鈴木啓介

ページ範囲:P.162 - P.165

Point
◎Alzheimer型認知症(AD)の治療は補充療法から,根治治療を目指す疾患修飾薬の使用の段階に進歩してきている.
◎アミロイドβを標的とした薬剤の開発により,アミロイドβの除去,認知機能低下の進行の抑制が徐々に可能となってきている.
◎アミロイドβ抗体新薬の実臨床化においては,対象の選定および治療を実施する施設のキャパシティが課題となってくる.
◎高齢化が進む日本では,増加するAD患者の治療への費用対効果の検討およびさらなる新薬の開発が不可欠である.

連載 日常診療で役立つ 皮膚科治療薬の選びかた・使いかた・1【新連載】

ステロイド外用薬① ステロイド外用薬が有効な疾患

著者: 松田光弘

ページ範囲:P.1 - P.4

Q問題
ステロイド外用薬が効きやすい紅斑は図1aとb1)のどちらでしょうか?

ERの片隅で・10

臨床診断学、臨床決断学

著者: 関根一朗

ページ範囲:P.166 - P.167

 午後4時、日が落ちるのが早くなり、もう西の空は夕焼けの美しいグラデーションがかかっている。ER内で救急搬送を告げるアナウンスが流れた。「10分後、救急車入ります。90歳男性、体動困難。自宅内で動けなくなっているのを隣人に発見され救急要請。外傷なし、救急隊接触時発熱あり。」
 ストレッチャーで小柄な高齢男性が搬入された。研修医が初期対応を終えて、救急医関根のところに診療の方針を報告しに来た。「90歳男性、39℃の高熱があり、体動困難です。発熱以外には軽い咽頭痛があるだけで、バイタルサインは安定しています。」頷きながら聴いていた関根が尋ねた。「隣人が救急車を呼んでくれたらしいね。一人暮らしかな? どんな家に住んでいるのかな?」研修医が首を傾げながら答える。「家についてはわかりませんが、おそらく独居だと思います。とりあえず、熱源精査します。」

明日から主治医! 外国人診療のススメ・10

外国人を診るときに注意すべき感染症「HIVなど」

著者: 沢田貴志

ページ範囲:P.169 - P.173

CASE
総合診療科の研修医(大樹)と指導医(朋子)が外来で…
大樹)先生,咳と血痰で来院した東南アジア出身の女性,左肺に腫瘤影があります.まだ32歳ですから,肺がんではないと思うのですが.
朋子)なるほど.そしたら何だと思うのかしら?
大樹)よく見ると結節状の陰影の周囲に少し散布影があって,これは結核腫ではないでしょうか.
朋子)ふーん,先月の『medicina』でちゃんと勉強したのね.では,3日続けて喀痰塗抹・培養検査をやっておきましょう.でも,何だか変だわ.
大樹)はい.「白血球が正常でCRP軽度上昇」は結核で説明がつきますが,好酸球が16%もあるんですよ.もう10年,母国には帰っていないそうで,寄生虫症は考えにくいですよね.便虫卵出しますか?
朋子)もちろん.集卵法でね.私が引っかかったのはそこじゃなくて,病変の分布よ.結節は左肺なのに,胸水は右肺に出ているわね.これ,ただの結核じゃないかも.面談して血液検査の追加をしましょう.帯状疱疹や肺炎の既往も聞いておいてね.

ここが知りたい! 欲張り神経病巣診断・31

え? なんだか足がひっかかる! 足の末梢神経障害②/外側大腿皮神経障害の病歴と診断方法

著者: 難波雄亮

ページ範囲:P.174 - P.179

 歩くときに片足がひっかかる.そのような状況では,脳卒中などを鑑別に挙げることが多いと思います.または,「腰椎椎間板ヘルニアかもしれない」と言われるかもしれません.しかし病歴をとると,実は足を圧迫する要素があった(例:弾性ストッキングを装着していた)などの新たな情報が出てくることもあります.それでは,今回はそんな一例を勉強していきましょう.

知らないとヤバい! リウマチ・膠原病のアレやコレ・5

RA治療中のヤバい病態! その④「単関節炎」—リウマチ加療中にも生じる化膿性関節炎を見逃すな!(中編)

著者: 猪飼浩樹

ページ範囲:P.181 - P.187

 本連載では,リウマチ・膠原病診療における緊急病態,知っておかないと重篤な状態となりうる事象について取り扱っている.
 今回は,前回に引き続き関節リウマチの経過中に注意すべき病態である「単関節炎」(関節リウマチの経過中でなくとも単関節炎をみた際には注意は必要!),特に“化膿性関節炎”について解説していきたい.
 前回の前編では,急性“単”関節炎として認識した場合に最も気をつけておきたい“化膿性関節炎”について,化膿性関節炎の症状・病歴・診察のポイントを整理した.

目でみるトレーニング

問題1078・1079・1080

著者: 藤本亜弓 ,   秋山光浩 ,   吉村菜実

ページ範囲:P.188 - P.194

書評

—田中 和豊 著—問題解決型—救急初期診療 第3版

著者: 薬師寺泰匡

ページ範囲:P.93 - P.93

 救急外来では,迅速かつ正確に患者の病態を把握して,緊急性が高い場合には即時介入し,生命予後を左右するような疾患の除外をし,さらにはその場で行わねばならない処置を的確に行う必要があります.毎日がこれの繰り返し.しかし,患者さんは千差万別.同じ疾患でも,全く異なる症状でやってくることも多々あるので,毎日やみくもに働いているだけでは救急対応の能力は磨かれません.緊急性の判断や,除外診断を適切に行うには,膨大な時間と経験が必要になります.もちろん,不適切な修行は時間の無駄ですし,何をしてよいか悩んでいる時間すらリスクになるのが救急外来です.われわれには道しるべが必要なのです.
 初期臨床研修は,研修医一人当たりかなりの数の救急車対応をする病院で学ばせてもらいました.が,当然最初は進むべき道がわかりません.途方に暮れる研修医に道を照らしてくれたのが,この『問題解決型救急初期診療』でした.まず行うべきことは当然網羅されており,症候から入る構成になっているので,実際の診療時と同じ思考過程をたどることができます.26の症状に始まり,外傷や熱傷,中毒,ショック,蘇生など救急医が専門とする分野,そして精神科救急までまとめられていますから,大部分の救急患者はこの一冊があれば対応可能で,少なくとも何をしていいのかわからないという状況には決してならないことが約束されています.確かな救急外来の道しるべ.これは救急外来のバイブルです.

—窪田 忠夫 著—急性腹症の診断レシピ—病歴・身体所見・CT

著者: 安達洋祐

ページ範囲:P.168 - P.168

 本書は腹痛診断の画期的な手引きです.以下に本書の特徴を述べて推薦の辞とします.

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目次

ページ範囲:P.6 - P.8

読者アンケート

ページ範囲:P.195 - P.195

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.196 - P.197

購読申し込み書

ページ範囲:P.198 - P.198

次号予告

ページ範囲:P.199 - P.199

奥付

ページ範囲:P.200 - P.200

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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