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雑誌目次

雑誌文献

medicina61巻13号

2024年12月発行

雑誌目次

特集 喘息・COPDと関連疾患の重要知識Up-to-date

特集にあたって フリーアクセス

著者: 永田真

ページ範囲:P.2212 - P.2213

 咳・痰・息切れなど気道系の症状は,プライマリ・ケアの場できわめて頻繁に遭遇するありふれた問題です.気道系の症状がみられるときには各種の疾患が想定しえますが,そのなかでも喘息と慢性閉塞性肺疾患(COPD)は重要なcommon diseaseです.気道系は生活環境中の各種吸入性アレルゲンや病原微生物,喫煙などの有害物質,またそのほかの環境汚染物質に曝露され,常に影響を受けています.喘息ではいわゆるアレルギー体質が基礎に存在するため,短期的には治療が奏効しても,長期的にはしばしば慢性化,時に難治化し,患者を苦しめることとなります.COPDでは気道構造の不可逆的変化の要素が大きく,生涯にわたる適切な管理が求められます.実際の臨床の場では,これらの関連疾患の鑑別や対応もきわめて重要なこととなります.
 気道症状があるとき,基礎に複数の疾患が併存しうることもきわめて重要です.その代表はよく知られる喘息とCOPDの合併です.喘息のわが国における近年の有病率は10%近いとも推計されています.わが国の喘息の最も代表的な病因アレルゲンは室塵中のダニですが,ダニ感作例でも例えばアレルギー性鼻炎が発症しているものの,喘息は未発症のまま成人となるケースは日常的に存在します.これらの方々では喫煙習慣が形成されることがありますし,この場合,喫煙の下気道病変へのインパクトは,基礎にアレルギー性気道炎症があるゆえにきわめて大きいと推定されるのです.われわれは患者の既往歴を含む背景因子や環境要因,また生活習慣などにも十分注意する必要があり,これらを踏まえた全人的・包括的な管理を行う視点が大切です.

特集を読む前に あなたの理解度チェック!

ページ範囲:P.2214 - P.2217

●今月の特集執筆陣による出題です.喘息・慢性閉塞性肺疾患(COPD)とその関連疾患に関する理解度をチェックしてみましょう!

喘息・COPDの診断

気道疾患の正確な診断のポイント

著者: 髙木弘一 ,   井上博雅

ページ範囲:P.2218 - P.2223

Point
◎喘息の特徴は喘鳴,咳,息切れ,胸苦しさなどの複数の呼吸器症状が変動性をもって出現することである.
◎喘息の診断には,アトピー素因や気道可逆性試験,気道過敏性試験,呼気中一酸化窒素濃度測定(FeNO),喀痰中好酸球検査などが有用である.
◎長期の喫煙歴や,それに相当する曝露因子がある場合,慢性閉塞性肺疾患(COPD)を疑う.
◎気管支拡張薬吸入後のスパイロメトリーで1秒率(FEV1/FVC)が70%未満であることがCOPD診断の必須条件である.
◎喘息とCOPDのオーバーラップ(ACO)は喘息とCOPD両方の特徴を併せもつ病態である.

喘息およびCOPD診療で用いる血液検査

著者: 関谷潔史

ページ範囲:P.2224 - P.2228

Point
◎喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)診療におけるバイオマーカーの測定は,診断においてあくまで補助的な役割となるが,治療方針の決定や治療薬の選択に非常に有用となる.
◎なかでも,末梢血好酸球数や血清特異的IgE抗体価の評価は必要不可欠である.
◎喘息の存在を疑わせる所見がある際に末梢血好酸球数が単回測定で150/μL以上あるいは過去1年以内に300/μL以上の所見が得られるようであれば好酸球性気道炎症が存在する可能性が高い.
◎気道疾患では,経気道経路が重要であり,ダニ・真菌・花粉・ペット・昆虫に関するアレルゲンの検索を行う.

呼吸機能および呼気ガス検査

著者: 山本佑 ,   松永和人

ページ範囲:P.2229 - P.2233

Point
◎閉塞性肺疾患の診療・治療管理において呼吸機能検査はきわめて重要である.
◎プライマリ・ケアの場ではスパイロメトリー(波形)や呼気一酸化窒素濃度(FeNO)の解釈を習得しておくことが望ましい.
◎症状が安定していても,定期的な呼吸機能検査の実施が望ましく,病診連携を積極的に図りたい.
◎呼吸機能検査が十分にできない環境でもピークフローや質問票は有用で簡便なツールであり日々の診療で積極的に活用したい.

喘息・COPDの治療

気管支拡張薬の選び方と用い方

著者: 伊藤理

ページ範囲:P.2234 - P.2238

Point
◎気管支拡張薬は,気管支平滑筋の収縮を抑制することによって,喘息やCOPDにおける気流制限を改善させる.
◎気管支拡張薬は,有効性を高め有害事象を減らすために,β2刺激薬と抗コリン薬ともに吸入薬が基本であるが,β2刺激薬には貼付薬もある.
◎β2刺激薬と抗コリン薬は,気管支拡張の作用機序が異なっているため,併用することで効果が高まる.
◎喘息治療においては,吸入ステロイド薬を基本として気管支拡張薬を追加する.COPD治療では,気管支拡張薬が基本で,吸入ステロイド薬を追加する.
◎テオフィリンの使用時には,発熱や脱水によって薬剤の血中濃度が高まることによって生じる,テオフィリン中毒に注意する.

吸入ステロイド薬および各種配合剤の選び方と用い方

著者: 小泉佑太 ,   長瀬洋之

ページ範囲:P.2239 - P.2244

Point
◎喘息治療では,吸入ステロイド(ICS),あるいは長時間作用性β2刺激薬(LABA)との配合剤(ICS/LABA)が引き続き治療の中心にある.
◎喘息に対するICS/LABAへの併用薬としては,長時間作用性抗コリン薬(LAMA)の位置づけが高まってきており,ICS/LABA/LAMA配合剤も存在する.
◎慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療では,LAMAやLAMA/LABAなどの気管支拡張薬が中心となるが,喘息・COPDのオーバーラップ(ACO)や,増悪歴が認められ,末梢血好酸球数300/μL以上の症例ではICS併用による増悪抑制効果が期待される.
◎デバイスの選択においては吸入流速を評価し,低下している場合はpMDI(加圧噴霧式定量吸入器)やソフトミスト製剤を選択する.

重症喘息における生物学的製剤

著者: 北澤晴奈 ,   檜澤伸之

ページ範囲:P.2246 - P.2252

Point
◎生物学的製剤の導入の対象は重症喘息である.
◎成人喘息に対する生物学的製剤導入によって,症状,増悪,呼吸機能の改善,経口ステロイド薬の減量効果が示されている.
◎患者の基本病態に注目し,2型炎症に関連するバイオマーカー,併存疾患,患者背景を踏まえ,適切な生物学的製剤を選択する.

鎮咳薬・喀痰調整薬(去痰薬)の選び方と用い方

著者: 川口貴子 ,   矢寺和博

ページ範囲:P.2253 - P.2257

Point
◎喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)において,咳嗽と喀痰は一般的な症状の1つである.
◎喘息およびCOPDの呼吸器症状に対する治療の基本は吸入療法であるが,実臨床において残存する咳嗽や喀痰症状に対して,鎮咳薬や喀痰調整薬(去痰薬)が処方されることが多い.
◎ATP受容体サブタイプP2X3受容体選択的拮抗薬であるゲーファピキサントは,ATP受容体を抑制する作用から,難治性喘息性咳嗽に有用な可能性がある.
◎喘息およびCOPDに対する鎮咳薬や去痰薬の使用のエビデンスは現在明らかでないが,基本の吸入療法を行ったうえでも症状の訴えが強い場合,鎮咳薬・去痰薬は選択肢の1つとなりうる.

マクロライド少量持続療法の意義

著者: 松瀬厚人

ページ範囲:P.2258 - P.2263

Point
◎14・15員環マクロライドの少量持続療法は,気道分泌や好中球性炎症を抑制することで慢性炎症性呼吸器疾患に効果を示す.
◎びまん性汎細気管支炎の予後はマクロライド少量持続療法により劇的に改善した.
◎マクロライド少量持続療法は非好酸球性,慢性気道感染を合併する喘息に有効である.
◎マクロライド少量持続療法は慢性閉塞性肺疾患(COPD)増悪を抑制する.

アレルゲン免疫療法の意義と実際

著者: 中込一之

ページ範囲:P.2264 - P.2267

Point
◎アレルゲン免疫療法は,アレルギー疾患の症状を改善させるだけでなく,自然経過を修飾し,その寛解を誘導しうる治療法である.皮下注射による免疫療法(SCIT)と舌下免疫療法(SLIT)がある.SLITは簡便で安全性が高く,非専門医でも導入しやすい.
◎本療法には,①治療を中止しても年余にわたり効果が維持される,②新規のアレルゲン感作を抑制するなどの自然経過の修飾作用が報告されており,薬物療法とは異なった意義が期待できる.
◎喘息におけるダニSCITの一般的な適応は,軽症から中等症で呼吸機能が正常なアトピー型喘息である.鼻炎では,ダニアレルギー性鼻炎の全患者で適応となる.
◎ダニSLITの本邦における保険適用疾患はアレルギー性鼻炎であるが,鼻炎合併喘息では投与可能であり,喘息に対する効果も期待できる.
◎スギ花粉症に対するSCITおよびSLITの適応は,スギ花粉症の全患者である.花粉症は喘息の増悪因子であり,合併する喘息コントロールに対する効果も期待される.

喘息・COPD患者の長期管理と急性期の対応

喘息の長期管理(成人)

著者: 新実彰男

ページ範囲:P.2268 - P.2273

Point
◎喘息の治療目標は,症状コントロール(気道炎症の制御,正常な呼吸機能の維持)と将来のリスク回避(喘息死・増悪の防止,呼吸機能の経年低下抑制,治療薬の副作用発現回避,健康寿命の維持)である.
◎薬剤治療のみならず,感作アレルゲンやその他の増悪因子の回避,吸入手技の指導やアドヒアランスの管理,併存症の管理も重要である.
◎吸入ステロイド薬(ICS)を中心に,重症度(症状)に応じてICSを増量しながら長時間作用性β2刺激薬(LABA;ICSとの配合剤)や,さらに長時間作用性抗コリン薬(LAMA;トリプル製剤使用可能),ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA),テオフィリン徐放製剤を併用していく(stepwise approach).
◎難治性喘息と判断されたら生物学的製剤を検討する.2型炎症を有するtype 2喘息はよい適応である.併存疾患への効果による喘息への相乗効果も考慮する.

喘息の長期管理(小児)

著者: 八木久子 ,   滝沢琢己

ページ範囲:P.2274 - P.2280

Point
◎喘息の治療目標の達成には,患者・家族と医療提供者が目標を共有し,共同で治療に取り組むことが不可欠である.
◎喘息の長期管理においては,コントロール状態の評価に加え,増悪因子や薬の副作用の有無を評価・対応し,良好なコントロール状態を維持できる最適な管理薬で治療することが重要である.
◎小児喘息の管理では,吸入ステロイド薬が全身へ及ぼす影響や乳幼児喘息の特有の病態を十分に理解し,考慮することがきわめて重要である.

COPD

著者: 菊池崇史 ,   杉浦久敏

ページ範囲:P.2282 - P.2286

Point
◎慢性閉塞性肺疾患(COPD)の長期管理においては症状やQOLの改善,身体活動性の向上,増悪予防や疾患進行の抑制といった治療の目標を意識することが重要である.
◎吸入薬には複数のデバイスがあるため,それぞれの吸入デバイスの特性を理解し,対象の患者に最適と思われるデバイスを選択する.
◎薬物療法の基本は長時間作用性抗コリン薬(LAMA)あるいは長時間作用性β2刺激薬(LABA)の吸入であり,増悪が頻回な患者には吸入ステロイド,テオフィリン,喀痰調整薬,マクロライド系抗菌薬の追加も検討する.

喘息とCOPDのオーバーラップ(ACO)の長期管理

著者: 室繁郎

ページ範囲:P.2287 - P.2292

Point
◎喫煙歴のある症例に慢性の呼吸器症状(痰や咳,息切れ,喘鳴など)があれば,慢性閉塞性肺疾患(COPD)を念頭に診療し,上記症例に夜間早朝の症状の悪化や季節変動などの変動性が明白であれば喘息の合併を疑う.
◎問診が診断において最も重要であるが,スパイロメトリーはCOPDの診断に必須であり,呼気NOは喘息の補助診断に有用である.
◎喘息とCOPDが合併している状態をACO(Asthma COPD Overlap)と呼称し,増悪予防と安定期の症状軽減,呼吸機能の経年低下の抑制を念頭に喘息とCOPDの両方の治療を行う.
◎ACO症例において,喘息増悪とCOPD増悪の鑑別は事実上不可能であることが多いため,ACOの増悪抑制は喘息治療に準じて行う.

喘息・COPD急性増悪の対応

著者: 若園美保 ,   木村孔一

ページ範囲:P.2294 - P.2298

Point
◎喘息増悪では,aspirin-exacerbated respiratory disease(AERD)の可能性がないか注意して病歴聴取や治療選択を行う.
◎高二酸化炭素血症の有無を評価し,適切な酸素投与量の設定や呼吸補助療法を検討する.
◎増悪に対してステロイド治療は5日間程度の短期投与を行う.
◎個々の患者の病態に応じた増悪予防策を行うことが重要である.

喘息・COPDの関連病態と鑑別を要する疾患

解熱鎮痛薬過敏喘息(アスピリン喘息)

著者: 粒来崇博

ページ範囲:P.2299 - P.2302

Point
◎非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)誘発性呼吸器疾患(N-ERD:いわゆるアスピリン喘息)は,NSAIDs全般投与により大発作をきたす.
◎外用薬でも誘発原因になるため注意が必要である.COX-1阻害薬を回避し,解熱鎮痛薬には安全性の高いアセトアミノフェン,チアラミド,セレコキシブを選択する.
◎気管支喘息以外に鼻茸,中耳炎,好酸球増多,好酸球性肺炎,好酸球性胃腸症,胸痛を合併することがある.
◎発作時にはリン酸エステル基をもつステロイドをゆっくりと投与する.アドレナリン筋注も有効である.
◎オマリズマブが疾患コントロールに有効である.

慢性咳嗽

著者: 尾長谷靖 ,   深堀範 ,   迎寛

ページ範囲:P.2303 - P.2307

Point
◎咳嗽の発症から3週以内を急性咳嗽,3〜8週を遷延性咳嗽,8週以降を慢性咳嗽と分類し,慢性咳嗽の原因が感染症の活動期であることは少ない.
◎治療抵抗性慢性咳嗽(RCC)と原因不明慢性咳嗽(UCC)は難治性咳嗽であり,専門医への紹介を検討する.
◎後鼻漏(PND)や上気道咳症候群(UACS)での咳嗽は湿性咳嗽とはいえない.
◎咳嗽の真の原因は“咳過敏症症候群(CHS)”であり,さまざまな呼吸器疾患などはその誘因に過ぎないという概念も出てきている.
◎P2X3受容体拮抗薬であるゲーファピキサントは末梢性鎮咳薬として使用可能となっている.

アレルギー性気管支肺真菌症(ABPM)

著者: 浅野浩一郎

ページ範囲:P.2309 - P.2312

Point
◎アレルギー性気管支肺真菌症(ABPM)の原因真菌となるアスペルギルス属真菌やスエヒロタケは分生子が小さいため気管支に到達しやすく,かつヒトの体温のような高温環境でも発芽できるため気管支に定着(腐生)しうる.
◎喘息の存在下では定着した真菌に対する2型免疫応答が生じ,IgE産生,好酸球の集積,活性化好酸球細胞核から放出された細胞外トラップによる粘稠な粘液栓形成をきたす.
◎成人喘息患者で咳嗽・喀痰の増加,末梢血好酸球数増加,血清総IgE高値,胸部異常陰影があれば,ABPMの可能性を疑って必要な検査を行う.
◎ABPMの診断においては,①真菌の下気道定着,②真菌アレルギー,③気管支内の好酸球性粘液栓の3要素を証明することが重要である.
◎標準治療は経口ステロイド薬あるいはアゾール系経口抗真菌薬であるが,漫然とした投与は避け,再発を繰り返す場合は専門医へ紹介する.

気管支拡張症

著者: 松本久子

ページ範囲:P.2314 - P.2318

Point
◎気管支拡張症は,慢性気道炎症,気道感染,粘液線毛クリアランスの異常,気道・肺の破壊などが複雑に絡み合い進行する疾患であり,臨床的には慢性の湿性咳嗽を呈する症候群的疾患である.
◎病因は多岐にわたり,特発性のほか,感染症,関節リウマチ,慢性閉塞性肺疾患(COPD),喘息などが併存し,いずれの疾患も気管支拡張症との併存により,管理困難・予後不良となる.
◎経過中増悪や下気道の感染症,血痰・喀血を呈することがあり,進行例では呼吸不全を呈する.
◎症状やQOLの改善,増悪や疾患進行の抑制を管理目標とし,長期管理時は少量マクロライド療法のほか,気道クリアランス・呼吸リハビリテーション,ワクチン接種などを行う.

副鼻腔気管支症候群とびまん性汎細気管支炎

著者: 井上純人

ページ範囲:P.2319 - P.2322

Point
◎副鼻腔気管支症候群は上気道の炎症性疾患である慢性副鼻腔炎と,下気道の炎症性疾患である慢性気管支炎,気管支拡張症,あるいはびまん性汎細気管支炎が合併した病態をいう.
◎上気道,下気道ともに慢性・反復性の好中球性気道炎症が起こり,慢性の咳嗽,喀痰や鼻閉,後鼻漏を呈する.
◎びまん性汎細気管支炎は両側肺の呼吸細気管支領域にびまん性の慢性気道炎症を呈し,閉塞性呼吸機能障害をきたす疾患である.持続する咳嗽・喀痰と労作時呼吸困難を認め,高率に慢性副鼻腔炎の合併または既往がある.
◎両疾患ともマクロライド系抗菌薬が有する抗炎症効果が奏効し,同薬の少量長期投与により改善が期待できる.

血管炎と気道病変—好酸球性多発血管炎性肉芽腫症を中心に

著者: 鈴木康仁 ,   斎藤純平

ページ範囲:P.2323 - P.2329

Point
◎ANCA関連血管炎における血管内皮細胞障害は,ANCAによって好中球が過剰に活性化してサイトカインの異常産生が誘導されることや好中球細胞外トラップ(NETs)の形成によるNETsとANCAによる悪循環によって生じる.
◎好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)は喘息あるいはアレルギー性疾患を背景に多発性単神経炎を中心とした血管炎症状と好酸球浸潤による臓器障害を発症する全身壊死性血管炎である.
◎EGPAでは,NETsだけでなく,好酸球細胞外トラップ(EETs)の形成も病態に関与しており,遺伝的差異による病態の違いも報告されている.
◎EGPAの診断や他の血管炎との鑑別には,厚労省難治性血管炎研究班による診断基準や米国リウマチ学会(ACR)と欧州リウマチ学会(EULAR)から合同で公表されたACR/EULAR分類基準2022を参照する.
◎EGPAの標準的な治療は全身性ステロイドに免疫抑制薬や免疫グロブリンを併用することであるが,治療抵抗例では抗インターロイキン-5(IL-5)モノクローナル抗体であるメポリズマブを併用することが推奨されている.

リウマチ・膠原病の気道病変

著者: 清水泰生

ページ範囲:P.2330 - P.2335

Point
◎リウマチ・膠原病は胸腔内に病変を形成し息切れや喘鳴を呈することがあり,喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)と鑑別を要する.
◎1つの病型の気道病変が特定の膠原病疾患にしか発症しないということではなく,リウマチやさまざまな膠原病疾患において生じうる.
◎リウマチ・膠原病に起因する声帯麻痺や輪状披裂関節炎は急性気道閉塞のリスクになることがあるため注意を要する.
◎リウマチ・膠原病に合併する喘息やCOPDは肺機能の低下や予後に影響するため,早期の診断と治療が必要である.

閉塞性細気管支炎,リンパ脈管筋腫症

著者: 田中萌恵 ,   小屋俊之

ページ範囲:P.2336 - P.2340

Point
◎閉塞性細気管支炎,リンパ脈管筋腫症は両疾患ともに閉塞性換気障害をきたす稀な疾患である.
◎閉塞性細気管支炎は,感染症,臓器移植,膠原病,薬剤などが原因として発症し,特に実臨床においては,薬剤に伴う症例に注意する必要がある.
◎リンパ脈管筋腫症は妊娠可能な女性に多く,比較的若年の女性で,吸入治療で症状や閉塞性障害が改善しない症例は疑うことが重要である.
◎どちらも指定難病であり専門性の高い疾患であるため,確定診断には高次医療機関への紹介が必要である.

喘息・COPD患者の指導

環境整備指導の実際

著者: 山口正雄

ページ範囲:P.2342 - P.2344

Point
◎環境中のアレルゲンへの曝露はアレルギー疾患の増悪・遷延をもたらす.
◎寝具の管理や床掃除など複数の対策を講じるのがアレルゲン回避に有効と考えられる.
◎ペットアレルゲン回避も有効だが,ペット飼育の中止は賛同いただけないことも多い.

禁煙指導の実際

著者: 水村賢司

ページ範囲:P.2345 - P.2348

Point
◎喫煙は,喘息と慢性閉塞性肺疾患(COPD)の発症,病態悪化に関与している.
◎受動喫煙は,喘息の発症やCOPDの死亡を増加させる.
◎禁煙は,喘息患者の症状,呼吸機能を改善する.
◎禁煙は,COPD患者の死亡を減少させる.

吸入指導の実際

著者: 市山崇史 ,   花岡正幸

ページ範囲:P.2349 - P.2353

Point
◎喘息・慢性閉塞性肺疾患(COPD)に使われる吸入薬デバイスの種類は多い.
◎内服薬と異なり,適切に吸入できないと十分な効果は得られない.
◎吸入指導における医薬連携が進められている.

呼吸リハビリテーション指導の実際

著者: 黒澤一

ページ範囲:P.2354 - P.2358

Point
◎慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者では,薬物療法とともに運動を中核とする呼吸リハビリテーションが必要である.
◎口すぼめ呼吸をしながら,ストレッチングや運動療法を状態に合わせて行わせる.
◎身体活動性の向上と維持が重要であり,自然に生活習慣となるようにする.

感染対策・ワクチンのポイント

著者: 鎌田浩史

ページ範囲:P.2359 - P.2364

Point
◎手指衛生は感染対策において最も重要な行為の1つである.
◎気道感染による慢性気道疾患の症状増悪の病態について詳しく知っておくべきである.
◎本邦でも新たに認可されたRSウイルスワクチンは今後のさらなるエビデンスの集積に注目する必要がある.

高齢者指導のポイント

著者: 桑原雄紀 ,   髙橋浩一郎

ページ範囲:P.2365 - P.2369

Point
◎高齢者では吸入療法を適切に実施できていない可能性がある.
◎適切な吸入指導を行うことで,疾患コントロールが向上するエビデンスがある.
◎吸入療法の再評価・再指導を定期的に行うことが重要である.

連載 日常診療で役立つ 皮膚科治療薬の選びかた・使いかた・12

褥瘡・皮膚潰瘍治療薬② 薬剤の選びかた・使いかた

著者: 松田光弘

ページ範囲:P.2202 - P.2207

Q問題
図1の3つの創部に使用する外用薬はそれぞれどれがよい?
① 白色ワセリン ② ゲンタマイシン硫酸塩軟膏 ③ 精製白糖・ポピドンヨード軟膏 ④ ブクラデシンナトリウム軟膏 ⑤ スルファジアジン銀クリーム ⑥ トレチノイン トコフェリル軟膏

ここが知りたい! 欲張り神経病巣診断・42

突然のめまい,もしかして脳卒中!? 外来でよく診るめまい②/中枢性めまいの特徴

著者: 難波雄亮

ページ範囲:P.2370 - P.2374

 「めまい」をきたす疾患は,脳卒中・前庭疾患など多岐にわたります.前回は,良性発作性頭位めまい症(BPPV)を取り上げました.頻度が高い耳由来のめまいばかりに気をとられていると,致死的なめまいを見逃してしまうこともあります.そうならないためにも,詳細な病歴聴取を中心にそれを補う神経診察が重要となります.それでは一緒に勉強していきましょう!

知らないとヤバい! リウマチ・膠原病のアレやコレ・11

RA治療中の知っておきたい病態!「抗リウマチ薬を飲んでいる人で注意すべきところとは? ①ブシラミン(BUC)」

著者: 猪飼浩樹

ページ範囲:P.2375 - P.2382

 この連載では,リウマチ・膠原病診療における緊急病態,知っておかないと重篤な状態となりうる事象について取り扱う.リウマチ・膠原病診療は専門性が高い面もあるが,専門医に必ずしも受診していない患者も多い.その背景には,専門医が少ない地域性の問題や,高齢などの理由で専門医への通院が困難であるなどの多くの要因がある.自分自身で関節リウマチ(RA)の診療を行っていなくとも,RAや膠原病を併存症としてもっている患者を診る機会のあるすべての医師において注意すべき見逃したくない,ヤバい病態について学ぶ連載である.

目でみるトレーニング

問題1111・1112・1113

著者: 石黒賢志 ,   三原弘 ,   大内田良真

ページ範囲:P.2383 - P.2388

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基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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61巻13号(2024年12月発行)

特集 喘息・COPDと関連疾患の重要知識Up-to-date

61巻12号(2024年11月発行)

特集 消化器症候への実践的アプローチ

61巻11号(2024年10月発行)

増大号特集 続・Quality Indicatorの実装とその改善—日々の診療に役立つ診療評価指標

61巻10号(2024年9月発行)

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61巻9号(2024年8月発行)

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61巻8号(2024年7月発行)

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61巻5号(2024年4月発行)

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61巻4号(2024年4月発行)

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61巻1号(2024年1月発行)

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60巻11号(2023年10月発行)

増大号特集 患者さんの質問にどう答えますか?—言葉の意味を読み解きハートに響く返答集

60巻10号(2023年9月発行)

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特集 症例から読み解く—高齢者診療ステップアップ

60巻8号(2023年7月発行)

特集 浮腫と脱水—Q&Aで学ぶジェネラリストのための体液量異常診療

60巻7号(2023年6月発行)

特集 整形外科プライマリ・ケア—内科医が知りたい整形外科疾患のすべて

60巻6号(2023年5月発行)

特集 Common diseaseの処方箋ファイル—臨床経過から学ぶ20症例

60巻5号(2023年4月発行)

特集 臨床医からみたPOCT

60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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