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雑誌目次

雑誌文献

medicina61巻3号

2024年03月発行

雑誌目次

特集 どこでもみれる?—コモンディジーズとしての感染症アップデート

特集にあたって

著者: 岡秀昭

ページ範囲:P.418 - P.419

 2023年末〜2024年を迎え,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の出現から5年目に突入した.
 この感染症に対し,人類は現代医学の総力を投入し,わずか数年のうちに新規のワクチンと治療薬を複数開発し,また重症化の病態や感染様式も詳細に解明され,大規模臨床試験を通じて治療戦略も見出されている.

特集を読む前に あなたの理解度チェック!

ページ範囲:P.420 - P.424

●今月の特集執筆陣による出題です.感染症診療に関する理解度をチェックしてみましょう!

座談会

コロナ禍で露呈したわが国の感染症(科学)リテラシーとその改善に向けて

著者: 知念実希人 ,   岡秀昭 ,   忽那賢志

ページ範囲:P.426 - P.434

新型コロナウイルス感染症(以下,コロナ)は5類感染症への移行という大きな節目を迎え,コモンディジーズの1つとなりました.本日は,コロナ禍初期から情報を発信しながら重症患者を診てこられた忽那先生と,開業医という立場から情報を発信されてきた知念先生のお二人に,それぞれの視点からコロナ禍を振り返っていただくとともに,コモンディジーズとなったコロナの今後や次のパンデミックへの備えについて話し合っていきたいと思います.(岡)

どこでもみれる? 5類感染症

新型コロナウイルス感染症 5類化以降の治療

著者: 忽那賢志

ページ範囲:P.436 - P.440

Point
◎新型コロナウイルス感染症の治療法は,ウイルス増殖期に抗ウイルス薬を,炎症反応が過剰に起こる時期に抗炎症薬を使用することが重要である.
◎現在,重症化する感染者の割合は激減しており,複数の抗ウイルス薬(レムデシビル,モルヌピラビル,ニルマトレルビル/リトナビル,エンシトレルビル)が承認されている.また,重症例ではデキサメタゾン,バリシチニブ,トシリズマブなどの抗炎症薬が使用される.
◎治療の有効性は,オミクロン株の拡大やワクチン接種の進展により変化しているため,最新の臨床研究に基づく治療法の適用が必要である.

カルバペネム耐性腸内細菌目細菌による感染症の診断・治療—感染症と定着をいかに区別するか?

著者: 小野大輔

ページ範囲:P.442 - P.445

Point
◎カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)とカルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌(CPE)の定義,違いについて理解する.
◎検出されたCREが感染症の原因菌であるのか,感染を引き起こしていない定着であるのかは,臨床経過から判断する.
◎CREが検出された場合には,感染対策およびカルバペネマーゼ産生の確認検査を実施する.
◎薬剤耐性菌の診断・治療について考えるときには,海外との疫学や使用できる抗菌薬の違いについても考慮する.
◎治療が難しい薬剤耐性菌であるCREによる感染症の診療においては,感染か定着かの判断やソースコントロールなどの一般感染症診療における原則はより一層重要である.

HIV感染症の診断・治療—プライマリ・ケア医も知っておきたい検査や治療薬のアップデート

著者: 塚田訓久

ページ範囲:P.446 - P.450

Point
◎早期に診断され抗HIV療法を継続すれば生命予後は良好である.
◎抗HIV療法により血中ウイルス量が抑制された状態を維持していれば新たな感染源にならない.
◎「HIV感染症の診断」「抗HIV療法で安定したHIV陽性者の合併症診療」はプライマリ・ケア医の役割である.

見逃してはならない細菌性髄膜炎(侵襲性肺炎球菌感染症)—診断・治療・予防のコツから届け出の基準まで

著者: 渋江寧

ページ範囲:P.451 - P.455

Point
◎細菌性髄膜炎は早期診断・早期治療が重要であり,臨床経過で疑い,まず血液培養を採取する.
◎細菌性髄膜炎を疑ってから抗菌薬治療開始まで1時間以内を目指す.
◎血液,髄液などの無菌部位から肺炎球菌が検出された場合は侵襲性肺炎球菌感染症と認識して5類感染症として届け出る.

増えている梅毒の診断・治療—ステルイズ® の使い方を中心に

著者: 谷崎隆太郎

ページ範囲:P.456 - P.459

Point
◎トレポネーマ(Tp)検査陽性であれば梅毒の可能性が高いが,現在の感染と過去の感染を区別できないため,現在の疾患活動性の有無と治療効果判定には非Tp検査(主にrapid plasma reagin:RPR)を用いる.
◎神経梅毒を合併していない早期梅毒の標準治療はペニシリンGベンザチン(ステルイズ®)240万単位を単回筋注し,後期梅毒の場合は同量を1週間空けて合計3回筋注する.
◎治療開始後,治療前値から1/4以上RPRが低下すれば治療成功と考えるが,再上昇する場合には再感染の可能性を,なかなか低下しない場合にはHIV感染症合併や神経梅毒合併の可能性を考慮する.

これから増える!? 知っておきたい麻疹の診断・治療

著者: 上山伸也

ページ範囲:P.460 - P.462

Point
◎麻疹は臨床診断で検査前確率を上げることが重要である.そのうえでPCR検査による確定診断を行う.
◎ワクチン接種歴があると修飾麻疹となり診断が困難となるため,疑わしければ積極的に保健所と相談する.
◎麻疹は世界的に再流行している.インバウンドの増加に伴う国内での再流行には注意を要する.
◎麻疹の治療は基本的に対症療法であり,ビタミンAやリバビリンの効果は限定的であるため予防が重要である.

感染症新薬アップデートと感染症

国内でのイミペネム・レレバクタムの適正使用とは?

著者: 西村翔

ページ範囲:P.463 - P.467

Point
◎イミペネム・レレバクタムは既存のイミペネムと新規βラクタマーゼ阻害薬であるレレバクタムの合剤である.
◎抗菌活性の観点からは,イミペネムと比較して,KPC型カルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌とカルバペネマーゼ非依存性難治耐性緑膿菌においてアドバンテージがある.
◎国内のカルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌で最も頻度の高いカルバペネマーゼは,イミペネム・レレバクタムが無効なIMP型であり,KPC型はほとんど認めない.したがって,イミペネム・レレバクタムを腸内細菌目細菌感染症において使用すべき機会は限られており,主に難治耐性緑膿菌感染症において有用な抗菌薬である.
◎イミペネム・レレバクタムは,既存薬だとコリスチンやアミノグリコシド系しか選択できない難治耐性緑膿菌感染症において,既存薬よりも臨床予後を改善し,かつ腎障害の頻度を低下させることができる.
◎難治耐性緑膿菌感染症では,同じく有用な新規βラクタマーゼ阻害薬の合剤の先行薬であるセフトロザン・タゾバクタムの感受性が確認されているのであれば,両剤の比較試験がない現状では,より臨床実績の豊富なセフトロザン・タゾバクタムをイミペネム・レレバクタムよりも優先して使用すべきである.

イサブコナゾールの特徴—他の抗糸状菌作用を有するアゾール系抗真菌薬との違い

著者: 冲中敬二

ページ範囲:P.468 - P.472

Point
◎イサブコナゾール(ISCZ)はポサコナゾール(PSCZ)と同様にムーコル属をカバーする.
◎ISCZはボリコナゾール(VRCZ)やPSCZより肝機能障害などの副作用が少ないと報告されている.
◎ISCZはVRCZ,PSCZとの違いを理解したうえで処方する(臓器移行性,薬物相互作用,腎障害時の投与経路,経口吸収率など).
◎ISCZは広いスペクトラムを有する抗真菌薬であり適正使用に注意する.

フィダキソマイシンとCDI—ガイドラインの改訂ポイントを中心に

著者: 森伸晃

ページ範囲:P.473 - P.478

Point
Clostridioides difficile感染症(CDI)の診療や感染対策には,2022年に発刊されたわが国のCDI診療ガイドラインならびにCDI感染対策ガイドを活用する.
C. difficileの検査にはBristol stool scaleのtype 5〜7の便を提出する.
◎CDIの再発例もしくは再発リスクのある患者ではフィダキソマイシンの使用を検討する.

2023年新見解に基づく肺MAC症治療とアミカシンリポソーム吸入用懸濁液

著者: 倉原優

ページ範囲:P.480 - P.484

Point
◎近年,肺Mycobacterium avium complex(MAC)症が急増しており,今後プライマリ・ケアにおいて診療機会が増えると予想される.
◎2023年に肺非結核性抗酸菌(NTM)症の治療に関する新見解が日本結核・非結核性抗酸菌症学会から発出され,これに基づいて標準治療を適用すべきである.
◎排菌陰性化が得られにくい症例(難治例)にアミカシンリポソーム吸入用懸濁液は有効である.
◎アミカシンリポソーム吸入用懸濁液を処方すると高額療養費制度の支払い上限額に到達するため,事前に自己負担額がどの程度か患者と相談しながら用いる.

コモンディジーズと感染症アップデート

市中肺炎アップデート

著者: 友田義崇

ページ範囲:P.486 - P.489

Point
◎新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は市中肺炎の一般的な原因微生物となった.
◎抗菌薬治療の投与期間は短縮される傾向にある.
◎重症肺炎に対するステロイドは有効かもしれない.

尿路感染症アップデート

著者: 三村一行

ページ範囲:P.490 - P.493

Point
◎尿路感染症は単純性尿路感染症と複雑性尿路感染症に分類され,両群においては推定される起因菌が異なる.
◎初期抗菌薬は,推定される起因菌と地域ごとの抗菌薬感受性(ローカルファクター),疾患の重症度を考慮して決定する.
◎合併症がない場合,単純性尿路感染症では7日以下,複雑性尿路感染症の場合には10〜14日間の抗菌薬治療期間が一般的には推奨される.
◎複雑性尿路感染症においても,患者背景によっては7日間の短期治療を行う妥当性を担保するエビデンスが蓄積されてきている.

皮膚軟部組織感染症アップデート

著者: 西田裕介

ページ範囲:P.494 - P.498

Point
◎蜂窩織炎は真皮深部〜皮下組織の炎症のため紅斑の境界が不明瞭であるのに対し,丹毒は表在真皮の炎症のため紅斑の境界が比較的明瞭になる.
◎原因微生物はA群β溶血性レンサ球菌と黄色ブドウ球菌が大半であるが,特殊な病歴がある場合は稀な微生物も関与する.
◎一般的に蜂窩織炎は軽症であることが多く,初期治療の段階でのメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)カバーは不要である.
◎壊死性軟部組織炎を除外するのに有用な所見は乏しく,見た目に釣り合わない強い痛みを訴える場合や,バイタルが不安定な場合は外科系診療科への相談を行う.

カテーテル関連血流感染症アップデート

著者: 松永直久

ページ範囲:P.500 - P.503

Point
◎新型コロナウイルス感染症の影響で米国では中心静脈カテーテル関連血流感染症(CLABSI)が増加したが,わが国ではサーベイランス上明らかな影響はみられなかった.
◎CLABSIを起こしにくい因子として,単内腔カテーテルが挙げられている.
◎末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)のほうが従来の中心静脈カテーテル(CICC)より血流感染症の頻度が低いことを示す報告が,最近発表されている(ただし,いずれも単施設の後ろ向き研究).
◎カテーテルの逆血を用いた培養検査と静脈から直接採取した血液を用いた培養検査の陽性化までの時間差(DTP)はカテーテル関連血流感染症(CRBSI)の診断に有用だが,黄色ブドウ球菌とカンジダ属菌では良好な結果は得られなかった.
◎コアグラーゼ陰性ブドウ球菌によるCRBSIに対して,低リスク者では抗菌薬投与が不要である可能性が示唆されており,今後の研究が待たれる.

ガイドラインアップデート

結核—疫学の変化,多剤耐性菌の現状について

著者: 佐々木結花

ページ範囲:P.504 - P.507

Point
◎新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受け,世界の結核対策は後退し,結核患者発見が進まず,結核死亡者数が増加した.
◎本邦の結核罹患率(人口10万対)は2022年に8.2となり,結核低蔓延状態を維持している.
◎2023年1〜9月まででは,20歳台の結核患者数が急増している.
◎本邦では,2023年5月に超多剤耐性結核菌の定義が,WHOに準じて「イソニアジド+リファンピシンに加えて,レボフロキサシンあるいはモキシフロキサシンのいずれかのキノロン系薬に耐性を有し,かつ,ベダキリンないしはリネゾリドのいずれかに耐性を有する菌」と変更された.
◎世界的には治療の短期化が進んでいるが,本邦では健康保険のもとで投与できない薬剤があるために実施できない.

感染性心内膜炎—修正Duke診断基準を中心に

著者: 山本舜悟

ページ範囲:P.508 - P.513

Point
◎2023年に改訂された診断基準では,PET/CTや心臓CTが組み込まれるようになった.
◎抗菌薬開始から4日間以内に解熱しても感染性心内膜炎を除外できるわけではなく,4日間未満の抗菌薬治療で再発がなければ除外できることが明確になった.
◎臨床状況が許せば,感染性心内膜炎の治療でも静注薬から経口薬への変更は安全で有効である.

敗血症—集中治療医の視点から

著者: 竹内晋太郎 ,   太田啓介

ページ範囲:P.514 - P.519

Point
◎敗血症のスクリーニングツールはさまざまなものがあるが,quick SOFA(qSOFA)は本来,予測死亡率として策定されたものであり,単独で用いないほうがよい.
◎ショックを伴わない敗血症の可能性がある患者には,敗血症と認識されて3時間以内に抗菌薬を投与するとよい.SSCG2016ではショックがなくとも1時間以内の抗菌薬投与が推奨されたが,抗菌薬の不要な投与が増えるなどの有害事象がある.
◎昇圧薬の投与は中心静脈が確保されるまで待つのでなく,末梢静脈から投与を開始することで平均血圧65 mmHgをより早く達成できる.
◎集中治療室に滞在している間も,患者だけでなく,家族のケアや退院後の生活を見据えた治療計画を立てる必要がある.
◎日本版SSCG2020の独自項目として,体温管理,集中治療後症候群(PICS)/ICU-AW(ICU-acquired weakness)や神経集中治療などがある.

骨髄炎—ガイドラインの改訂があった糖尿病性足感染症を中心に

著者: 川村隆之

ページ範囲:P.520 - P.524

Point
◎糖尿病性足感染症/骨髄炎の診断根拠や微生物学的評価が最重要である.
◎抗菌薬治療の原則は狭域抗菌薬から開始するescalation戦略である.
◎最新のガイドラインで推奨されている治療期間を把握する.
◎外科的処置の必要性を症例ごとに判断する.

薬剤耐性(AMR)と抗菌薬適正使用支援(AS)

著者: 加藤英明

ページ範囲:P.526 - P.529

Point
◎日本の薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(2023-2027)が国の主導で策定され,耐性菌検出率と抗菌薬使用量の数値目標が設定された.
◎感染対策向上加算1,2の取得要件として感染管理部門に抗菌薬適正使用支援チーム(AST)を作り各種モニタリングや臨床への介入を行うことが求められる.
◎ASTには責任を持つ薬剤師の配置と活動時間の確保が必要である.ASTリーダーは抗菌薬適正使用支援の意義を病院全体に示していく必要がある.

ワクチンアップデート

新型コロナワクチン—令和5年秋開始接種時点のQ&A

著者: 守屋章成

ページ範囲:P.530 - P.534

 本稿では,2023年12月末時点での新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン(以下,新型コロナワクチン)に関する疑問点をQ&A形式で整理したい.

肺炎球菌ワクチン—PPSV23,PCV13の効果の違いと使い分け

著者: 三村一行

ページ範囲:P.535 - P.539

Point
◎肺炎球菌莢膜多糖体ワクチン(PPSV)は単独接種ではワクチン含有血清型の侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)にのみワクチン効果を認めるが,インフルエンザワクチンと併用することでIPD以外の肺炎球菌感染症にも予防効果が得られる.
◎肺炎球菌結合型ワクチン(PCV)は単独接種においてIPD以外にも菌血症を伴わない肺炎球菌性肺炎や免疫機能低下例についても有効性を示し,集団免疫効果も期待できるワクチンである.
◎近年,非ワクチン含有血清型による肺炎球菌感染症の増加(血清型置換)が問題となっている.
◎連続接種に関しては,初回にPCVを接種し,その1年後を目安にPPSV接種を行うと免疫原性が高まり,より高い臨床効果が得られる.

帯状疱疹ワクチン—生ワクチン,サブユニットワクチンの効果の違いと使い分け

著者: 西田裕介

ページ範囲:P.540 - P.543

Point
◎小児への水痘ワクチンの定期接種により水痘帯状疱疹ウイルスの自然曝露が減少し,高齢者の帯状疱疹が増加した.
◎2016年に50歳以上の帯状疱疹の予防を目的に乾燥弱毒生水痘ワクチンの適応が拡大され,2018年にアジュバンド添加サブユニット帯状疱疹ワクチンが承認された.
◎サブユニットワクチンは生ワクチンに比べ帯状疱疹発症予防効果に優れるうえに,生ワクチンが接種できない免疫不全患者にも接種可能になった.

ブレイクスルーと感染症

関節リウマチに対する生物学的製剤と感染症

著者: 山室亮介 ,   萩野昇

ページ範囲:P.544 - P.548

Point
◎関節リウマチにおける生物学的製剤にはモノクローナル抗体と融合蛋白製剤がある.
◎モノクローナル抗体の主な標的はTNF-αとIL-6受容体,融合蛋白製剤は組換え部分がTNF受容体およびCTLA-4である.
◎生物学的製剤使用中の患者の診察においては進行した感染症が存在していても症状は軽度にみえることがあるので,毎回の外来で詳細な病歴聴取と身体診察を行うことが重要である.
◎一般細菌以外における留意点としてTNF阻害薬は抗酸菌をはじめとする細胞内寄生菌の感染,抗IL-6受容体抗体では消化管穿孔のリスクが高いことが挙げられる.

糖尿病治療の進歩と感染症

著者: 岩田健太郎

ページ範囲:P.550 - P.553

Point
◎糖尿病患者は「易感染性」である.具体的にどの感染症のリスクが高いか把握しておくとよい.
◎特に多いのは尿路感染症だ.無症候性細菌尿は尿路感染症のリスクである.ただし,抗菌薬投与でそのリスクはヘッジできない.
◎足感染症予防のために,患者や医師による足の観察が重要である.感染時は,皮膚や潰瘍表面のスワブ培養は採ってはならない.
◎SGLT2阻害薬の服用で尿路感染などが増える可能性がある.

免疫チェックポイント阻害薬と感染症

著者: 武田孝一

ページ範囲:P.554 - P.559

Point
◎免疫チェックポイント阻害薬の機序と,その特異的な副作用である免疫関連有害事象(irAE)を理解する.
◎免疫チェックポイント阻害薬そのものに感染症リスクは(おそらく)ないが,合併したirAEに対してステロイド/免疫抑制薬/生物学的製剤を使用した場合は,(特に細胞性免疫不全状態の)感染症に注意する.
◎irAEのうち,臨床像が感染症に類似するものが複数存在する.

新型コロナミミック

両側すりガラス影よりCOVID-19が疑われた一例

著者: 金澤晶雄

ページ範囲:P.560 - P.563

症例
症例 47歳男性
主訴 発熱,咳嗽

主治医のCOVID-19罹患後に高度低酸素血症と肺炎をきたした一例

著者: 島田侑祐 ,   志水太郎

ページ範囲:P.564 - P.568

症例
65歳,女性.
現病歴 既往や内服歴なく,元気に生活をしていた.転倒による左大腿骨転子下骨折で入院となり,すぐに観血的整復固定術を実施された.術後経過は良好であり,X−55日に回復期リハビリ病棟へ転棟し,その後も順調に院内でリハビリが進んでいた.

COVID-19流行初期に発熱・非定型肺炎で転院搬送された一例

著者: 前田正

ページ範囲:P.569 - P.571

症例
症例 62歳,男性.
現病歴 2週間前,サプリメントを内服後に全身の皮疹にて近医皮膚科を受診し,経過観察となっていた.その後,発熱と体動困難が増悪したため前医に搬送され,重度の脱水所見とCT所見で非定型肺炎との鑑別を要する間質性陰影を認めた.当時の流行状況から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による肺炎が疑われたため,精査加療目的にて当院へ転院となった.

連載 日常診療で役立つ 皮膚科治療薬の選びかた・使いかた・3

ステロイド外用薬③使用期間の目安と薬剤の選びかた

著者: 松田光弘

ページ範囲:P.409 - P.412

Q問題
図11)の湿疹にステロイド外用薬を塗ってよい期間はどれくらいか?

ERの片隅で・12【最終回】

ありがとうを繰り返す救急医

著者: 関根一朗

ページ範囲:P.572 - P.573

 「搬送、お疲れさまです。雨降り出したんですね。」日曜日の午後10時、救急搬送でERに入ってきた救急隊員の服が濡れているのを見て、救急医関根が救急隊員に話しかけている。「急に降り始めました。風も強くて、今夜は冷えますね。」搬送を終えた救急隊員は雨に濡れた帽子に手を当てながら答える。
 walk-in受診した症例を診ていた研修医が、関根のところに相談に来た。「3歳男児、急性上気道炎の疑いです。昨日から鼻汁と咳嗽があり、本日発熱したため受診されました。診察では異常所見はありませんでした。緊急性はなさそうなので、平日に小児科を受診するように指示しようと思います。」関根が答えた。「なるほど。確かに症状の経過からは緊急性はなさそうだね。一緒に診察してみようか。」

明日から主治医! 外国人診療のススメ・12

プライマリ・ケアクリニックにおける外国人診療の現状:精神科との境界領域

著者: 高柳喜代子

ページ範囲:P.574 - P.579

CASE
内科後期研修医(翔太)が「まつもとクリニック」の内科外来で,家庭医(松本)と…
翔太)はぁ…
松本)翔太先生,どうしたの,ため息なんかついちゃって.
翔太)松本先生….実は,K医療センターから治療継続を依頼された方がいて.
松本)どんな患者さん?
翔太)2年前に単身で日本に働きに来た40代のネパール人コック,タパさんという方です.消化器系の愁訴が多くて,いろいろ検査されているんですが,これといった異常がなくて.でも本人は納得してくれないんです.
松本)ドクターショッピングもしているかしら?
翔太)どうしてわかるんですか!? これまでにかかった病院の診察券を見せてもらったんですが,2年で5カ所も受診されていました.これってメンタル不調ですよね,苦手だなぁ….
松本)なるほど,persistent physical spymptoms(PPS)ね.診断名がつくことを治療のゴールにせず,日常生活を少しでもよく過ごせるような別のアプローチが必要かもしれないわ.

ここが知りたい! 欲張り神経病巣診断・33

顔が痛い! 歯の病気? 顔面の神経痛/三叉神経痛の原因と治療

著者: 難波雄亮

ページ範囲:P.580 - P.585

 患者さんが顔面の痛みを訴えるとき,顔の表面に異常がない場合には歯科疾患を疑う人は多いです.歯科を受診しても痛みの原因がわからず,原因不明の痛みとして長期間放置されたり,また抜歯されたりしてしまうケースも昔はみかけました.顔に皮疹があり,神経髄節に異常を認めれば帯状疱疹の可能性もありますが,歯科疾患以外でほかに顔の痛みの原因となるものには何があるでしょうか? それでは,その一例を一緒に勉強していきましょう.

知らないとヤバい! リウマチ・膠原病のアレやコレ・7

リウマチにおける知らないとヤバい“足”のアレやコレ—足から始まる関節リウマチって実は多いんです

著者: 猪飼浩樹

ページ範囲:P.587 - P.594

 本連載では,リウマチ・膠原病診療における緊急病態,知っておかないと重篤な状態となりうる事象について取り扱っている.リウマチ・膠原病診療は専門性が高い面もあるが,専門医に必ずしも受診していない患者も多い.その背景には,専門医が少ない地域性の問題や,高齢などの理由で専門医への通院が困難であるといった多くの要因がある.関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)や膠原病を併存症としてもっている患者を診る機会のあるすべての医師において注意すべき見逃したくない,ヤバい病態について学ぶ連載である.

目でみるトレーニング

問題1084・1085・1086

著者: 岩崎靖 ,   永井達也 ,   副島裕太郎

ページ範囲:P.596 - P.601

書評

—森 望 著—老いをみつめる脳科学

著者: 白澤卓二

ページ範囲:P.425 - P.425

 私と森先生のお付き合いは長く,私が東京都老人総合研究所(今の東京都健康長寿医療センター研究所)で分子遺伝学の部長,森先生が国立長寿医療研究センターの研究部長を務めている頃からの長い学友である.ともに,日本基礎老化学会で脳の老化のメカニズムを違った角度から研究していた.私は,アルツハイマー病の病理学からスタートして,脳の正常老化プロセスがどのようにアルツハイマー病という病気によりダメージを受けるかを研究していたのに対して,森先生はむしろ神経科学(ニューロサイエンス)の生理学基盤を深掘りして理解することにより,正常老化と病的老化の違いを探究していたと記憶している.森先生が2004年に長崎大学に栄転されたときには,解剖学の教授で赴任したという話を聞いて,神経科学の先生がどうして解剖学の教授の道を選んだのか不思議に思ったが,今回の『老いをみつめる脳科学』を一読して,脳を3次元的に理解できないと,神経科学の発展だけでは解決できない問題が神経疾患には数多く残されていて,その知識基盤を固めるために解剖学の教授として長崎大学に赴任されたのだと確信した.私も2007年には,東京都老人総合研究所から順天堂大学に移り,加齢制御学という新しい分野の研究を開始した.アルツハイマー病や認知症を脳の加齢制御プロセス異常であるという新たな視点から,アルツハイマー病の治療や予防に突破口を開こうとしたためだ.
 サイエンスでの発見は,どの論文も大きなジグソーパズルの1つのピースに過ぎないと1990年に免疫学から分子病理学に転向したときから学んできた.森先生もおそらく,私と同様の考えで研究を続けてきたに違いない.今回,森先生が出版された本を拝見すると,これまでに発見されたサイエンスのピースからどのように「脳」や「精神」や「心」が,再構築できるかという内容になっている.1980年に医学に分子生物学が導入され,分子から病気の原因や病態を解明する医学研究が主流となった.2003年にはヒトゲノムが解読され,ヒトの設計図が明らかになると,ヒトの発生や病気の多くは,ヒトゲノム情報からのアプローチで解決するのではないかと期待されたが,残念ながら多くの神経変性疾患はいくつかの原因遺伝子が解明されたにもかかわらず,根本的治療法が確立されていないのが現状である.

—坂本 史衣 著—感染対策60のQ&A

著者: 伊東直哉

ページ範囲:P.435 - P.435

 坂本史衣先生といえば,言わずと知れた「感染管理のプロフェッショナル」です.感染症業界の人ならば,まずその名を知らない人はいないのではないでしょうか? 知らなかったらモグリです.「感染管理ならば,感染症内科医もやっているでしょ? 専門でしょ?」と,思われるかもしれませんが,チッチッチ,それは違うのです.あくまでもわれわれ感染症内科医は,感染症「診療」の専門家であって,「感染管理」の専門家ではないのです(一部に両方に深い見識と経験を持つ稀有な存在もいますが).坂本先生は,学会活動や多くの著書を通じて,長きにわたって日本の感染管理を牽引されてきました.私自身も,実際に坂本先生の講演や著書で感染管理を学んできた熱心なファンの一人です.そのような師匠的存在の坂本先生の著書の書評を書かせていただくことはとても光栄なことで,とてもとても嬉しいことなのです.
 さて,『感染対策60のQ&A』ですが,前著『感染対策40の鉄則』よりもさらに読みやすく進化しており,感染管理の実務担当者の新たなバイブル本の1つになると確信しています.

—矢野 寿一,笠原 敬 監修 小川 吉彦 著—ケースで学ぶ抗菌薬選択の考え方—耐性と抗菌メカニズムの理解で深掘りする

著者: 林俊誠

ページ範囲:P.485 - P.485

 感染症診療のマニュアル本は持っているし,一般的な感染症はだいたい治療できている.とは言え,もしも耐性菌やそれに対する抗菌薬選択について聞かれたら,スムーズに答えられるほど詳しいわけでもない.いっそ専門書を読んでみたいけど,読める自信もない.見慣れない・聞き慣れない菌は,微生物学の本を読んでもしっくりこない.そんなあなたがギャップを乗り越えステップアップするのにおすすめなのが本書である.
 第1章は薬剤耐性の総論である.「MICの数字を横読みする」「CEZを使用し続けても,そのMSSAはMRSAにはなりません」など,耐性菌に対する抗菌薬選択に欠かせない基礎知識が満載だ.続く第2章は臨床で主に使用される抗菌薬に対する耐性機序の解説で,ここまでをじっくり読んでも2時間程度で理解できるのが嬉しい.最もよく出合うβ-ラクタマーゼについては特に図が豊富なので,この分野について初めて読む場合でもイメージしやすい.また,AmpCの「心変わり」や複雑怪奇なカルバペネマーゼがわかりやすく解説されてもいる.

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目次

ページ範囲:P.414 - P.416

読者アンケート

ページ範囲:P.603 - P.603

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.604 - P.605

購読申し込み書

ページ範囲:P.606 - P.606

次号予告

ページ範囲:P.607 - P.607

奥付

ページ範囲:P.608 - P.608

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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