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雑誌目次

雑誌文献

medicina61巻5号

2024年04月発行

雑誌目次

特集 腎機能を考慮した内科疾患の診療

特集にあたって

著者: 杉本俊郎

ページ範囲:P.618 - P.619

 腎臓は,われわれが摂取する無限の物質に対応して,1日約200 Lの糸球体濾過と近位尿細管からの分泌を利用して,直ちに,尿として体外に排泄する能力を有しています.この腎臓の驚異的な能力の恩恵をわれわれは日々受けていますが,薬物代謝・動態の点からみると,投与されたほとんどの薬剤とその代謝産物が腎臓に集積することを意味します.よって,薬物療法が中心である内科診療において,腎臓と薬物療法の関係を理解することが必要であると考えられています.さらに,種々の内科系疾患の病態を腎機能が修飾することも多々あります.高齢化が進み腎機能の障害を有する慢性腎臓病の患者が増加するであろうこれからにおいて,腎臓(腎機能)と内科疾患の関係を理解することがますます重要になってくることが想定されます.そこで今回,「腎機能を考慮した内科疾患の診療」という特集を企画しました.
 腎臓専門医(元と言うべきかもしれませんが)の視点からみると,
●腎機能低下が疾患の病態を悪化させ,かつ,その治療を困難にする病態・疾患(例:うっ血性心不全の急性増悪時の利尿薬抵抗性,慢性うっ血性心不全に対するガイドラインに基づく薬物療法など)
●薬物療法などの治療により腎機能の低下をきたしやすい病態・疾患(例:疼痛に対する鎮痛薬の使用,肝硬変に伴う腹水への利尿薬の投与など)
●薬物療法などの治療法の選択に正確な腎機能の把握が必要な病態・疾患〔例:抗悪性腫瘍薬の選択(腎臓内科が腎疾患を診療するとき以上に正確な腎機能の把握が必要となる),造影剤の投与など〕
などが,腎機能の考慮が必須である病態・疾患として挙げられます.つまり,「腎機能の悪化さえなければ,問題なく対応可能なのに…」「治療により腎機能が悪化しなければ,うまく対応できたのに…」「腎機能を把握しないと治療法が選択できない…」など,読者の皆様が診療の現場で日々苦慮されていることになろうかと思います.

特集を読む前に あなたの理解度チェック!

ページ範囲:P.620 - P.624

●今月の特集執筆陣による出題です.腎機能を考慮して内科疾患診療を行う際の理解度をチェックしてみましょう!

総論

「腎機能」を維持するための方略

著者: 杉本俊郎

ページ範囲:P.626 - P.629

Point
◎「腎機能」の維持には,①糸球体への適切な血流,②糸球体における適切な濾過,③尿細管管腔内の適切な原尿の流れが必要である.
◎レニン-アンジオテンシン-アルドステロン(RAA)系阻害薬やSGLT2阻害薬は,腎保護効果のみならず,心保護効果も報告されている.
◎急性期同様,慢性期においても体液過剰・うっ血を避ける.

腎機能が病態・治療に関係する疾患 〈循環器疾患〉

うっ血性急性心不全—腎機能増悪と利尿薬抵抗性

著者: 松尾実紀

ページ範囲:P.638 - P.644

Point
◎急性心不全における腎機能増悪(worsening renal function:WRF)には,予後良好な“pseudo-WRF”と予後不良な“true-WRF”がある.
◎利尿薬抵抗性は,利尿薬の調節やpseudo/true WRFを見極める手助けとなる.

慢性心不全の治療—ガイドライン準拠薬物療法(GDMT)と腎機能

著者: 山本一博

ページ範囲:P.645 - P.649

Point
◎心不全が増悪すると腎機能も増悪する.
◎腎機能障害は心不全のリスク因子でもある.
◎慢性心不全のガイドライン準拠薬物療法(guideline-directed medical therapy:GDMT)は腎機能の保護にも結び付く.

治療抵抗性高血圧

著者: 涌井広道 ,   田村功一

ページ範囲:P.650 - P.654

Point
◎治療抵抗性高血圧は,「利尿薬を含む3剤の降圧薬を用いても血圧が目標まで下がらない状態」と定義される.
◎コントロール不良高血圧や治療抵抗性高血圧では要因を鑑別することが重要である.
◎利尿薬は高血圧薬物治療の重要な選択肢の1つであり,減塩が困難な場合や体液過剰の患者では特に有効である.
◎治療抵抗性高血圧の薬物療法として,ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬やアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)が有用である.

Cardio-renal syndrome—体液調節と心・腎保護

著者: 増田貴博

ページ範囲:P.656 - P.661

Point
◎cardio-renal syndromeとは,心臓または腎臓の一方の機能障害が他方の機能障害を誘発する病態である.
◎体液量の必要度が正反対である心臓と腎臓の保護を両立させるためには,体液の適正化が重要である.
◎SGLT2阻害薬の長期的な体液適正化作用は,レニン-アンジオテンシン系および交感神経系の活性化抑制を介して心・腎保護に寄与する可能性がある.

貧血・心疾患—Cardio-renal-anemia症候群

著者: 濱野高行

ページ範囲:P.662 - P.667

Point
◎cardio-renal-anemia(CRA)症候群は,心不全,慢性腎臓病と貧血が合併しやすいという概念である.
◎エリスロポエチン製剤(ESA)を投与すると,すべてが改善しうるという概念ではない.
◎海外のガイドラインでは,心不全や冠動脈疾患を合併する軽度〜中等度の腎性貧血には,ESAの非投与が推奨されている.
◎CRA症候群は,最近ではcardiorenal-iron dificiency syndrome(CRIDS),cardiorenal-anemia-iron dificiency syndrome(CRAIDS)といった鉄に注目した概念に変わりつつある.
◎CRA症候群のエビデンスのある解決手法は,鉄剤とSGLT2阻害薬の投与である.

〈消化器疾患〉

肝硬変患者における体液貯留,腎機能障害のマネジメント

著者: 山田倫子 ,   黒崎雅之 ,   泉並木

ページ範囲:P.668 - P.673

Point
◎肝硬変患者における体液管理は,塩分制限と利尿薬加療が主軸となる.
◎スピロノラクトン,フロセミド内服に対し反応不良の場合,トルバプタンの内服を検討する.
◎内服加療で反応不良の場合はスピロノラクトン,フロセミド静注を検討する.
◎体液貯留が問題となる肝硬変患者では,利尿薬での加療や肝硬変そのものによる腎機能障害の管理も重要となる.
◎末期肝硬変患者における腎障害では,利尿薬の中止とアルブミンへの反応の有無が肝腎症候群の鑑別に重要である.

〈腎疾患〉

ネフローゼ症候群に伴う浮腫への対応と利尿薬の使い方

著者: 長澤将

ページ範囲:P.674 - P.677

Point
◎ネフローゼ症候群では,原疾患を意識して免疫抑制薬での治療を優先させるか,利尿薬の治療を行うかを決める.
◎フロセミドは十分量を空腹時に飲ませる.
◎脱水を避けるために,血圧,体重をモニタリングする.

良性腎硬化症

著者: 奥山恵美子 ,   小波津香織 ,   市川大介

ページ範囲:P.678 - P.682

Point
◎腎硬化症は,超高齢化社会に伴い透析導入の原疾患の第2位となって以降,経年的に増加傾向にある.
◎腎予後・生命予後ともに悪く,今後も増加が予想される腎硬化症の診断・治療について考えることは急務である.

M蛋白血症に伴う腎障害

著者: 水野真一

ページ範囲:P.684 - P.687

Point
◎多発性骨髄腫の診断には高カルシウム血症(C),腎障害(R),貧血(A),骨病変(B)のCRAB症状が重要であり,腎障害は円柱腎症の病理像を呈する.
◎血清遊離軽鎖(FLC)検査は,M蛋白血症のスクリーニングに有用である.
◎骨髄腫までには至らないM蛋白血症でも,尿異常やFLCの異常比がある場合は,monoclonal gammopathy of renal significance(MGRS)を疑い,腎臓専門医へ紹介する.

〈膠原病〉

全身性エリテマトーデス(SLE)—ループス腎炎治療の最近の進歩

著者: 川上貴久 ,   要伸也

ページ範囲:P.688 - P.694

Point
◎全身性エリテマトーデス(SLE)は分類基準を参考に診断する.
◎ヒドロキシクロロキンがSLEの治療の基礎となる.
◎SLEの諸病態のなかでも,ループス腎炎のⅢ型・Ⅳ型は最重症の1つである.
◎ループス腎炎のⅢ型・Ⅳ型の治療は,グルココルチコイドにミコフェノール酸モフェチルかシクロホスファミドのパルス療法を併用する.
◎ベリルマブ,アニフロルマブ,voclosporinなどの新薬がある.

血管炎症候群—ANCA関連血管炎—特に顕微鏡的多発血管炎

著者: 湯村和子 ,   板橋美津世

ページ範囲:P.696 - P.703

Point
◎血管炎症候群のなかで顕微鏡的多発血管炎(MPA)が腎障害の出現頻度が最も高い.
◎MPAに起こる腎障害は急速進行性糸球体腎炎を呈することが多い.
◎腎組織病変は,壊死性血管炎で半月体形成性糸球体腎炎像を認める.
◎腎徴候の尿異常は,診断された時期にもよるが血尿と蛋白尿の程度はさまざまで,時に赤血球円柱を認める.
◎腎不全を呈していても腎サイズは正常か腫大である.

〈糖尿病・内分泌疾患〉

腎機能を考慮した糖尿病治療薬の使い方

著者: 久米真司

ページ範囲:P.704 - P.708

Point
◎腎機能に応じた減量や中止が必要な糖尿病治療薬が存在する.
◎顕性アルブミン症例では,GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬による腎予後改善が期待できる.
◎アルブミン尿期によらず,SGLT2阻害薬には腎予後改善が期待できる.

原発性副甲状腺機能亢進症・副甲状腺機能低下症

著者: 間中勝則 ,   槙田紀子

ページ範囲:P.710 - P.715

Point
◎腎臓はカルシウム・リン代謝において最も重要な臓器の1つである.
◎副甲状腺機能亢進症の診断で,原発性か二次性かは腎機能障害を合併している場合には特に鑑別に注意が必要となる.
◎無症候性原発性副甲状腺機能亢進症の手術適応では,腎機能低下が重要な項目の1つであるが,腎機能障害の進行防止のエビデンスは明確でなく,骨折リスクの低下の観点が大きい.
◎副甲状腺機能低下症では治療において,低カルシウム血症の症状を改善するとともに腎石灰化や尿路結石を回避することも重要である.

治療・薬物療法が腎機能の影響を受けやすい内科的疾患 〈骨・関節疾患〉

骨粗鬆症—腎機能に応じた薬物療法と注意点

著者: 田井宣之

ページ範囲:P.716 - P.719

Point
◎腎機能障害(CKDステージG4〜5)を有する患者の骨粗鬆症治療はリスクとベネフィットを考慮し,適応を慎重に検討する.
◎ビスホスホネート製剤は腎機能別の適応が各薬剤で異なる.
◎デノスマブとロモソズマブはCKDステージG4〜5の患者に投与する場合は症候性の低カルシウム血症に注意が必要である.
◎デノスマブとロモソズマブは投与終了後の逐次療法が必要である.

関節リウマチ—腎機能に応じた薬物選択

著者: 永瀬芙美香 ,   藤田芳郎

ページ範囲:P.720 - P.725

Point
◎関節リウマチ(RA)患者において腎機能障害を合併するケースは増加傾向にあり,腎機能に応じたRA治療薬の適切な選択が必要である.
◎RA患者はさまざまな要因で腎機能障害が生じるため,腎機能を注意深くフォローする必要がある.
◎腎機能障害のある高疾患活動性のRAの治療強化には,生物学的製剤やJAK阻害薬が有用な選択肢である.

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と腎機能—鎮痛薬の安全な使い方

著者: 大内治紀 ,   三瀬直文

ページ範囲:P.726 - P.730

Point
◎非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は,腎臓に対して糸球体血流の減少をはじめとしたさまざまな悪影響を及ぼす.
◎腎機能への影響が少ないことが期待される鎮痛薬として,アセトアミノフェンやトラマドールが挙げられる.また,その他の鎮痛補助薬の重要性が高まっている.
◎透析患者の高齢化に伴い,適切な疼痛管理はフレイル予防の観点からも重要である.
◎慢性腎臓病(CKD)患者の病態は変化しやすく,個々の病態に応じた適切な疼痛評価・管理が必要である.

〈消化器疾患〉

消化器系薬剤と腎機能

著者: 住田圭一

ページ範囲:P.732 - P.736

Point
◎プロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用は慢性腎臓病(CKD)発症や進展のリスクとなる可能性がある.
◎CKD患者では便秘の合併頻度が高く,高カリウム血症やCKD進展のリスクとなる.
◎CKD患者で酸化マグネシウム製剤を使用する際は,高マグネシウム血症に注意が必要である.
◎下剤による便秘治療により,高カリウム血症やCKD進展リスクが軽減される可能性が示唆されている.

〈感染症〉

抗菌薬の適正使用—腎機能のみかたと抗菌薬投与のポイント

著者: 内田大介

ページ範囲:P.737 - P.739

Point
◎「とりあえず」抗菌薬ではなく,敗血症と認識したうえで,腎不全の有無にかかわらず,必要な抗菌薬を適正に用いる.
◎敗血症治療中の腎障害はよく経験されるが,薬剤性腎障害というわけではない.
◎βラクタム系抗菌薬は用量安全域が広いことから,用量調整を行えば,腎不全患者に対して逆に使用しやすいかもしれない.
◎腎不全患者に対して投与量調整不要な抗菌薬でも,特に透析患者や小柄な体型では副事象に注意する.

〈悪性疾患〉

抗悪性腫瘍薬投与時の腎機能検査・腎機能低下時の投与設計

著者: 和田健彦

ページ範囲:P.742 - P.746

Point
◎腎排泄性薬物を用いたがん薬物療法においては投与前に正確な腎機能の把握が重要である.
◎腎機能を最も正確に把握できる評価法はイヌリン・クリアランスである.
◎血清クレアチニン値を用いた腎機能評価では患者の筋肉量を考慮に入れる.
◎薬剤性腎障害の早期発見・対応のために,投与後の腎機能や尿所見の観察が欠かせない.
◎腎機能障害患者に対する最適な投与設計のために診療科間・職種間の協働が望ましい.

抗悪性腫瘍薬による腎障害

著者: 松原雄

ページ範囲:P.747 - P.752

Point
◎抗悪性腫瘍薬による腎障害の診断には,抗悪性腫瘍薬以外の腎障害を除外することが重要である
◎免疫チェックポイント阻害薬による急性腎障害(AKI)発症の危険因子としてプロトンポンプ阻害薬(PPI)が報告されている.
◎「pseudo-AKI」をきたす薬剤の場合,シスタチンCによる評価が有効である.

〈検査〉

造影剤腎症はあるのか?—救急医の立場から

著者: 中田貴史 ,   工藤秀将 ,   久志本成樹

ページ範囲:P.753 - P.757

Point
◎造影剤による腎機能障害のリスクは過大評価されている可能性がある.
◎造影剤使用によるメリットが期待される緊急の状況においては,腎機能障害を理由に造影剤投与を控える必要はない.
◎適切なリスク評価に基づき,造影剤使用後の腎保護に努める.

造影剤腎症はあるのか?—放射線科医の立場から

著者: 尾田済太郎

ページ範囲:P.758 - P.761

Point
◎造影CT検査による造影剤腎症のリスクは非常に低い.
◎国内外のガイドラインは,eGFR 30 mL/分/1.73 m2未満の患者に造影CTを行う際は予防策を講じることを推奨している.
◎「造影剤腎症を過剰に恐れるがあまり造影剤の使用を避けた結果,患者に対してかえって不利益を与えてしまう」といったリーナリズム(renalism)の考え方を理解する.

腎機能を意識すべき病態

高齢者の腎機能を意識した薬物療法

著者: 赤井靖宏

ページ範囲:P.762 - P.765

Point
◎老年者の腎機能評価では,必要に応じてシスタチンCなど,筋肉量やサルコペニアの影響を受けにくい指標を用いる.
◎すでに腎機能が低下している場合が多い老年者では,常に腎機能を意識した薬物処方調整が必要である.
◎腎機能障害がある場合,抗血栓薬とレニン-アンジオテンシン系阻害薬の有害事象発症が多いため,老年者では特に注意して処方する.
◎老年者では,シックデイにおける腎機能の低下を予測した処方管理が重要である.

サルコペニア・フレイルと腎機能

著者: 菅野義彦

ページ範囲:P.766 - P.769

Point
◎腎臓病の食事=たんぱく質制限ではない.
◎クレアチニンは本質的には腎臓病と関係ない.
◎腎臓を動かすスイッチは何か?
◎クレアチニンの変化から身体に起きていることの仮説をいくつ立てられるか?

緩和ケアと腎機能—オピオイドを用いた疼痛管理

著者: 杉浦徳子 ,   余宮きのみ

ページ範囲:P.770 - P.773

Point
◎がん患者の疼痛管理において,オピオイドは重要な薬剤である.
◎がん患者は腎機能障害を合併することが多く,オピオイドの調整においても,腎機能を考慮する必要がある.
◎各オピオイドにおいて腎障害時の薬物動態が異なるため,その特徴を知る必要がある.

進行した腎障害への保存的腎臓療法—conservative kidney management

著者: 守山敏樹

ページ範囲:P.774 - P.777

Point
◎conservative kidney management(CKM)は人生の最終段階に末期腎不全に至った際の治療選択肢の1つである.
◎透析などの腎代替療法が末期腎不全で人生の最終段階に至った患者の当然の選択肢ではない.
◎人生の最終段階における医療の選択には,丁寧な意思決定が欠かせない.
◎CKMの実践にはadvance care planing(ACP)が有効である.
◎ACPの実践の過程にはshared decision making(SDM)が必須と言える.

読者の質問に答える

腎機能の評価・検査値はどのように考えたらよいですか?

著者: 杉本俊郎

ページ範囲:P.630 - P.636

Question 1
検診などで検尿異常を指摘されたときの対応(二次検診)の基本を教えてください.

腎機能を考慮した診療の進め方について教えてください

著者: 杉本俊郎

ページ範囲:P.778 - P.782

Question 1
慢性腎臓病(CKD)における高尿酸血症・痛風の管理について教えてください.

連載 日常診療で役立つ 皮膚科治療薬の選びかた・使いかた・4

ステロイド外用薬④剤形と塗る量・塗る回数

著者: 松田光弘

ページ範囲:P.609 - P.613

Q問題
図11)の皮疹に処方するステロイド外用薬の剤形(図2)と本数(5gチューブ)は?

明日から主治医! 外国人診療のススメ・13

外国人労働者と整形外科疾患

著者: 冨田茂

ページ範囲:P.784 - P.789

CASE
研修医(大樹)と指導医(朋子)が救急外来で…
大樹)先生,ベトナムから技能実習で来ているグエンさん(20歳)ですが,足を骨折しています.
朋子)これは手術が必要ね.仕事中の怪我なの?
大樹)それが,「建築現場の仕事で危険区域に自分の不注意で入ってしまって怪我をしたのだから,労災は使わない」と言っています.お金のことを心配して帰りたいと….
朋子)それ,確実に労災.外国人にはわかりにくいから,厚生労働省の外国人労働者向け労災保険給付パンフレット1)を渡して読んでおいてもらってね.あなたも読んでおくのよ.整形外科に連絡してね.医療相談室のソーシャルワーカーにも話をしておこう.

ここが知りたい! 欲張り神経病巣診断・34

おなかが痛い! これも神経障害? 腹壁の神経障害①/前皮神経絞扼症候群(ACNES)の原因と診断・治療

著者: 難波雄亮

ページ範囲:P.790 - P.795

 患者さんから「おなかが痛い!」と言われたら,腹腔内の内臓病変,特に腸管由来の疾患がないかを考えます.圧倒的に多い感染性腸炎から虫垂炎,憩室炎,消化管穿孔などまで,鑑別疾患は多岐にわたります.しかし,いくら原因を検索しても内臓疾患が見つからず,最終的に総合内科や神経内科に紹介されてくる謎の腹痛疾患があります.それでは,その一例を一緒に勉強していきましょう!

目でみるトレーニング

問題1087・1088・1089

著者: 北村淳史 ,   副島裕太郎 ,   蟹江崇芳

ページ範囲:P.796 - P.801

書評

—長澤 将 著—Dr.長澤印 輸液・水電解質ドリル

著者: 龍華章裕

ページ範囲:P.731 - P.731

 私は最近まで3次救急病院で働いていたが,3次救急病院はその病院の特殊性からか電解質異常の症例に満ち溢れている.病棟で研修医や若手の内科専攻医と診療をしていると,彼らがいかに電解質異常の診療に苦手意識をもっているかがよくわかる.これは,おそらく,「細菌性肺炎→抗菌薬投与」といったような,ルーチンでの対応が電解質異常では現実的ではないからだと思う(そこに面白さがあるようにも思うが).例えば低Na血症.その原因は多岐にわたり,その治療方法も病態によって使い分けが必要であり,目の前に低Na血症の患者さんがいても,若手の医師は次にどのようなアクションを起こせばよいのかわからないのだ.
 このたび,長澤将先生の『Dr.長澤印 輸液・水電解質ドリル』が上梓された.学会関連のWEB会議でご一緒させていただいたことがあり,一方的に存じ上げていたが,ここ数年は若手の先生が腎臓内科をローテーションしてくると,長澤先生の本を携帯していることが多く,長澤先生の「とっつきにくい腎疾患を若手に教えること」における影響力の大きさを感じざるを得ない状況である.さらに,先日の日本腎臓学会総会(2023年)では,前方の席でたくさんメモされている姿を目にし,長澤先生の影響力はこの勤勉さから来るのか,と思ったのを昨日のことのように思い出す.そんな長澤先生の書かれた本書は,「まさに超現場至上主義」である.

—織田 錬太郎 訳—Mayo Clinicの症例から学ぶ臨床感染症

著者: 八重樫牧人

ページ範囲:P.741 - P.741

 凄い本が出た! 日本に現存する感染症専門医でこれだけ数多くの稀な症例を経験した専門医はいないだろう(たぶん).
 病気には頻度が高い病気もあれば,稀な病気もある.教科書で病名をみたことがあるだけでは「どのような患者さんでその病気を疑って検査するか?」を明確に判断するには不十分だ.一方で,その稀な病気の典型的な臨床経過・診断経過,つまりillness script(病気の台本)を学べば,どのような状況で稀な病気を疑い,検査をするかがわかりやすい.それを世界トップの医療機関であるMayo Clinicの症例から学べるのがこの本だ.このプロセスがあれば,稀な症例を診断して治療し患者さんの健康と幸せにつながる可能性が高くなる.

—坂本 史衣 著—感染対策 60のQ&A

著者: 山田和範

ページ範囲:P.783 - P.783

 コロナ禍を経て,すべての医療従事者は以前にも増して,正しい知識に基づいた感染対策を実践することを求められるようになった.得てして,施設の感染対策では現場と管理側スタッフの行動が乖離していることがある.真面目な管理スタッフほど,無意識に正論を振りかざし,現場スタッフは「感染は現場で起きているんだ!」と言いたい気持ちをこらえ,独自のルールを運用してささやかな抵抗をしていたりする.両者がめざすゴールは同じで「感染から患者さんと医療スタッフを守りたい」はずなのだが…….そしてこの小さな綻びを突いて,感染症やアウトブイレクが発生したりする.このような「現場と管理側スタッフとの行動の乖離」は,突き詰めれば両者の視点がズレていることが原因である.このズレを解消する糸口の1つとなるのが本書である.
 一般的にHow to本の記載は,最新で充実した施設が前提となっていることが多く,そうではない(経年が目立ち設備面でも恵まれていない)施設では,「そこまでできないなぁ」と諦めがちである.しかし,本書は,充実した環境での対応のみならず,現在のセッティングでできることにも言及しており,どんな施設・環境であっても感染対策に取り組むうえでの羅針盤になる.そして,押さえるべきポイントはしっかりと押さえられており,妥協がない部分は小気味よい.

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目次

ページ範囲:P.614 - P.617

読者アンケート

ページ範囲:P.803 - P.803

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.804 - P.805

購読申し込み書

ページ範囲:P.806 - P.806

次号予告

ページ範囲:P.807 - P.807

奥付

ページ範囲:P.808 - P.808

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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