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雑誌目次

雑誌文献

medicina7巻11号

1970年10月発行

雑誌目次

EDITORIAL

慢性腎不全の治療—管理についての見とおし

著者: 吉利和

ページ範囲:P.1545 - P.1545

 慢性腎不全患者の治療,とくに透析についての技術的な問題は,今日ではそう大きいものではなくなっている.もちろん未解決の点,適応,治療開始時期,方法についての改良などは今後も行なわれるであろうが,しかし今でも,今なりにうまくいっている.そして,その有効性,延命効果,職場復帰についても,遅々ではあるが進みつつあるといってよかろう.欧米諸国にくらべると,まだまだずっと立ちおくれているにしても,近い将来に,そのギャップがうめられる見通しはかなり大きく,これらについては,わが国の新進の学徒を信頼しておれば,目標を正しくつかんで前進できるであろう.
 問題はその次である.透析をはじめとして,移植をも含めて,普及という点では目標がはっきりしているが,さて,将来はどうなっていくことであろうか,またいくべきであろうか.透析療法を実施している医療機関はしだいにふえているが,どこにおいても問題になるのは,すぐに飽和状態に達してしまって新患を引きうけることができないことであるし,また患者選択を純医学の立場だけからすることがむつかしいということである.

今月の主題

慢性腎不全の治療—とくに保存的治療と間歇的血液透析の適応について

著者: 中村定敏

ページ範囲:P.1546 - P.1551

 間歇的人工透析や腎移植により慢性腎不全の治療法は大きく変貌しつつあるが,これらの治療法は未だ一般化しておらず,現時点は従来の保存的療法とのいわば過渡期にあるといえる.そこで現状にあう慢性腎不全の治療法として保存的治療と血液透析の適応を中心に論じてみたい.

(座談会)慢性腎不全の保存的治療

著者: 三村信英 ,   高須照夫 ,   柴垣昌功 ,   大野丞二

ページ範囲:P.1552 - P.1562

 透析療法や腎移植が進歩しても,これによって救われる患者はまだ3%前後にすぎない.となると慢性腎不全患者の大部分はいまだに保存的治療の対象たらざるをえない.慢性腎不全の外来治療の問題点,食事管理・生活指導の実際,合併症の予防と対策などについて.

―団体紹介―腎センターにおける愛知県方式

著者: 小林快三

ページ範囲:P.1563 - P.1563

患者増加の一途をたどる慢性腎不全
 わが国の慢性腎不全,尿毒症による死亡は年間1万余人を越え,愛知県だけでも年間400人以上の死亡者を数える.昨今各地で慢性腎不全患者の血液透析が行なわれ,社会復帰例も急速に増加しているが,これら患者の対策上に種々の問題が生じてきている.たとえば毎年多発する尿毒症患者の限られた一部のみを受入れ透析を行なっているにすぎず,さらに透析患者の死亡数の低下とあいまって,この傾向はいっそう強まるものと考えられる.愛知県ではこれらの問題を地域社会全体の問題として解決しようとする積極的な試みがすすめられておるので,その概要を以下に述べる.

日常検査とその限界

アルカリホスファターゼ

著者: 石井暢

ページ範囲:P.1518 - P.1519

酸素活性の測定
 臨床検査の中心が生化学に移り,そのうちでも日常検査で最も多数の処理を要求されているのが酵素活性の測定である.
 酵素活性の測定は他の血清中の諸物質たとえば血糖,尿素窒素,コレステロールなどの測定とはまったく異なる性質をもっている.

診療手技

皮膚生検

著者: 野波英一郎

ページ範囲:P.1520 - P.1522

適応と意義
 皮膚生検,すなわち皮膚試験切除を行なって組織学的検査を行なうには,2つの目的がある.
 1)皮膚病変の肉眼的臨床的診断の裏付け,あるいは補助として行なう場合と,

救急診療

急性腎不全の応急対策

著者: 町田豊平

ページ範囲:P.1524 - P.1526

 急性腎不全の治療法は,つまるところその応急対策につきる.今日では人工透析法などの積極的治療が行なわれるようになって,その50%以上は救命できるようになった.

統計

スウェーデンの癌統計から

著者: 小畑美知夫

ページ範囲:P.1528 - P.1528

 スウェーデンでは1958年から全国民を対象として癌患者の登録制度を実施しており,それによって癌患者の発生状況,死亡状況など,癌の疫学統計には不可欠な患者の実態を毎年公表しております.わが国では残念ながら,現在のところ癌の全国統計として使用できるものは,人口動態による死亡統計しかありませんが,将来は癌の登録制度を検討する必要があるものと思われます.1966年のスウェーデンの癌患者の登録から主な資料をぬき出してみました.

略語の解説 34

subcut-TCA cycle

著者: 阿部正和

ページ範囲:P.1529 - P.1529

subcut.
subcutaneously:皮下 皮下注射のときの略語として利用される.

日本人の病気

肝硬変

著者: 大津留信

ページ範囲:P.1530 - P.1531

日本とヨーロッパ
 肝硬変は日常しばしば遭遇する疾患の1つであり,100年間の多彩な研究の結果,地理病理学的には各国間に形態的差異があることもよく知られている.
 たとえば病理学上,長与のいわゆる甲型肝硬変は日本でもヨーロッパでもしばしば経験されるが,細い間質をもち,大型の偽小葉を有するいわゆる乙型硬変はヨーロッパに少なく,日本に多い.これと関連して原発性肝癌を合併する頻度は日本ではずぬけて高い.

カラーグラフ

全身性紅斑性狼瘡の眼底所見

著者: 松井瑞夫

ページ範囲:P.1534 - P.1535

 全身性紅斑性狼瘡(S. L. E.)にみられる眼底病変には,網膜静脈の拡張,棉花状白斑の出現などがある.ここにあげた症例は,19歳の男性であり,図1aおよび図1bにみるように,著明な静脈の拡張と棉花状白斑の出現など,典型的な眼底所見を呈した症例である.
 さて,棉花状白斑cotton wool patchesは,高血圧症や糖尿病でもみられる眼底病変であり,これらの疾患の眼底病変の程度分類に際して,重要な目標どなっている所見の1つである.そして,その発生病理については,いろいろな説があげられてきたが,現在では局所性網膜乏血focal retinal ischemia(Ashton,196)であるとする説が広く承認されている.このことは,網膜血管造影法ともいうべき螢光眼底撮影fluorescein fundus photographyによって,よくとらえられる.図1cが図1aに対応する螢光眼底写頁であり,棉花状白斑が螢光眼底写真の上では充盈欠損としてとらえられ、この充盈欠損の部には,閉塞血管が黒い陰影としてとらえられている.この棉花状白斑が,precapillary arterioleともいうべき大きさの動脈の閉塞により出現するということを,膠原病としてのS. L. E. の病理組織学的所見と対比してみると,この血管閉寒がangitisによるものであろうということが推測される.

グラフ

細胞の超微形態

著者: 山元寅男

ページ範囲:P.1538 - P.1543

 細胞は,形態上2つの部分からできている.すなわち,細胞核とそれ以外の胞体,つまりは細胞形質である.核はいわゆる核膜により細胞形質から境され,内部は核形質と呼ばれている.細胞形質は,厚さ約80Åの薄い細胞膜(または形質膜)により外界から境されている.核は細胞の分裂,発生および機能の調節中枢をなすが,細胞形質は核の支配のもとに細胞の代謝,合成機能の大部分を営んでいる.

東京人工腎臓センター

著者: 樋口順三

ページ範囲:P.1597 - P.1599

 慢性腎不全の末期といえば,日々に悪化する患者を前になすすべもなく手をこまねいて死を待つのがこれまでの現状であった.ところが人工腎臓の実用化により,死を待つばかりの尿毒症患者が人工腎臓の透析を続けることによってすっかり元気になり,背広に着がえて会社に出勤できるところまで医学は進歩した.今日の問題はこうした人工腎臓の施設を1つでも多くつくることにより,死に直面した人たちを救うことである.ここでは人工腎臓センターとはどの程度の設備とスタッフを必要とするかを写真でお示ししたい.

診断のポイント

脈波からわかるもの

著者: 吉村正治

ページ範囲:P.1564 - P.1567

圧脈波からわかるもの
 代表的な圧脈波は頸動脈圧波で,これが好んで広く計測される理由はもっとも心臓に近いところで測れる脈波だからである.
 圧波が動脈管内を末梢に伝達されてゆくとき,波形にはだんだん歪みが加わる.つまり心臓に近いほど,その圧波には歪みが少なく,頸動脈圧波で測定した左心室の駆血時間ejection time(図1のte)は,十分に正確である.

低ビリルビン血症を示す疾患—頻度および臨床検査成績との相関

著者: 富田仁

ページ範囲:P.1568 - P.1570

京大病院の統計から
 血清ビリルビンの正常値は,Meulengracht黄疸指数5以下とされていて,高ビリルビン血症(黄疸)に関する文献は著しく多いが,低ビリルビン血症に関するものは,ほとんど見ない.わずかに柴田教授1)の臨床生化学診断法に,黄疸指数の減少は,身体の消耗または栄養不良を反映すると記載され,最近ではフェノバルビタール使用中のてんかん患者血清に,低ビリルビン血症が見られるとの文献2)がある程度である.しかしながら検査室にて観察していると,非常に色のうすい血清が,尿毒症などで見られるので,それに関する統計を行なった.
 1958年9月より1969年3月まで,10年6カ月間に,京都大学病院内科I,II,IIIおよび小児科入院患者で,診断が比較的に明確になった症例で,Meulengracht黄疸指数が測定された症例9,668例について調査した.9,668例中,Meulengrachtが1あるいは2を示した症例は,459例(4.7%)あり,頻度としては多いものではない.

治療のポイント

ネフローゼ症候群とステロイドの使い方

著者: 三條貞三

ページ範囲:P.1571 - P.1575

 ネフローゼ症候群は多量の蛋白尿,低蛋白血症を主体とする症候群で,その成因から腎性(リポイドネフローゼ,糸球体腎炎)と二次性(アミロイド腎,紅斑性狼瘡,糖尿病,腎静脈血栓症など)に区別されている.しかし筆者らの69例の症例では本症候群の約90%が腎性であり,(アミロイド腎1例,心不全1例,紅斑性狼瘡3例)これらについては一般に糖質ステロイドが使用されている.本症候群の中,アミロイド腎,糖尿病,腎静脈血栓症,慢性腎炎の硬化型では糖質ステロイドの使用はむしろ症状を悪化することがあるので,予め既往歴,各種生化学検査,X線検査さらには腎生検などによって,これら症例をステロイド使用から除外する必要がある.

神経性食思不振症—病因と治療

著者: 桐生恭好 ,   小林信正

ページ範囲:P.1576 - P.1578

 神経性食思不振症は,食欲不振,るいそう,無月経を主症状とし,思春期の女性にみられる疾患である.その多くは,るいそう,または食思不振を主訴として内科を訪れるが,ときには無月経を訴えて婦人科を訪れ,あるときは精神科を受診することもある.
 本症はpsychosomatic disorderの一種であり,その病因論が非常に興味のある疾患で,従来より病因に関しての多くの論文が発表されている.

腎結石—自然排出か手術的治療か

著者: 石神襄次

ページ範囲:P.1579 - P.1581

 一般に腎結石といわれているものは,大部分が腎盂,腎杯に存在する結石で,厳密な意味での腎実質結石はきわめてまれである.ここでは,腎盂,腎杯,上部尿管の結石に対する治療法について述べることとする.

Leading Article

久山町研究の展開

著者: 勝木司馬之助

ページ範囲:P.1582 - P.1584

脳卒中・心筋硬塞は基本的病変の終着駅
 脳硬塞や心筋硬塞患者がわれわれ内科医のところに来るのはその発作が起こってからのことである.元来,脳卒中にしろ心筋硬塞にしろ動脈病変と高血圧が基本にあり,両者は互いに影響し合っていて,さらにそれにその他の要因が加わって,終末現象として現われる病気であるから,われわれがみせられた時点ではその病態は多くの場合きわめて危険でありかつ救いがたいものが多い.つまりこれらの基本的病変の終着駅においてわれわれははじめてこれを手がけることになる.したがってその対策は全力投球を必要とし,近代的にはたとえばICUとかCCUといったような特定の設備と人とが用意されることになってきた.これは実地の開業医家では少なくとも現在の健保制度で十分に手が行き届くとは言い難いと思う.
 動脈硬化や高血圧がかなり若年時代からはじまることは周知である.これが歳とともに潜在性に進行し,ある時点ではじめて初期的な臨床変化または軽微な症状を示すものである.この時点では患者は苦痛を訴えないことが多いために,医師が進んで検査する以外には病変を発見することができないことが多い.つまり,一見健康な状態から脳卒中,虚血性心病変の発現まで,病変の進行は連続性であって,どの時点から病気とするか,どうしてこれをとらえるかが問題なのである.ことに慢性疾患においては健康と疾病との間に常にこのような問題が存在する.

全国教室めぐり

若く,活気にあふれた教室—岡山大・第3内科

著者: 太田善介

ページ範囲:P.1585 - P.1585

 岡山大学医学部第3内科学講座は昭和42年に新設され,本年で開講3年になる.開講と同時に大藤教授が初代教授に任命されて現在におよび,その間に参集した教室員は約40名,幹部をのぞくと大部分は昭和41年以降の卒業生であって,いずれも新進気鋭の気に満ちた青年である.したがって教室像は名実ともに若く,活気にあふれている.

診療所訪問

日本初の人工透析クリニック—サテライトセンターの樋口先生を訪ねて

著者: 岩淵勉

ページ範囲:P.1588 - P.1591

 岩淵 まず開設のきっかけといったことから…….

病理夜話

副腎皮質ホルモン

著者: 金子仁

ページ範囲:P.1592 - P.1592

 最近クローズアップされてきた薬に副腎皮質ホルモンがある.通常ステロイドといっているのはこれである.確かに妙な薬で,炎症が押さえられたり,悪性腫瘍にも多少の効果があり,脳水腫,肺線維症,腎炎にも効くというデータもあり,殊に喘息などのアレルギー性病変には卓効がある.ところが使い方を誤るといろいろな副作用を起こして,とりかえしのつかないことにもなりかねない.
 病理解剖をやっている者は,ステロイドのために胃や十二指腸潰瘍ができることを稀ならず経験している.私も悪性腫瘍にステロイドを大量に使い,胃潰瘍が穿孔して,化膿性腹膜炎で死亡した患者を剖検したこともある.

小児心電図講座・6

肺動脈弁狹窄症

著者: 三森重和

ページ範囲:P.1600 - P.1602

症例1
12歳 男
 臨床所見生後7ヵ月で心雑音を指摘された.3歳時,心研受診.その後,外来にて経過観察.11歳時冬,軽度の胸痛を訴えたほか症状はない.心雑音は肺動脈弁口部で猫喘を伴う強い駆出性雑音を聴取,左頸部および背部によく放散する.肺動脈第2音は単一,第4音がある.心音図では収縮期雑音の最強点が収縮後期にある,胸部レントゲンでは心胸郭比55.2%,右房および右室の軽度拡大,肺動脈弓の中等度突出をみる.肺血管陰影はやや減少.心臓カテーテルで右室圧230/0mmHg,肺動脈圧20/10mmHg,心内短絡はない.心臓血管造影で弁口部円蓋形成,著しい弁性狭窄を示す.手術は弁切開術により口径5mmを15mm以上に拡大した.

症例 全身性疾患と眼・4

膠原病の眼症状

著者: 松井瑞夫

ページ範囲:P.1603 - P.1605

 全身結合織の疾患である膠原病のとき,眼組織にも,その病変は波及してくる.そして,これらの眼病変は,眼底病変を含めて,ほとんどのものが,直接生体観察を行なうことができるので,膠原病における病変の病態あるいは発生病理の理解を助けるような知見が臨床的にとらえられるという点で興味がもたれている.ことに,網膜血管造影法である螢光眼底撮影法fluorescein fundus photographyは,本病における網膜病変の発生病理の理解に役立つ貴重な知見を提供している.今回は,この螢光眼底撮影法による最近の知見をもふくめて,眼底病変を中心に,膠原病の眼症状を紹介してみたいと思う.

SMONに併発した急性腎不全の治癒1例

著者: 楠井賢造 ,   金沢秀晃 ,   宮本長平

ページ範囲:P.1606 - P.1608

 前川ら1)がさきに「下痢を前駆症とし比較的良性経過をとった脊髄炎の4症例」と題する報告のなかで,それぞれ1例は悪急性あるいは慢性腎炎の経過中に発病し,うち慢性腎炎例は尿毒症のため死亡したと記載している.その後,腹部症状を伴う脳脊髄炎症(SM-ON)が多くの臨床家から注目されるようになり,本症は腎疾患の経過中に発病し,しばしば尿毒症を起こして死亡することが経験されるに至った.本年4月,第11回日本神経学会における,丹羽ら2)の「急性腎盂炎に続発した腹部症状を伴う脳脊髄炎の1剖検例」の報告および梅原氏ら3)の報告「急性腎不全で死亡せる急性脊髄炎(スモン病?)の2症例」とを併わせ考え,SMONと腎疾患との間になにか発症原因的関係があるのでなかろうかと探索中であるが,たまたま,SMONに併発した急性腎不全の治癒例を経験したので,以下経過を追って報告する.

内科専門医のための診断学・10

感染症—伝染病をのぞく

著者: 真下啓明

ページ範囲:P.1609 - P.1611

I.感染症診断の基本的考え方
 感染症における臨床像は一般的には病原体によって一定の臨床症状を呈することが多い.全身症状とともに局所病変を意味する症状,たとえば呼吸器感染症であればせき,痰,胸痛などである.しかし,他面,ウイルス感染症のあるものは同一病原体でも呼吸器症状を呈することも消化器症状を呈することもあるという場合もある.

臨床家の生化学

アルカリフォスファターゼのアイソザイム

著者: 奥村恂

ページ範囲:P.1612 - P.1615

 血清アルカリフォスファターゼ(AlPase)の測定は,臨床検査の一つとして最も古くから愛用されてきたものである.最近血清中の本酵素の分画を検出して,主にその起源臓器を確かめようとする努力がなされている.この分画が広い意味でのいわゆるisoenzyme(以下アイソザイム)である.本稿ではAlPaseアイソザイム検出法について述べ,各分画の臨床的意義を考えてみたい.

呼吸器臨床懇話会から(その2)

呼吸器疾患とステロイド療法

著者: 長沢誠司 ,   石田尚之 ,   長岡滋 ,   中島重徳 ,   芳賀敏彦 ,   三上理一郎 ,   可部順三郎 ,   吉岡一郎 ,   田中元一 ,   大沢仲昭 ,   古家堯 ,   岡安大仁 ,   宮本昭正

ページ範囲:P.1616 - P.1623

 8月号の「気管支喘息とステロイド」にひきつづき,肺結核,胸膜炎,慢性気管支炎,肺気腫,肺腫瘍などとステロイド投与の適応の問題について.

診療相談室

血圧が正常で浮腫状態の患者に対するサイアザイド系利尿剤の使用の可否は

著者: 増山善明

ページ範囲:P.1627 - P.1627

質問 血圧が正常な患者(例えばネフローゼ)にサイアザイド系利尿剤を使用してもいいか.低血圧症になる恐れはないか. (奈良市 福井 茂)

洋書紹介

—O. Westphal. H. E. Bock & E. Grundmann編—「Current Problems in Immunology」(Bayer Symposium I. '68)

著者: 高月清

ページ範囲:P.1608 - P.1608

西独免疫学研究の現状
 1968年10月西独Cologne近くのGroße Ledderというところで開かれたシンポジウムの記録である.免疫は医学の各分野において問題となる生物学的現象であり,また研究手段としてもますます重視されているが,何人も免疫学のすべてに興味をもつことは実際上はあり得ないのであって本書でも腫瘍免疫と移植免疫の2大トピックはほぼ除外され,immune diseasesが中心になっている.理論篇17,臨床篇16の構成で,参加者はドイツ32,米6,英,スイス,チェコ各1である.
 理論篇では補体,抗体産生,リンパ球などの問題がとりあげられており,補体の結合した細胞に対する単球およびリンパ球の破壊作用(Müller Eberhardほか),補体抑制物質PVA-NA(Lauenstein),免疫グロブリンのアミノ酸配列から見た抗体の多様性に関する選択説的な考え方(Hilschmann)などが注目される.

トピックス

ベーチェット病患者に救いの手を—ベーチェット病患者を救う医師の会

著者: 福山正臣

ページ範囲:P.1622 - P.1623

ベーチェット病患者の数
 さる5月31日,東大眼科学教室でとったベーチェット病受診全国調査が発表された.昨年(44年)1カ年間に,全国眼科学会ならびに眼科医会の会員医療機関を訪れて,ベーチェット病と診断された初診の患者数男女合計2242名,(うち男1417名,女825名,20-40歳台が83.6%).
 もちろん,これは眼に症状のあらわれたもののみであって,内科,皮膚科,婦人科,外科などの未確診段階は含まれない.(荒木誉達博士)

メディチーナ・ジャーナル

第18回日本医学会総会—とくに実地医家のために

著者: 木島昂

ページ範囲:P.1624 - P.1625

 来春4月5日から7日まで3日間,策18回日本医学会総会は東京で開催される.東京が舞台にえらばれたのはこれで通算10回,第15回(昭和34年)からは12年ぶりである.第18回総会のテーマは"医学の進歩と医の倫理"であるが,日本医学会傘下の分科会も今年はすでに62と多岐にわかれ,医学の進歩は昨日の一分科を今日さらに細分化する傾向にある.医学においては"分化と綜合"の側面に倫理のフィード・バックが必要であり,とくに今回のテーマはその意味からも,もっとも時宜を得たものといえよう.またシンボルマークのヒポクラテスの像も,"医学とヒューマニズム"谷川徹三氏の開会特別講演もともすれば人間性を忘れて暴走の進歩をとげる医学への頂門の一針となるであろう.

臨床メモ

病院での小児の病室はどうあるべきか

著者: 松島富之助

ページ範囲:P.1522 - P.1522

 病院における看護でもっとも手をやくのは,慢性疾患で入院している幼児・学童である.安静をとらないばかりか,他の患児へのいたずら,事故など目が放せないからである.
 しかし,逆にいえば,病院における幼児・学童の扱い方がまちがっているのではないか?とも考えられる.心身ともに成長の旺盛なこの年齢では,遊びが発育にとってもっとも大切となる.遊びに夢中になれる環境作りは,病気の安静度との相関において必須でなければならない.欧米の小児病院または小児病棟には,病室はねむる部屋であり,食堂.遊戯室が別に設置されていて,年齢と病気による遊びのスケジュールが作られている.このスケジュールに従って,幼児なら幼児教育の保母,学童には小学校教師の資格のある人が職員に採用されていて,一定時間の遊びの指導や,学校で習っている学課を教わっている.慢性腎炎,ネフローゼ,結核などの慢性疾患にかかってもその年齢に必要な学習や遊びを習得できるので,全快したあと,幼稚園や学校へのリハビリテーションはスムースに行くようになっている.

無症候性蛋白尿

著者: 中田不二男

ページ範囲:P.1575 - P.1575

 外来診療時あるいは健康診断時の検尿で偶然に蛋白尿を発見することは多いものである.昭和39-40年の2年間に本院で健診時検尿を行なった2656例(男子2492例,女子164例)のうちスルフォ法で(+)以上の蛋白尿を認めたのは男子の11%,女子の15%に当たっていた.
 健診で蛋白尿を発見した場合は必ずもう一度検尿をくり返してみる.生理的な一過性の蛋白尿や無害の起立性蛋白尿を除外するためである.持続的な蛋白尿が確実であれば,さらにくわしい腎機能検査を行なう.こうして健診で発見される無症候性蛋白尿を呈する疾患の中で,最も重要なものはいわゆる原発性の慢性糸球体腎炎である.ある患者は健診時に蛋白尿を発見したことに端を発して慢性腎炎として入院,約1年の経過で死に至った.剖検によって亜慢性糸球体腎炎であることを確かめた.慢性糸球体腎炎は元来自覚症状が非常に少ないので,こうした偶然の機会に発見されることが多く,それを考えると「検尿すること」の意義を痛感する.またこの場合,尿蛋白はペーパーテストで簡単に行なえるが,少しめんどうでも尿沈渣をみることが重要であり,私自身もそれを励行している.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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