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雑誌目次

雑誌文献

medicina7巻12号

1970年11月発行

雑誌目次

EDITORIAL

化学療法は適正に

著者: 小酒井望

ページ範囲:P.1667 - P.1667

 このところ日本化学療法学会では,毎年総会や支部会で幾種類かの新しい抗生物質の基礎および臨床実験のシンポジウムが行なわれ,それら新抗生物質のほとんどが1,2年の間に市販されるようになっている.従来と化学構造も抗菌スペクトルも全く異なったものもあれば,化学構造は類似しているが抗菌スペクトルの相違するもの,化学構造も抗菌スペクトルも似ているが抗菌力がより強いとか,血中濃度がより高くなるといった特徴をもつものなど種々様々である.
 ともかく私どもは,多数の化学療法剤を武器として細菌感染症に立ち向かうことができるわけである.たしかに耐性菌もふえつつある.しかしすべての化学療法剤に耐性という菌はまずない.さがせばどれかの薬剤が有効である.一つの武器ですべての細菌感染症に立ち向かえるのならば簡単であるが,細菌感染症の種類によって武器を変えなければならないのであるからめんどうである.

今月の主題

内科感染症と化学療法剤の選び方

著者: 三木文雄

ページ範囲:P.1668 - P.1673

 感染症に対して卓効を奏する化学療法剤も,誤って使用されると副作用が現われたり,耐性菌が増加して効果が発揮されずに終わる.実地診療に即した化学療法剤の選び方と投与法の実際について.

(座談会)抗生剤療法

著者: 上田泰 ,   深谷一太 ,   富岡一 ,   斎藤篤 ,   名出頼男

ページ範囲:P.1674 - P.1683

 抗生剤が広く使われるようになって,すでに久しいが,感染症だからといって,ただばくぜんと抗生剤を使っていたのではなかなか治せない感染症が多くなってきた.内科感染症に対する抗生剤選択のコツ,感受性,臓器移行性の問題など.

日常検査とその限界

RA・LEテスト

著者: 高野喜久雄

ページ範囲:P.1640 - P.1641

受身凝集反応とは
 カオリン,ベントナイトや人工樹脂の1つであるポリスチレンラテックス(以下ラテックスと略)などの人工粒子や赤血球の表面に抗原を吸着させ,抗体と反応させると凝集が起こる.この凝集は抗原性のない粒子が核となり,抗原抗体の複合体の大きな集塊ができるため肉眼で容易に認められる.現在臨床検査として利用されている方法はラテックスを粒子の核として抗原を吸着させたもので,リウマチ因子,抗核タンパク抗体,甲状腺自己抗体,胎盤ゴナドトロピン(妊娠反応)などの検出に用いられている.

診療手技

小腸生検

著者: 山岸悟郎

ページ範囲:P.1642 - P.1643

 小腸の生検は盲目的に行なう吸引式生検と直視下に行なう鉗子生検とがある.直視下の鉗子生検は最近開発された十二指腸のファイバースコープを用いて行なうもので,生検の方法は胃ファイバースコープを用いて行なう胃生検と類似する.ここでは従来より実施されている盲目式吸引式生検について,わが国で広く用いられている東北大式小腸生検器具を例として説明する.

救急診療

気道・食道の異物

著者: 粟田口省吾

ページ範囲:P.1644 - P.1646

 気道や食道に異物が誤って入ったときには,緊急処置を乞うて,耳鼻咽喉科や気管食道科のみならず,一般内科にも患者が訪れることが少なくない.したがって,気道・食道の異物症の概略,とくに特異症状,臨床所見,緊急処置,あるいは予後などについて一応心得ておく必要がある.

統計

英国の癌の登録から

著者: 小畑美知夫

ページ範囲:P.1648 - P.1648

 今回は英国の癌登録状況についてみたいと思います.
 英国では1962年からイングランド・ウェールズの全癌の登録を実施しており,特殊な癌については1960年から登録がなされ,その追跡調査も行なわれてきております.

略語の解説 35

TEM-TP

著者: 阿部正和

ページ範囲:P.1649 - P.1649

TEM
triethylene melamine:トリエチレンメラミン  抗白血病薬の一種.現在あまり使用されていない.

日本人の病気

高血圧

著者: 増山善明

ページ範囲:P.1650 - P.1652

疫学的事項
 わが国では脳卒中が死因の第1位をしめており,高血圧は脳卒中発生の基礎となる状態として重要である.昭和37年に行なわれた成人病基礎調査にて,40歳以上5912名を対象とした成績でも1),最大血圧150mmHg以上でかつ最小血圧が90mmHg以上のものは26%ある(表1).米国では,1962年のNational Health Surveyによれば,WHOの最大血圧160mmHg以上で,または最小血圧95mmHg以上の基準でとって,成人人口の約20%が高血圧をもつとされている2)
 高血圧とくに本態性高血圧では,素因的要素,たとえば遺伝上,両親・近親・兄弟が高血圧であるものからより多く発生することや,白人より黒人で高血圧の頻度も高く,しばしば重症であることなどは,以前から注目されているが,わが国の高血圧は,とくに脳卒中の多発との関連に注意がはらわれてきた.

カラーグラフ

弾力線維性仮性黄色腫の眼底所見

著者: 松井瑞夫

ページ範囲:P.1656 - P.1657

 弾力線維性黄色腫Pseudoxanthoma elasticumの症例の眼底に,網膜色素線条retinal angioid streaksがみられることは,広く知られているが,近時,この色素線条といっしょに,あるいは色素線条と無関係に,網膜にび漫性の顆粒状色素変化が出現することが注目されている.これは,欧米ではmottled fundusoculi,peuo d'orange fundusなどと呼ばれているが,本邦では清水が梨子地眼底という病名を提唱した.今回は,弾力線維性仮性黄色腫の皮膚所見,網膜色素線条症および梨子地眼底のカラー写真を供覧する.
(症例の項p.89参照のこと)

グラフ

目でみる抗菌作用—抗生物質による細菌のCell wall合成阻害

著者: 中澤昭三 ,   西野武志

ページ範囲:P.1661 - P.1666

 ペニシリン系あるいはセファロスポリン系抗生物質の作用機序は細菌の細胞壁Cell wallの合成阻害であることが生化学的に知られている.今回,わたくしどもは経口合成セファロスポリン系のセファレキシンCephalexin(CEX)を用いてブドウ球菌,大腸菌などのCell wall合成阻害による抗菌作用の仕組を位相差顕微鏡ならびに超薄切片標本による電子顕微鏡的観察を行なったのでここに紹介する.

診断のポイント

片麻痺の合併症—発病前・発病直後・経過中

著者: 横山巌

ページ範囲:P.1684 - P.1686

 片麻痺の合併症は,a)発病前から有している合併症,b)発病直後に出現する合併症,c)片麻痺の経過中に出現する合併症(継発症)の3つに大別される.

マイコプラスマ肺炎

著者: 原耕平

ページ範囲:P.1687 - P.1690

マイコプラスマとは
 マイコプラスマ肺炎の,「マイコプラスマ」という言葉をはじめてお聞きのかたも多かろう.従来,原発性異型肺炎の病原体とされたEaton agentが,1898年Nocardらの分類したマイコプラスマ属の1つに属することがその後の研究によってわかり,この病原体(My. pneumoniae)によって惹起される肺炎が,「マイコプラスマ肺炎」と呼称されるようになったのである.
 もちろん,人間から分離されるマイコプラスマには,現在6つのものが知られている(My. pneumoniae,orale,salivarium,hominis,fermentans,T-strain).口腔内から分離されるものは前3者が多く,その中でも病原性を有して,肺炎をはじめ気管支炎,感冒様症状を惹起せしめるのはMy. pneumoniaeのみとされていて,その他のマイコプラスマ(orale,salivarium)については病原性はないとする意見のものが多い.My. hominis,fermentansおよびT-strainは,主として泌尿器系の病変をおこす.

CPKの臨床的意義

著者: 後藤幾生

ページ範囲:P.1691 - P.1694

 CPKとは
 Creatine phosphokinase(CPK)は,
 ATP+クレアチン(Creatine)⇄ADP+クレアチン燐酸(Creatine phosphate)のように,クレアチンとATPよりクレアチン燐酸とADPを生成する反応,あるいはその逆の反応を可逆的に触媒する分子量81,000の酵素である.本酵素は骨格筋に最も多く,全身のCPKの約96%が含まれており,次いで心筋,脳,平滑筋などに含まれている.その他,肝・腎・赤血球にごく少量含まれているが,臨床的には無視しうる程度である.
 このCPKの触媒によって生成あるいは分解されるクレアチン燐酸は,筋肉においてATPとともに高エネルギー貯蔵体として働いている.すなわち,筋肉の収縮時にはATP,あるいはクレアチン燐酸の高エネルギー燐酸結合によって生ずるエネルギーが利用され,静止時には前記反応が右へ進み,ATPの筋への供給を容易にし,クレアチン燐酸としてエネルギーを貯蔵する.このようにCPKは身体各部のエネルギー代謝に重要な役目を果たしている.

治療のポイント

ペニシリン系抗生剤の現状と使い分け

著者: 山作房之輔

ページ範囲:P.1695 - P.1697

 広域合成Penicillin(PC)の出現以来PC-Gに代表されていた従来の"ペニシリン"の概念は一変され,ほとんど大部分の感染症がPC系抗生剤のみでも治療しうるようになった.しかし,PC系抗生剤に属する個々のPCには抗菌スペクトル,抗菌力においてそれぞれ長所と短所があり,それぞれのPCの特徴を理解していないと幾種類のPCを揃え,実際の患者に対してどのPCを用いたらよいのか混乱を起こしかねない.

慢性肺気腫の管理—日常生活の指導とリハビリテーション

著者: 田村昌士

ページ範囲:P.1698 - P.1701

治療の根本
 慢性肺気腫は形態学的には非可逆的病変を示すが,他方,機能的には可逆的要素もあるので,その可逆的要素をできるだけ排除・軽減して,病勢の進行を阻止することが治療の根本である.一般に慢性肺気腫の治療は,急性増悪期における入院治療に主眼をおくため,かえって外来における治療および生活指導がないがしろにされる傾向が強い.しかし患者にとっては,家庭における日常活動および社会活動の期間が入院期間より長いため,その期間における生活態度が,この疾患の予後に大きな影響を与えることに注目しなければならない.そこで慢性肺気腫に対する一般的内科治療の詳細は成書にゆずり,本稿では患者の管理に関連して,家庭における日常生活の指導およびリハビリテーションを中心に述べる.

再発をくりかえす扁桃炎

著者: 猪初男

ページ範囲:P.1702 - P.1704

 再発をくりかえす扁桃炎を習慣性扁桃炎,習慣性アンギーナともいうが,本来は慢性扁桃炎の急性増悪と考えるべきもので,身体の抵抗力が弱まったときとか,なんらかの刺激(気温,気湿の変化,鼻,副鼻腔炎の影響,その他)が加わったときに再び活動する可能性をもっているものをいう.このように常に慢性の炎症病巣を扁桃内に持っていて,しかもこれが時々急性増悪をくりかえすような場合は,種々の全身疾患をひきおこすおそれがあることは周知の事実である.このような扁桃の局所性慢性炎症巣と全身病との関係は遷延感作あるいは病巣感染の見地から種々研究されているが,その詳細についてはここでは述べないことにする.

Leading Article

原爆被爆者の予後管理

著者: 安日晋

ページ範囲:P.1705 - P.1706

 「原爆後遺症」といわれる疾病状態は,臨床医学の広範な専門分野に分布している上,頻度の差はあれ,非被爆者においてもおこりうるため,原爆後遺症患者のそれぞれの疾病に対して,医学的アフターケアを論じる事は無意味と思われるので,ここでは,原爆被爆者の予後管理に主題をおいて述べてみる.

全国教室めぐり

寝食を忘れて水俣病と取り組む—熊本大・第1内科

著者: 副島林造

ページ範囲:P.1707 - P.1707

 熊本大学第1内科学教室は,大正9年に創設され本年で満50周年を迎えたことになる.初代酒井保教授,次いで長沢伝六教授,さらに大正15年明石真隆教授をお迎えして教室の確固たる基礎が築かれたのである.昭和12年明石真隆教授御退職後,美甘義夫教授,桂重鴻教授,勝木司馬之助教授,河盛勇造教授と斯界の第1人者を教授として迎え,昭和42年河盛勇造教授の後任として徳臣晴比古教授が第8代教授として就任され,今日に及んでいる.

海外だより

チリーの胃癌について

著者: 高木國夫

ページ範囲:P.1708 - P.1710

 1966年に「第3回世界消化器病学会」および「第1回世界内視鏡学会」が日本で開かれて,わが国の胃診断学が世界的にクローズアップされた.日本における胃診断学を世界的に広げるために,早期胃癌研究会の100回記念事業として発案され,海外技術協力事業団(OTCA)が主催し,早期胃癌検診協会が実務を担当して,「第1回海外医師早期胃癌診断講習会」が1969年3月に開かれた1).この講習会に東南アジアを主とした医師とともに,遠く南米チリーからも1名参加した.1970年の第2回講習会にも,チリーから2名の医師が参加した.また1969年に「国際放射線学会」が同じく日本で開かれ,チリーから来日した医師が胃のX線診断学を学び,日本における胃の診断学,とくに早期胃癌の診断の実情がチリーに知られるようになった.かかる最近の事情にもとづいて,チリー消化器病学会が主催して「胃癌会議」が1970年4月20日から25日にかけて,チリーの首都Santiagoと港で有名なValparaiso(Santiagoから180km離れた)で開かれた.私は,チリー消化器病学会の招請により,1970年4月16日から4月30日までの2週間にわたり,チリー消化器病学会主催「胃癌会議」に出席し,チリーにおける胃癌の診断・治療についてチリーの医師と懇談した.

診療所訪問

寄生虫・地域住民・文化—岩手県水沢病院長中島先生を訪ねて

著者:

ページ範囲:P.1711 - P.1713

 岩手県南,東北本線の沿線に人口5万人足らずの水沢市がある.その昔,あしの茂る湿地帯であったところから「水沢」の名が生じたという.この何となく潤沢な響きを感ずる「みずさわ」に,寄生虫対策を地域医療の一環として熱心に推進している医師がおられるということを聞き,7月上旬のある日,私は水沢駅に降り立った.

病理夜話

ブレオマイシン

著者: 金子仁

ページ範囲:P.1714 - P.1714

 人類最後の敵といわれている悪性腫瘍ことに癌に対し,今まで医学者ばかりでなく,多数の学者がその治療に関して研究し続けてきた.しかし依然として,早期発見によりその部を摘出する以外に完治療法はなかった.
 長い間,病理解剖をやっていると,癌の恐ろしさが身にしみる.この間も,7年前に胃癌で胃摘出した患者が再発して亡くなった例を剖検したが,残存胃が全く癌に侵され,デコボコになり,さらに噴門部より食道にかけて,ジリジリと癌が,一斉進撃を開始して,食道の中頃まで癌組織に変化している.これが肉眼でハッキリ分るのである.7年前に手術をした外科医に聞いてみたら,「手術時には幽門部に小さい癌があったのみで,少なくとも私は全部切除したと思っておりました.残存胃も食道も全く肉眼的にはきれいだったのです」という.

症例 全身性疾患と眼・5

弾力線維性仮性黄色腫の眼底所見

著者: 松井瑞夫

ページ範囲:P.1719 - P.1721

 弾力線維性仮性黄色腫Pseudoxanthoma elasticumに網膜色素線条retinalangioid streaksがみられることは,広く知られているが,近時,色素線条といっしょに,あるいはこれと無関係に,網膜にびまん性の顆粒状色素変化が出現することが注目されている.この眼底病変は,欧米ではmottled fundusoculi,peuo' orange fundusなどとよばれているが,本邦では清水が梨子地状眼底という病名を提唱している.
 今回は,梨子地状眼底を伴った弾力線維性仮性黄色腫の1症例を紹介し,併わせて本症の眼底所見全般についても紹介してみたいと思う.

高安氏動脈炎(脈なし病)

著者: 山根暁一

ページ範囲:P.1722 - P.1724

 上肢で脈拍の触れない疾患に対して,脈なし病,高安氏動脈炎(Takayasu's Arteritisin Young female),大動脈弓症候群といろいろの病名ないしは症候名がつけられており,これらが必ずしも同一疾患を示しているものではない.1908年高安右人が「奇異なる網膜中心血管変化の1例」を報告し,この時大西が同様眼底所見を有する患者で橈骨動脈の触知しなかったことを述べている.その後1948年清水・佐野は今までの症例に自験例を加えた30例につき「脈なし病」としてその病型の確立につとめた.これに対してRoss・McKusickは1953年大動脈弓から分枝する動脈の脈拍の減弱ないしは消失するものに対して大動脈弓症候群(Aortic arch syndrome)として発表している.しかしこの大動脈弓症候群は主として,その原因を梅毒性動脈炎,動脈瘤,または先天性血管奇型とか胸部外傷に続発しておこった動脈硬化性変化などにより,分枝血管の完全,または不完全閉塞を来たすものを主としてとりあげ,その中でまた一部に日本で好発しているものにIdiopathicArteritisとして述べたにすぎなかった.

小児心電図講座・7

ファロー四徴症

著者: 三森重和

ページ範囲:P.1725 - P.1727

症例1
4歳5カ月男(心電図3歳時)
臨床所見 生後1ヵ月健診で心雑音を指摘され,生後3ヵ月で心研を受診,心室中隔欠損症兼肺動脈狭窄症と診断された.歩行開始1歳2ヵ月.2歳頃より歩くとときどきうずくまる.4歳頃より100m位の歩行でチアノーゼ出現し,蹲踞位をとる.入院時,四肢のチアノーゼや鼓桴状指を認めない.心雑音は胸骨左縁で全収縮期雑音Levine 3度聴取,肺動脈第2音は単一,胸部レントゲンで心胸郭比54%,心尖は挙上し,肺血管陰影は減少している.心臓血管造影法では大動脈と肺動脈が同時に造影され,弁性の漏斗部狭窄が認められた.手術は漏斗部狭窄を切除,膜様部2cmの心室中隔欠損孔を閉鎖した.肺動脈弁は3弁で弁狭窄はなかった.

内科専門医のための診断学・11

甲状腺機能低下症の臨床診断

著者: 尾形悦郎

ページ範囲:P.1729 - P.1735

 内分泌疾患の診断を正しいルートにのせるために
 内分泌疾患は,一般の内科医から敬遠される傾向にあるように思える.それというのも,成書の疾患記載の大部分が病態生理学的事項で占められ,また,その診断も,血中・尿中のホルモンあるいはその代謝物の濃度測定,内分泌腺からのホルモン分泌量の測定,さらに各種中間代謝物の定性・定量によることが多いためであろう.これらの検査は疾患の確定診断の方法としては,確かに信頼性の最も高いものである.しかし,内分泌疾患でも,注意して患者の診察にあたれば,その大部分のものは外来オフィスのレベルでも,かなり正確に推定診断がつけられるものである.どの疾患でもそうであろうが,特に内分泌疾患の場合,実際の患者について診断がつけられていく過程のうちで,大勢の種々雑多な疾患の患者の中から,ある特定の内分泌疾患の推定診断を下す過程が,最も大切で,しかも一番むずかしい.ある疾患さえ疑われれば,施設と人手とを駆使して診断を確定する作業は,むしろ容易なことである.さらに,内分泌機能異常は,現在では,その大部分が,完治はできないまでも,ほぼコントロールすることが可能となった.したがって,第一線の内科医がこれら疾患の患者を正しい診断ルートにのせることの意義は,きわめて大きいといえる.今回ここでとりあげる甲状腺機能低下症も,その例外ではない.

臨床家の化学療法学

抗生物質の生体内代謝

著者: 清水喜八郎

ページ範囲:P.1736 - P.1740

 近年,生体内における薬剤の吸収・分布・代謝・排泄などの動態を考えて,薬剤を選択・使用する必要性が強調されてきた.そこで抗生物質の生体内代謝について,自験例をもとに現在までに知られていることを解説していきたい.

他科との話合い

内科医のための骨疾患へのアプローチ

著者: 永野柾巨 ,   佐々木智也

ページ範囲:P.1742 - P.1749

 頸や腰の痛みを訴えて内科を訪れる患者は多いが,内科医は骨疾患にどこまでアプローチできるものであろうか.診察の基本,骨X線読影のコツなど,整形外科と内科の立場から.

診療相談室

心筋硬塞におけるショック時の血圧下降に対する対策

著者: 三浦勇

ページ範囲:P.1751 - P.1751

質問 心筋硬塞などにおけるショック時の血圧下降に対して,ノルアドレナリンなどの昇圧剤は使用すべきでないといわれていますが,その根拠と昇圧対策は
(茨城県・I生)

話題

—局所療法と全身療法—第18回日本化学療法学会総会から(6月5-7日・岡山)

著者: 三国政吉

ページ範囲:P.1728 - P.1728

 化学療法の適確な効果を期待するためには投与薬剤の病巣内移行濃度が,局所起炎菌の感受性を上まわることが大切な要素の1つである.全身療法におけるこの問題については,昨年度大阪で開催された第17回化学療法学会総会で関西医大内科大久保滉教授の司会のもとにシンポジウム「化学療法剤の体液中濃度と意義」にて詳細に検討された.今回,岡山で谷奥会長の下に開催された第18回化学療法学会総会においては「局所療法と全身療法」というテーマで,筆者の司会で主として局所療法の面から検討された.
 抗生物質は今でも高価であるがその出現の当初には,はなはだしく高価のため,主として経済的の理由から少量で足りる局所療法が愛用された.しかし今日においては,このため局所療法が優先するという考え方は,もはや必要でなく効果第一に考うべき時代にいたっている.

臨床メモ

乳幼児を冬にきたえる—夏にきたえると夏バテをきたす

著者: 松島富之助

ページ範囲:P.1735 - P.1735

 かぜをひきやすい子や,すぐ扁桃炎をおこす子をどのように予防させていくか? について,わが国では今まで夏にきたえるという人が多くみられた.しかし日本の夏は北海道以外では熱帯地方であり,しかもむし暑いので,体力を消耗しやすい点をもっと考えてみる必要がある.
 万国博に来ているベトナムやタイのホステスがNHK TVでのインタビューで,サイゴンや,バンコックよりも,大阪の8月は暑いと苦情をいっていたが,気温よりも湿度の高さが,不快感を増大させているのである.乳児や幼児は,夏は早寝早起を励行させ,ひる寝をとらせ,むりな旅行や日帰り旅行を避けるように指導すべきである.

洋書紹介

Veillon Nobel Medical Dictionary(5th Edition)

著者: 菅邦夫

ページ範囲:P.1673 - P.1673

急速に増えつつある用語を豊富に網羅
 米・独・仏3ヵ国語の対照医語辞典である.第5版として1969年にスイスから刊行された.1950年の初版以来1964年第4版までは,E. Veillonが編集責任者であったが,第5版からはA. Nobelが編集責任者となり,それとともに内容が一新された.
 第4版まではA,B,Cの3部から成り,それぞれ同一語義の用語が独‐英‐仏,英‐独‐仏,仏‐独‐英に並列記載されていた.したがってAは独語,Bは英語,Cは仏語から,他の2国語による表現を探がす目的に編纂されていた.当然A,B,Cはほぼ同量の内容をもち,相互の間に交叉と重複があった.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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