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雑誌目次

雑誌文献

medicina7巻13号

1970年12月発行

雑誌目次

Editorial

日本の脳血管障害の移り変わり

著者: 相澤豊三

ページ範囲:P.1791 - P.1791

 脳血管障害はわが国において,いまだに総死亡数の中で第1位を占め,この種疾患の解決は古くしてなお新しい重大問題として,今なおわれわれの前に山のごとく立ちふさがっているが,過去を顧みると,その概念においても,また疫学の面,診断の面,治療の面においても大きな移り変わりのあったことがわかる.次のような項目に分けて,その姿をながめることとしよう.

今月の主題

脳血管不全

著者: 後藤文男

ページ範囲:P.1792 - P.1797

 脳血管不全という考え方は,疾患単位というよりも各種の病態を理解する上で,きわめて重要な病態生理学的機序である.本稿では脳血管不全の概念を,関連する諸疾患や諸病態と対比しながら整理してみた.

(座談会)脳卒中—発作の予測と発作直後の処置

著者: 亀山正邦 ,   美原博 ,   木村武 ,   里吉営二郎

ページ範囲:P.1798 - P.1807

 脳卒中とひと言でいっても,その原因はさまざまであり,卒中発作の予測もそれぞれに応じて考える必要がある.また発作直後についても,それぞれに適した処置があり,これを誤ると予後に重大な結果をもたらす.

日常検査とその限界

CRPと赤沈値

著者: 河野均也

ページ範囲:P.1764 - P.1765

CRP(C-反応性蛋白)
 1.CRPの一般的意義
 肺炎球菌より抽出されたC-多糖体を肺炎患者血清に混和すると沈降反応がおこることを発見したTillet & Francisの報告以来,CRPの臨床検査のうえに占める重要性は,本反応が肺炎患者のみでなく,非常に広範囲な炎症性疾患(たとえば諸種急性感染症,リウマチ性疾患など)や組織崩壊性疾患(たとえば,心筋硬塞,悪性腫瘍など),外科手術後,分娩などで陽性を示すことが知られ,疾患の活動状態,重症度,治療効果の判定という観点から,臨床的に高く評価されている.すなわち,CRPは正常人血漿中には証明されない蛋白であり,炎症性疾患や組織崩壊性疾患に際してすみやかに出現する急性相反応物質(acute phase reactants)の1つとして,電気泳動的に証明されるα-グロブリン分画の高値とともに,疾患の活動状態を知る検査法として重要な意義がある.
 さらに,このCRPはα-グロブリン分画の増減や,赤沈値の変動に比し,異常値の出現および正常値への復帰がすみやかであること,および検査法自体が比較的手軽に行なえるものであることなどから,疾患の鑑別診断,経過観察および治療効果の判定に有利な手段として賞用されている.しかしながらCRPはある特定の疾患に特異的な反応ではなく,赤沈値とともに,病態を把握するためのスクリーニングテストとして有用なものといえよう.

診療手技

直腸診のコツ

著者: 佐分利六郎

ページ範囲:P.1766 - P.1767

 肛門から12-15cmほどが直腸に属し,消化管としても疾患の多発する所であり,排便作用に関係するため患者の苦痛も独特なものがある.題は直腸診であるが,臨床的に肛門から診断を下しうる部位の疾患の診断と考えて述べる.

救急診療

乳幼児の薬物誤飲

著者: 中條俊夫

ページ範囲:P.1768 - P.1771

 文明が進むにつれ,家庭の毒物の数も増加し,小児の毒物・薬物誤飲は増加する傾向がある.1歳より3歳頃までの幼児は好奇心が強く何でも口に入れ,一回口にしたら飲み込んでしまうものであり,特に中毒が多い.小児の薬物中毒は人災であり,親および医師の不注意でおこるものである.小児は,手の届くものは必ず口にすると考えてよい.化粧品,洗剤など容器はきれいに,医薬品は甘く飲みやすくなり,また,団地生活で小児から目を放しやすくなったので誤飲の機会も増加している.親は毒物を小児から遠ざけ,医師は一度に多量の投薬をするさい,親に十分注意する必要がある.

略語の解説 36

TPHA-TTP

著者: 阿部正和

ページ範囲:P.1773 - P.1773

TPHA
 treponema pallidum hemagglutination:梅毒感作血球凝集反応 被検血清をあらかじめsorbentで非特異的抗体を取り除いた後,梅毒トレポネーマを吸着させたヒツジ赤血球浮遊液を加え,受身赤血球凝集反応として観察する方法.わが国の富沢らによって開発されたもので,操作が簡単,成績の判定が容易,しかも特異性がかなり高い方法であるため,将来日常の臨床検査として有望視されている.

統計

喫煙に関するWHO事務局長報告より(その1)

著者: 小畑美知夫

ページ範囲:P.1774 - P.1774

 1970年5月1日,WHO(世界保健機構)は「喫煙と健康」に関する報告を提出しました.この報告書は英国のDr. FletcherとアメリカのDr. Hornの2人の顧問によって作成されております.たばこの害については昔から多くのことが語られておりますが,今回の報告書はそれらの点についてまとめあげたものといえます.

日本人の病気

脳卒中

著者: 広田安夫

ページ範囲:P.1776 - P.1777

変わった脳出血対脳硬塞の比率
 日本人の脳卒中—この話題の1焦点は,脳出血と脳血栓症の頻度であろう.従来,世界の国々の中でも多発で知られたわが国の脳卒中の特色は,脳出血の圧倒的高頻度であるといわれた.事実,昭和26年の死亡統計では脳出血対脳硬塞(血栓+塞栓)の比率は実に29対1であった.しかしこの比率はその後,急速に減じ,昭和30年頃には12対1,昭和40年頃には3.8対1と著しい変化を示している.これが主として死亡診断書の死因としての脳硬塞の著増によることを既に指摘しておいたが(図1),この傾向は社会的経済的にみて最も活動的な中年期(30-59歳)の死亡率でも同様である.むしろ脳出血の好発年齢である中年期の男女で明らかに脳出血の減少と脳硬塞の増加が認められた.次に,剖検輯報に報告された全国各地の中年期男女の剖検例でも,昭和33年以来主病変としての脳硬塞の頻度は男子でしだいに増加している(図2).
 中年期の,ことに男子の死亡統計,剖検記録にみられる脳硬塞あるいは脳血栓の最近の増加傾向がなにを意味するか,診断手技の進歩,脳卒中一脳出血という既念の変化,生活様式・環境の変化,食餌内容の変化,降圧剤の普及等々多数の因子の影響を考えなければならない問題であるが,詳細は今後の検討に待たねばならない.

カラーグラフ

乳頭浮腫

著者: 松井瑞夫

ページ範囲:P.1780 - P.1781

 乳頭浮腫あるいはうっ血乳頭という眼底所見は,いろいろな全身疾患において,予後不良を告げる所見として注意がはらわれている.全身疾患症例の眼底検査の目的が,うつ血乳頭の有無を調べることにあることがきわめて多い.今回は,このうっ血乳頭という眼底所見をとりあげ,典型例,鑑別を要する所見,続発性視神経萎縮,Foster-Kennedy症候群の眼底写真を供覧する.なお,症例の項(本文89ページ)に,検眼鏡による診断方法,原因などの臨床的事項について解説が述べてあるので,ご参照いただきたい.

グラフ

心臓・血管の石灰沈着像

著者: 五十嵐正男 ,   野辺地篤郎

ページ範囲:P.1785 - P.1790

 胸部や腹部の単純X線写真をみていると,心臓や大血管に石灰沈着がみられることがある.これらの石灰沈着はけっして正常の心臓や血管にはおきてこない.大部分は動脈硬化性変化をおこした場所に生じてくるのである.
 大血管に石灰沈着がみられるばあいは,動脈硬化の進行した大動脈,動脈瘤,梅毒性大動脈炎,器質化した壁在性血栓などである.

診断のポイント

心窩部痛

著者: 五十嵐正男

ページ範囲:P.1808 - P.1811

 心窩部痛を訴えて外来を訪れる患者は非常に多く,腹痛患者の約70%は心窩部痛を訴えるといわれている.
 この心窩部痛をきたす原因には非常に多くのものがあり,緊急に外科手術を要するものから放置しておいてよいものまである.

尿沈渣からわかること

著者: 冨田重良

ページ範囲:P.1812 - P.1814

尿沈渣鏡検 のすすめ
 最近,中央検査室の整備,臨床検査の発展につれて,医師自身による尿沈渣の鏡検はなおざりにされる傾向があるようである.確かに尿沈渣鏡検の数量的精度は他の分析的諸検査に比し著しく劣っており,また形態学的検査であるからその判定には多少の知識熟練も必要である.しかし尿沈渣の成分そのものは腎・尿路系組織より尿中に排泄されたものであって,腎・尿路系病変部の直接の情報の担い手であり,その鏡検により他の手段では得られない貴重な情報が得られるはずである.しかも医師自身が鏡検をするならば,その場で結果がわかり,ただちに必要な処置をとりうる便利さもある.

Arteriosclerotic Parkinsonism—概念への一考察

著者: 荒木淑郎

ページ範囲:P.1815 - P.1818

脳動脈硬化症はParkinsonismの原因か
 多くの一般内科学および神経学の教科書をみると,脳動脈硬化症は,parkinsonismの重要な原因の1つであると記載されている.そして分類では,症候性parkinso-nismのなかに含まれている.
 1.idiopathic paralysis agitans

治療のポイント

めまいを訴える高血圧患者

著者: 額田忠篤

ページ範囲:P.1819 - P.1822

 高血圧患者で,めまい(眩暈)を訴える場合は,日常の診療においてしばしば遭遇するところである.めまいを主訴として受診して,高血圧症に起因するものであることが指摘される場合もある.高血圧症の患者でめまいを訴える場合,高血圧の病因に起因してめまいが現われていると思われる場合が大多数であるが,脳腫瘍,癌,中毒症(公害を含む)など,高血圧とは無関係な病因によって,めまいを訴えてくることもあるので注意を要する.

胃潰瘍の手術適応—内科医の立場から

著者: 和田武雄

ページ範囲:P.1823 - P.1825

 胃潰瘍の発生頻度はいまだに本邦では欧米の例よりも比較的高率に認められるが,このことから胃癌との関係が当然注目され,それだけに手術適応の決定についても内科側においては注意が必要であるとされていた.実際問題としては,胃潰瘍の経過観察が詳細に行なわれるようになり,一方ではまた早期胃癌の症例が多数に発見されるに伴って,両者の関係は当初危惧されていたほどには密接なものでないことがしだいに明らかになってきた.それとともに,胃潰瘍は一般にきわめて治癒しやすく,また再発しやすい性質のものであることが再認識され,その治療をめぐる論議は再び内科的にという声が高まりつつあるようでもあるが,むろん今もって注目課題の一つであることは変わらない.
 これを手術適応面にしぼって考える場合には,まず本症の予後がきわめて良好であり,その加療当初における内科的治療の基本方針を誤らなければ,個々の例についての細目はむろん万別であるとしても,従来ほどには手術を急ぐべきものではないことを強調したいし,それには手術後にしばしば見られるダンピング症候群や癒着障害などを数えあげれば,いっそう考慮の余地があることを指摘したい.しかし同時に内科治療に拘泥するのあまり,手術適期を失してその予後を悪化せしめる責任についての再反省も忘れてはなるまい.

再発をくりかえす口内炎

著者: 上野正

ページ範囲:P.1826 - P.1828

対象となる口内炎
 口腔粘膜の炎症性疾患が歯肉,舌あるいは口唇の粘膜に限局してあるときは,歯肉炎,舌炎あるいは口唇炎と呼ばれ,それ以外の部位の粘膜の炎症が口内炎とされることが多い.たしかに歯肉辺縁にのみ限局しておこる歯肉炎(たとえば単純性歯肉炎)もあるが,歯肉を含めて口腔粘膜の各部に炎症をみる疾患もあるし,また悪性貧血に伴う慢性舌炎でも一般に他の口腔粘膜は菲薄萎縮性で,いわゆる萎縮性口内炎と呼ぶにふさわしい状態のことが多いなどの点から,ここでは口内炎を口腔粘膜の炎症性疾患として取り扱いたい.
 また再発についても,臨床的に完全に治癒した状態の休止期をもつもの(たとえば再発性アフタ)と,他方,他覚的に軽微な慢性炎が存在しているが,自覚症状が感ぜられず,ときに炎症が再燃して疼痛などの炎症症状が顕著となって,患者は再発と訴えるもの(たとえば口腔の扁平苔癬など)もある.また孤立した小潰瘍を主徴とするアフタは口内炎と区別されることもあるが,ここではそれらも含めて述べたい.

Leading Article

日常検査の限界

著者: 小酒井望

ページ範囲:P.1829 - P.1830

 病院の中央検査室や臨床検査センターで行なわれる臨床検査の種目の数は年々増加しつつある.そしてこれら検査施設での検査件数も一様に増加の一途をたどっている.患者1人当たりの検査件数も当然増加しているとみてよい.多種類の検査を行なうことによって診療内容が向上することは当然で,患者の方からも検査を希望し,検査を受けることによって満足する傾向も出ている.しかし臨床検査をたくさんやれば,それだけで診断がつき,良い治療ができるというわけではない.Laboratory diagnosisとPhysical diagnosisが相まって,はじめて良い診療ができることは今さらいうまでもないことである.
 ところでどの臨床検査でも,その検査で知りうる限界がある.日常しばしば使用される臨床検査をとりあげ,その「限界」を今年1年間本誌で連載した.この連載のまとめとして,日常検査の限界をふり返ってみたいと思う.

全国教室めぐり

進展飛躍期から円熟期へ—鳥取大・第2内科

著者: 福本四郎 ,   植木寿一

ページ範囲:P.1831 - P.1831

 鳥取大学医学部第2内科学教室は昭和22年6月に開講され,初代石原国教授が赴任されて以来23年になる.その間200名近くの諸兄が輩出し,山陰地方をはじめ全国各地に活躍している.

トピックス

表彰に輝く115名—第23回・日医設立記念医学大会

著者: 木島昂

ページ範囲:P.1832 - P.1833

 秋,深し,映えある講堂には毎年きまって菊花の飾りつけ.恒例,11月1日の日医設立記念医学大会はまた,秋晴天にも恵まれることが多い.今年は,前橋市の群馬メディカルセンターで開催されたが,被表彰者の数も年ごとに増して今年は115名,医学の進歩と,地域医療の展開の成果が如実に示された1日だった.

診療所訪問

大病院のもつ専門性と家庭医のもつきめ細かさ—東京アレルギークリニック院長 杉田和春先生を訪ねて

著者: 杉田和春

ページ範囲:P.1834 - P.1835

開設までのいきさつ
 —こちらにアレルギークリニックを開かれて,どのくらいになられますか.
 杉田 昭和42年5月ですから,4年めに入ったところです.

話題

—瞠目に価するアレルギー研究の進歩—第20回日本アレルギー学会(11月4-5日・東京)

著者: 宮本昭正

ページ範囲:P.1836 - P.1837

 第20回日本アレルギー学会は11月4・5日の2日間,東京で東大物療内科大島良雄教授の主宰のもとに開催された.一般演題は3会場に分かれて発表され,特別講演やシンポジウムなどはもっぱら午後,1会場にまとめて行なわれた.これは特別講演やシンポジウムなどには参加者全員が参加できるようにという配慮からである.
 本年は学会創立20年にあたるのでその記念講演として予研所長であり,アレルギー反応のアセチルコリン説で著明な中村敬三博士が老躯を思わせない若々しい声で"アレルギーあれこれ"と題し本学会誕生前後から今日に至る歴史的な変貌と発展,さらに先生ご自身の研究とアレルギーについての考え方などについて講演され,参加者に深い感銘を残された.それにしてもここ十数年の間におけるわが国のアレルギーについての研究の進歩は,瞠目に価するわけである.

—研究の幅広さを示したわが国からの参加者—第7回国際アレルギー学会(10月12-17日・フローレンス)

著者: 宮本昭正

ページ範囲:P.1837 - P.1838

 第7回国際アレルギー学会はルネッサンス発祥の地であり,芸術の香豊かなイタリヤのフローレンスで,約1800名の参加者のもとに10月12日から10月17日の6日間にわたって開催された.会場は本会議場と4つの分会場の5会場で,本会場はもっぱら特別講演やシンポジウムのために使用され,他の会場は主として一般演題のために使用された.多くの会員は本会場に集まったので特殊な演題を除いては一般演題には聴衆が少ない場合の多いのが目立った.特別講演,シンポジウム,一般演題などのうちわけは次ページにしめしたので,これを一見されると学会の内容および世界におけるアレルギー研究者の研究方向がほぼ理解できると思う.

症例 全身性疾患と眼・6

乳頭浮腫

著者: 松井瑞夫

ページ範囲:P.1843 - P.1847

 乳頭浮腫papilledemaあるいはうっ血乳頭choked disc,Stauungspapilleという視神経乳頭の病変は,全身疾患と眼底所見という問題のうちでも,最も注目されている問題の1つであるということができよう.その理由の1つは,脳腫瘍あるいは悪性高血圧症といった,うっ血乳頭をきたす基礎疾患がいずれも予後不良であるためであろう.今回は,この乳頭浮腫あるいはうっ血乳頭という眼底所見の,検眼鏡による診断のしかた,臨床的な事項と関係ある発生病理の問題などを中心に紹介してみたいと思う.なお,26ページに症例がカラー眼底写真で供覧してあるので,参照していただきたい.

小児心電図講座・8

動脈管開存症

著者: 三森重和

ページ範囲:P.1848 - P.1851

症例1
7歳 男
 臨床所見 生後4カ月の健診で心疾患を指摘された.特に運動,発育遅延はない.心雑音は胸骨左縁第2-3肋間を中心に連続性雑音を聴取,心尖で3音をきく.脈圧は幅広い.胸部レントゲンでは心胸郭比50%,肺血管陰影の増強,および大動脈弓の経度球状突出をみる.心臓カテーテルでは肺動脈圧正常,左右短絡率25%,肺体血流量比1.4.手術は1cm口径の動脈管を切断した.

臨床家の生理学

寒さに対する人体の適応

著者: 伊藤真次

ページ範囲:P.1852 - P.1856

 われわれの体温は常にほぼ37℃に保たれているが,わが国の冬の外気温は最低-40℃にもなるから,体温との差が実に80℃に近いわけである.この酷しい寒さに耐えるため,まず何より必要なことは,からだの中心部にある重要臓器の温度が変わらないようにすることである.体温は産熱と放熱のバランスで決まるから,寒い環境で体温の下降を防ぐため必要なことは,ひとつは代謝による熱の産生を増加することであり,いまひとつは外界とからだとの間で熱の絶縁を増して,体熱の放散をできるだけ少なくすることである.

内科専門医のための診断学・12

意識障害患者の診かた

著者: 田崎義昭

ページ範囲:P.1857 - P.1861

 意識障害の患者は,往診先や救急外来で診察することが多い.そういうときには,どこからどう手をつけてよいかわからないこともあるし,相当な経験を積んだ医師でも,あとでふりかえると大切なチェックポイントを見逃がしていることも少なくない.ここには意識障害時の診かた,ことに神経学的検査,患者を移送してよいかどうかの決めかた,予後の判定法などについて述べてみよう.

medicina CPC

食道癌に,X線照射を行なった後,呼吸困難を起こした例

著者: 大貫寿衛 ,   金上晴夫 ,   太田怜

ページ範囲:P.1864 - P.1871

食道癌に対する術前照射
 太田 61歳,男の例.主訴が呼吸困難と上腹部痛ということですが,現症と経過についてご質問ありますか.
 大貫 空腸瘻をRoux en Y式に直したと書いてありますが,最初はどういう形で吻合したんでしょうか.

出題

ページ範囲:P.1863 - P.1863

下記の症例を診断してください
症 例
61歳,男,自家営業
主訴 呼吸困難,上腹部痛

診療相談室

気管支喘息死の増加と薬物

著者: 光井庄太郎

ページ範囲:P.1872 - P.1873

質問 最近気管支喘息死が増加しているのは,メジヘラーの乱用によるといわれていますが,真実でしょうか.ステロイド乱用によるものとは認められないでしょうか.(大和市・K生)

ツベルクリン反応の判定基準

著者: 室橋豊穂

ページ範囲:P.1873 - P.1873

質問 精製ツベルクリン反応の正式な判定基準をご教示乞う.
(3年前,BCG注射,現在二重発赤,強陽性の学童のスキー・スケート教室の許可基準についても併わせてお教えください) (横浜市・W生)

洋書紹介

—R. Schön (Göttingen), A. Böni (Zürich) & K. Miehlke (Wiesbaden) 編—Klinik der rheumatischen Erkrankungen

著者: 佐々木智也

ページ範囲:P.1825 - P.1825

学問的に高く評価さるべきリウマチ学の書
 現在のところ日本で比較的良く利用されているリウマチ関連のまとまった本は,アメリカのJ. L. Hollander編 "Arthritis and Allied Conditions",Lea & Febiger,(1967)と英国のW. S. C. Copeman著 "Textbook of Rheumatic Diseases",Livingstone(1965)とであり,共に英語国のリウマチ学教科書である.リウマチ性疾患に対する基本的な考え方は,各国の各学派ごとに差があり,戦前・戦直後までに教育を受けた医師にとって,これらの英語国の教科書はなんとなくなじみ難い点があった.ここでとり上げた本は,昔からの中欧風の考え方を発展させて書かれたものであり,ヨーロッパの高名な学者60名が執筆者に名を連ねている.フランスのCoste,DeSéze,Forestier,英国のBywaters,フィンランドのVainio,Laine,西ドイツのOtt,スペインのBarcelo,スエーデンのOlhagenなど,日本でも良く知られていると思う.
 内容はリウマチ学の基礎をなす部門から,リハビリテーション,社会医学,さらに研究方法までに及び,疾患別にはリウマチ性疾患と誤られやすい疾患の項目まであり,詳しくみても落ちのない内容である.なりうるようで,この点は十二指腸潰瘍の場合とかなり異なる特徴と思われる.

臨床メモ

肝疾患と発疹

著者: 涌井和夫

ページ範囲:P.1828 - P.1828

 皮膚病変と肝障害との関係は,原則的には,(1)肝障害が皮膚病変の原因となる場合,(2)皮膚病変が肝障害の原因となる場合,(3)高位のNoxeの作用により,両者がともにおかされる場合の3つの場合が考えられる.(1)の場合に入るものには,クモ状血管腫,紫斑,黄色腫などがあげられ,(2)の場合には広範な急性湿疹,皮膚炎などで肝障害が来ることが引用され,(3)の場合には中毒性肝炎が,同時に原因薬物の薬疹をともなう時や,全身性紅斑性狼瘡の場合などがあげられよう.
 このように分けると,明快極まりないが,皮膚発疹と肝疾患の関係が,常に上記の範疇に区別しうるとは限らない.むしろ,この区別の難かしいのが常である.

検査メモ

気管支鏡と覗ける範囲

著者: 木島昂

ページ範囲:P.1771 - P.1771

 今のところでは,気管支鏡は胃カメラより実地医家との実用距離は遠いが,グループ・プラクティスのもとでこれが診断に応用される日は近い.
 医師の目で直接人体の内部を見たいという欲望,その原型内視鏡は遠くポンペイの遺跡に見られるが,今日の型の先鞭は1904年アメリカであり,日本は学会誕生以来今年で21年である.

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Current Abstracts

著者: 浦田卓

ページ範囲:P.1758 - P.1759

新生児の溶血性疾患にみられる低血糖症
 溶血性疾患にかかっている新生児に低血糖症の危険が多いことが,Priceによって記述せられた.溶血性疾患の重い赤ん坊では,低血糖症がたいへん多いのである.しかも,これらの新生児では,低血糖症をしばしば見過ごすが,それ以外にも,代謝的アシドーシス,低カルシウム血症,高カリウム血症または低体温が,まま存在する.脳の損傷—これは,低血糖症が原因でおきるか,または,ビリルビンの抱合にさいして必要なブドウ糖が十分にないためにおきるかの,いずれかである-を防止するために,われわれは治療を即刻開始しなければならないのである.
 著者が取り扱った患者のうち,その2人に,ランゲルハンス島が増生していたことが,剖検のさい発見されたが,この所見から,低血糖症の原因的因子は過インスリン血症ではないかという疑問が生じる.この説を裏書きする証拠はこんにちなお,完全とはいえない.この低血糖症は,交換輸血と関係はないようである.著者のシリーズで生存している4例は,目下正常に発育している.

「medicina」第7巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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