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雑誌目次

雑誌文献

medicina7巻2号

1970年02月発行

雑誌目次

EDITORIAL

喘息の種々相

著者: 川上保雄

ページ範囲:P.161 - P.161

 気管支喘息は症状・年齢・原因などにより若干の病型に分類されている.
 I.症状的分類
 1)発作時の呼吸困難の度合いおよび発作の頻度により,軽症・中等症・重症に分類する.発作の度合いは発作時の起座呼吸発作累積状態の有無や日常活動の可能の有無による.

今月の主題

いわゆる喘息—病態を中心に

著者: 光井庄太郎

ページ範囲:P.162 - P.173

 社会生活の複雑化に伴い,喘息患者は今後ますます増加するであろうし,重症喘息,さらには発作による死亡者も増加するであろう.それらを防ぐ意味でも喘息の病態はさらに深く掘りさげて究めねばならない.以下,気管支喘息について,主としてその病態に関し,協同研究者とともに行なってきた研究の一端を述べる.

(座談会)喘息の精神身体医学

著者: 吾郷晋浩 ,   井上四郎 ,   桑原寛 ,   池見酉次郎

ページ範囲:P.174 - P.182

 これという決めてのない多くの慢性疾患の治療にあたっては,長期療養に耐えうる患者の人格の形成と,心理的環境の調整が重要な意味をもってくる.その意味での代表的な疾患が喘息である.そこで喘息に対して全体医学的立場からアプローチしてみよう.

日常検査とその限界

尿定性試験紙法(2)—尿ビリルビンと尿ウロビリノーゲン

著者: 林康之

ページ範囲:P.136 - P.137

尿ビリルビン
 検査方法
 尿ビリルビン(B)検査には従来Gmelin法,Harrison法,Rosin法,中山法などが利用され,いずれも(B)を酸化して緑色のビリベルジンに変え,緑色を確かめることを原理としてきた.

診療手技

喀痰除去

著者: 長岡滋

ページ範囲:P.138 - P.139

意義と基本的方針
 喀痰は,せき,呼吸困難とともに,呼吸器疾患におけるもっとも普遍的な症状である.とくに慢性閉塞性肺疾患と総称される,気管支喘息,慢性気管支炎,肺気腫などが前景に立つようになった昨今,痰がきれにくいという主訴は,医療上かなりのウエイトをもつにいたった.
 痰の除去が困難で,気道内に貯溜することは,呼吸困難や気道内感染,気道閉塞による無気肺などを生じ,生命をおびやかすことさえある.かくして喀痰除去は,呼吸器疾患の治療上,ゆるがせにできない問題点である.

救急診療

急性喘息発作のときの管理

著者: 宮本昭正

ページ範囲:P.140 - P.141

喘息発作の分類
 喘息の発作を強さで分けると表1のようになる.もちろんこれは便宜上のことであって実際には発作中の呼吸困難は流動的で,かるい発作から大発作へと容易に移行するし,大発作から軽発作へと容易に変動することがあるので表1に示したほど単純ではない.しかし,これは発作の強度を考えるうえにひとつの指標となると思われる.

略語の解説 26

PLGE-PRP

著者: 阿部正和

ページ範囲:P.143 - P.143

PLGE
 protein-losing gastroenteropathy:蛋白喪失性胃腸症 なんらかの原因で,血漿蛋白が消化管腔に出て,これがために低蛋白血症をきたした場合の総称名.消化管系統,またはその他の臓器に病変があって,それに続発するものと,現在のところ原因が判明しない特発性のものとが区別されている.
 従来,本態性低蛋白血症といわれていたものの多くが,本症であると考えてよい.

統計

国民総医療費について

著者: 小川博

ページ範囲:P.144 - P.145

 医療行政を論ずる場合基本的なことは数多くありますが,国民総医療費も重要な基本的事項の1つということができましょう.そこで,昭和42年度国民総医療費についてその概要を述べてみましょう.
 まずここでいう「国民総医療費」の内容を簡単に説明しますと,全国民が1年間に要した傷病の治療費を推計したものであります.したがって医師や歯科医師に支払う費用はもちろんのこと,このほか買薬の費用とか,あんま師などに支払う費用も含めています.しかし予防のための健康診断・予防接種・保健薬購入などに要する費用や正常な妊娠・分娩などに要する費用および症状の固定した身体障害のために必要とする義眼や義肢などの費用はいっさい除外しています.

内科疾患と装具

脳血管障害(脳卒中)後遺症の装具

著者: 今村哲夫

ページ範囲:P.147 - P.148

 脳卒中は片まひを後遺症として残すことがほとんど大多数と考え,今月は片まひにはどのような装具が有効であるか考えてみたい.

カラーグラフ

Letterer-Siwe病の皮膚症状

著者: 西村昂三

ページ範囲:P.152 - P.153

 Letterer-Siwe病はReticuloendotheliosisあるいはHistyocytosis syndromesといわれる疾患群(Eosinophilic granuloma,Hand-Schüller-Christian病,Letterer-Siwe病)の中でもっとも激症型として知られている.
 本症の主要症状は,異常に増殖したHistiocyteの各種臓器への浸潤の結果惹起されるもので,皮膚症状ももちろん例外ではない.本症の皮疹は湿疹や乾癬などとまちがえられることがあるが,本症を何例か経験しておれば鑑別はそう困難ではなく,しばしば診断の有力な手がかりとなる.この皮疹としては通常,痂皮・落屑・水疱・出血などを伴った直径1-3mmくらいの茶褐色の小丘疹が躯幹・前頭・顔面などに散在することが多いが,前頭・前額部に脂漏性湿疹様の皮疹をみたり,またそけい部や腋下などの皮膚の接触部ではしばしば間擦疹ができ湿潤びらん面がみられたり,肛門周囲や女児の外陰部がただれたりする.なお粘膜症状としては歯の肥大,腫脹,壊死,潰瘍形成などがしばしばみられ,ときには歯が脱落することがある.これらの皮疹の生検やタッチ標本あるいは歯齦浸潤部の擦過標本をつくると,Histiocyteの集落が容易に証明される.

グラフ

動脈血ガス分析

著者: 山林一 ,   外村舜治

ページ範囲:P.155 - P.158

肺の目的は静脈血を静脈血化することにある.したがって,換気機能・拡散能力の異常,換気―血流分布の異常などによって起こる最終結果を動脈血のガス分析は教えてくれる.特に慢性肺疾患,術後などに起こる呼吸不全の管理に必要欠くべからざる検査といえよう.近年測定装置の改良・発達はめざましいものがあり,操作も簡易化・安定化しているのでもっと呼吸機能routine testとして行なわれることが望まれる.

呼吸困難を起こしやすい老人の肺

著者: 長沢潤

ページ範囲:P.159 - P.160

 老人は若年者に比べて呼吸困難を起こしやすいが,多くの場合,肺気腫や肺線維症などの基礎疾患に起因する場合が多い.またときには,X線上になんら異常の認められないこともある.

診断のポイント

複視

著者: 祖父江逸郎

ページ範囲:P.183 - P.184

複視の内容をはっきりさせる
 複視というのは,1つのものがはっきりと2つに見えるということで,症状としては単純・明確であるにもかかわらず,実際の臨床ではあんがい不明瞭なことが多く,患者の訴えが果たして複視であるかどうか,つかみにくいこともかなりある.輪郭のぼけや,ぼんやり見えることと混同して訴えることがあり,また物が揺れてみえることを複視として訴えていることもある.
 それらの内容をはっきり区別することが必要であるが,いずれにしても主観的なことであり,その辺の明確さに欠けることがあるため,必要に応じては具体的な例をとりあげ,その内容をとらえることもたいせつである.尿をするとき,便器が2つに見えて,どちらに排尿してよいか困り,ときには失敗したことがあると訴えた患者を経験したが,こうした事例からは,はっきりとした複視の実態がつかみうる.また物をとろうとするとき,その物が2つに見え,どちらが実体であるかわからず困る,物が2つに見えて歩行が困難,複視のためめまいがするなどの訴えも有用であり,このような具体例をとりあげて内容をはっきりさせておくべきであろう.

いわゆる小児喘息

著者: 中山喜弘

ページ範囲:P.185 - P.186

 "小児喘息"という病名がしばしば用いられる.乳幼児でことに寒い季節にゼロゼロが治りにくかったり,くり返したりしている症例に名づけられ,これは成人になるまでに治ってしまうのが普通なので,成人の気管支喘息とは異なるとして,小児喘息という病名がつけられているようである,ゼロゼロが喘息もちであるとの考えと,小児喘息といえば成人になるまでには治るからと家人が納得するので,安易に用いられる傾向がある.

パッチテスト(patch test貼布試験)

著者: 古谷達孝

ページ範囲:P.187 - P.188

定義と目的
 パッチテストとは遅延型アレルギー性疾患,特に主として接触アレルギー性疾患の診断……原因究明……のために用いられている代表的な検査手技である.

治療のポイント

ジフテリア

著者: 水原春郎

ページ範囲:P.189 - P.191

 昨年(昭和43年)にはわが国のジフテリア届出患者数はついに1000名をわり3桁の数と最低の記録をつくった.したがって罹患率(人口10万対)も1.0を下回り0.8となった.また致命率も1-2%と低く,早期に診断を確定し,治療を開始するならば,決して恐ろしい疾病ではなくなってきた.
 このように著明な減少を示したことははなはだ喜ぶべきことではあるが,一方では若手医師の多くの者がジフテリア患者を見る機会を失い,真正のジフテリア患者を見おとす危険なしとはいえない.そこでまず診断にあたってのポイント,ついで治療の方針について私見を述べることとする.

インスリンの投与量調整

著者: 平田幸正

ページ範囲:P.192 - P.194

インスリン投与量には個人差が強い
 糖尿病患者にインスリン療法を行なう場合,その最適の種類と量に関しては,個人差が強いことに注意する必要がある.また同時に,同一個人にあっても,経過に従って,その必要量に変動が起こりうることに留意しなければならない.
 以上の理由から,インスリンの投与量調整に関して,一定の規準があるとはいえない.現在のところ,腰だめ的な一応の方針によって調整を行ない,その調整によって現われた成績によって,またさらに調整をくり返すということによって,適正量に持ちきたすという手順をふまざるをえないといえる.したがって,ここに述べるのは,私の行なっている一応の手順であることをお許し願いたい.

心筋硬塞に対する抗凝血薬療法—現状と将来

著者: 片山文路

ページ範囲:P.195 - P.197

 1954年Wrightらによる報告以来,心筋硬塞の有力な治療法として広く用いられて来た抗凝血薬療法であったが,1961年コペンハーゲンのHil-denらによる批判的報告なども出てその効果の是非は混沌としたままさらに不整脈,ショック,心不全などの治療に主力をそそぐcoronary careunitの時代になってきている.この経過の中でClose-upされた本療法の問題点については1964年の循環誌"Circulation"Vol.30に掲載された抗凝血薬療法のシンポジアムでのWrightおよびHilden両者の主張の中にほぼ尽くされているといえよう.

Leading Article

医療事故と法医学—どう防ぐべきか

著者: 野田金次郎

ページ範囲:P.198 - P.200

医師の社会における立場
 応用生物学の一分科と考えられる医学が,各大学の医学部や研究所の規模の大きさからも考えられるように科学に大きな独立の地位を示しているのは,もちろん社会構成員全員の健康に直接関連しているという点である.われわれの研究も,その成果が直接に,また少なくも間接に社会に還元さるべきものであることも明らかである.しかしこういう点があまりにも当然のことなので,ただなんとなく慣れてしまって意識下にひそんでしまっているのではなかろうか.筆者は,かって医療事故の実態を知ろうとして全国的な調査をしたことがあり,その結果の総括的な感じとして,前記のことを痛感させられているのである.といって医師のみを責める気は毛頭ない.なぜならば,医師をそこまで追い込んでいる誘因がいくつか明確にされたからである.医師の社会における立場などとの悪循環は,その半径が順次大となりつつある現在,医業にたずさわっている人々の,ある程度のかつ短期間の犠牲の上に,この循環をたち切らなければ,結局社会の支持は遠のき,抜本策は永久にわれわれの手に入らないであろう.

全国教室めぐり

そのおかれた状況下において最善を—山口大・第2内科

著者: 森山勝利

ページ範囲:P.201 - P.201

 三瀬淳一教授開講15周年記念会が,先日同門者90名の出席のもとに,深い感謝と祝賀の意をこめて催されました.気鋭の循環器学者として教授が山口大第2内科に着任されてから,その高潔な人柄と深い学識をしたって,100名を越す若い人々がその門を敲き,懇篤な指導を受けてきました.

ルポルタージュ 西ドイツの医療・5

医師・国民・自治体

著者: 水野肇

ページ範囲:P.202 - P.203

 各国の医療制度のなかで,いちばんその国の状態がよくわかるのは,制度によって,医療が国民とどうつながっているかという点であろう.たとえば,国民と診療所,国民と病院といったものが,どこでどうつながって,どんなかたちで人間関係を形成しているかというようなことである.
 西ドイツでは,どこの診療所でも,病院でも,日本のような,あの騒々しさはない.静かなたたずまいが,どんな診療機関にもある.病院や診療所の建物自体にヨーロッパ的なおちつきがあるが,建物だけではなく,そこで働く人,診療を受ける患者,すべてがおちついていて,すがすがしい.

病理夜話

著者: 金子仁

ページ範囲:P.208 - P.208

 2年まえのちょうど秋ごろのことである.
 京都の若い外科医が右腕に腫瘍ができた.何だろうと思って某病院に行きプローベを採り病理で調べた.これは肉腫である.早く腕を切断するようにといわれた.自分の右腕を切断する?これはたいへんなことである.幼い子供のいるその外科医は,みずから病理検査室へ行き,直接話を聞いた.転移が起こらぬうちに早く切断したほうがよい.さもないと1年以内に死亡するという.しかしその中でも,この程度の肉腫ならだいじょうぶではなかろうかという病理医もいる.思いあぐねてその病理の標本を持って東京の病院へ行き,診察を乞うた.

症例 全身性疾患と心臓・1

甲状腺疾患と心臓

著者: 鷹津正 ,   河合忠一 ,   山下欣司 ,   栗本興一

ページ範囲:P.213 - P.220

 甲状腺機能亢進症における洞性頻脈,心房細動,機能低下症の心嚢内液貯溜などから,甲状腺疾患に際して心臓がおかされることは,古くから周知の事実である.しかし,甲状腺疾患としての定型的症状を欠き,心症状が前景に出る場合,甲状腺疾患の存在を見おとして通常の心疾患として取り扱われ,その療法によっては心症状が治癒しえないことがしばしばある.

ルポイド肝炎の1症例

著者: 谷川久一 ,   金戸昭

ページ範囲:P.221 - P.224

肝疾患と自己免疫的機序
 肝炎の慢性化には,種々の要因が考えられている.急性期に十分な安静や適当な治療が得られなかったり,他疾患の合併があったり,高年齢であったり,その他急性期の侵襲が強かったりといった数々の要因が考えられるが,そのなかで最も注目されているものの1つに自己免疫的機序による肝炎の慢性化の問題がある.
 種々の肝疾患のなかで,自己免疫機構が強く関与していると考えられているものに,ルポイド肝炎と原発性胆汁性肝硬変がある.

内科専門医のための診断学・2

胆嚢疾患の診断法

著者: 真下啓明

ページ範囲:P.225 - P.227

既往歴の重要性
 患者の診察にあたって既往歴のとりかたの巧拙が診断のうえに大きく影響することはあらゆる場合にいえることである.胆嚢疾患が臨床上の便宜さのゆえに胆嚢炎,胆石症,胆道ジスキネジーの3者に分けられ,しかもこれら3者が,たがいに因果関係をもって病態を形成していることは,v.Bergmann以来,ひろく臨床家の概念になっている.
 典型的な右季肋部を中心とし,ときに背部,右肩に放散する病痛のくり返し,さらに黄疽の出現という既往歴があれば胆石の存在は確実である.しかし,このような典型的な症状においてのみ胆石の存在が考えられるのではない.疼痛発作にしても統計的にはむしろ心窩部痛として訴え,あるいは狭心痛として訴えることもある.後者の狭心痛との関連はいわゆるseferred painの考えかたから説明されるが,他面,実験的な根拠から胆嚢よりのafferentの刺激が心臓,とくに冠動脈にefferentな刺激となり心電図の変化としてとらえられるとされている.一方,30-40歳台に明らかに胆石の存在を思わせる疝痛発作をくり返しながら,その後20年も全く無症状であるという症例もあり,いわゆるsilent stoneの存在もある.

臨床家の生理学

老人の肺

著者: 滝島任

ページ範囲:P.228 - P.231

老人の肺は,単なる加齢による老化現象とはいいえない.いろいろな外界因子の侵襲が複雑にからみあっているからである.では,多彩な変化を示す形態学的変化に対応する機能異常の特徴は……

筋電図のよみ方・2

脱神経とこれからの回復過程および随意収縮以外の動きによる放電

著者: 土肥一郎

ページ範囲:P.232 - P.235

脱神経とこれからの回復過程
 1つのmotor unitは1個の神経細胞とこれから伸びる突起,それに所属する数十ないし数百の筋線維からなっている.神経細胞から発したインパルスは,このたくさんの筋線維をほぼ同時に興奮させるので,筋電図は比較的単純な波形であって,2相性,3相性,4相性程度のものが多い.この何相性という表現は,最初上向,つぎに下向,つぎに上向というような波形の構成のときは3相性と名づけることにする.末梢神経の病気または外傷などの場合,1本の神経線維が分枝するいく組かの筋線維グループ同士の間で興奮の伝達に時間的なズレがあると,波形は複雑になり,図1(c)に示すような多相性の波がみられるので,これをpolyphasic potentialと名づける.あるいはcomplex NMU voltageとよぶこともある.
 さて,神経に対する傷害がもっと激しくなると,このような筋へのインパルス伝達のムラよりももっと重篤な故障すなわち連絡の遮断が起こる.この場合は,器質的と機能的とのちがいはあっても,神経と筋との連絡は絶たれている.現実には末梢神経炎ないしは末梢ニューロパチー,神経切断,脊髄前柱細胞の疾患などでこのような脱神経状態が成立しているわけである性このような病的状態が成立してから2ないし3週間たつと,神経支配を断たれた筋線維には興奮性の変化が起こり,流血中の成分(アセチルコリン様の脱分極性物質)によって興奮活動を起こすので意志的な収縮とは無関係な自発的活動が生じる.この場合のスパイクは振幅は100μV前後,持続時間(スパイク幅)は1-2ミリ秒程度のもので,図1(a)のような形を示し,fibrillation potentialと名づけられている.このスパイクに対する筋肉の動きは皮膚の上からはみることができず,筋膜を除いて直接に筋組織をみたときのみ認められるものである.同じく脱神経時の筋でみられる安静時のスパイクにpositive sharpwaveとよばれるものがあるが,これは図1(b)のように一方向に鋭く触れ,反対方向に長く続く動きをもっているもので,振幅は100μVから1mVくらいである.この波に相当する筋収縮も皮膚の上からは認めることができない.このような波形は,脱神経筋線維の同期的活動,あるいは変性筋線維を針電極が損傷することによって起こるなどと想像されているが,その出現の意味はfibrillationと同じで,脱神経変性の証拠と考えられている.

medicina CPC

特異な皮膚症状と発熱に始まり,肝・脾腫,腹水,黄疸など多彩な症状を示した乳児の例

著者: 巷野悟郎 ,   小沢啓邦 ,   西山茂夫 ,   植田穣 ,   松見富士夫

ページ範囲:P.236 - P.241

発疹の性質はどうか
 松見 この症例は入院してから3日めで亡くなっておりますから検査も不足ですけども,小児科は急性疾患も多いわけですし,運ばれてきて早く診断をつけなきゃいけないこともあるわけですから,この範囲でお考えいただきたいと思います.
 主訴はご覧のとおりです.皮膚の所見が表に立っております.3カ月のころから,イボ様のピンク色の紅斑が初め出て,そのとき熱も出ていた.そういうのがずっと続いたあとに紫斑らしいもの,これはとくにカッコして(らしきもの)としておりますが,それが腹部全体に広がって,外科の先生,皮膚科の先生の治療を受けたけれども進行性であった.それからまた種痘したあとで紫斑様のものの数がふえたということがAnamneseでわかっております.そして8カ月半ころからおなかが大きいことに気がついて,多彩な症状,肝脾の腫大,腹水,黄疸もあります.熱もずっと39℃台に続いて,私どものところへまいったわけです.

出題

ページ範囲:P.150 - P.150

下記の症例を診断してください.

診療相談室

妊娠初期に使用して胎児に影響ある薬

著者: 室岡一

ページ範囲:P.243 - P.243

質問 妊娠初期に使用して胎児に影響ある薬の種類についてご教示ください. (福岡市・K生)

メディチーナ・ジャーナル=厚生省

待たれる両眼視機能障害対策

著者: 木村亮太郎

ページ範囲:P.131 - P.131

両眼視機能障害をめぐる諸問題
 年々増加する交通事故の発生原因のなかで,一時世間を騒がせた欠陥車のごとき,車体構造上の問題はべつとして,操縦者の身体条件の面からは,近年,注目をひきつつあるものに,斜視などによる両眼視機能障害がある.物を左右双方の眼で確認することにより,その距離感・立体感を認識する能力を両眼視機能とよぶが,これに障害のある場合には,たとえば,ハイウエーにおける高速運転,ことに追い越しなどには,不確実な目測による判断の誤りから非常な危険を伴う.また,混雑した狭い道の通り抜けに際しては,接触や人身事故につながる可能性が高いことも当然である.また一方,歩行者の側からも,両眼視機能に障害のある者,ことに幼児では,接近する車の目測を誤って,はねられる危険性が大きい.そのほか,航空機の着陸時,錯綜する海峡での操舵など,こと交通に関しては,両眼視機能に障害のある場合には大事に至るおそれのある場合が多い.
 事故との関連のみならず,スポーツ,ことに球技では,簡単なフライを落としたり,選球眼の悪さから,から振りの率も高く,跳躍では,踏みきりに失敗してファウルをくり返しやすい.さらに,幼児の場合には,階段の昇降が稚拙で踏みはずしたり,ちょっとした物にもつまづいて,"けが"をしやすい傾向にあることは否めない事実である.

トピックス

1969年ノーベル医学生理学賞授賞者Delbrück, M.,Hershey, AD.,Luria, S.E. 3博士の業績

著者: 瀬野悍二

ページ範囲:P.206 - P.207

 この30年間加速度的に発展を遂げてきた分子生物学は,1つの指導的な学問分野として確固とした地位を築き上げたと思われるが,この時期にあたって1969年のノーベル医学生理学賞が,米国のMax Delbrück,Alfred D. Hershey,Salvador E. Luriaの3博士に授与されたと聞き,当然というよりむしろおそすぎた感がするのは,筆者だけではないと思う.

臨床メモ

子どもの病気と安静

著者: 松島富之助

ページ範囲:P.194 - P.194

 育児書や家庭看護の本をみると,病気の小児の看護,特に安静のとらせかたが,あまりに厳重に書かれてあるものが多いのに疑問を感じる.どうも病院などでの重症患者や,非常に長い慢性疾患の看護が中心になって書かれているように思われるのである.
 家庭の子どもの病気の大部分は,かぜとかぜに伴う中耳炎,気管支炎,小児喘息,消化不良症,胃腸カタルのほか,麻疹,風疹,水痘,流行性耳下腺炎などの学校伝染病のことが多く,病気の程度が,栄養摂取や服薬がふつうかそれに近い状態のものが対象となる.

全身倦怠感—季節・年齢によってどう考えるか

著者: 渡辺淳

ページ範囲:P.224 - P.224

 ほとんどの疾病の初期症状は全身倦怠感ではないでしょうか.だから‘全身倦怠感’は身体のどこかがおかしいという‘身体違和感’と同じくらい漠然とした訴えのように思われます.したがって全身倦怠感を訴えてくる疾病の名前をあげれば,きりがありません.ここでは開業医として日常比較的遭遇しやすいものにとどめたいと思います.しかも全身倦怠感だけを主訴として患者が来診した場合にかぎりましょう.
 夏ならビタミン欠乏症,いわゆる脚気,脚気様症候群,冷房病やいわゆる夏バテ(夜ふかしをしていないか,睡眠不足ではないか,特に高温または多湿の環境条件のもとで働くなり遊ぶなりしていないか,扇風機をまわしっぱなしで,しかも裸で寝たりしていないか,水分をとり過ぎていないか,食事のバランスがとれているか,ときにはsex過剰ではないか)などを聞くことを考えます.

文献抄録

潰瘍性大腸炎にみられる偽ポリープ症—Lancet 2:555-559 (Sept 13) 1969

著者: 若林保司

ページ範囲:P.220 - P.220

 偽ポリープは潰瘍性大腸炎の重症度の表現であると一般には考えられており,これを直腸結腸切除術の適応症と考えている研究者もいる.また偽ポリープは結腸癌のまえぶれとも考えられている.
 私たちは偽ポリープ症の患者さんで潰瘍性大腸炎の種種な病型を調べてそれらを潰瘍性大腸炎だけの患者さんと比較してみた.

話題

—次回開催は,1973年に京都で—第12回国際リウマチ学会から(1969年10月5-11日:プラーハ)

著者: 佐々木智也

ページ範囲:P.133 - P.134

 第12回国際リウマチ学会XIIth International Con-gress of Rheumatologyが1969年10月5日より11日までチェコスロバキアのプラーハ市で行なわれ,約50名の日本人が参加した.筆者としては第10回(イタリア),第11回(アルゼンチン)に引続き3回めであるが,政治的に不安定なチェコスロバキアへ,これほど多数の日本人デレゲーションの責任者として出席してみると,これまでとはかなり異なった印象を受けた.したがって,純粋に学問的な観点だけでなく,このような点をも含めての記事としたい.

—よりよい医療を求めて—第76回実地医家のための会から(11月16日:東京)

著者: 秋月源二

ページ範囲:P.246 - P.246

 「全国心臓病の子供を守る会」の有志23名と,実地医家63名とが11月16日都市センターで「病人と医師」という主題で話しあった.話題はいきおい先天性の心臓病に対する治療・アフタケアーが主となったが,目標は「よりよい医療を求めて」の対話であった.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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60巻12号(2023年11月発行)

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60巻11号(2023年10月発行)

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59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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