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雑誌目次

雑誌文献

medicina7巻3号

1970年03月発行

雑誌目次

EDITORIAL

膵疾患のシンチグラム—将来の方向をさぐる

著者: 筧弘毅

ページ範囲:P.283 - P.283

 多くの膵疾患のうち,急性および慢性膵炎,膵癌,膵良性腫瘍(膵島腫瘍,膵嚢胞,腺腫,線維腫など)などの場合シンチグラムにどのような変化を与えるか,そしてどの程度の鑑別診断が可能か,また限界はどこかなどを検討する必要がある.われわれの教室で行なった膵スキャンの大略を述べ,将来の方向を概観したい.
 膵疾患のうちシンチグラムが最も役だつのは膵癌の診断である.75Se-セレノメチオニンを静注し,数分ないし数時間のうちにスキャナまたはシンチカメラにより膵の正影(positive shadow)を描写する.このさいセレノメチオニンが膵で蛋白に合成され排泄される.癌の場合,主として欠損像によって部位,ひろがりなどを推定できる.たとえば膵の限局性の欠損,一部欠損,膵影の狭小化,輪郭の乱れ,膵の描出の不完全ないし不能などである.乳頭部と膵頭部の癌では頭部の欠損と膵の描記不全として示されるものが半々程度である.体部癌と尾部癌では欠損として示されたり,輪郭の不正ないし変形として示される.膵癌以外でも膵炎,膵嚢胞,総胆管の拡張,他臓器癌の浸潤などにより欠損像またはそれとまぎらわしい像を呈することがある.正常膵でも体部が淡い影となることもある.左腎腫瘍,後腹膜リンパ腺転移などの場合,膵の変形または変位をきたすこともある.

今月の主題

膵疾患の新しい診断法

著者: 内藤聖二

ページ範囲:P.284 - P.289

 医学の盲点として取り残されてきた膵疾患,膵機能障害も,近年の検査法の進歩により医師の念頭に強く印象づけられつつある.さらに新しく確実な診断法が望まれるが,ここでは,現段階で一般医家がすぐ応用できる診断法を中心に紹介する.

(座談会)膵疾患の診断と治療の問題点

著者: 上垣恵二 ,   内藤聖二 ,   若林利重 ,   佐々木常雄 ,   石井兼央

ページ範囲:P.290 - P.300

 膵疾患は,ごく最近まで消化器疾患の盲点といわれてきたが,最近各種の検査技術が開発されるに及んで,ようやく脚光を浴びてきている.最もむずかしいといわれる膵疾患の診断および治療の現状について,内科・外科・放射線科の立場から.

日常検査とその限界

尿中細菌数

著者: 土屋俊夫

ページ範囲:P.258 - P.259

検査法の一般的注意
 人の皮膚や粘膜面にはかならず細菌が存在する.この細菌は平常は無害であるがときに病原菌となる,
 粘膜面に関連する感染症,粘膜上を通過して採取される検査材料による細菌検査の成績の読みの困難さは,この直接感染症に関係がないかもしれないこれらの細菌(常在菌)をいかに識別するかにある.

診療手技

IPPB

著者: 伊賀六一

ページ範囲:P.260 - P.262

IPPBの意義
 IPPBとはintermittend positive pressure breathing(間歇的陽圧呼吸)の略で,普通これにエロゾル吸入療法を併用して種々の原因による換気機能障害,あるいは呼吸不全respirabory failure(hypoxemia and/or hypercapnia)の治療に用いる(図1).
 すなわち,吸気時間歓的陽圧呼吸器(IPPB/I)にあらかじめ適宜にセットされた一定の圧が吸気時のみに陽圧として作動し,肺内圧がその圧のレベルに達すると吸気の周期が遮断され,呼気に切り替わることにより患者の換気(呼吸)をassistする.このとき吸入器中に高濃度のO2が混人され同時にO2療法を行なうことができる.これによって,

救急診療

降圧注射薬の救急使用時の注意

著者: 長谷川恒雄

ページ範囲:P.264 - P.266

一般的注意
 降圧注射薬の使用によって高い血圧を急速に下げる必要がある場合は少なくない.その主な疾患は表1に示すとおりである.降圧注射薬の種類および使用量については,基礎疾患ならびに症例の全身状態に対して,十分な注意をはらう必要がある.とくに,血圧が下がりすぎてショック状態にならぬよう,また症例の循環ならびに代謝機構の調和が破壊されないよう厳重な監視のもとに行ない,つねに危険な状態の発生に対処できる備えをしておくことが要求される.さらに48時間以内に経口投与による降圧療法に切り替えることを念頭におくこともたいせつである.

略語の解説 27

PSM-PTT

著者: 阿部正和

ページ範囲:P.269 - P.269

PSM
 psychosomatic medicine:精神身体医学 疾病を心身一如の人間の疾病としてみていこうとする立場をとる医学.医学の進歩発展に伴い,身体の器質的変化のみを追究していこうとする傾向に対して,情緒変化あるいは性格変化の関連のもとに疾病を研究しようとするのがこの医学の目的である.
 なお,PSMはpresystolic murmur前収縮期雑音の略語としても使用されている.

内科疾患と装具

和室用下肢装具

著者: 今村哲夫

ページ範囲:P.270 - P.271

 障害者治療としての下肢装具は,主としてアメリカから導入されたもので,その歴史も必ずしも日本では古くはなく,リハビリテーション医学という言葉がいわれ始めてからである.リハビリテーション評価法・治療法が日本では確立されていない時代に外国式の装具が直輸入されたときに,ほとんどそのままのかたちでうけ入れられたが,その後日本式生活に外国の装具が実際に適当でない面や,また日本人としてのうけ入れに多くの問題があることがしだいに明らかになってきた.七沢病院の横山は、多くの下肢装具が病院で処方され有効でありながら,退院帰宅後予想以上に用いられていないことを報告している.この問題は実は今後リハビリテーション医学のなかでとりくまなければならない重要な課題である.
 今月とり上げる和室用下肢装具は,現在まで考えられた日本式装具であってその数は多くないが,障害者のおかれている社会的環境,生活様式を考えたときに少しでも日本人の生活にとけ込めるように改良されたものであり,家屋の中で靴をはかない日本人にとって,最も典型的な和室を頭の中において製作されたものといってもよい.

統計

衛生統計からみた疾病構造の変化(1)

著者: 小川博

ページ範囲:P.272 - P.272

 近年における全般的な国民生活の向上,化学療法・外科療法・麻酔技術などの医学技術の発達,公衆衛生の発展は,国民の死亡率を減少させ,また人口構造の変化,社会環境の変化に伴って疾病構造に種々の変化をもたらしております.このような現状に対処し,わが国の今後の医療サービスや公衆衛生サービスの方向を決定するさい,国民の医療需要の動向としての疾病と傷害以下,傷病という)の状況を正しく,把握する必要があります.
 そこで,全傷病あるいは全死因について,受療率,有病率および死亡率についてそれぞれの年次的推移をみますと,受療率では図1のごとく年々高率となり,この傾向は有病率も同様であり,しかも,有病率は受療率を毎年上回っていることは興味あることであります.この相違の一因は,受療率は患者調査,すなわち医療施設における国民の受療状況に基づいたものであり,有病率は国民健康調査,すなわち世帯の側における傷病の意識に基づいたものによるものと考えられます.また,死亡率は,これらの傾向とは逆に年々漸減の傾向を示しております.ちなみに昭和28年を100として昭和は44年の増減をみますと,受療率では204.2,有病率156.6,死亡率77.5のような結果になっております。

カラーグラフ

血液検査法—骨髄像からの診断

著者: 寺田秀夫

ページ範囲:P.274 - P.275

 1927年Arinkinがはじめて成人の胸骨で骨髄穿刺を行なって以来,骨髄像の検査は血液病診断上重要な地位を確立してきた.しかし反面,骨髄像の診断的価値を過大視するきらいもある.骨髄穿刺の適応を正しく選び,美しい骨髄塗抹標本を作ることがなによりもたいせつである.

解説—白血病の骨髄所見

著者: 寺田秀夫

ページ範囲:P.254 - P.255

 まえにmedicina 6巻9号で骨髄像について総論的に解説したので,今回は筆者が過去約5年間に取り扱った白血病総数64例について検索した成績を中心として,白血病の骨髄所見を解説する.なお64例のうち急性白血病は45例,慢性白血病は18例で,ほかに血小板白血病1例である.

グラフ

十二指腸低張造影と経皮胆管穿刺造影

著者: 高瀬潤一 ,   笹本登貴夫 ,   大野孝則 ,   中村和成 ,   遠藤保利 ,   茂田徹 ,   石渡堅一郎

ページ範囲:P.277 - P.282

 十二指腸をX線像として正確に捉えるためには,いわゆる十二指腸低張造影(Hypoto-nic duodenography)が現在のところでは最も目的にかなった方法と思われる。しかしながら,ここで考えねばならぬことは,本法によって得られた十二指腸X線像の所見からそれ自体の病変は別として,さらに胆道系および膵の疾患をも推知しようとしていることである。もちろんこれは誤りではなく十二指腸に現われる種々の関接症状からその原疾患を診断しうることは少なくない。しかし十二指腸とそれをめぐる諸臓器のX線診断の価値をさらに飛躍させるためには,両方を同時に造影することである.
 故に筆者らは,十二指腸低張造影を行なうさいには必ず経静脈性胆道造影を併用し,経皮胆管穿刺造影を行なう場合には同時に十二指腸低張造影を加えている.これから以上の2つの造影手技と,それにより得られた興味あるX線像を紹介する.

診断のポイント

回盲部腫瘤

著者: 長洲光太郎

ページ範囲:P.301 - P.303

まず注意すべきこと
 右下腹部腫瘤と回盲部腫瘤とは全く同じものをいうのではない.厳重な意味で用いれば回盲部腫瘤のほとんどすべては回腸終末部から盲腸・上行結腸に関係したものだけになり,右下腹部腫瘤のようにヘルニアや遊走腎あるいは腹壁の病変,子宮付属器などは除外される.しかし腫瘤が腹腔内で,回盲部のものであるかどうか,また腹壁の腫瘤が結局は内部から由来しているものにほかならないのか,純粋に腹膜外のものだけであるのかなどということを診断しなければ,正しい回盲部腫瘤の診断を下すことはできない.たとえ腹壁に腫瘤があっても,これが内部からきている続発的なものであるかもしれない.流注膿瘍などは今日あまり見ることがないし,その診断は容易であるから,くわしく述べる必要はないであろう.
 腹壁皮膚・皮下の限局した腫瘤ならばこれも発見はたやすい.ただしその腫瘤の性質本態を—ということになれば一見して診断可能というほどたやすくはない.リンパ節腫張ことに悪性リンパ腫のごときものは試験的に1個の動きやすいリンパ節を取って組織学的に検索するまでは,系統疾患らしいという判断以上に出ることはむずかしい.

見のがされている血液疾患

著者: 三輪史朗

ページ範囲:P.304 - P.306

 この主題は,本来臨床経験の豊富な血液学者が執筆されて初めて味い深いものになるのであって,筆者にはやや重荷である.ここでは赤血球系,白血球系,血小板・凝固・線溶系の順にわけて,思いつくままに問題となる疾患にふれてみることにしよう.筆者なりの見方なのでかなりかたよった解説になってしまうかもしれないが,これは大半は筆者自身が見のがして,そのことに気づいていない疾患が多々あることを意味するので,一部は紙面の制約によるものである.この点ご寛容,ご叱正をいただきたい.

弁膜症の手術適応

著者: 武内敦郎

ページ範囲:P.307 - P.309

 弁膜症患者に遭遇した場合,まずその診断と患者の薬物治療ないし生活指導が行なわれるが,そのさい現今では必ず手術的療法も念頭におかねばならない.つまりその患者の弁機能の異常にもとづく心・肺の病態をどこまで薬剤のみでもちこたえうるか,換言すればどのあたりで外科的療法を併用するかということである.そして病名の診断に引きつづいて,その疾患の進行程度の判断が手術適応の決定のために大切となってくる.
 以下代表的な4つの後天性弁膜症の手術適応決定にあたっての診断のポイントについて述べる.

治療のポイント

慢性膵炎

著者: 石井兼央

ページ範囲:P.310 - P.312

診断の問題点と治療
 慢性膵炎は最近になって注目されはじめた消化器疾患の1つであるが,その臨床像,病型については多彩であって,その診断根拠についてもさまざまの意見があるのが現実である.慢性の経過をとる上腹部痛,背痛,食思不振,体重減少,下痢,便秘などの腹部不定症状があって,とくに上部消化管には病変がみとめられない場合(ただし膵機能試験などによれば消化性潰瘍と慢性膵炎との合併は少なくない),胃X線検査で膵臓の部位に一致して圧痛がある場合は慢性膵炎の疑診は十分おく必要がある.しかしこのような自覚的,他覚的所見だけからでは膵臓に病変があることを確定することはできない.筆者は慢性膵炎の臨床診断をつぎの基準によって行なっている.

新強力利尿剤の薬理とその使用法—Furosemide,Ethacrinic acid

著者: 日野原重明

ページ範囲:P.313 - P.315

新強力利尿剤の登場
 強力な利尿剤として最初にとりあげられたのは有機水銀剤のNovasurolであったが,これは1919年のことであった.その後,有機水銀剤に代わる強力な利尿剤は久しく現われなかったが,1957年になってサルファ系のThiazide剤としてChlotrideが登場し,以後ぞくぞくとこれよりも少量で効くサイアザイド利尿剤(Dichlotride,Fluitran,Renese,その他)または,ズルフォシアミド系の利尿剤(Hygroton,Diurex,その他)が広く用いられるようになった.
 ところが近年になり,合成されたFurosemide(1964年)やEthacrinic acid(1962年)は,今までのどの利尿剤よりもはるかに強力な利尿作用を呈することが明らかにされ,これらは心不全による乏尿をはじめとし,そのほか種々の原因による乏尿や浮腫の治療に最もしばしば用いられるようになってきた1).急速な利尿効果のあることから,急性肺水腫にも好んで用いられるようになった.

胃切除後の貧血と低栄養

著者: 奥田邦雄

ページ範囲:P.316 - P.318

胃切除後の消化管機能と吸収
 胃切除後の生理学的な変化は体重,血液に徐々にしかし端的にあらわれる.その程度は患者の術前の状態,胃切除の原因(潰瘍か悪性腫瘍か),手術侵襲の大きさ,ことに切除範囲と胃吻合方法に大きく左右される.切除前にすでに低栄養,低蛋白,貧血を有していたような患者では術後の影響が大きく,通常,体重減少,回復の遅延,貧血増悪が著しい.それに反し術前健康体であったものは手術の影響は概して少ない.胃の切除範囲が大きいほど後の障害が大きいように思われるが,その関係は必ずしも平行的でなく,全摘,亜全摘では手術後吸収不全症候が強くでてくる.また部分切除でもBillrothⅠ法とⅡ法とで術後のdumpingの頻度,低栄養状態の出現頻度に差があることは周知のところで,最近外科医もなるべくⅠ法をとるように努力しているようである.
 胃部分切除後,術前の体重に復しきれない,いわば低栄養状態を呈する患者の頻度の統計はまちまちで,80%という統計から10%前後という報告まであるが,いずれにしてもかなりの数の患者は術後体重が減って元の体重まで復しえない.その理由は摂取カロリー絶対量の減少と,消化吸収能の低下の両方である.すなわち胃容積の減少による1回摂取食物量の低下は,食事回数の増加だけでは十分代償しえない.

Leading Article

外来予約制度のすすめ

著者: 左奈田幸夫

ページ範囲:P.319 - P.321

外来診療の現状
 近時病院外来患者の激増から,その疾病スクリーニングになやみ,大学付属病院などは外来診療訓練としての適正管理ができなくなり,外来診療を紹介制,定員制などの制限から,しだいに廃止の方向にすすみつつある.
 一般総合病院,公的医療機関などにおいては,この余波をうけて,診察時間の切りつめ,通院間隔の延長,投薬日数の引延しなど,いろいろの手段を講じているが,この殺到的増加には,お手あげの状態となり,病院外来診療いな医療全般にわたる荒廃がさけばれている.

全国教室めぐり

自由・自主の気風に包まれた教室—広島大・第1内科

著者: 若本敦雄

ページ範囲:P.323 - P.323

 私たちの教室は浦城二郎教授が教室開設者で,今年は開講して21年めにあたります.浦城教授は本年3月定年退官の予定でありますが,その円熟した高潔な人格には教室員一同心より導敬し,慈父に接するの観があります.

ルポルタージュ 西ドイツの医療・6

超近代的設備をほこる大学病院—ベルリン・フライ大学付属病院

著者: 水野肇

ページ範囲:P.324 - P.326

ドイツ医学改革への注目すべき動き
 西ドイツの医療は,いろいろな面で封建的であり,日本よりはるかに問題点が多いことは指摘してきた.これらにたいして,多くの改革が試みられているが,ドイツ医学改革への動きは,まだ微微たるもののようである.
 そのなかで,とくに注目される動きのひとつに"ベルリン・フライ大学付属病院"がある.西ベルリンは,いろいろな面から世界注視のマトになっている.周囲を全部東独に囲まれ,地つづきでソ連圏と接しているだけに,世界政治の焦点となることもしばしばだった.だが,政治世界ではなく,医療の世界で注目のマトになっているのが,この病院である.

診療所レポート

診療所における外来診療予約制

著者: 福島庸逸

ページ範囲:P.328 - P.330

3時間,3分
 「3時間,3分」というコトバがある.大病院に行くと待たされる時間が3時間で診察時間がタッタの3分という待合室での患者の陰口を表現したものだ.私たちの診療所でも診療開始の午前9時から10時ごろまではさほどでもないが,10時ごろからだんだんと待合室の患者数は増加してゆき,11時ごろになると35,6名にふくれあがる.診察医師は1名だから1時間に8,9名さばくのが精いっぱいで,2時間待たされるというのはふつうである.
 自分の番がくるのをイライラしながら待っているのはたしかに苦痛である.なんとかできないものかと従業員全体で討論を行なった.

症例 全身性疾患と心臓・2

糖尿病と心臓

著者: 堀健次郎 ,   鷹津正

ページ範囲:P.335 - P.338

 糖尿病と血管変化については腎糸球体および網膜毛細管の変化の記載が多数ある.しかし,現在では血管障害は上記2臓器にとどまらず,全身の血管に及ぶと考えられている.もちろん冠動脈も例外ではない.病理像は動脈硬化の像に似るが,光顕・電顕の知見では血管壁に特殊な物質の沈着を認めるといわれ,本稿では糖尿病における冠動脈変化,特に心筋硬塞の症例をまず掲げ,非糖尿病患者におけるそれとの臨床的な比較,ついで血管変化について述べる.

Hurler Syndrome(Gargoylism)の成人例

著者: 玉木敏正 ,   小沢永憲

ページ範囲:P.339 - P.344

 Hurler Syndrome報告例
 Hurler Syndromeは特有な顔貌,骨格系の形成不全,角膜混濁,肝脾腫,精神発育遅延を主症状とし,難聴,臍ヘルニア,鉤状手.皮膚粗造.短頸,剛毛,心臓・血管系の異常などを副症状とする疾患で,1917年Hunter1)によりはじめて骨形成不全について記載され.1919年Hurler2)は多発性骨変形,精神薄弱.角膜混濁を有する2症例を報告しDysostosis multiplexと称し.ついで1920年Pfandler3)が本症について報告記載した.1936年Ellis4)らは奇怪な顔貌よりしてGargoylismという名称でよび,1948年Washington5)はリポイド代謝障害によるものとして脂肪軟骨異栄養症(Lipochondro dysostosis)とよび.その他多くの名称で小児科・整形外科・眼科・精神科・病理学などの種々の領域において研究されている劣性遺伝によるものであるが,最近10年間の生化学的研究の進展に伴い,尿中および組織内に多糖類が証明され,本症が結合組織の糖代謝異常にもとづくものであることが明らかにされた.

内科専門医のための診断学・3

呼吸器系研修の範囲と深さ—3段階による判定を中心にして

著者: 笹本浩

ページ範囲:P.345 - P.349

I.はじめに
 日本内科学会から,内科専門医の研修カリキュラムを作製するにあたり,筆者には呼吸器系の分野を担当するように要請があった.そこで私案を作って送っておいたところ,だいたい,これにならって,各分野ともなるべく統一的にカリキュラムをまとめることになった.
 そのさいの基本的な考えかたとして,研修範囲と,その深さがわかるようにし,つぎの表1のような判定を各項目ごとに行なうこととなった.

筋電図のよみ方・最終回

誘発筋電図,trick motion

著者: 土肥一郎

ページ範囲:P.350 - P.353

神経生理学的覚えがき
 神経線維を伝わるインパルスについては,直接に線維上においた電極から増幅器に導くならば,活動電位としてのスパイクを記録することができる.しかし,このような記録は人体で日常行なうのは容易でないので,このインパルスが筋肉へ伝えられてからの現われとしての筋電図が臨床家に利用されているわけである.したがって筋電図に関してすこし立ち入った考察を試みようとするなら,神経生理学に関する比較的巨視的なシェーマを頭に入れておくことが必要である.またこのことは,次項に述べる誘発筋電図の理解にも欠くことができない基礎事項である.
 神経生理学は,心臓の興奮伝導の生理学と似た原理によって思考過程を組み立てることができる.正常インパルスの発生と伝導,異常インパルスの発生,2つまたはそれ以上のインパルスの相互干渉などの少数の原理に還元することが可能なわけである.ただし神経の場合は心臓の刺激伝導系め場合よりも,からみ合う要素が複雑であって,後者が1次元(直線上の現象)とするなら前者は3次元(空間内の現象)とすることができるほどである.

臨床家の内分泌学

消化管ホルモンとインスリン分泌

著者: 大根田昭

ページ範囲:P.361 - P.365

 消化管ホルモンとして知られているガストリン,セクレチン,パンクレオザイミンおよび腸管グルカゴンがインスリン分泌の調節に関与している機構が最近の研究で明らかにされつつある.さらに今後の研究によっては,これらの調節機構の失調と糖尿病や低血糖症発生との関係が明らかになっていくだろう.

他科との話合い

糖尿病患者の手術

著者: 筑紫清太郎 ,   伊藤徳治 ,   中田不二男 ,   上寺弘道

ページ範囲:P.354 - P.360

 糖尿病患者が手術を受ける場合,術前・術中・術後を通じて,正常人の場合とは異なった種々の配慮が必要である.これらの問題について,外科と内科の立場から.

診療相談室

腎性糖尿の原因・診断・予後

著者: 和田正久

ページ範囲:P.367 - P.367

質問 腎性糖尿の原因・診断および予後についてご教示ください.(川崎市・K生)

メディチーナ・ジャーナル=日医

保険医の身分と保険診療時間の分離

著者: 木島昂

ページ範囲:P.256 - P.256

 今まで診療時間については,あまり厳格に申し上げていませんでしたが,今年からは保険診療の時間を厳守していただくことになりました.保険で診療を受けられる方々は,各病院・診療所ごとに定められた保険診療時間内に診療を受けていただくようにお願いいたします.

検査メモ

簡易検査が適当する場合と不適当な場合

著者: 守屋美喜雄

ページ範囲:P.344 - P.344

 簡易検査は手技が簡単で,結果が迅速にわかり,特異性にとみ,かつ再現性もよく,日常診療においてはたいへん有力な武器といえましょう.しかし,どんな場合でも簡易検査ですむというわけではありませんから,どういうときに簡易検査をしたらよいか,その適応を心得ておく必要があります.
 簡易検査は,本来ベッドサイドまたは外来で,およそでよいから迅速に結果を知りたいときに実施するものです.簡易検査によって得られる検査結果は,陽性か陰性か,高値か中等値か低値かといった程度のおおまかなもので,たとえ何mg/dlという表示値が示されていても,それは参考程度の数値であり,絶対に正確な定量値として理解してはなりません.そういうわけで簡易検査の適応は主として(1)スクリーニングテスト,(2)救急検査,(3)集団検診ということになりましょう.したがって,簡易検査は原則として自分の医療機関で実施すべきものであって,委託検査にだすべき性質のものではありません.

尿のとり方

著者: 守屋美喜雄

ページ範囲:P.360 - P.360

 検尿のために尿をとるときは,患者に「はじめの尿はとらずに捨て,中間尿を採尿する」よう確実に指示しましょう.とくに婦人の場合は外陰部や腔からの分泌物が混入しやすいので,少し多めに前半尿を捨てさせます.
 集団検診で蛋白尿を指摘された患者に聞いてみると,中間尿ではなく,前半尿をいきなり採尿したという例が少なくありません.集検で忙しかったから指示できなかったのでしょうが,不注意な検査の結果,患者は右往左往させられたわけで,なんとも気の毒です.

臨床メモ

作られた‘小児の湿疹’

著者: 松島富之助

ページ範囲:P.300 - P.300

 小児科や皮膚科の医師にとって,小児の湿疹ほどその数の多いことと治りにくいことの2つの点から,最も大きな関心をもたざるをえない疾患はない.しかもこの湿疹は体質の遺伝が濃厚にみられ,父母にも同様の体質異常をもつものが多いうえに,文明がすすむにつれて湿疹はふえる傾向にあるという.Washington大学小児科のHolt教授によれば,アメリカで生まれた小児はアフリカの小児の数倍の湿疹をもっていて,また低開発地域の小児が文化のすすんだ地域に移ると,湿疹がふえていると述べている.
 その原因として推定されるのは,栄養がよくなると湿疹はふえること—このことは,かぜや消化不良にかかると湿疹が一時的によくなる点からも,またふとった乳児に多いことからも知られるが—も一因であるが,さらに育児指導の面から「あたためすぎ」が大きな因子をなしている.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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