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雑誌目次

雑誌文献

medicina7巻4号

1970年04月発行

雑誌目次

EDITORIAL

脳動脈硬化症

著者: 吉川政己

ページ範囲:P.405 - P.405

 脳動脈硬化症についての進歩は地味であるが,着実に総合的な知見が集積しつつあるように思う.ここではそれらを評価するさいに参考になる2,3のことがらについて述べることにしたい.

今月の主題

高コレステロール血症と脱コレステロール剤

著者: 友野隆

ページ範囲:P.406 - P.411

 動脈硬化症に関係してくる高コレステロール血は,1日も早く正常化することが,きわめて大切である.高コレステロール血症の診断の意義および脱コレステロール剤のえらび方を中心に.

(座談会)高脂血症—新しい考え方と対策

著者: 八杉忠男 ,   内藤周幸 ,   中村治雄 ,   五島雄一郎

ページ範囲:P.412 - P.421

 1965年,Fredricksonによって5つのリポ蛋白のタイプ分類がなされて以来,高脂血症の臨床的なアプローチは非常にやりやすくなってきた.高脂血症分類上の問題点,高脂血症を起こす疾患,さらに食事指導・薬物療法など,最近の新しい考え方について.

日常検査とその限界

血糖

著者: 青木紀生

ページ範囲:P.380 - P.381

 糖尿病の診断,その病状経過の観察に血糖の定量は不可欠の検査法であり,糖尿病以外の疾患の診断時,あるいは生理的見地から血糖の定量はきわめて重要である.
 血糖測定法は数多くあるが,いずれの方法も多少の欠点があり,いまだにその標準化の域に達していない.糖尿病研究班ではすでに古典化しつつあるHagedorn-Jensen法を標準法として採用しているが,本法は非糖性還元物質の影響が大きく真糖を測定しているとは考えられず,現在では最も特異性の高い方法としてブドウ糖酸化酵素法があげられる.また特異性はやや落ちるがSomogyi-Nelson法が比較的広く採用されている.さらにベッドサイドで簡易,迅速に血糖値を半定量できる簡易法も開発されている.いずれにしろ目的に応じて最も適した方法を採用すべきである.

診療手技

酸素療法

著者: 岩月賢一

ページ範囲:P.382 - P.384

酸素療法の目的
 酸素療法の目的は,高濃度の酸素を吸入させることによって組織のhypoxiaを改善し,生理的な機能を維待させることにあり,広い意味での吸入療法の1つである.組織のhypoxiaはいろいろな原因によって起こるので,酸素療法の目的を達するためには,同時にその原因に対する考慮と処置を必要とすることはいうまでもない.酸素吸入が適応となる場合としては,1)換気量はほぼ正常に保たれているが,血中ないしは組織の酸素分圧が低下している場合と,2)換気量が減少し,hypoxiaと同時に炭酸ガス蓄積のある場合とがある.前者は狭い意味での酸素療法の適応であり,後者はいわゆるIPPB療法(intermittent positivepressure breathing)の適応である.いずれの場合も,その前提条件としては気道が確保されていることで,酸素療法を行なう場合にはまず第一に考慮しなければならない問題である.

救急診療

脳卒中患者の輸液

著者: 飯田喜俊

ページ範囲:P.386 - P.388

脳卒中と体液異常
 脳卒中患者の輸液で問題になるものに,まず脱水症がある.これは意識がなくなるために経口的に水摂取ができなくなり,さらに嘔吐,発熱,発汗,過剰換気などのために,水‐電解質の喪失をきたすことが原因となる.また,尿濃縮の障害があって多尿となることも脱水症を増悪させる.このような患者では口渇感が消失することが少なくなく,脱水症が高度になっても気がつかないことがしばしばである.それ故,口渇感の有無が水欠乏に対する輸液の指標にはなりえないのである.さらに悪いことには,これらの体液異常により生じた脳症状,例えば脱水症における精神混乱や意識障害,水中毒のさいの痙攣などを,その十分な原因追及なしに,簡単に脳卒中それ自体によるものとし,適切な対策がなされないことが少なくなく注意を要する.
 第2の脳卒中における体液異常として,不適切な輸液を行なった結果水中毒や食塩過剰をきたすことがある.脳卒中をきたす患者は老人の場合が多く,いわゆるホメオスターシスも十分でない,さらに前述した口渇感の欠如もこの医原性の体液異常をきたす原因となる.そして,心機能の障害があると肺水腫などをきたすことにもなる.

略語の解説 28

PUO-RF

著者: 阿部正和

ページ範囲:P.391 - P.391

PUO pyrexia of unknown origin:原因不明熱 別名FUO,fever of unknown originともいう.
PVP polyvinyl pyrrolidon:ポリビニールピロリドン 代用血漿の1つ.分子量は約4万.ときに131IでラベルしたPVPを静注して,糞便中への排泄量を測定し,蛋白喪失性胃腸症の診断に利用することもある.

統計

日本人の平均余命—とくに平均寿命について

著者: 小川博

ページ範囲:P.394 - P.394

 このだび公表された昭和43年簡易生命表から日本人の平均寿命とその推移,および諸外国の平均寿命をみてみたいと思います.
 平均余命というのは,ある年齢に到達したばかりの人が平均してあと何年生きるかということを示すもので,なかでも平均寿命は,0歳児が平均何歳まで生きるかということを示すもので,一国の保健衛生水準を端的に表現するものとして注目されています.

目で見る臨床検査シリーズ

病原微生物の塗抹検査

著者: 河合忠

ページ範囲:P.376 - P.377

 感染症の原因をつきとめるのにもっとも確かなことは病巣あるいは患者体内から病原体を分離・同定することである.その場合通常,患者から採取した検体について塗抹検査→分離培養検査→同定検査の順序で検査を進める.しかし,分離培養には少なくとも1夜は必要であり,真菌,結核菌などでは少なくとも数週間は必要である.ところが塗抹検査は検体を採取すると,ただちに検査して成績が得られるという大きな特長がある.しかも,分離培養や同定検査と異なり,医師自身で簡単におこなうことができるので塗抹検査の方法および意義を十分理解しておくことは感染症の日常診療の重要なことである.ここでは実施方法はさておき、判定のコツならびに意義についてまとめてみよう.

カラーグラフ

病原微生物の塗抹染色検査

著者: 河合忠

ページ範囲:P.396 - P.397

 患者からの材料の塗抹染色標本を鏡検することは,細菌検査の第一歩として日常必ず行なわれる.もっとも広く行なわれるものとしてグラム染色法,チール・ネルセン抗酸菌染色法があり、必要に応じてメチレンブルー染色法,墨汁法などがある.塗抹染色検査は次に行なう培養検査の培地の組み合わせを定める上に必要なばかりでなく,病原微生物の種類を推定するのに役だつことが少なくない. (本文6ページ参照)

グラフ

腹部血管造影

著者: 坪郷義崇 ,   平松京一

ページ範囲:P.399 - P.404

 血管撮影は日常的な検査手技として,X線診断法のなかできわめて重要な部分を受け持つにいたっている.したがって放射線診断を専門としない医師にも,血管撮影についての原理と適応についての最小限の知識が要求される,血管撮影が十分にその臨床的役割を果たすためには,いくつかの条件がみたされなければならない.

診断のポイント

おとなのおたふくかぜ—流行性耳下腺炎

著者: 名尾良憲

ページ範囲:P.422 - P.424

 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)Mumpsは,その名の示すように耳下腺の有痛性腫脹を主徴とするウイルス感染症である.本症は全身性感染症で,耳下腺炎のほか顎下腺炎,舌下腺炎をおこすことがあって,そのほか膵炎,睾丸炎,卵巣炎などをおこすこともある.またまれに甲状腺,胸腺などの炎症をおこすこともある.これらの内分泌器官のほかに神経系をおかし髄膜炎(ときに脳炎)をおこすことが少なくない.
 本症の罹患率は幼児から学童にかけで大であるが,成人をおかすこともまれでない.潜伏期は2-3週で,飛沫感染によって伝染する.

簡単な呼吸機能検査器具でわかるもの

著者: 三上次郎

ページ範囲:P.425 - P.427

肺機能検査の意義
 肺の働きは生命の維持に必要な酸素を空気中より血液中に取り入れ,炭酸ガスを体外に排出することにある.この機能が円滑に行なわれているか否かを検査するのが肺機能検査である.
 末梢臓器に必要なO2の摂取,CO2の排出が十分に行なわれているか否かのみを知るには動脈血ガスの分析を行なえばよいともいえるが,実際に肺の働きが正常か否か,また,いかなる部分に障害があるかを知るにはこれだけでは不十分なのである.人間の肺の働きは平常では全能力の1/5ないし1/10の力で働いており,またあらゆるところで代償作用が行なわれているので,相当程度に機能障害が起こってこないと動脈血のガス相に変化は現われてこない.また外界の空気を吸入してこれを動脈血内に取り入れ,末梢臓器に到達するまでには数多くの関門があり,肺機能低下をみたときにそのいずれの部門で障害が起きたかを知らねばならない.それゆえ肺機能検査とはきわめて複雑な検査となるが,いま簡単に項目のみをあげてみると,

血小板減少と臨床検査

著者: 藤巻道男

ページ範囲:P.428 - P.430

血小板の止血機構
 血小板は止血機構において,血漿凝固因子と密接な関係をもち,中心的な役割を果たしていることは,多くの研究者によって認められているところである.
 血小板は多岐にわたる機能を示し,血管が損傷されて膠原線維が露出すると血小板は粘着し,粘着した血小板は他の血小板と凝集して血小板血栓を形成する.このさい血小板は形態的な変化を示すと同時に凝固活性を有する物質(主として血小板第3因子)を放出し,血漿凝固因子とともに線維素を形成して凝固血栓の形成を促進する.凝固血栓が形成され止血が完了すると,血栓が拡大するのを防ぐために血餅収縮が起こり,トロンビンを吸着して抗トロンビンが作用し,生成されたトロンビンを不活性化する.この血餅収縮および抗トロンビンの活性化にも血小板の存在が必要である.

治療のポイント

脳血管拡張剤—臨床応用時の注意

著者: 秋山実

ページ範囲:P.431 - P.433

 脳血管障害に対する脳血管拡張剤の使用については,近年いろいろな問題が提起され,その臨床応用も従来の概念とやや異なったものとなってきている.もとより脳血管拡張剤は脳血管のみを拡張し他の血管には影響をおよぼさないのを理想とするが,このような薬剤は数少なく,大部分は多少なりとも他の血管に作用して,それを拡張あるいは収縮する.ここでは現在脳血管拡張剤として使用されている薬剤の紹介と,その臨床応用時の注意についてふれてみることとする.

結核化学療法をどこで打ち切るか

著者: 岩崎龍郎

ページ範囲:P.434 - P.436

基本となる3つのポイント
 肺結核の化学療法を打ち切る時点は次の3つの成績が基本になって定められている.1つは化療によりいつまで病変の改善が続くかの事実であり,第2は化療の継続期間別に治療を中止した後の悪化頻度の成績であり,第3にそれらをおぎなうものとして,いろいろの期間化療をやった後に切除された病巣内の結核菌培養成績がある.
 第1については最も検討しやすいので参考資料にこと欠かない.化学療法の歴史が示すように,病変のX線的改善は化療4カ月より8カ月が,8カ月より1年のほうが進んでいるので,化療期間はしだいに長期化した.しかし多くの例では改善は1年ないし1年半で停止する.このような事実から結核化療の最短継続期間は1年ないし1年半という国際的な考え方が生じたのである.

留置カテーテルの適応と感染予防の実際

著者: 斎藤豊一

ページ範囲:P.437 - P.439

慢性不完全尿閉をきたす疾患
 膀胱内の尿を完全に排除できない状態を尿閉といい,そのさい排尿後も膀胱内に残っている尿を残尿という.
 尿閉にはいかに努力しても1滴も排尿ができない完全尿閉と,一部は排尿できるが,その後も残尿の見られる不完全尿閉とある.

Leading Article

腎移植の現状と将来

著者: 岩崎洋治

ページ範囲:P.442 - P.443

腎移植の成績のあらまし
 慢性腎不全の治療法として最近10年間に行なわれた腎移植症例数は約3000例と推定される.血縁者の腎を移植した成績はその約半数が5年以上生存し,死体腎移植では約20%が5年以上生きながらえている.これらの成績は不治の病いと考えられていた慢性腎不全の治療法として,腎移植が医療レベルで検討されるべき時期にきたことを示している.
 四方らの集計によれば,わが国ににおいては145例の腎移植が報告されている.そのうち血縁者から腎の提供を受けた69人中16人が生存中であるが,死体腎移植症例32例中,現在生存中の症例は私どもの3例をふくめて,わずか4例にすぎない.

全国教室めぐり

"白血病"と積極的に取り組む—岡山大・第2内科

著者: 喜多島康一

ページ範囲:P.445 - P.445

 岡大第2内科教室は大正2年故斎藤精一郎教授により創設され,大正13年若冠33歳の若さで赴任された故柿沼昊作名誉教授により確固たる礎が築かれた.昭和12年柿沼教授が東大へ転じられた後に北山加一郎教授が第3代教授となられ,さらに昭和27年11月現平木潔教授が第4代教授となられ今日に及んでいる.
 まず教室の主たる研究の流れを紹介すると,平木教授はすでに助教授時代より柿沼・北山両教授よりひき継がれた日本脳炎の研究に加わっておられたが,教授就任後「日本脳炎のACTH療法」を発表し注目され,さらに現在は第3内科に転じた太田善介助教授の日本脳炎ウイルスの電顕的研究により見事に結実した感がある.

ルポルタージュ 西ドイツの医療・7

医科大学の未来像—建設中のウルム医学・自然科学大学

著者: 水野肇

ページ範囲:P.446 - P.447

注目されているウルム大学
 ベルリン・フライ大学付属病院のセントラリゼーションとともに,もうひとつ西ドイツ医学の新しいあり方として注目されているのに「ウルム医学・自然科学大学」がある.この大学は,西ベルリンという特殊な地域に誕生したものとちがって西ドイツのなかから生まれたもので,いまのドイツ医学の欠点を除去しようとのねらいから出発した,いわば革新的な新しい大学であるところに大きな注目が集まっている.
 西ドイツのミュンヘンから西へ約120キロメートルのところにウルムという街がある.人口わずかに9万3000人.いまだに東ローマ帝国時代のたたずまいを街のあちこちに残しているような静かな街である.街の中心にある教会の塔の高さが176メートルもあって,教会の塔としては世界一高いことで有名である.チリひとつ落ちていない美しい街路で,ところどころに緑があって,張り紙のようなものも少ない.ただそのなかにあって,音楽会のポスターだけがやたらに目につく.

病理夜話

パクリ パクリ

著者: 金子仁

ページ範囲:P.452 - P.452

 長年病理解剖をやっているので,なにか恐ろしいことはなかったかとよく聞かれる.
 しかし実際には,そのようなことはほとんど覚えがない.ただ一度思い出すのも恐ろしいことがあった.昭和24,25年頃の話であるが,私が病理学教室の助手になったばかりのことである.現在内科医として活躍しているクラスメイトの倉持君から剖検を頼まれた.それも夜中の1時頃である.

症例 全身性疾患と心臓・3

肝疾患と心臓

著者: 塘二郎 ,   鷹津正

ページ範囲:P.457 - P.460

 肝臓が蛋白代謝の中心になっていることは古くから知られていることで,肝疾患,ことに肝硬変,慢性肝炎においては血清蛋白の異常をきたす.1950年Wuhrmann1)は血清蛋白の異常に基因する心筋変性に対してMyokar-doseなる概念を提唱し,特に血清蛋白の異常をきたす多くの疾患の中で肝疾患を冒頭において述べている.しかし,心筋代謝に関する研究は現在酵素レベルでの検討がさかんに行なわれているのが現況であり,これらによっても未だ不明な点が多い.したがってWuhrmannのいうごとく心筋変性が血清蛋白の異常により生じるという事実は誤りではないにしても,これをもって一元的に解釈しえるものではないと考えられる.このような立場から肝疾患と心臓との関連をわれわれの症例も加えて今一度検討したいと思う.

内科専門医のための診断学・4

心臓聴診法(2)—心雑音

著者: 太田怜

ページ範囲:P.461 - P.465

雑音を聴きのがさないために
 ここでいう心雑肖とは,単に心臓から発生する雑音にかぎっているわけではない.心臓付近の大血管から発生するものも,便宜上,心雑音とよぶことにする.とすれば,当然のことながら.それらを聴きのがさないためには.前号(medicina 7巻1号)で述べたように.在来の心臓聴診部位以外のところにも,ひろく聴診器をあててみる必要がある.たとえば.大動脈炎症候群の雑音は.頸部や腹部を聴診することによってはじめて.それと知ることができる場合があるし,動脈管開存の雑音も、第II肋間胸骨左縁からだいぶ離れた位置に聴診器をあてないかぎり,正しくそれと診断できない.僧帽弁膜症の雑音も,在来いわれている僧帽弁口聴診部位よりは,ずっと外角低め寄りに最強点があり,ときにそれをはずすと,まったく雑音を聴くことができなかったという場合も,けっしてまれではない.大動脈弁閉鎖不全の雑音も,その最強点はErbの領域またはもうすこし下にあるのが普通で,いわゆる人動脈弁口聴診部位で聴かれることは,むしろまれである.
 聴診器も,膜面型のものとベル型のものをそれぞれたくみに使い分ける必要がある.前者は高調の雑音を聴くのに適当であり,後者は低調のものを聴くのに適当している.したがって大動脈弁閉鎖不全の雑音は,よほど著明なものでないかぎりベル型のものでは聴きとりにくい.ベル型のもので,心尖部拡張期性ランブルを聴いたときは,必ず膜面型のものでもう一度聴きなおしてみる必要がある.それによって,ベル型のものでは聴かれなかった収縮期雑音が聴かれたならば,もはや単純に僧帽弁狭窄とはいいきれないし.さらには拡張期ランブルや,opening snapがいくら,著明であろうとも臨床的診断としては,僧帽弁閉鎖不全とすべき場合も生じてくる.

臨床家の生化学

ビタミンの生化学的作用による欠乏症の診断

著者: 宮地一馬

ページ範囲:P.466 - P.471

 今やビタミン欠乏の診断法においては,欠乏一般の裏にひそむ特定の代謝異常にもとづいた各論的方法論の確立が必要である.ここでは,ビタミンB1,B2,B6,葉酸,B12についてその生化学的役割と欠乏症の診断法の概要を述べる.

小児心電図講座・1

小児の正常心電図(1)—脈拍数およびP波

著者: 津田淳一

ページ範囲:P.472 - P.474

はじめに
 小児心電図の正常像の特徴として,幼若例ほど右軸偏位,右室肥大の著しいことが1908年のFunaroの報告以来注目されております.しかしながら出生時から思春期までを,統計的に多数例につき正常像を検討した成績は1951年のZiegler1)の報告以来で比較的新しく,ことに新生児期の生理的変動については1965-66年にかけての津田24のIII)やEmmanoulides23)の成績によりようやく概略が判明してきました.

medicina CPC

大動脈弁口狭窄症に多数の肺硬塞を伴った1剖検例

著者: 金上晴夫 ,   太田怜 ,   大貫寿衛 ,   中島利子 ,   関清

ページ範囲:P.475 - P.484

現病歴からなにを考えるべきか
 太田 この症例は,若いときから心臓病があったらしく,発熱,浮腫があり,そして黄疸が強くなったということで入院されたようですが,現病歴についてご質問ありますか.
 金上 5,6歳のときに胸膜炎に罹患したということですが,肺炎に随伴したものは別として,結核性胸膜炎は子どもには珍しいので,本当に胸膜炎に罹患したという証拠があるのでしょうか.

出題

ページ範囲:P.392 - P.393

下記の症例を診断してください.

診療相談室

甲状腺腫の触診のコツ

著者: 降旗力男

ページ範囲:P.487 - P.487

質問 甲状腺腫の触診のコツをお教えください. (川口市・K生)

メディチーナ・ジャーナル=厚生省

衛生検査技師法の問題点

著者: 木村亮太郎

ページ範囲:P.491 - P.491

 医療の場における衛生検査の意義が,時とともに緊要の度を加えていることは論をまたない.そして今日では,すでに衛生検査業務のほとんどが,衛生検査技師にゆだねられている.しかし,かかる枢要な職種である衛生検査技師の身分を規定した「衛生検査技師法」(昭和33年制定)には,多くの問題がある.もとより,論ずる人の立場によって,現行法の受けとり方は異なるであろうが,一応,現下の焦点とされている事柄をあげてみよう.

くすりの話題

これからの抗ウイルス剤—インターフェロン誘発物質

著者: 石田名香雄

ページ範囲:P.440 - P.441

 ウイルス病回復の過程においてインターフェロンという分子量3万の蛋白が網内系の細胞や白血球から放出される.産生細胞の種類に応じて分子量は6万のことも9万のこともあるが,いずれのインターフェロンもただちにウイルス感染細胞にもぐりこみ,そこでウィルス合成を即時に停止させる.その理由はウイルスのメーセージ(遺伝情報)の伝達(蛋白合成)のみが特異的に阻止され,宿主細胞のメーセージの伝達は阻止されないような蛋白がインターフェロンの入った感染細胞内で合成されるからである.しかしここにはその機作を深くたずねず,ウイルス病の患者において,いかにしてこのインターフェロンを大量に動員して治療に結びつけるか,方法論を考察してみたい1)2)

話題

興味深かった2症例—第55回循環器学会関東甲信越地方会から(1969年11月29日・東京)

著者: 関清

ページ範囲:P.444 - P.444

右肺動脈閉塞を伴った大動脈症候群の1例(東医大内科)
 大動脈炎症候群では,大動脈およびその主幹分枝の炎症,狭窄ないし閉塞が主に起こるが,肺動脈にも同様の変化を起こすことがあると那須教授により指摘され(剖検例で),注目されてきた.
  この症例は肺scanningや血管造影による肺動脈閉塞の生前の証明例である.その際いろいろな教室から同様な追加報告があり,一側肺動脈の閉塞を伴った症例が案外多いのを知らされたことは,たいへん興味深かった.

フェニックスのごとき再生を期して—人間の医学シリーズ(全10冊)完結出版記念会に出席して

著者: ,   本誌編集室

ページ範囲:P.485 - P.485

困難にうち勝った自信
 実地医家の会編「人間の医学シリーズ」全10冊が,本年1月完結した.2月12日夜,出版記念会が赤坂プリンスホテルで,60余名の参会者を得て盛大に行なわれた."実地医家の会を発展させるためには,なにか事業を行なう必要があったのです.そこで出版局を作り「人間の医学シリーズ」を刊行することを目標にしました."浦田卓氏(実地医家の会会員)は,このように発刊当時のことを回想する.
 "忙しい診療時間の合い間に,編集の仕事を割りふっていかねばならない困難は確かにありました.そのほか,幾多のカベに直面しながらも,このシリーズを完結できたということは,やればなんとかできるんだという自信を私たちに植えつけたと思うんです."と感慨深げに,だが淡々と語る浦田氏.

臨床メモ

ある種のセントラル・ヒーティングとカゼ

著者: 浦田卓

ページ範囲:P.424 - P.424

 昭和元禄のお蔭だと思われるが,ここ数年まえから,暖房を新たにまたは改造して,セントラル・ヒーティングにする家庭が,ポツポツ現われている.そういった家庭に往診して,しばしば訊かれるのは,セントラル・ヒーティングに暖房を切り換えてから,一家揃ってカゼにかかりやすくなり,しかも,そのカゼが重いようだが,セントラル・ヒーティングとカゼのひきぐあいとの間に,なにか関係があるのではないか,ということである.
 ある患家では,いままでほとんど市販のカゼグスリで簡単にカゼがなおっていたのに,セントラル・ヒーティングに切り換えてから何度も医師に往診を頼むようになった,とグチをこぼす.さらに,べつの患家では,1人がカゼをひくと,それがなおりきらないうちにだれかしらがカゼをひき,家族一同をぐるりと一巡すると,はじめに
ひいたものが,またカゼをひきなおす,まるで暖められた空気が各部屋をぐるぐる回るのと軌を一にしているようだ,とグチるのである.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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