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文献詳細

雑誌文献

medicina7巻4号

1970年04月発行

文献概要

内科専門医のための診断学・4

心臓聴診法(2)—心雑音

著者: 太田怜1

所属機関: 1自衛隊中央病院内科

ページ範囲:P.461 - P.465

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雑音を聴きのがさないために
 ここでいう心雑肖とは,単に心臓から発生する雑音にかぎっているわけではない.心臓付近の大血管から発生するものも,便宜上,心雑音とよぶことにする.とすれば,当然のことながら.それらを聴きのがさないためには.前号(medicina 7巻1号)で述べたように.在来の心臓聴診部位以外のところにも,ひろく聴診器をあててみる必要がある.たとえば.大動脈炎症候群の雑音は.頸部や腹部を聴診することによってはじめて.それと知ることができる場合があるし,動脈管開存の雑音も、第II肋間胸骨左縁からだいぶ離れた位置に聴診器をあてないかぎり,正しくそれと診断できない.僧帽弁膜症の雑音も,在来いわれている僧帽弁口聴診部位よりは,ずっと外角低め寄りに最強点があり,ときにそれをはずすと,まったく雑音を聴くことができなかったという場合も,けっしてまれではない.大動脈弁閉鎖不全の雑音も,その最強点はErbの領域またはもうすこし下にあるのが普通で,いわゆる人動脈弁口聴診部位で聴かれることは,むしろまれである.
 聴診器も,膜面型のものとベル型のものをそれぞれたくみに使い分ける必要がある.前者は高調の雑音を聴くのに適当であり,後者は低調のものを聴くのに適当している.したがって大動脈弁閉鎖不全の雑音は,よほど著明なものでないかぎりベル型のものでは聴きとりにくい.ベル型のもので,心尖部拡張期性ランブルを聴いたときは,必ず膜面型のものでもう一度聴きなおしてみる必要がある.それによって,ベル型のものでは聴かれなかった収縮期雑音が聴かれたならば,もはや単純に僧帽弁狭窄とはいいきれないし.さらには拡張期ランブルや,opening snapがいくら,著明であろうとも臨床的診断としては,僧帽弁閉鎖不全とすべき場合も生じてくる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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