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EDITORIAL
甲状腺疾患—原因論の移り変わり
著者: 鳥飼龍生1
所属機関: 1東北大内科
ページ範囲:P.529 - P.529
文献購入ページに移動1929年にAronおよびLoebが下垂体前葉からTSHを抽出し,これが動物に甲状腺の腫大と機能亢進ばかりでなく眼球突出もおこすことを明らかにして以来,Basedow病は前葉からのTSH過剰分泌に起因するということが,ほとんど決定的となったかと思われた.ただ血中TSHの証明が,粘液水腫では可能であるのにBasedow病では困難なこと,また粘液水腫では眼球突出がまれであることが不思議とされていた.またWernerらは,Basedow病の甲状腺機能が甲状腺剤の投与によっても抑制されないことから,この説に疑問をもっていた.さらにFajansらによりSheehan症候群でBasedow病の合併をきたした症例が報告され,TSH説はしだいにあやしくなってきた.ついに1956年になりAdamsらはBasedow病患者血清中にTSHとは異なる甲状腺刺激物質LATSを発見,分離した.
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