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地域医療の問題点—包括医療への再認識を
著者: 吉沢国雄12
所属機関: 1浅間総合病院 2長野県国保直診医師会
ページ範囲:P.1334 - P.1336
文献購入ページに移動戦後の医学の進歩,それに伴う疾病・人口構造の変化,一方,社会保障の進展によって,医療が単に臨床的な疾病医療にとどまらず,広く保健予防,後医療,更生医療まで含む,いわゆる"包括医療"として考えられるようになったことは,世界的な趨勢である.ことにわが国は終戦により新しく民主主義国家として生まれ変わり,憲法第25条によって「すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保証されている.「健康とはただ単に疾病または病弱でないというだけでなく,肉体的にも精神的にも社会的にも完全に調和のとれた状態(WHO憲章による)」である以上,国は国民を疾病から予防し,さらに健康を増進させる義務があるが,昭和36年に国民皆保険が実現して,まがりなりにも国民の疾病保障制度が確立されはしても,真の医療保障にはほど遠いことは周知の事実である。
包括医療を地域に実践することが地域医療であり,地域医療を国民に保障することによって,国の医療保障体制が全うされるということには異論はないようである.しかし包括医療をいかにして地域に実践するか,その方法,組織機構,その主体,あるいは"地域"そのものの概念などについては,多くの考え方と問題点があると思われる.
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