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雑誌目次

雑誌文献

medicina8巻1号

1971年01月発行

雑誌目次

Editorial

肺炎の移り変わり

著者: 中川圭一

ページ範囲:P.13 - P.13

 戦前においては肺炎といえば肺炎双球菌による肺炎を意味し,これが細菌性肺炎の90%以上をしめ,病型も大葉性で,さび色の痰,1週後に下熱する分利という臨床的特徴をもった興味ある疾患であった.しかし戦後,ペニシリンをはじめとするグラム陽性球菌に感受性のある抗生物質が広く使用されはじめてから肺炎双球菌による肺炎は著しく減少し,そのうえ抗生物質投与のため典型的な経過をとる肺炎双球菌性肺炎は姿を消した.これに代わってブドウ球菌による肺炎が増加し,最近ではグラム陰性桿菌による肺炎が増加の傾向にある.
 われわれの病院で1963年1月から1965年12月までに経験した細菌性肺炎は43例で,そのうち起炎菌を決定しえたものは21例で,その内訳はDiplococcuspneumoniae 8例,Staphylococcus aureus 5例,β-Streptococcus 2例,Haemophilus 3例,Klebsiella 3例であった.その後の1966年1月から1969年12月までの肺炎96例中起炎菌決定例は34例で,その内訳はDiplococcus pneumoniae 3例,Staphylococcus aureus 5例,β-Streptococcus 3例,E. Coli 2例,Klebsiella 9例,Proteus 1例,Pseudomonas 6例,Enterobacter 1例,その他のグラム陰性桿菌2例で,あきらかにグラム陰性桿菌によるものが増加している.この傾向はわれわれの病院の中央検査室における喀痰検査の年次別統計でもはっきりあらわれている.

今月の主題

最近の肺炎—その概念と問題点

著者: 荻間勇

ページ範囲:P.14 - P.19

 抗生剤の登場,肺疾患研究の進歩により,肺炎も,その概念・疫学・病像のすべてにわたり,大きい変貌を見せつつある.その一端にふれてみたい.

(座談会)呼吸器感染症—最近の問題点

著者: 橘田晃 ,   谷本普一 ,   池本秀雄 ,   三上理一郎

ページ範囲:P.20 - P.30

 呼吸器感染症の種類と頻度は漸次変ぼうしつつある.この座談会では,ウイルス,真菌,グラム陰性菌による呼吸器感染症に焦点をしぼり,各専門家の出席を得て,インフルエンザ,アスペルギルス症,緑膿菌感染症について,その病像および治療について話合っていただいた.そして呼吸器系における生体防御機構と,上気道における常在菌叢の病態生理など,呼吸器感染症の病因論にも及んだ.

Leading Article

臨床家のめざすところ—肝硬変の分類から

著者: 高橋忠雄

ページ範囲:P.4 - P.5

 1956年の1月26日,CubaのLa Habanaで行なわれた第5回汎米消化器病学会での"肝硬変の分類および命名の協議会"がSherlockを委員長として開かれた.その席上での決定事項はGastroenterology, Vol. 31, No. 2のP. 213-216に載録されている.ここでは形態学的,原因論的および機能的の観点からの,肝硬変の分類について討議されたのであるが,どういう理由からか,このうちの形態学的分類としてのportal, postnecroticおよびbiliaryという分け方だけがクローズアップして受け取られたようである.
 ことにわが国の肝臓学者は,これに刺激されたところが大きく,その2,3年後の日本肝臓学会(当時はまだ国際肝臓研究会日本支部の名でよばれていた)では,この肝硬変の分類をめぐっての討議がしばしば行なわれた.ただし,日本ではすでに半世紀以前に提唱された長与の甲型・乙型の分類があって,病理学者の多くが,これを踏襲しているので,多くの病理学者と内科学者により主張された分類も,つまるところはこの甲・乙両型の意味づけと亜型の設定などによる修飾が主であった.その内容は大同小異ともいえるが,最終的な調整ができないままに,現在に至っている.

カラーグラフ

SMONの緑色物質—キノホルムとの関連

著者: 井形昭弘 ,   長谷部碩 ,   辻照雄

ページ範囲:P.10 - P.11

 SMONの緑色物質については,緑色舌苔が本症に特異的でかつ神経症状に密接な関係がある事実が注目され1),次いで時期を同じくして緑便が2)しばしば出現することが認められたが,われわれは最近三楽病院入院患者中に縁色尿を呈した2症例を経験した5).この尿中緑色物質は吉岡,田村3)によって,キノホルムと鉄の錯化合物であることが決定された.このことが緒となって,キノホルムとSMONの関係がクローズアップされ,キノホルムをSMONの原因とする論議がおこったことはすでに周知のことである.われわれの経験6)7)や椿ら8)のデーターから今のところいくつかの疑点も残してはいるが,キノホルム服用がSMON発症の1つの重要な条件であると考えられる.

診断のポイント

血中CO2からわかるもの

著者: 長谷川博

ページ範囲:P.31 - P.34

2つの診断的意義
 血中CO2の診断的意義は2つに分けて論ずることができよう.すなわち1つは,血中に溶存しているCO2ガスに関するもので,呼吸と密接な関係があり,低すぎ・高すぎはhypo-,hyper-capniaと呼ばれ,mmHg単位によって表現されるのが通例である.もう1つはCO2 combining powerまたはtotal CO2 contentと呼ばれるもので,低すぎ〜高すぎは呼吸とは一応無関係で,代謝性acidosis〜alkalosisの重要な指標となる.単位は通常mM/lまたはmEq/lで表現されるが,Astrup,S. Andersenらの測定法が普及して以来,Base Deficit(BDと略)またはBase Excess(BEと略)という単位でmM/lを使って表わされることもある.
 そこでこれら2つの血中CO2について,はじめに
体液生理学的な概論をのべ,続いて技術的な面に重点をおいたterminologyおよび具体的な診断価値についてのべてみることにする.

赤痢と誤られやすい腸重積症

著者: 柳下徳雄

ページ範囲:P.35 - P.37

伝染科での 経験から
  腸重積症は乳幼児に好発する疾患であるため,小児科を訪れることが多いのは当然であるが,病院では外科を訪れる患者もかなり多い.これは,開業医から手術的治療の要請も含めて紹介される関係であろう.
 ところで,私が最近まで勤務していた駒込病院では,伝染科で腸重積症と診断する患者の数があんがい多く,小児科や外科で初診する本症の患者数にほぼ匹敵する状況であった.これは,赤痢や疫痢を疑って紹介されたり,あるいは誤診されて送院される腸重積症が多いためである.

治療のポイント

術後肺炎の予防と治療

著者: 宮本忍

ページ範囲:P.38 - P.41

無気肺の予防と治療
 外科手術後におきる肺合併症として最も多いのは,いうまでもなく無気肺であって,肺炎はその続発症として2次的におきるものと考えてよい.しかも,術後肺炎は気管支肺炎の型をとり,大葉性肺炎はまれである.これに対し,術後の吸引あるいは誤嚥による肺炎は区域ないし肺葉全体にわたるから気管支肺炎よりも大葉性肺炎の型をとりやすい.しかし,この場合も吸引あるいは誤嚥の直後には気管支の閉塞による無気肺を生じ,2次的に感染をきたすものと考えてよい.したがって,実地臨床では術後肺炎を問題とするよりはむしろ手術後無気肺の予防と治療をまず最初に考えるべきである.

ゲンタマイシンの使い方

著者: 藤本安男

ページ範囲:P.42 - P.44

 ゲンタマイシン(GMと略す)は,1963年We-insteinによってMicromonospora Purpureaより分離された新しいAminoglycoside系の抗生物質で,若干化学構造の異なる3種の成分の混合物であるが,各成分の間には抗菌力,体内分布,毒性などにほとんど差がなく,この3種の成分の一定混合物が注射剤と外用剤として市販されている.
 GMはアミノ配糖体系抗生物質(カナマイシンKMなど)の一般的特徴,すなわち製剤的にきわめて安定であり,グラム陽性および陰性の両方の菌に有効であり,生体内へは経口では吸収されず注射によるが,排泄は大部分腎臓よりである.他のアミノ配糖体系抗生物質との間にはある程度の交叉耐性がある.しかしGMの最も特徴とするところは,従来の他の抗生物質で抑圧できなかった緑膿菌に対し,最も強力な抗菌力をしめす点にある.以下簡単に,GMの基礎的性質と臨床使用例を紹介する.

低肺機能者の生活指導

著者: 日置辰一朗

ページ範囲:P.45 - P.49

 医学の進歩による平均寿命の延長と公害による大気汚染などによって,低肺機能者はしだいに増加している.このことは実地医家特に呼吸器科臨床医の強く感ずるところである.その原因疾患の多くはいわゆる成人病であるので治療はたいへん困難で,予防的な考慮が重視される.すなわち低肺機能の程度(重症度)が進まないように生活の指導を行なう必要がある.また疾患の種類によってときどき悪化したり軽快したりするいわゆるreversible(可逆性)の変化を示すものについては悪化の予防またはそれのごくはじまりに進行を止める努力もせねばならない.

内科専門医のための診断学・13

臨床肺機能検査—検査法の選択と自動化

著者: 西本幸男

ページ範囲:P.50 - P.56

臨床肺機能検査の意義
 1846年Hutchinsonがスパイロメーターによって肺活量を測定したが,これは近代における肺生理学の曙ともいうべきものであろう.その後肺生理学の分野においては,次々と新しいアイデア,あるいは新しい装置による研究が積み重ねられて今日の盛況を呈するに至っている.しかしながら他方,あまりにも急速な肺生理学の進歩のため,数多くの検査法は統合整理される暇もなく放置され,その臨床的応用に当たり取捨選択に迷う事態も生ずるに至っている.ここに「臨床肺機能検査」という考え方を導入する必要性が生じてきたわけである.この臨床肺機能検査に対する筆者なりの考え方は「呼吸と循環」18巻9号の巻頭言1)として述べておいたのでくり返さないが,対象が患者であり,学問的興味よりも,予後・重症度を含め,機能的診断や治療方針の確立に直接役だつ検査体系の確立が優先されなければならない.
 今回,本誌編集部で企画された「内科専門医のための診断学」の一環として臨床肺機能検査が取りあげられたのを機会に,いささかの私見を述べてみたい.

臨床家の遺伝学入門・1

人類遺伝学の重要性

著者: 大倉興司

ページ範囲:P.57 - P.60

 最近とみに,人類遺伝学ないし臨床遺伝学は臨床医学に不可欠の一分科として,その存在を要求されるようになった.わが国の医学教育・卒後教育はこの点においてまだ不十分であろう.そこで1年間連載の中から,臨床遺伝学の重要性を少しでも明らかにし,臨床遺伝学の内容をわかりやすく解説していくことが本欄の目的である.

日本人の病気

結核

著者: 青木正和

ページ範囲:P.62 - P.63

結核減少の傾向
 結核死亡率は昭和43年には10万対16.8となった.最も高かった大正8年の240.9と比較すると,実に14分の1以下で,結核死亡率の減少はきわめて順調といえるだろう.
 患者数でみても同様である.厚生省1)2)は昭和28年から5年ごとに全国の結核実態調査を行なっているが,この調査は,全国の1300分の1ないし1700分の1の比率で無作為抽出した地域の全住民について,胸部X線写真の直接撮影,ツベルクリン反応,問診を行ない,中央に委員会を設けて判定,解析を行なっており,その結果はこの種の調査としてはきわめて信頼度の高いものである.これによると表にみるように,全結核要指導患者(要医療+要観察)の全国推定数は,28年の553万人から43年の262万人へと順調に減少しており,要医療患者数も292万人から153万人へと,半減したことを示している.

日常検査のすすめかた

黄疸と臨床検査

著者: 只野寿太郎 ,   林康之

ページ範囲:P.64 - P.65

 日常診療でしばしば遭遇する黄疸は,血液中に増加したビリルビンが結合組織に沈着し,皮膚・粘膜が黄染する病的状態と定義できる.しかし皮膚の黄染はCarotenoidを大量に含有する食品の摂取後にも見られるので,まずビリルビンによるものかどうかを鑑別することも必要である.
 血清ビリルビンの増加は1)溶血による過剰産生2)肝細胞での間接ビリルビンの摂取障害3)肝細胞での間接ビリルビンの抱合障害4)肝細胞からの直接ビリルビンの分泌・排泄障害5)肝細胞障害や胆管・胆道系の閉塞による胆汁うっ滞の5種類に大別される.臨床的には内科的黄疸または外科的黄疸に,あるいは間接型の増加する溶血性黄疸,主として直接型の増加する閉塞性黄疸,間接・直接ともに増加する混合型の黄疸と3群に分けることもできる.

内科医のための小児診療の手引き

熱性痙攣

著者: 浦田久

ページ範囲:P.66 - P.67

熱性痙攣とは
 熱性痙攣とは乳幼児にみられる一種の機能性痙攣で,体温が急激に上昇するときにおこる非反復性痙攣をいう.成人ではインフルエンザなどの急性感染症で,とつぜん高熱をもって発病するとき,よく悪寒戦慄を訴えるが,これが乳幼児では痙攣の形であらわれる.熱性痙攣は発病初期にみられるため,初期痙攣initial convulsionとも呼ばれることがある.体温が徐々に上昇するときは熱性痙攣はおこらない.このことは実験的にも証明されている.
 熱性痙攣には次の3つの条件がある.

一般医のための救急診療のコツ

救急患者が多発したときの救護

著者: 藤田五郎

ページ範囲:P.68 - P.69

 この頃,災害対策ということが,真剣に考えられるようになり,大都市にもしも大地震が起こったらという想定のもとに,避難計画をたてたり,救助活動を考えたりするようになった.また,交通事故などで外傷患者が多数発生したときを考えての救護訓練にも,地区医師会も積極的に参加して行なわれるようになってきたのは大変よろこばしいことである.これも,人命尊重の思想が満ちあふれてきた現われであろう.医師会とか救急病院協会などの招きでお話しする機会がときどきあり,そのつど感ずる問題は,"集団患者を診療するのに秘訣は何なのか"という,解決のポイントを求めておられる事情がよく伺えるので,その点の考え方と実際について述べてみたい.

新薬の紹介

利尿剤—フロセマイドとエタクリン酸

著者: 浦壁重治

ページ範囲:P.71 - P.71

新薬としてのfurosemide, ethacrynic acid
 利尿剤の開発は,より強力で副作用の少ないものをめざして進められてきた.ここで強力という意味には,より少量で有効ということと,他剤ではどれだけ増量しても利尿をきたさないような浮腫(refractory edema)に対しても有効という2つの事柄が含まれるが,前者は減量によって副作用が改善されないかぎり,臨床的意義はない.
 この点1960年初頭に相次いで開発されたfuro-semnide, ethacrynic acidは他剤で無効ないわゆる抵抗性浮腫に,アシドーシス,アルカローシスとは無関係に利尿効果を示し,まったくユニークな存在である.しかし反面,あまりに強力であるため,他剤にも十分反応しうるような浮腫に無計画に投与すれば,脱水症などの体液異常をもたらす危険性をはらんでいる.これら2つの利尿剤以後,特に注目すべきものは登場していない.

各科のトピックス 皮膚科から

Livedo症状—皮膚の網の目状紅斑

著者: 西山茂夫

ページ範囲:P.73 - P.73

 Livedo症状とは皮膚の小動脈の狭窄性変化または小静脈の拡張性変化に基づく,末梢循環障害の1つである.臨床的にはおおよそ網の目の形をした淡い紅斑として,膝,肘の周囲,手背,足背などに,対称性に発生する.

統計

喫煙に関するWHO事務局長報告(その2)

著者: 小畑美知夫

ページ範囲:P.74 - P.74

紙巻きたばこ喫煙者超過死亡をもたらしている疾患
 紙巻きたばこを吸う人の超過死亡が高いのは,喫煙者が種々の疾病にかかる率が高いからですが,4件の大規模な追跡調査の結果からみますと,超過死亡の約80%は肺がん,気管支炎,肺気腫,虚血性心疾患およびその他の循環器系疾患によるものです(表).
 紙巻きたばこ喫煙者がその他の種種の病気にかかって死亡する率もたばこを吸わない人より高い.とりたてていうならば,胃潰瘍,喉頭がん,口腔がん,食道がん,ならびに膀胱がんなどであります.しかしこれらの疾患の死亡率はいずれも喫煙者,非喫煙者ともに低いので、紙巻きたばこ喫煙者の超過死亡を高くする要因としてはそれほど大きくはありません.

略語の解説 37

TTT-VC

著者: 阿部正和

ページ範囲:P.75 - P.75

TTT
 thymol turbidity test:チモール混濁試験 血清膠質反応の一種.チモールをバルビタール緩衝液に溶いた液に少量の血清を添加すると,液はわずかに混濁するが,もし血清のアルブミン減少,γ-グロブリンの増加があると,混濁が著しい.なお,血清中の脂質の増量があると,この反応の陽性度は促進される.普通は肝機能検査の一種として利用されている.正常値は0-4単位.

グラフ

頸椎疾患のX線像

著者: 山崎典郎

ページ範囲:P.79 - P.84

 頸椎のみならず一般にX線診断を行なう場合にはまず正常像を知らなければならない.特に脊椎(ことに頸椎)では,脊髄を容れる椎管腔と神経根の出る椎間孔は,脊髄および神経根と密接しているために四肢と異なり,ごくわずかな骨変化により著しい神経症状が見られるという解剖学的事項と同時に,臨床的にはまったく症状が見られなくてもX線上では著しい変化を見ることがある(Fig.10参照).このような相反する現象を見る場合のほかに注意すべきは環軸椎において正常にもかかわらず病的と思われがちな像を呈することがある.
 以上のことより,臨床家は頸椎疾患の診断にあたっては,その臨床像を正確にとらえることにより頸椎のX線読影にあたらなくてはならない.まずX線診断にあたっては,微細な骨変化をとらえるためには,X線写真の撮影条件の向上に努めるとともに,撮影時患者の体位を正確にとらせることが頸椎X線診断においては重要である.このことは誤診や見落としを防止するうえで留意すべき重要事項として銘記しなければならない.

心電図講座・1

右脚ブロック・右室肥大

著者: 町井潔

ページ範囲:P.85 - P.90

完全右脚ブロック
 図1は完全右脚ブロックの心電図である.特徴はQRS幅が0.12秒以上あること,V1またはV2でRSR'(R'>R)型であること,R'の頂点がQRSの始まりから0.06秒以上あることである.R'は右室自由壁の興奮がおくれてQRS末期にベクトルが右前方に向かうために生ずるものである.V1-V2のR'はV5-V6では深い大きなSを形成する.TはV1-3で逆転する.

症例 全身性疾患と筋・1

悪性腫瘍と筋

著者: 里吉営二郎 ,   木下真男 ,   鈴木雍人

ページ範囲:P.91 - P.94

 悪性腫瘍の症状が未だ著明でなく,全身状態もあまり侵されていない時に神経あるいは筋に特殊な症状が出現することがある.しかも後になって剖検を行なっても,その症状の原因となるような腫瘍の浸潤や転移が認められない.こうした症状の発現機序は未だ不明であるが,決して偶発現象でないことは,多くの症例の示すところである.

medicina CPC

高熱が弛張し,不定の末梢神経症状と高血圧をおこした症例

著者: 恒松徳五郎 ,   水田亘 ,   景山直樹 ,   宮崎元滋 ,   本田裕宏 ,   木島滋二

ページ範囲:P.95 - P.102

症例 神○史○,36歳男
入院 昭和44年5月22日

新春特集 Ⅰ

大学病院における内科診療—現況と将来

著者: 後藤文男 ,   天木一太 ,   繁田幸男 ,   南武 ,   小此木啓吾 ,   日野原重明 ,   池田正男

ページ範囲:P.109 - P.119

 大学病院もその外部の一般病院も"診療"においては同じである.しかし若い医師を送り出す大学病院にあっては,その診療・教育・研究の水準を最高度に保つべく要請されているのではないだろうか.新年にあたって,その現状を顧みつつ,新しい息吹きを与えるべく,大学病院内科の奥底にある問題を探っていただいた.

新春特集 Ⅱ

医の倫理

著者: 砂原茂一 ,   松村克己 ,   高橋功 ,   深津要 ,   野村実 ,   問田直幹

ページ範囲:P.120 - P.126

 最近の医療技術の進歩はめざましいものがあるが,それに伴って,今日ほど"医"本来の意義が見失われがちな時もなかったであろう。医のモラルについて,どのような見地から改めて問われなければならないか,各界のかたがたからご意見をお寄せいただいた.

検査メモ

喀痰中の一般細菌検査について

著者: 守屋美喜雄

ページ範囲:P.102 - P.102

 胸部XPで結核性か非結核性か判然としない陰影を認めた場合,肺結核治療中に発熱などを認め,それが結核の悪化のためとは考えられないときなどには,喀痰について,結核菌と同時に一般細菌の検査を行なう必要がある.
 一般細菌の塗抹染色は,単染色ではなく,グラム染色を実施するほうが治療薬剤の選択にあたって役にたつ.しかし,一般細菌は染色だけでは菌種決定ができないし,また,化学療法にさいしては感受性テストで使用薬剤の適否を確認しておくことが望ましいわけだから,かならず培養をしておくべきである.

メディチーナ・ジャーナル=厚生省

教育病院構想

著者: 木村亮太郎

ページ範囲:P.108 - P.108

 進展著しい医学・医療各分野の需要に応じ,優れた資質の医師を確保するための中心課題である医学教育のあり方は,今や,世界的にきわめて重要視されてきている.わが国においても,医学部,ことにその付属病院では,多くの改革がなされつつある.その中にあって,いわゆる教育病院構想も,早くから欧米先進諸国の近代的医学教育の導入方法として検討されてきたものの1つであり,あわせて現時点にあっては,社会問題化しつつある医師偏在傾向の現実面の打開に,間接的に貢献しうるものとして,最近にわかに脚光をあびてきた.

病理夜話

子宮(その1)

著者: 金子仁

ページ範囲:P.127 - P.127

 病理学教室へ入って20年以上もたったが,その間いろいろの思い出はつきない.ことに生検(プローベ)や細胞診は決定診断であるため,臨床医に迷惑をかけたことも一通りでない.生検,細胞診のうちでも子宮癌の診断を依頼されることが一番多い.細胞診にしろ,生検にしろ,病理診断は病理医の絶えざる努力と病理衛生検査技師の優秀な標本と相まって初めて適切に,正しく,つけられるのである.
 それはもう20年も前の話になる.当時私は病理助手を拝命して2,3年経ったばかりの生意気盛りであった.婦人科から70歳くらいのおばあさんの子宮腟部組織を持って来て,病理検査の依頼があった.結果を急ぐというので,凍結切片を作ることになった.これはゲフリールといっている病理標本作製法で,組織を炭酸ガスで凍らせ,メスで薄く切り,染色標本を作る方法である.通常用いるのはパラフィン切片であり,これは4,5日かかるがゲフリールは5分間くらいで標本ができあがるのである.

診療相談室

顔面神経麻痺と三叉神経痛とは合併して起こりうるか,その病因と治療法を

著者: 木暮敬

ページ範囲:P.129 - P.130

質問 35歳,主婦,誘因と思われるものなく,兎眼,ベル徴候,鼻唇溝消失口笛を吹きえない.鼻尖は健側にひかれるなど,典型的な顔面神経麻痺をきたし,同夜三叉神経第三枝分布域に一致した激痛,右偏頭痛を訴える.
各種活性型ビタミン剤,ATP,鎮静・鎮痛剤の使用により約50日後治癒をみた.

今月の表紙

科学的診断の先駆者サントリオ

著者: 小川鼎三

ページ範囲:P.130 - P.130

 本号の表紙に載せたのはサントリオSantorio Santorio(1561-1636)が大きな天秤の皿にあたる所に自ら腰かけて食事をしている場面で,飲食物の量と排出物の量をしらべて,体重の変化をみるのである.
 この有名な図は1614年に出版された彼の著書に載っているという.いまの術語で物質代謝とか基礎代謝ということをしらべた最初の人がサントリオである.彼は体温計や脈拍計の発明者としても知られている.30年間も天秤の上に乗って生活したと俗説にいうが,もちろん続けてそんな生活をしたのでなく,長いあいだ自身の物質代謝をしらべたという意味であろう.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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60巻12号(2023年11月発行)

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60巻11号(2023年10月発行)

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56巻11号(2019年10月発行)

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56巻5号(2019年4月発行)

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56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

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特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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