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雑誌目次

雑誌文献

medicina8巻10号

1971年09月発行

雑誌目次

Editorial

血清肝炎とオーストラリア抗原

著者: 高橋忠雄

ページ範囲:P.1453 - P.1453

 一昨年ごろからにわかにオーストラリア抗原(以下Au抗原)がトピックとなり,今やそれをめぐる話題は燎原の火のようにひろがっている.これが大きな関心をもって論じられている理由はいくつかあげられよう.第1には,長い間,覆面のままにかくれていたウイルス肝炎の本態へなんらかのアプローチが得られたことであり,さらに,実地上重要なことは,これにより,より安全な輸血への道のひらかれること,第3には肝炎の予防ワクチン開発も,全くの夢ではなくなった,という希望の生まれたことである.
 もちろんこれは複数(少なくとも2種)のウイルス肝炎のうちのひとつだけに限ったことではあるが,日本とくらべて輸血後肝炎の頻度の低いアメリカでさえ,最近輸血用のすべての血液に,このAu抗原テストによるスクリーニングが行なわれるべきことを,National Research Councilが勧告している.

今月の主題

慢性肝炎の治癒判定

著者: 増田正典

ページ範囲:P.1454 - P.1457

 日常の臨床において慢性肝炎とされる症例の数は,肝疾患の中でもっとも多く,おそらく首位を占めるものであろう.その概念と分類については,ようやく統一的な見解がもたれはじめている.しかし治療に関する問題はまだ緒についたばかりであり,治癒判定に対する一定の基準を見いだすことははなはだ困難なことである.

(座談会)肝機能検査の総点検

著者: 堀口正晴 ,   小泉岳夫 ,   鈴木宏 ,   林康之 ,   織田敏次

ページ範囲:P.1458 - P.1468

 肝機能検査の最近の進歩は肝疾患の診断に飛躍的な成果をもたらしたが,数多くある肝機能検査個個の評価となると,必ずしも定説はない.進歩の歴史をたどりつつ,現時点での肝機能検査の意義と評価,さらには将来の展望について.

Leading Article

新しい職業病

著者: 久保田重孝

ページ範囲:P.1438 - P.1439

「新しい」ということの意味
 新しい職業病といえば,最近になって新しく発見された職業病,すなわちこれまでの日本では発見されなかった,新しい種類の職業病という意味にとるのが普通である.また,実際に今の日本にも,もちろんこのような新しい種類の職業病はある.しかし,実をいうと,このような意味の職業病は,職業病全体の中ではあまり大きな部分を占めていないのである.
 例をあげるとよくわかると思うが,たとえば合成樹脂や繊維の原料として有名な,アクリロニトリルをはじめとする各種ニトリルの中毒はこの好例である.アクリロニトリルのほかに,グリコロニトリル,コハクジニトリル,ラクトニトリルなど,多くのニトリル化合物の中毒が日本にも発生したが,いずれも最近の数年間に主としておこっており,少なくとも昭和30年以前にはほとんど報告されていなかった中毒である.そしてこの中には2例の死亡例が含まれていることからもわかるように重症例が多いが,しかし,全体としての発生例はあんがいに少なく,昭和32年以降に報告された全例を集めても64例にすぎない.

図解対症検査 消化器シリーズ・5

便秘

著者: 大貫寿衛

ページ範囲:P.1444 - P.1447

便秘
 便秘にも急性と慢性が考えられるが,急性便秘は腸管の閉塞やチフスのような特殊な炎症の際にみられるもので,便秘そのものについて考えたいのはだいたい慢性のものであるから,ここでは急性便秘についてとくに項を設けることはしない.
 何日以上排便がないときに便秘と呼ぶかについては,はっきりとした決まりはない.排便回数の減少という点からいうならば4日に1回,あるいはそんなに正確に定期的なものではなく不安であることが多いという意味からは,週2回程度の便通の状態は便秘と呼んでよかろうが,これも特別に根拠はない.また,毎日排便はあるが1回の便量が少なく,大腸に宿便がみられて,そのためと考えられる症状がある場合も便秘と呼んでもよいであろう.いずれにしてもはっきりした決まりはないと言ってよい.

カラーグラフ

糖尿病患者にみられる皮膚病変

著者: 荒尾龍喜 ,   井上勝平

ページ範囲:P.1450 - P.1451

 糖尿病患者にみられる皮膚病変はきわめて多彩であって,種々の分類が試みられている.たとえば糖尿病の早期と晩期にみられる皮膚病変に分類するもの,糖尿病特有の皮膚病変(直接dermadrome)と糖尿病によって増悪ないし好発する皮膚病変(間接dermadrome)に分類するもの,真性糖尿病に合併する皮膚病変と続発性糖尿病にみられる皮膚病変に分類するものなどである.筆者らは表のような分類を試みているので,以下この表に従って,代表的な症例をカラー写真を用いて簡単に解説してみたい.

診断のポイント

下血をみたとき—急性大量下血を中心に

著者: 安部井徹

ページ範囲:P.1469 - P.1471

下血の分類
 ほとんどすべての消化管疾患において下血を見るといっても過言ではない.呼吸器,血液などの疾患でも下血をきたすことがある.したがって,潜出血から肉眼的にわかるような出血,さらにはショックに陥るような急性大量出血は,それ自体,診断の手がかりにはならない.
 しかし,下血を取り扱うには,これをその量と早さから①急性大量出血と②慢性出血の2つに分けておくと便利である.

末梢静脈圧と中心静脈圧の測定

著者: 三浦勇

ページ範囲:P.1472 - P.1474

静脈圧測定の意義
 近年,外科内科領域を問わず,循環系の状態,とくに循環血液量を大まかに把握するための簡単な手段として,静脈圧測定が広く行なわれている.
 静脈圧はいうまでもなく,静脈系の容量とそれを満たす血液量との相対関係によって定まる.したがって,静脈圧からまず循環血液量の多寡を知ることができる.次に静脈圧は,動脈系の状態によって後方からの影響を受ける.たとえば人工心肺の送血流量を増すとき,動脈圧とともに静脈圧は上昇するが,体外循環のような状況下では,心迫出量を反映する.第3に,前方の位置する心臓の機能によって影響されることが明らかである.右心または両心不全,心臓タンポナーデなどは,静脈圧を上昇させる方向に作用する.とくに心臓タンポナーデでは,ショック症状を伴う静脈圧上昇の所見がしばしば診断の決め手となる.

アレルギー性鼻炎

著者: 信太隆夫

ページ範囲:P.1475 - P.1477

まず全身性の変化を問うこと
 アレルギー性鼻炎であるかどうかは,アレルゲンが確認されない限り断定することはできない.しかし,アレルギーかもしれないということはある程度可能である.普通,アレルギー性らしいと判断される鼻鏡所見は,成書に書かれているように鼻粘膜の蒼白性浮腫をさしているが,このような所見は慢性の非季節型鼻炎に多く,また成人よりも小児に多い.いわば季節型の典型例における所見は最盛期においてむしろ発赤し,間歇期において所見を欠く.まして感染がアレルギーを助長せしめているような時は判断を誤りやすい.患者みずからアレルギーと言って訪れた場合,なぜアレルギーと思ったかを逆に聞いてみると,鼻カゼに罹りやすい,始めカゼかと思ったが毎年同じ頃に生じ,しかもだんだん遷延化する,ほとんどある一定時刻に症状が強くなる,肉親にアレルギーの人がいるから,自分も鼻以外に何となくアレルギーらしい症状がある,などが主な訴えであった.
 結局,このような執拗な,不定で移り気な症状の把握のために,鼻のみでなく全身性の変化を聞きだすところにアレルギー診断の第1歩がある.アレルギーの診断に病歴を調べることが最も重視されることは今も昔も変わらない.

治療のポイント

慢性腎炎と運動制限

著者: 三條貞三

ページ範囲:P.1478 - P.1481

まず予後の推定を
 近年腎不全患者でも人工透析を行ないながら職業に従事することができるようになってきているが,その適用は一部腎不全患者に限られ,たとえ透析可能な場合でも患者の長期間の肉体的・精神的さらに経済的負担を考慮すると満足すべきものではない.したがって,他疾患に比し自覚症状の発現のおそい慢性腎炎においては,その進行をある程度抑制する意味で運動制限も必要である.その反面,患者の自由を束縛し,社会生活をできなくさせる点11)で不必要な運動制限はさけねばならない.
 そこで患者の運動制限を行なうに際しては,まず腎炎の活動性や腎機能障害度を知り,その患者の予後を推定する必要がある.

女性ホルモン剤の種類と使い方

著者: 松本清一

ページ範囲:P.1482 - P.1484

卵巣ホルモン剤の種類
 卵巣ホルモン剤は,化学的には 1)天然に存在するステロイドホルモン,

原発性肝癌の手術適応

著者: 菅原克彦

ページ範囲:P.1485 - P.1487

【肝切除の進歩と問題点】
 肝切除の歴史は古く,すでに1888年に行なわれているが,出血,感染などのために手術死が多く,消化器外科領域では膵切除とともにとり残された未開発分野に属していた.1950年になって肝切除を中心とした解剖・生理の研究がさかんになり,安全に肝切除を行なうことが可能であることが示され,肝の悪性腫瘍疾患の外科的治療に希望が持たれるようになった.最近になって新しい診断技術が導入され,腫瘍の質・量,局在の判定,耐術し残存肝が再生肥大しうるかなどについて,かなり正確な情報が得られるようになり,手術手技,術後管理も平行して向上し,わが国でもようやく肝癌に対する肝切除術が普及しようとしている現況である.
 しかし,外科で診る肝癌は依然として切除不能な末期肝癌が多く,切除率も11-46%と低く,手術死は4-29%と高いが,切除手技や患者管理が不十分であった時代の症例も入っており,将来はさらに切除の成績は向上すると考えられ,肝癌を根治不能の疾患ときめつける時代からは脱却したといえよう.

内科専門医のための診断学・21

低血糖症

著者: 和田正久

ページ範囲:P.1488 - P.1491

低血糖症を見のがさないように
 簡易検査法の進歩もあって,高血糖症や糖尿の発見ははなはだ容易になったが,低血糖症は今でも見のがされていることが少なくない.しかし,糖尿病の血糖調節でも低ければ低いだけよいというわけのものでないし,自発性低血糖症でも対策と関連して早期診断が望ましいから,低血糖症はなるべく見のがさないようにしなければならない.

臨床家の遺伝学入門・9

臨床医学への応用(1)—保因者の検索

著者: 大倉興司

ページ範囲:P.1492 - P.1495

臨床医学への応用
 これまで遺伝の基礎を述べてきた.まだまだ理論的に,そしてその応用の方法を述べなければならない問題はあるが,ひとまず終わることにして,臨床における応用を具体的に述べてゆくことにする.
 人類遺伝学の臨床医学における応用の分野は決して狭いものではない.これまでにくり返し述べたように,診断・治療・予防といった面で人類遺伝学の知識はきわめて重要である.しかし,なんといっても応用ということになると,あるいは,人類遺伝学が臨床医学に占める独特の位置ということになると,それはやはり遺伝相談geneticcounselingであろう.そして,次いで法医学における個人識別や親子鑑定での応用,および優生学への応用があげられる.本章以下は主として遺伝相談における実際問題と,臨床における実用的な問題,およびその方法などを解説してゆくことにする.

誤られやすい心電図・3

アミロイドージス心—心筋硬塞との鑑別

著者: 日野原重明

ページ範囲:P.1496 - P.1497

症例 54歳の男子
 2カ月前から心窩部から心臓部にかけて圧迫感があり,歩行により増悪する.また浮腫にも気づくようになったといって来院し,外来にて受診(1969年6月).

ベクトル心電図入門・3

左室肥大・両室肥大

著者: 戸嶋裕徳

ページ範囲:P.1498 - P.1500

左室肥大
 左室肥大をきたす基礎疾患としては,高血圧,大動脈弁狭窄や動脈管開存症(肺高血圧を伴わないもの),大動脈弁閉鎖不全などがある.
 前二者は左室の収縮性負荷であり,後二者は拡張期性負荷といえる.いずれにしても,きわめて慢性に経過すれば肺高血圧を合併して右室の負荷も加わるようになるが,これは末期的な状況であって,一般的には左室肥大が特徴的所見となる.

日本人の病気

慢性肝炎

著者: 上野幸久

ページ範囲:P.1502 - P.1504

実態究明にはデータ不足の慢性肝炎
 急性肝炎は発病のしかた,黄疸の出現などにより臨床診断はあまりむずかしくない.黄疸を呈しない軽症不全型が実際には多いのであるが,発黄例だけに限定しても,ある程度まで患者の発生状況をうかがうことができる.現在多くの文明国でやっているビールス性肝炎の届出制にしても,黄疸例だけを対象としているようであるが,それでもかなりの統計的・疫学的意義をもっている.
 また急性肝炎は重症化し,いわゆる急性ないし亜急性肝萎縮として死亡するので,死亡届あるいは剖検輯報から統計的考察を行なうことも可能である.

日常検査のすすめかた

頻尿

著者: 大野丞二

ページ範囲:P.1506 - P.1507

 頻尿とは,1日の排尿回数が異常に増加した状態,ないし排尿間隔が異常に短縮した状態をいうが,画一的な定義はない.一般には,1日の排尿回数が通常の飲水量で8回を越える場合は一応頻尿と考えて検討したほうがよい.
 表1に示したように,頻尿には主として膀胱の異常に起因する1回排尿量の低下を伴う狭義の頻尿と,病的な多尿に伴う頻尿の2つを分けて考えることが妥当である.健康者でもビールを痛飲したとき,あるいは極端な寒冷環境にさらされたときなどでは,ADHの分泌低下に伴って多尿頻尿の見られることは日常経験するところであるが,臨床的に観察される頻尿を分類すると表1のようになる.

内科医のための小児診療の手引き

喘鳴を伴う病気

著者: 中山喜弘

ページ範囲:P.1508 - P.1509

小児喘患という言葉
 乳幼児でゼロゼロが治りにくかったり,年中くり返したりしている例がある.これは大きくなるまでには,治ってしまうのが普通なので,成人の喘息とは異なるとして,俗に小児喘息といわれている.ゼロゼロが長びいたり,くり返したりする症例に安易にこの病名がつけられている傾向がある,
 ゼロゼロが喘息持ちであるとの通俗的な見解と,"小児喘息"といえば成人になるまでには治るとして家人が納得するので,いつのまにか簡単に用いられているようである.

一般医のための救急診療のコツ

突然大量吐血した患者が運びこまれたら

著者: 本田利男

ページ範囲:P.1510 - P.1511

 消化管出血のうち,突然に大量吐血をみる場合,その死亡率は15-20%といわれ,この症状が患者にとってきわめて重要であることはいうまでもない.
 われわれ臨床医はこのような大量の上部消化管出血に遭遇した場合,迅速にしかも適切な処置をとるよう心がけなければならない,このことは患者にとっては救命へ導くか,あるいは反対に致命的な結果へ推移する原因ともなるからである.

病態生理—最近のトピックス

アルコール性脂肪肝

著者: 岩村健一郎

ページ範囲:P.1512 - P.1513

 今日までにアルコール性飲料の摂取と肝障害との因果関係を検討した報告はかなり多くみられる.アルコール性飲料に対する耐性には個体差があるし,栄養上の問題や飲酒の習慣なども,人により国によって異なるから一律に論ずるわけにはいかない,しかし,暗中模索の域をでなかったこの領域にも,かなりの光明がもたらされたことは周知のごとくである.

新薬の紹介

2,3の新しい降圧剤

著者: 荒川規矩男

ページ範囲:P.1514 - P.1515

 交感神経末端のノルアドレナリン遊離を抑えて降圧をもたらす.同種作用の先輩格であるBretylium(ダレンチン)とGuanethidine(イスメリン)の合いの子(図1参照)として開発され,したがって作用上も両者の長所を備え.欠点を少なくしている.すなわち組織カテコラミン含量をあまり低下させず,下痢などの副作用少なく,吸収排泄が速やか(経口投与後5時間前後で最大効果,12時間でほとんど排泄)で,自由に急速な血圧の調節が行なえる.腎血流量を減らさないので,どちらかというと腎性や悪性の高血圧症に向いている.特に他の降圧剤に祇抗する高血圧症では,少量を加えて劇的な降圧をみることがある.ただし効きの悪い例で強く用いると,副作用(起立性低血圧,倦怠感,鼻閉など)が出てくるので,本態性高血圧症ではThiazideの補助剤としたほうがよいようである.

グラフ

肝血管造影

著者: 中村省三

ページ範囲:P.1518 - P.1523

 肝静脈造影 肘静脈からカテーテルを右心房を経て通常右肝静脈に挿入して造影する.肝硬変症では肝静脈枝の変形,分枝の減少がみられるので,閉塞肝静脈圧の測定などとともに行なわれ,診断上有用である.肝腫瘍のような局在性の病変に対しては,価値がやや劣る.またわが国では,肝部下大静脈・肝静脈閉塞症が稀ならずみられるが,その診断には下大静脈・肝静脈造影は欠かせない.

胸部単純撮影でわかる心所見・4

胸痛を主症状とする心疾患

著者: 敦本五郎

ページ範囲:P.1524 - P.1527

 胸痛という概念は,一般には胸部の基礎疾患によっておこるいわゆる自覚症状または症候群であると理解されている.しかし心疾患における胸痛の意味する内容は必ずしも患者により同じではなく,心臓痛と表現したほうがより正確な診断ないしは病像が把握できるように思われる.臨床的には狭心症と心筋硬塞の2つの病気が心臓痛を代表するといってもよい.狭心症と心筋硬塞を正しく診断し,正しく治療するには,冠血行の生理ならびに病態生理について十分な知識を必要とする.

症例

Cephaloridine投与中,著名な肝障害を呈した1例

著者: 貝沼知男 ,   庄山文子 ,   斎藤和

ページ範囲:P.1529 - P.1532

 薬剤による肝障害は決して稀ではない.抗生剤ではErythromycin estolate,Triacetyl-oleandomycinなどに比較的多いことはよく知られている.しかし他の抗生剤についても肝障害例がないわけではなく,また使用頻度が多くなれば肝障害例も増加すると考えられる.
 Cephaloridine(CERと略記)は,すぐれた抗菌作用と副作用の少ないことから,最近広く使用されている抗生剤であるが,CERにより重篤な肝障害を呈した症例は知られていない.最近,筆者らは,CER投与中に著明な肝障害を呈し,CERによる中毒性肝炎と診断した症例を経験した.このような症例は臨床的に興味があるばかりでなく,今後のCER療法に際し注意すべき点を示唆するものと考え,その大要を報告する.

他科との話合い

むち打ち症をめぐって

著者: 宮原正 ,   三好邦達 ,   楢崎嗣郎

ページ範囲:P.1534 - P.1542

 モータリゼーションの普及に伴い,交通事故によるむち打ち傷害はあとを断たない.多彩な症状を呈するむち打ち症をめぐって,その発症機序から予防・治療にいたるまでをお話しいただいた.

診療所訪問

小児科診療あれこれ—きむら小児科医院 木村和郎氏を訪ねて

ページ範囲:P.1554 - P.1556

"流行"に左右される患者の動き
 --7月の保険医辞退という1カ月間があったわけですが,患者の動きはどうでしたか.
 木村 6月いっぱいはカゼが流行して忙しかったんです.7月1,2日は少し減ったかなとも思ったのですが,中旬にまたカゼの患者でかなり多忙でした,先週までで一段落ついた感じですが,小児科の場合は特に,カゼのような"流行"によって何週間か突然忙しくなるんです.そして,昨日まで100人診ていたのが今日は40人,とガタッと減るようなことがある.そんな時には,何かまちがいでもしでかしたのかなと青くなったりして......(笑い).だから保険医辞退の問題があるにもせよ,それによって減ったかどうか判断するのはむずかしい.私なりには2/3位に減ったかな,という印象です.

統計

入院患者の将来予測

著者: 小畑美知夫

ページ範囲:P.1557 - P.1557

 将来の医療施設,病床の整備計画などの基礎資料を得るために,入院患者の将来予測と,それに必要な病床数について試算を試みました.

各科のトピックス 外科から

脳卒中の外科療法—亜急性期高血圧性脳出血の手術

著者: 金谷春之 ,   大沢謙一

ページ範囲:P.1558 - P.1559

外科から
 従来内科的療法の対象であった高血圧性脳出血に対し,脳神経外科的療法が行なわれるようになってから近時その手術適応,手術時期などに関して外科,内科を問わず多くの関心が払われるようになってきている.光野の報告1)によると昭和45年11月で本邦における高血圧性脳出血手術症例は514例を数え,本手術療法に対する高い関心がみられる.
 高血圧性脳出血は,脳内の出血に伴う急性占拠性病変であり,その経過が急性,亜急性の如何を問わず脳内に血腫が存在する限り,頭蓋内の病態は程度の差こそあれ,頭蓋内圧亢進,脳循環および脳代謝の障害,二次的脳浮腫などを来たすもので,ひいては脳嵌とんなどを招来する.外科的療法の目的は,これら諸障害を改善もしくは解除し,救命するとともに機能脱落の程度を最少限に止めようとすることにある2)3)4)5)6)7).したがって発症よりの時日の経過にかかわらず,血腫の存在が確められた場合には,できるだけ早期に血腫摘除が望ましいものである.

読後随想

薬事問題の盛況に拍車をかけるか—モートン・ミンツ著 佐久間・平沢訳「治療の悪夢」(上下2巻)(UP選書:900円)

著者: 長洲光太郎

ページ範囲:P.1559 - P.1560

 ワシントンポスト紙の厚生省詰め記者モートン・ミンツが薬のインチキを暴露する記事を一書にしたのは1964年,題はThe Therapeutic Ni-ghtmareという.その改版はByPrescription Onlyと改題し,今度UP選書の中に上下2巻で邦訳出版された.薬事問題のうるさいときだから,この「問題書テーマブック」はそのさわぎにさらに拍車をかけるかもしれない.医療の悪夢とか,私は外科医者だから手術の悪夢とかいう問題をいつも考えるのだが,そういう点からみると本書は薬の害や,インチキ広告,医師会と製薬会社のなれあい,恐るべきクスリというような問題にかぎっていて,医療本質論ではないが,その広い薬事問題の提出のしかたは驚くばかりで,また一読に値する.

今月の表紙

フランシス・グリッソン

著者: 小川鼎三

ページ範囲:P.1560 - P.1560

 肝臓の解剖学ではイギリスのグリッソンFrancis Glisson(1597-1677)の名が最もよく知られている.彼の著書Anatolnia hepatisは1654年ロンドンで出版された.グリッソンは血液循環論のハーヴェイWilliam Harvey(1578-1657)に教えをうけた人で,17世紀のイギリス医学を代表する大家の1人であった.
 イギリス南部のドーセット州に生まれて,ケンブリッジ大学を卒えて,1634年にドクトルの学位を得て,その2年後にケンブリッジの医学教授となり,およそ40年間もその席にあった.しかし彼は大部分ロンドンで医業をおこない,ケンブリッジには時たま出かけて,学生の試験をするだけだったという.

病理夜話

筍医者

著者: 金子仁

ページ範囲:P.1561 - P.1561

 下手な医師を筍医者というが,これは筍にまつわる物語である.
 昭和44年5月10日から第10回日本神経病理学会が福岡で開かれた.私は出席講演のため,その前日の午前11時30分に福岡に到着した.他のたいていの学会は友達と出かけるのだが,この学会は病理学者が少なく,私はいつも1人で行くことにしている.

診療相談室

尿崩症に対するサイアザイド系利尿剤について

著者: 柴垣昌功

ページ範囲:P.1562 - P.1563

質問 尿崩症にサイアザイド系利尿剤が著効を奏すると聞きますが,その作用機序について,また使用時の注意事項などがありましたらあわせてご教示ください. (高知・M生)

Cervical Spondylosisについて

著者: 澤田徹

ページ範囲:P.1563 - P.1563

質問 Cervical spondylosisの病態生理・診断・治療および椎骨脳底動脈循環不全症との臨床診断上の鑑別についてお教えください. (鳥取県 小笠原 坦)

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medicina reversed CPC

著者: 五十嵐正彦 ,   前田昌利 ,   小藤田和郎 ,   奥田邦雄 ,   只野寿太郎 ,   小酒井望

ページ範囲:P.1544 - P.1553

症例51歳女

Current Abstracts

著者: 浦田卓

ページ範囲:P.1543 - P.1543

食塩注射による疹痛の寛解
 低温食塩注射を腰部クモ膜下腔に注入すると,悪性疾患の癒痛を安全かつ長期に寛解できることが,1967年にわかったが,その後,この治療の応用範囲は拡大されて,灼熱痛causalgiaやヘルペス後神経痛のような非悪性状態にも応用されるようになった.患者はまず,10-20mgジアゼパムの静注によって中等度のウトウト状態に陥らせる.ついで,患者を坐らせ,18口径の針を大脳槽に刺し入れるが,これは,上半身の痛みをより直接に寛解させんがためである.腰髄硬膜に針をもう1本刺入する.10-20秒後に,2-3℃の食塩水約50ccで脊髄と神経根を灌流する.
 治療中の副作用としては,体の傾斜,強直性眼球偏位,顔筋と腕筋の筋線維東レン縮,一過性の呼吸緩徐と徐脈その他があるが,副作用はすべて,1時間以内に消退した.治療した患者8名のうちの6名は,悪性腫瘍にかかっており,頸部,上腕,胸部および背部に落痛を覚えた.この6名のうち4名は,その後1-3ヵ月で死亡するまで疼痛をまったく覚えなかった.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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