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雑誌目次

雑誌文献

medicina8巻11号

1971年10月発行

雑誌目次

Editorial

呼吸器感染症の移り変わり

著者: 北本治

ページ範囲:P.1587 - P.1587

 呼吸器感染症の移り変わりを述べるまえに,感染症全般の移り変わりを一瞥して見たい.昔,死因の第1位を占めた感染症が,先進国であるほど,その首位を譲っている.
 しかしアメリカでさえ,感染症はなお死因の第3位を占めているのである.第1位は心臓・脳の血管障害,第2位が癌,第3位が感染症で,アメリカの感染症学会会長Sabinは感染症をNumber 3 Killer,第3の殺し屋といっている.わが国もほぼ同様である.感染症がしばしば他の基礎疾患に合併してその直接死因となることを考慮すると,感染症が死亡に関与する割合は,以上の統計よりさらに上回る実態をもつものといわねばならない.

今月の主題

閉塞性肺疾患の管理

著者: 伊藤和彦

ページ範囲:P.1588 - P.1593

 慢性閉塞性肺疾患の管理に当たっては,その症状を十分に把握し,到達すべき目標を設定し,医師と患者が一体となって,これに当たらなければならない.本稿では各疾患に共通する管理上の留意点についてまとめてみた.

(座談会)呼吸不全—病態の理解から治療まで

著者: 原沢道美 ,   塩沢正俊 ,   福井俊夫 ,   宮本昭正 ,   梅田博道

ページ範囲:P.1594 - P.1604

 最近,呼吸不全,肺不全,肺機能障害,肺性不具者といった言葉が臨床的に使われ,身障法とも関連して社会的に問題になってきた.呼吸不全とは,そしてその急性増悪期をいかにつかまえるか,その治療法は…….

Leading Article

血液成分の利用

著者: 大林静男

ページ範囲:P.1572 - P.1573

血液成分の利用に乏しいわが国の現状
 新しい輸血として,各患者の適応にしたがって,血液を血液成分に分けて用いる方法が開発されてからすでに久しい.しかるにわが国における現状は,一般に輸血にはほとんど全血のみが用いられており,今年の日本医学会総会シンポジウムでも,「血液成分利用の展望」が取り上げられたように,この利用は一部に限られていることは,まことに悲しむべき現実である.1日も早く全国でこれが活用されるために,問題点が明らかにされ,輸血を取り巻く体制の整備を目ざして,可能なところから前進は始められるべきではないかと考える.
 筆者は戦前慶応の内科に,三辺・長谷川両君などと一緒に入局したが,のちに細菌学教室に転じ国立東京第二病院,千葉県血清研究所,北海道立および赤十字血液センター,日本バプテスト病院(京都),赤十字中央血液センター(東京)を経て,現在赤十字センターの技術指導に責任をもつ立場で,その個人的経験から痛切に感じていることは,日本の特有の状況のためとはいえ,日本の輸血が今日国際的水準からはるかに遠いのは,輸血に対して,日本の内科医ことに血液専門医が医学的責任や指導をもつ体制になかったことが最大の原因ではないかということである.

図解対症検査 消化器シリーズ・6

悪心・嘔吐

著者: 日野貞雄

ページ範囲:P.1578 - P.1581

 悪心・嘔吐は胃腸疾患ばかりでなく,多くの疾患で出現する.このため、鑑別診断のための検査は,全領域にわたるといってもよいほどである,このため,検査をすすめるに当たっては,問診で他の症状と組み合わせながら,検査の方向づけをしなければならない.また,一面では悪心・嘔吐を起こす頻度の高い疾患を目標に検査をすすめて行く方法もある.しかし,悪心・嘔吐は一過性のものも加えると,ひじょうに多く起こるので,統計的に頻度を示すことはむずかしい.また,病院の規模や専門によって,その頻度は異なり,筆者らの病院では全く消化器疾患に限定されているので,あまり参考にはならない(図1,2).この点Cabotの統計はある程度,実態を示しているように思われる(図3).

カラーグラフ

内分泌疾患の視診所見―成長障害

著者: 尾形悦郎 ,   戸川潔

ページ範囲:P.1584 - P.1585

 成長障害には,消耗性疾患あるいは極度の栄養障害に続発するもの,先天性の骨・軟骨形成異常によるもの,それに発育時のホルモン作用不全によるもの,などがある.一方,主として家族性にみられ,ただ体形が小さめなだけで,とくに病的過程の見いだされないものもあり,これは病的な成長障害から区別される必要がある.ホルモン作用不全による成長障害では,適正なホルモン補充により,成長の回復とともにホルモン不全によっておこるそのほかの重篤な病態についても,その予防および治療が期待されるので,病態の正確な理解がとくに必要となる.成長障害の診断および治療方針の決定は,できるだけ早期に行なう必要がある.かつては,その原因を思春期前に決定することが,ときに困難であったが,最近では,各種ホルモンとくに下垂体の諸ホルモンの測定が実用化され,これも可能となった.
 ホルモン作用不全による成長障害患者は,その原因によって比較的特徴的な顔つき・体つきを呈する.これらを見わけることが,鑑別診断の重要な第一歩である.

診断のポイント

血液ガス分析—診断への利用のしかた

著者: 井川幸雄

ページ範囲:P.1605 - P.1608

 血液ガス分析の普及は著しいものがあり,かつて名人芸といわれたvan Slykeの検圧法で血液中の酸素含量や総炭酸などをはかっていた時代に比べると,各種の電極法の開発の進んだ現在の状態は,全く新世紀にあるという感じをうける.

動脈血ガス分析—診断的意義

著者: 原弘道 ,   山林一

ページ範囲:P.1609 - P.1613

ガス交換の肺生理
 呼吸機能検査としての動脈血ガス分析は,肺におけるガス交換の異常の有無,および酸塩基調節障害の指標を得ることを目的とする.実際の測定は電極法によるPaO2,PaCO2,pHの測定が一般に行なわれている.
 データーの正確な理解には,肺生理の知識が必要である.肺の本質的な機能は,生体に必要なO2を摂取し,不必要なCO2を排出するというガス交換としての機能と,同時に腎臓とともに生体のpHを正常に保つという酸塩基調節の機能を持っている.

軽症うつ病

著者: 筒井末春

ページ範囲:P.1614 - P.1616

本症の認識
 depressionはその原因により内因性,反応性,症候性などの分類がなされているが,実際はその区別が容易でない場合もある.病像の程度からみて軽症のものには,近年注目されているmasked depressionがその代表と考えられる.
 もちろん精神症状の軽いものはmild depressionの範ちゅうに入れられるわけであるが,これらはいずれの場合においても,注意と関心を本症に向けていないと日常しばしば遭遇するにもかかわらず,見逃がされている場合が多い。

よくみられる脳波の異常

著者: 中沢恒幸 ,   上島国利

ページ範囲:P.1617 - P.1620

脳波検査の限界
 1920年代にHans Bergerが脳波の基礎を確立してから40年余になるが,その間飛躍的発展をなし,現在内科医が胸部レントゲンを撮るように脳波検査も実施されている.しかし脳波は,その結果を過大評価することは危険であって,実際問題として脳波のみで診断のつく疾患はきわめて限られている.逆にいえば,脳波が正常範囲だからといって器質的脳疾患(てんかん,脳腫瘍も含め)を除外することはできない.すなわち脳波はあくまで臨床診断のための補助手段にすぎないが,その限界を知って用いることが脳波の価値を高めるといえるだろう.参考までにSchwab(1950)の挙げた脳波の臨床価値の表を示そう(表1).

治療のポイント

抗真菌剤の使いかた—アンホテリシンBを中心に

著者: 池本秀雄

ページ範囲:P.1621 - P.1623

診断が先決,ただし治療的診断は困難
 真菌症,ことに内臓を侵す深在性真菌症は,特殊な病型は別として,診断が困難なことが少なくない.細菌感染症の場合は,病原的診断がつかなくても,いくつかの病原菌を想定した上で,化学療法を比較的容易に行なうことができるのに反し,深在性真菌症ではこれができない.つまり,治療的診断ができるほど抗真菌剤は低毒性ではない.
 ほぼ確実に診断されることが,治療を行なう上に欠くことのできない前提条件となるわけであるが,免疫学的診断が進歩したとはいえ,なお診断はむずかしい.肺ムコール症,アスペルギルス肺炎,肺カンジダ症,真菌性心内膜炎などがよい例である.

トランスアミナーゼ軽度上昇患者の管理

著者: 市田文弘

ページ範囲:P.1624 - P.1626

 血清トランスアミナーゼ(GOT,GPT)の上昇をきたすのは多くは肝疾患である.しかしGOTは肝以外の臓器にも含まれているので,たとえば筋疾患でもまれにはみられるが,ここでは肝疾患に限ることにする.
 近年,血清トランスアミナーゼは容易に測定できるようになるにしたがい,トランスアミナーゼの異常値を示す症例が多くなりつつある.とくに自覚症状が全くなく,ただトランスアミナーゼのみが軽度上昇を示す例を一部の人が提唱するように"Transaminitis"という概念で理解して,疾患との関連において考えなくてよいものか,あるいはやっぱり肝疾患の1つのパターンとして考えて管理すべきか,実地臨床的には大きな問題である.しかしトランスアミナーゼの血中遊出機構も明確にわかっていなく,また長期トランスアミナーゼ上昇患者に対する管理についても十分確立されていない現状である.ここでは日頃経験的に理解している点などを中心に,トランスアミナーゼ上昇患者の管理について述べることとする.

臨床家の遺伝学入門・10

臨床医学への応用(2)—遺伝相談(その1)

著者: 大倉興司

ページ範囲:P.1628 - P.1631

遣伝相談とは
 遺伝相談genetic counselingという言葉はすでにかなり一般的なものとなり,形のうえでもある程度行なわれるようになってきた.しかし,遺伝相談の目的とするところ,遺伝相談の内包する多くの制約,遺伝相談における倫理といったものまでは正しく理解されておらず,時には誤った理解のうえに,特に優生相談と混同されて実際の相談が行なわれている場合も少なくない.また,近年は遺伝相談の効果に対して,反省しなければならないさまざまな問題が指摘されており,その解決のための哲学が求められているのである.
 遺伝相談とはいかなるものかという概念は,主としてアメリカの研究者の考えによっており,1つの形をはっきり示したのはS.Reedの著書が最初と考えられる.近年までこの考え方は遺伝相談にたずさわる多くの者に一貫して受けつがれてきた.すなわち,遺伝学的に考慮すべき問題を有する当事者に,その時までにわかっている科学的事実にもとづいて,問題の本質を十分なっとくのゆくまで説明し,結婚や子供をもうけることに関する最終的結論,別の言葉でいえばそれらの可否は当事者の判断にまかせる,とするものである.そして,カウンセラーは医学および遺伝学,ことに人類遺伝学の知識をもつことは当然だが,それ以上に,問題についての科学的事実を求め,当事者に応じて十分理解できるように説明する努力をなしうるような,人間としての愛情のある人であるべきだとしている.

ベクトル心電図入門・4

心筋硬塞

著者: 戸嶋裕徳

ページ範囲:P.1632 - P.1634

 心室はPurkinje線維を介した刺激により興奮し,心筋の各部に心内膜から心外膜に向かう無数のベクトルを作り,これらが互いに打ち消し,あるいは合成されて瞬間総合ベクトルを作ることは前に述べた.

日本人の病気

胃潰瘍

著者: 石原國

ページ範囲:P.1636 - P.1637

 潰瘍は洋の東西を問わずかなり多い病気で,松永1)によれば人口の約10%が生涯のうち罹患すると推測されているといい,胃潰瘍対十二指腸潰瘍の頻度の割合を1対1とすれば,胃潰瘍患者は人口の5%に当たることになる.

日常検査のすすめかた

糖尿

著者: 池田義雄

ページ範囲:P.1638 - P.1639

まず尿糖の状態把握を
 尿糖陽性の場合,誰でもすぐに糖尿病を考える.わが国の糖尿病は最近とみに増加の傾向が著しく,その早期発見は,たまたま行なわれた尿糖検査の結果からということが多い.とはいっても尿糖陽性のときすぐに糖尿病と診断してはならないところに問題点がある.もちろん,尿糖陽性者の多くのものが糖尿病で,その一部分が糖尿病にあらざる糖尿と考えて,まずまちがいはない.しかし,条件反射的に尿糖陽性すなわち糖尿病ときめてかかることは良くない.
 ブドウ糖は正常尿にもごくわずか含まれている.しかしそれは日常の臨床険査では証明できないほどのものである.したがって,尿中にブドウ糖を証明したら,一応病的な現象と考えてそれ以後の検査計画をたてる必要がある.第1にいかなる状態の尿糖であるか順序よく判断することが肝要である.そして血糖検査,それもブドウ糖負荷試験(G.T.T.)を実施して最後のつめを行なうことが,糖尿病以外の糖尿と糖尿病のそれを鑑別するポイントとなる.

内科医のための小児診療の手引き

子どもの問題行動・心身症—正常か異常か

著者: 石橋泰子

ページ範囲:P.1640 - P.1641

 子どもの問題行動や心身症は,その背景にある精神的問題は省略され,保護者の判断によって,簡単に要約された症状が,主訴として訴えられる.
 医師側が精神衛生相談の態度を打ち出さなければ,あるいは質問しなければ,患者やその保護者は,精神的問題は医師と相談すべきではないと思っていることがあり,また,精神的問題が原因になって症状をひき起こす場合があることに気づかずにいることがある.

一般医のための救急診療のコツ

不安発作患者の取扱い

著者: 小此木啓吾

ページ範囲:P.1642 - P.1644

発作時の取扱いが患者の方向を左右する
 不安発作はしばしば救急診療の対象になる.なぜならばそれは,突発的に,しかも夜間におこりやすく,自律神経性の身体症状を激しく現わし,極度の恐怖・不安を伴うために,本人はもちろん家族・近隣も大騒ぎをして助けを求めるからである.
 とくに,予後や経過という点からみて,この発作時にどんな取扱いを受けるかによって.患者の幸・不幸は著しくちがってしまう.しかも,この発作は,不安神経症の起始である場合が多いにもかかわらず,患者はもちろん,その発作を扱う医師もまた,まだその診断を決定するに至らないまま,激しい身体症状を眼前にして救急処置を迫られるという形で,その診療がはじまることが多い.この結果,当然,この起始の段階の処置は,精神科医にではなく,むしろそのすべてが一般医の手に委ねられることになる.

各科のトピックス 小児科から

大気汚染と「くる」病

著者: 海老原勉

ページ範囲:P.1646 - P.1647

 抗生物質出現以来,急性細菌性感染症は減少傾向をたどっているが,それに反して慢性疾患の増加がめだち,ことに臨床医は,かぜをひきやすい,「顔色が悪い」,「抵抗力がない」などを主訴とする乳幼児の取り扱いに悩まされている.これらの主訴は,紫外線不足から来る多雪地域の「くる」病発症前の症状に酷似しているので,筆者らは東京の糀谷地区における4カ月乳児検診に際し,左手関節のX線検査を試みたところ,図1のようなD-欠乏性「くる」病にみられる尺骨遠端部の盃状陰影を多数の乳児に発見した(表1参照).そこで,次の諸点をあげて大気汚染と「くる」病との関係を追求した.

病態生理—最近のトピックス

気管支喘息—アレルギーを基調にして

著者: 宮本昭正

ページ範囲:P.1648 - P.1648

気管支喘息の病因について
 "可逆的な広範な気道閉塞性の発作的な変化によって症状をあらわす疾患"を気管支喘息とよんでいるが,気管支喘息の病因には種々の因子が考えられている.たとえば自律神経の失調,内分泌調節異常,感染,精神神経的要因,気道の過敏性,アレルギー,最近ではβ受容体の遮断状態などである.そのいずれにもそれ相応の根拠があるわけであるが,そのいずれをより重視するかは国や各個人の研究過程や臨床的経験により異なる.これは気管支喘息の病因の多元性を示すものである.しかも,おのおのの因子がそれ単独で病因をなしていると考えられる場合もあるが,二重にも三重にも重なり合って発病に関与していると考えられる場合が多い.しかし現在では,気管支喘息はアレルギーを基調にして発症している場合が多いと広く考えられるようになった.

グラフ

膵管造影

著者: 大井至

ページ範囲:P.1652 - P.1657

 1969年にわが国で開発された十二指腸ファイバースコープは,単に十二指腸の内視鏡検査を可能にしたばかりでなく,膵管や胆管の開口部である十二指腸乳頭の容易な観察と,そこへの挿管技術によって,膵や胆に対する新しい方法論を開拓した.特に,十二指腸鏡下に十二指腸乳頭へカテーテルを挿管して行なう内視鏡的膵管造影法は,簡単に膵管を造影する方法として臨床的にも有意義であり,膵疾患の診断に不可欠な検査法といえるであろう.

胸部単純撮影でわかる心所見・5

浮腫を主症状とする心疾患

著者: 敦本五郎

ページ範囲:P.1658 - P.1662

浮腫の発生機序
 浮腫は原疾患の種類や臓器によって,心性,腎性,肝性,発生部位により,細胞外浮腫と細胞内浮腫に分けられる.前者は組織間隙に過剰の水分が蓄積した状態をいい,後者は細胞の原形質に過剰の水分が貯留した状態をいう.局所性の中には炎症性のもの,リンパ浮腫,それから血行異常による浮腫の3種類がある.ところで1955年にMachらは,慢性浮腫の中でAldosterone排泄増加を伴うものと伴わない比較的特有な臨床症状をもつ1群の症候群のあることをいい出した.これを特発性浮腫と呼んでいる.その他学童によくみられる生理的のものにねぼけ浮腫がある.
 うっ血性心不全における浮腫は,左室不全では肺うっ血症状を,右室不全では静脈系にうっ血を生じた症状を証明するものである.これらの浮腫発生機序の1つにAldosteroneの分泌亢進がある.このAldosteroneの分泌亢進は,腎におけるNa,水の再吸収を促進させる結果,浮腫を発生させることになる.このAldosteroneの分泌を左右するのは腎の傍糸球体細胞から放出されるreninである.レニンは糸球体輸入細動脈壁の弛緩によって亢進し,伸展によって抑制される,したがって,レニン分泌は,Naおよび水分の喪失,腎血流量の減少時に促進され,これが二次的にアルドステロン分泌を刺激することになり,失われたNaや水を体内に貯留するという機構が働いている.

誤られやすい心電図・4

洞性頻脈が先行する症例

著者: 日野原重明

ページ範囲:P.1664 - P.1665

 発熱や,特別な精神緊張などがなくて,洞性頻脈を示した心電図をみた時,臨床診断はどうつけるか.
 心不全がないか,甲状腺機能亢進症はないかということを考えて,これを支持する臨床所見があるかどうかをみなくてはならないが,以下のような症例があることを覚えてほしい.

内科専門医のための診断学・22

腎炎およびネフローゼ症候群(その1)

著者: 木下康民

ページ範囲:P.1666 - P.1670

 ここでとり上げる腎炎としては糸球体腎炎を,ネフローゼ症候群としてはリポイドネフローゼ,膜性腎症およびネフローゼ加味腎炎に限定する.糸球体腎炎(以下腎炎と略称する)やリポイドネフローゼ,膜性腎症およびネフローゼ加味腎炎は同一疾患であるという考え方もあるが,一方にはこれに反対する意見もある.またリポイドネフローゼと膜性腎症は,たとえばForlandら1)によると,少なくとも形態学的には異なる疾患である.さらに,これらのいろいろの疾患は腎機能や病態の上も異なった像を示すし,治療の面でも,たとえば食餌蛋白質の問題,ステロイド効果の点などで異なっている.
 これらの疾患に接した場合,いうまでもなくまず第1に正しい疾患診断を下すことが必要であるが,次には患者がその疾患のどのような病期・病型にあるのか,すなわち積極的な治療を必要とするかどうかを決定し,治療を必要とする場合にはどのような治療をなすべきかということを決定しなければならない.

Medicina CPC

急激な精神症状で始まり,高血圧と糖尿を伴っていた47歳男子の例

著者: 中沢恒幸 ,   時沢哲也 ,   土屋雅春 ,   福田芳郎 ,   尾形悦郎

ページ範囲:P.1671 - P.1680

症例 S. S. 男,47歳,旅館業
主 訴 本人:浮腫,脱力感/家族:精神障害

他科との話合い

開業医のX線技術—うまく写真をつくるには

著者: 鈴木荘一 ,   大出良平 ,   新野稔

ページ範囲:P.1682 - P.1691

 日常診療の中でレントゲンの存在は不可欠の現況にあります.日進月歩のレントゲン器械をうまく操作して,より良い写真をつくるにはどうすればよいか,お3人に総ざらいしていただいた.

特別掲載

アメリカから見た日本の医学教育(上)

著者: ,  

ページ範囲:P.1692 - P.1697

 医学部に端を発した東大紛争から4年の月日が流れようとしている.東大に次いで各地の大学に起こった紛争は,日本の医学教育に数々の問題を投げかけた.そして今日に至ってもまだ余燼はくすぶり続けている.本誌では,1968-69年当時,客員教授として日本を訪れたBrooks氏がみた"日本の医学教育"を2回にわたって連載し,改めて,この問題の根本にあるものを考えていく資料に供したいと思う.

Current Abstracts

急性胃炎における出血の処置

著者:

ページ範囲:P.1631 - P.1631

 急性胃炎にもとづく大出血の外科的処置については従来,満足すべきものがなかった.部分的胃切除のあとにも再出血することが,しばしば報告せられているのである.しかしながら,迷走神経切断術と簡単な排液法,それに加えて粘膜の出血箇所に縫合結紮を実施すると,結果は良好であった.
 シカゴ大学の病院と外来で35例を処置した経験によると,出血性胃炎が高度の急性疾患または慢性疾患を合併しているばあいには,保存的なアプローチよりもむしろ,根本的な外科的アプローチのほうが望ましいことがわかった.

全国教室めぐり

地域の第一線へ優れた臨床家を—関西医大・第2内科

著者: 鮫島美子

ページ範囲:P.1698 - P.1698

大学および教室の沿革
 本学は昭和3年6月,私立の大阪女子高等医学専門学校として大阪府枚方市に創立,付属病院は昭和8年守口市に創設された.戦前の日本では共学制はなく,したがって本学は女子の医学教育を行なう学校として3番目のものであった.
 戦後の学制改革に伴い,昭和22年大阪女子医科大学,ついで昭和29年には男女共学制をとり関西医科大学と改称,今日に至っている.現在は教養部が本学発祥の地,枚方市に,学部と付属病院は守口市にあり,また隣接の寝屋川市には付属香里病院がある.

病理夜話

心臓

著者: 金子仁

ページ範囲:P.1699 - P.1699

 病理解剖は,いうまでもなく死因を究明することがその目的の1つだが,剖検後直接死因は何かと臨床医に聞かれると,とまどう場合が決して少なくない.脳出血だとか,心臓破裂だとか一見明らかなものはよいが,大きい病変がない場合は誠に困る.要するに全身衰弱で死んだのでしょうと答えざるをえない.
 そこで解剖の時,死体の心臓をよく検べるのが大切になる.心臓はかなりの病変があれば,少なくとも死因の1つを見つけうることになるからである.

読後随想

—長谷川泉著—増補「続森鷗外論考」

著者: 長洲光太郎

ページ範囲:P.1700 - P.1701

医者とユーモア
 長谷川氏はご承知のように,すでに数篇の鷗外論を出版されているベテラン,論ずるところ奇狂に堕することなく,学者らしい地味なしかもしっかりした足どりで,読者を首肯せしめる.この増補版は最近書店で入手した.

診療相談室

虫垂炎の手術適応

著者: 牧野永城

ページ範囲:P.1703 - P.1704

質問 私ども学生のころは,虫垂炎は外科的疾患のように教えられたように憶えております.現在のように抗生物質の著しい進歩と手術後の愁訴を考えた場合,虫垂炎の手術適応についてどのように考えたらよいか,外科的,内科的立場からの意見をお聞かせください. (高知・Y生)

今月の表紙

ラボアジエの功績

著者: 小川鼎三

ページ範囲:P.1704 - P.1704

 フランスの化学者ラボアジエ Antoine Laurent Lavoisier(1743-94)は呼吸の生理学で偉大な功績を樹てた.血液循環の理を実証により示したハーヴェイ William Harvey(1578-1657)の偉功と肩をならべるものである.
 ラボアジエは純粋なパリっ子であったようで,若いときから秀才をもって聞え,すでに25歳でパリの学士院の会員に選ばれた.自分の化学実験室を作って,そこで精密な定量実験を多数おこなった.

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読者のひろば

著者: 野口八郎

ページ範囲:P.1705 - P.1705

病院は医師会とたもとを分かて
 本誌8月号「保険医辞退をどう考えるか」を読み,なにか問題点の究明が中途半端になっているような感じがした.そこで,私なりの見解を述べさせていただきたい.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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56巻10号(2019年9月発行)

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56巻8号(2019年7月発行)

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特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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