icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

medicina8巻13号

1971年12月発行

雑誌目次

Editorial

病理からみた動脈硬化の新しい問題点

著者: 中島輝之

ページ範囲:P.1863 - P.1863

 周知の通り動脈硬化症には幾つかの種類があるが,その中で最も問題なのは粥状硬化症(atherosclerosis)である.それはこのものが心筋硬塞,脳硬塞(軟化)などの基礎病変として圧倒的に重要だからである.
 日本人の死因のトップは脳卒中であって,その率はアメリカの3倍に及ぶといわれる.卒中の主な原因は欧米では脳硬塞だが,日本では最近まで脳出血が主であるとされ,その頻度は硬塞の約4倍に及ぶと考えられてきた.これに対し,九大の勝木教授らは福岡県久山町の住民につき,死亡者の殆んど全員の剖検を含む集団追跡調査を行なった結果,40歳以上の1658名中,7年間に脳血管障害で死亡した者104名,その内,脳血栓が実に70例を占め,脳出血の20例の3.5倍に及ぶことを見出した.つまり,日本でもやはり脳卒中の主因は脳硬塞ではないかと考えられるに至ったのである.

今月の主題

脳動脈硬化症

著者: 広田安夫

ページ範囲:P.1864 - P.1870

 内科医にとって"脳動脈硬化症"とはいかなる疾患であろうか.近い将来,老年人口の著増が予想されている今日,この問いかけは医学的にも社会的にも重要となってきた.ここでは,主に本症の頻度,予後,脳血管性障害発症との関係,などについて,集団検診成績から検討してみたい.

(座談会)動脈硬化—各臓器での現われかた

著者: 田中健蔵 ,   岡部信彦 ,   井口潔 ,   尾前照雄 ,   中村元臣

ページ範囲:P.1871 - P.1881

 ひと口に動脈硬化といっても,その現われかたは各臓器によって,さまざまな特異性がある.その最も典型的な例は,心筋硬塞と脳硬塞のばあいであるが,欧米とわが国を比較しつつ,病理と臨床の立場から,動脈硬化についての最近の考えかた,臓器による現われかたの相違,診断・治療についてお話しいただいた.

Leading Article

遺伝学の病因論への参加

著者: 柳瀬敏幸

ページ範囲:P.1848 - P.1849

内因の酷薄さ
 このごろの大学の病棟回診は,つぎつぎと難治の病気に直面させられる.これらは内因病といい,あるいは退行変性性疾患といい,そのどれをとっても,いまの医学水準では解決の困難なものばかりである.
 病気のもっとも理想的な解決は,いうまでもなく,まず,(1)発病を未然に防ぐことであろう.そして発病したならば,(2)完全治癒にもっていくことである.それが不可能なら,次善の策として,(3)完全寛解の状態を長く維持させることであり,次いで,(4)たとえ不完全寛解にせよ,起居動作に苦痛のない程度の状態をできるだけ長く維持させることであろう.

図解対症検査 消化器シリーズ・8

腹部膨満感

著者: 朝倉均 ,   森田證

ページ範囲:P.1854 - P.1857

 自覚的な腹部膨満感と他覚的腹部膨満とは多少異なるが,これらをきたす疾患は多い.
 生理的にも腹部膨満感を認めることがある(飽食・妊娠初期など)が,これらは詳細な問診によって病的腹部膨満と鑑別しうる.

カラーグラフ

Turner症候群

著者: 田村昭蔵

ページ範囲:P.1860 - P.1861

 Turner症候群は短躯・索状性腺(streak gonad)・性的幼児性を示し,かつしばしば種々な先天奇形を伴うきわめて特徴的な臨床像を呈する表現型女性の疾患である.本症の成因については1956年Polaniが本症患者の性染色質が陰性であることを見出し,性染色体構成の異常を示唆したが,1959年に至りFordにより本症の核型が45Xであることが確認され,染色体異常に基づく疾患であることが明らかになった(図1参照).その後XXp-,XXqiなどX染色体の構造異常を示すものが見出され,染色体学的には,性染色体構成中にX染色体の短腕を1個しか有せず,かつY染色体を含まない疾患として定義されるに至った.現在までに多種なモザイク症例も見出され,その臨床像も多彩である.今回は自験例より変わった核型を示した2症例を紹介する.

診断のポイント

非定型抗酸菌症

著者: 山本正彦

ページ範囲:P.1882 - P.1885

非定型抗酸菌とは
 非定型抗酸菌症は一般には結核症ときわめてよく類似しており,分離菌が非定型抗酸菌であるとの同定なくしては診断不可能である.したがって非定型抗酸菌という概念を明らかにする必要がある.
 非定型抗酸菌の定義としては"ヒト型結核菌(ウシ型菌を含む)以外の抗酸菌"が現在通説のようである.したがって非定型抗酸菌は実に多数の雑多な抗酸菌の集合名であり,この中には多くの菌種(Species)として確立された菌もふくまれているし,またまだ未分類の菌もふくまれている.

胃液検査の再認識

著者: 三好秋馬

ページ範囲:P.1886 - P.1888

胃液検査の意義
 胃液検査法は胃の分泌機能を知る唯一の方法であり,その基本的な考え方は現在も変わらないが,実施方法の細目は分画採取方法とか,分泌刺激剤の選択などの点で一定化されるべきだとの方向へ進みつつある.周知のように前世紀から行なわれている.
 胃液検査の必要性,とくに臨床診断に必要かという疑問が案外多いのは,検査法の手数の割に判定が単純であり,ときに不安定であることによると思われる.

見逃がされているパーキンソン症候群

著者: 加瀬正夫

ページ範囲:P.1889 - P.1891

パーキンソン病とL-dopaの開発
 最近,パーキンソン病が一般に注目されるようになった背景には,L-dopaというすばらしい抗パーキンソン剤の開発がある.本症の薬物療法はスコポラミン,アトロンピンにはじまり,多くの合成副交感神経遮断が中核をなしてきたが,最近20年来は本症の外科療法がもっぱら脚光をあびていた.けれどもこれらの治療法は全く経験的なもので,その効果にもかなりの制限がある.このようななかで新しい神経伝導物質としてドーパミンが注目され,さらにdopaminergic nervous systemが発見され,パーキンソン病はドーパミン欠乏症候群に含まれるということになり,このような神経生化学的知見のもとに試みられたのがL-dopaである.
 ところでドーパミン欠乏症候群にはL-dopaは有効であるべきであるが,パーキンソン病を含めてパーキンソン症候群のすべてにL-dopaは必ずしも有効ではない.そこでパーキンソン症候群にはどのようなものがあるか,そしてそれがドーパミン欠乏症候群に属するかどうかということも臨床的には重要なことであり,パーキンソン病を含めてパーキンソン症候群が広く注目されるようになった.しかし反面,パーキンソン症候群だけに注目して,可能性ある本態を見失わないように注意することもぜひ必要なことである.

治療のポイント

慢性腎炎患者の生活指導

著者: 折田義正

ページ範囲:P.1892 - P.1894

生活指導はなぜむずかしいか
 慢性腎炎は固定型,腎炎型,高血圧型,ネフローゼ型,末期と分類されるが(大島の原著1)参照),生活指導のむずかしさには定評がある.これには次の諸点が関係しているものと思われる.

最近の抗ウイルス剤

著者: 橘田晃

ページ範囲:P.1895 - P.1897

 細菌性疾患は抗生剤の登場によってその制御が容易となり,ウイルス疾患が次の目標に選ばれたのは当然で,最近はかなりの努力がこの方面に払われるようになった.にもかかわらず抗ウイルス剤の進歩はきわめて遅々としており,臨床上に応用しうる薬剤はいまだ少なく,その薬効も細菌疾患に対する抗生剤のそれに比ぶべくもない.しかし,ウイルスの増殖機序の解明につれ抗ウイルス剤もその作用機序が理論的に裏づけられるようになり,これに力を得て最近は多くの抗ウイルス剤が開発されつつある.

機能性不随意運動の行動療法

著者: 川野通夫 ,   高山巌

ページ範囲:P.1898 - P.1900

行動療法と学習理論
 近年,行動療法(behavior therapy)という治療法が臨床医学にとり入れられ,注目されつつある.行動療法というのはH. J. Eysenckが命名したものであるが,その理論的基礎は現代心理学の学習理論であり,この分野で開拓された知識や技法を人間の行動障害の治療に適用しようとするものである.行動療法の治療技法には,積極的条件づけ療法,オペラント条件づけ療法,逆制止療法,負の練習,嫌悪療法などがあり,治療に際してはこれらの技法を単独に用いるか,あるいは併用する.
 ところで,機能性不随意運動はmotor-neurosisともいわれ,その治療法としては,従来,説得および支持療法,精神分析療法,薬物療法などが行なわれているが,難治な場合が多い.しかし,行動療法はこの種の疾患の治療においても大きな成果をおさめている.

内科専門医のための診断学・24

高脂血症

著者: 五島雄一郎

ページ範囲:P.1901 - P.1906

高脂血症の概念
 高脂血症hyperlipemiaという言葉の概念には現在いろいろ混乱がある.
 1961年Ahrensによって,高脂血症の成因がfat inducedlipemia(脂肪起因性脂血症)と,carbohydrate induced lipemia(糖質起因性脂血症)とに分類が可能であるとの報告から,1965年Fredricksonらによってhyperlipemia(高脂血症)の広範な総説が発表されて以来,従来からの定義あるいは用語面からの混乱が著しくなった.また血清脂質が主としてリポ蛋白として存在し,それぞれの濃度の増加が脂血症の原型であるとして,高リポ蛋白血症hyperlipoproteinemiaという名称もFredricksonらによって提唱された.またFurmanらのごとくコレステロール,リン脂質,中性脂肪などの血中脂質の増加している状態の総称として高脂質血症hyperlipidemiaとよぶものもあり,さらに脂血症の成因から内因性,外因性(endogenous,exogenous)とに分ける名称もHavel, Kuoらによって提唱されている.

臨床家の遺伝学入門・12

社会と遺伝学

著者: 大倉興司

ページ範囲:P.1907 - P.1910

社会とのかかわり
 遺伝学は社会と深いかかわりをもち,人生とも強いつながりをもっている.きわめて基礎的な自然科学の一分野であり,ことに生命の本質ともいえる遺伝子に関する学問であることから,生物科学,ないし生命科学の最も重要な基礎であると同時に,その応用の面において人間の生活のさまざまな面と接触をもち,利用されてきたのである.このことは,まず農業における各種の動植物の品種の改良ということでよく知られているとおりである.日常われわれが口にする米,麦,多くの野菜や果物の類,菊などの鑑賞用の植物,あるいは乳牛をはじめ食肉用家畜,家禽,さらに医学・生物学に欠くことのできない実験用動物など,また目に立たぬところでは酒,ビール,味噌,醤油など発酵・醸造に用いられる酵母類など,広い範囲にわたって遺伝学や育種学の知識が利用され,"いわゆる"改良が進められ,人間の生活に多くの利益をもたらしたのである.
 このような品種の改良は,あくまでも人間にとって利益と考えられる方向に向けられ,その途中に生じた利益と考えられぬものはすべて捨て去られ,収穫量や味覚への適合などほとんどすべて経済性という尺度において利益と考えられる方向に改良されたのである.この改良の目的のためには手段は選ばれない.したがって,突然変異によって新しい形質を導入し,それによって改良しようという試みのためには放射線照射という最も効果的な方法がきわめて積極的に利用された.

日本人の病気

白血病

著者: 太田和雄

ページ範囲:P.1912 - P.1914

 日本人の病気として白血病を取り上げることは,日本における白血病が諸外国のそれとどのように違っているかを明らかにしようということであろう.白血病は肺癌,膵癌,前立線癌,膀胱癌,卵巣癌などと共に戦後急激に増えた疾患の1つとして注目されてきた.しかし白血病が増加しているといってもその内容実態はどうなのか,またごく最近ではその増加の傾向はどうなのか,などといった点に関してあまりはっきりした説明がなされていなかった.

日常検査のすすめかた

出血傾向

著者: 藤巻道男

ページ範囲:P.1916 - P.1917

 出血傾向に関する検査は,スクリーニング・テストとして,まず簡易な信頼度の高い検査を行ない,その検査成績より凝血機構のどの部分に異常があるかを推測し,さらに精密な検査が進められる.
 止血機構は,1)血管機能,2)血小板機能,3)血液凝固機能の調和せる複合作用によって止血が行なわれる.これらの止血機構のいずれか,または組み合わさったものの障害によって出血傾向は起因するものである.

内科医のための小児診療の手引き

異物

著者: 西村昂三 ,   岩坪哲哉

ページ範囲:P.1918 - P.1919

 小児,ことに乳幼児では実にいろいろの物体が思わぬところへ異物となつて侵入する.その場所も気道(鼻腔,喉頭,気管,気管支)や消化管(食道,胃,腸管)のみならず,耳,目,尿道,膀胱,腟にもしばしばみられるものである.本稿では異物が嵌入した器官系統別にわけるよりも,より実用的な見地から比較的頻度の多い異物を例示して解説することにする.

一般医のための救急診療のコツ

薬剤注射でショックを起こしたとき

著者: 坂元正徳 ,   井上昇

ページ範囲:P.1920 - P.1921

ショックの原因
 薬剤注射でおこすショックの原因は,アナフィラキシーと考えられている.本体は抗原抗体反応であるが,薬品の多くは蛋白質のような完全抗原ではなく,血清蛋白質と結合して抗原性をもつハプテン(半抗原)である.したがって,蛋白質以外の薬品の投与によってショックを起こす場合には,起こした生体の素因が重要な意義をもっている.しかし,実地上こういった過敏症の人を完全にスクリーニングできる方法は現在のところない.
 薬剤注射後5-15分以内に,時には注射針をぬかないうちに,低血圧,四肢厥冷,意識障害などの循環不全症状や気管支端息様の発作,声門浮腫などによる気道狭窄症状を呈して,一部は死の転帰をとることがある.したがって症状をみきわめて臨機応変な救急処置をとる必要がある.早く治療を始めれば,当然のことながら予後は良好であるので,日頃対策をたて準備をしておくことが肝要である.

統計

動脈硬化性心臓疾患の現状

著者: 小林秀資

ページ範囲:P.1922 - P.1923

 動脈硬化症という疾患については,統計的に処理する場合,わが国の基準はなく,よって患者数の把握は残念ながらできません.
 また死亡診断書に記載されました動脈硬化症という病名も,原死因を選択する一定の国際ルールによって,同時に記載されてある他の病名や関連ある病名として処理され,集計されることが多いのです.

新薬の紹介

抗菌性物質

著者: 加藤康道

ページ範囲:P.1926 - P.1926

 抗菌性物質の開発は相変わらず盛んで,とくに従来手薄の感があったグラム陰性桿菌による感染症の抑圧のため鋭意努力がはらわれているが,最近発売された2,3のものを紹介する.なお抗腫瘍剤については省略した.

グラフ

膠原病と肺—I.全身性エリテマトーデス(SLE)

著者: 萩原忠文 ,   堀内篤

ページ範囲:P.1928 - P.1933

 膠原病は全身諸臓器に病変がおよぶことが多いが,その中で肺はもっとも侵されやすい臓器の1つであり,肺病変を初発症状とする場合も少なくない.しかもX線写真で比較的早期からその所見を観察できる利点があるが,膠原病としての他の所見が揃わない限り異常陰影をすぐ膠原病によるものと断定できない場合が多い.
 一般に膠原病の胸部X線像のおもなものは,①びまん性間質性肺炎,②肺線維症,③無気肺,④胸水貯溜および⑤心陰影拡大である.これらは単独に,あるいは合併して認められるが,もっとも多いのは①および②であり,両者の混合像も多くみられる.これらの陰影はすべての膠原病に共通しているが,その程度および出現率は,それぞれの疾患によって多少の差がある.

症例

腎臓病および高血圧症患者の妊娠・分娩について

著者: 柴垣昌功 ,   日野原重明 ,   伊藤博之 ,   松岡松男

ページ範囲:P.1934 - P.1937

 腎臓病の既往がある婦人,あるいは血圧の高い婦人に,妊娠の継続を許してよいか否かは,臨床家がいつも頭を悩ます問題である.患者にとっても,結婚して子どもを産めるかどうかは,その人の幸不幸に大きく影響する深刻な問題であろう.
 われわれは最近までに,腎臓病および高血圧それぞれ15名の患者について,おのおの20回の妊娠・分娩の経過を観察し,妊娠が血圧および腎機能に与える影響,および,逆に高血圧,腎臓病が妊娠・分娩に与える影響について,内科および産科の立場から検討を加え,妊娠継続の可否について,一応の基準を得たので,ここに報告する.

ベクトル心電図入門・6

WPW症候群その他

著者: 戸嶋裕徳

ページ範囲:P.1939 - P.1941

Ventricular Preexcitation(WPW症候群)
 Ventricular Preexcitationは心電図上,PR短縮,δ波の存在,QRS間隔の延長がその特徴的所見とされるが,ベクトル心電図ではPR時間とQRS間隔は測定が困難である.しかし,この異常はベクトル心電図でもδ波に相当するQRS環初期部の興奮の遅延,つまり輝点の密集の存在により的確に診断できる.
 脚ブロックの場合にも,輝点の密集が診断上重要であることは前回述べたが,脚ブロックでの輝点の密集は,右脚ブロックではQRS環復帰部に、左脚ブロックでは主としてQRS環主部にみられたのと対照的に.Ventricular preexcitationでは図1にみられるように,QRS環の初期部に明らかであることが診断上特異的と言える.

誤られやすい心電図・6

中枢神経障害の心電図

著者: 日野原重明

ページ範囲:P.1942 - P.1943

 症例1 74歳の男子.入院前日の正午より嘔気,嘔吐あり,午後6時から意識を失い,近医の往診をうけた時の血圧は220/108であった.夜間は39℃の発熱があり,右上下肢に筋硬直がみられ,翌朝当院に入院した.
 平素より高血圧(180/90)があり,当院外来にて発病約1カ月前に心電図(図1)をとっている.この心電図には左軸偏位と,V5に二相性のTを認めるのみで,特記すべき変化ではない.

他科との話合い

体質とはなにか

著者: 宮尾定信 ,   三村悟郎

ページ範囲:P.1944 - P.1952

 体質とは何か.この問題をめぐって詳細に論ずれば膨大なものになるであろう.逆にいえば,それほど体質は医学のあらゆる分野に根本的にかかわっているともいえよう.ここでは,現時点における定義からはじめて,体質改善に至るまで,臨床における体質医学の概要についてお話しいただいた.収録場所は,日本に唯一の,そして諸外国にも類を見ない熊大体質医学研究所である.

臨床メモ

カゼ,腎盂炎,それに腸炎

著者: 浦田卓

ページ範囲:P.1965 - P.1965

 私も人並以上に誤診をしているはずである.しかし,これは誤診だなと自認できるのは,残念ながら,実際に犯したはずの誤診の,それこそ何分の一か,何十分の一であろう.また一方,さいわい私も人並に,われながらうまく診断がついたな,と得意になることが,まれながらないでもない.以下は,その三題噺めいたおはなし—.

海外だより

米国における内科卒後研修の体験

著者: 中島弘二

ページ範囲:P.1967 - P.1971

 私は米国ニューメキシコ大学(ニューメキシコ州アルバカーキー市)において内科レジデントを経験する幸運に恵まれ,たった1年間ではあったが色々な体験をしたのでその感想を述べたい.

今月の表紙

アンリー・デュナンと赤十字の創始

著者: 小川鼎三

ページ範囲:P.1971 - P.1971

 赤十字の創始者デュナン JeanHenri Dunant(1828-1910)は実に人類愛に徹した人であり,その生涯は劇的であった.スイス人で富裕な銀行家であったが,北イタリアを旅行して1859年6月24日ソルフェリノの戦いを目撃した.それはフランスとイタリアの連合軍がオーストリア軍と戦ったので,15時間の激戦で4万人あまりの死傷者がでて,救護医療の手段は欠け惨状をきわめた.
 デュナンはその光景をみて深く感ずるところがあった.1862年に彼は「ソルフェリノの思い出」Un Souvenir de Solferinoと題する一書を公けにして,戦争の悲惨を描き,戦場で傷ついた将兵を敵味方の区別なく救助すること,そのために篤志者を糾合して国際的な機関を設け常置とすることの必要を説いた.

読後随想

—吉村 昭著—「日本医家伝」(講談社・680円)

著者: 長洲光太郎

ページ範囲:P.1972 - P.1973

先人の生涯を訪ねる文学と伝記の谷間
 ドキュメントという言葉が流行ったのは戦後のことである.著者吉村氏には数多くのドキュメントがある.このジャンルの第一人者といってよいだろう.心移植のことも書いた.「三陸津浪」(小説題名「海の壁」)の舞台となった岩手県白老に一昨日泊った時,そこで上記の本をよむ.

病理夜話

胃(その2)

著者: 金子仁

ページ範囲:P.1974 - P.1974

 胃癌といえば,必ず思い出す話がある.
 私の2年先輩の医師のことであるが,もう10年以上も前の話だから彼が35,6歳の頃である.

--------------------

medicina reversed CPC

著者: 荒川泰行 ,   渥美久 ,   金田春雄 ,   長谷克 ,   河野均也 ,   河合忠

ページ範囲:P.1954 - P.1963

症例 69歳 男(死亡11/II)

Current Abstract

ページ範囲:P.1885 - P.1885

母親の糖尿病が胎児に及ぼす影響
 4年間にわたるある研究において,妊娠性糖尿病が113例あったが,そのうち8例は,胎児の死を予防するためになんらかの手をうつ必要があった.妊娠の第31週以後は,エストリオールの尿中24時間排泄量を測定することによって,全患者を監視下においたが,これは胎児に危険が迫るのを確認するためであった.妊娠前すでに糖尿病にかかっているものでも,もしエストリオール値がひきつづき正常であれば,出産まで妊娠を継続することを許可した.この種のグループでは,死産は一例もなかったが,患者20名のうち16名は,妊娠が38週またはそれ以上つづいた.
 妊娠前すでに糖尿病にかかっていた患者のばあい,生れた赤ん坊の生下時平均体重は3,026gmであったが,妊娠性糖尿病のグループの赤ん坊のそれは,3,441gmであった.4,000gmまたはそれ以上のものが,11名もあった.巨躯症の赤ん坊を生んだ女性は一般に,妊娠の後半になって糖尿病と診断され治療をうけた患者であった.

読者のひろば

著者: 山崎生 ,   小池生 ,   K生 ,   田中生 ,   GP生

ページ範囲:P.1975 - P.1975

この1年をふりかえって
medicinaも8年目の暮れを迎えるに至りました.最近のmedicinaに対して,多用な日常診療にもかかわらず寄せられた読者の感想の中から,未掲載のものを抽出・一括してみました.この1年を回想しながら……(編集室)

「medicina」第8巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

60巻13号(2023年12月発行)

特集 一般医家のための—DOAC時代の心房細動診療

60巻12号(2023年11月発行)

特集 内科医が遭遇する皮膚疾患フロントライン—「皮疹」は現場で起きている!

60巻11号(2023年10月発行)

増大号特集 患者さんの質問にどう答えますか?—言葉の意味を読み解きハートに響く返答集

60巻10号(2023年9月発行)

特集 ミミッカー症例からいかに学ぶか

60巻9号(2023年8月発行)

特集 症例から読み解く—高齢者診療ステップアップ

60巻8号(2023年7月発行)

特集 浮腫と脱水—Q&Aで学ぶジェネラリストのための体液量異常診療

60巻7号(2023年6月発行)

特集 整形外科プライマリ・ケア—内科医が知りたい整形外科疾患のすべて

60巻6号(2023年5月発行)

特集 Common diseaseの処方箋ファイル—臨床経過から学ぶ20症例

60巻5号(2023年4月発行)

特集 臨床医からみたPOCT

60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

icon up
あなたは医療従事者ですか?