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文献詳細

雑誌文献

medicina8巻13号

1971年12月発行

臨床家の遺伝学入門・12

社会と遺伝学

著者: 大倉興司1

所属機関: 1医歯大人類遺伝学

ページ範囲:P.1907 - P.1910

文献概要

社会とのかかわり
 遺伝学は社会と深いかかわりをもち,人生とも強いつながりをもっている.きわめて基礎的な自然科学の一分野であり,ことに生命の本質ともいえる遺伝子に関する学問であることから,生物科学,ないし生命科学の最も重要な基礎であると同時に,その応用の面において人間の生活のさまざまな面と接触をもち,利用されてきたのである.このことは,まず農業における各種の動植物の品種の改良ということでよく知られているとおりである.日常われわれが口にする米,麦,多くの野菜や果物の類,菊などの鑑賞用の植物,あるいは乳牛をはじめ食肉用家畜,家禽,さらに医学・生物学に欠くことのできない実験用動物など,また目に立たぬところでは酒,ビール,味噌,醤油など発酵・醸造に用いられる酵母類など,広い範囲にわたって遺伝学や育種学の知識が利用され,"いわゆる"改良が進められ,人間の生活に多くの利益をもたらしたのである.
 このような品種の改良は,あくまでも人間にとって利益と考えられる方向に向けられ,その途中に生じた利益と考えられぬものはすべて捨て去られ,収穫量や味覚への適合などほとんどすべて経済性という尺度において利益と考えられる方向に改良されたのである.この改良の目的のためには手段は選ばれない.したがって,突然変異によって新しい形質を導入し,それによって改良しようという試みのためには放射線照射という最も効果的な方法がきわめて積極的に利用された.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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