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文献詳細

雑誌文献

medicina8巻3号

1971年03月発行

文献概要

カラーグラフ

内分泌疾患の視診所見—Cushing症候群

著者: 尾形悦郎1 寺山勇2

所属機関: 1東大第1内科 2茨城県立中央病院皮膚科

ページ範囲:P.268 - P.269

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 副腎皮質からは多数のステロイドが分泌されるが,それらをホルモンとしての機能面から分類すると,①主として糖・蛋白および脂質の代謝に作用し,その主要効果として糖新生をきたすglucocorticoid,②腎からのNa再吸収に作用するmineralocorticoid,③男性化作用を示すandrogen,の3つに大別される.ヒトの副腎から分泌されるglucocorticoidはcortisol(hydrocortisoneともいう)である.なんらかの原因で長い期間cortisolが過剰に分泌された結果生じた病態―hypercortisolism―がCushing症候群である.
 Cushing症候群の診断は,患者副腎皮質からのcortisol分泌の持続的亢進を化学的に証明すれば確実であるが,その特徴的な臨床像を注意深く観察することによってもかなりの正確さをもって,その疑い診断にまで到達することができる.Harvey Cushingは,1932年に始めてこの症候群を記載した際に,その特徴的な所見として次のような症状および徴候をあげている,ⓐ顔面・頸・躯幹の(有痛性)脂肪沈着,ⓑ胸椎上部を中心とする脊椎後彎,ⓒ女子および思春期前の男子の異常多毛,ⓓ皮膚の暗赤色色調および腹部・大腿の赤紫色の萎縮性皮膚線条,ⓔ高血圧,ⓕ座瘡を伴った感染しやすい皮膚.さらに彼は,その他にもしばしば見られる所見として,血糖上昇・糖尿・糖処理能低下,多飲,多食,骨粗鬆症,皮膚の青銅色色素沈着,大理石様皮膚紋理,赤紫色の皮下溢血をあげた.これら記載のうち,脂肪沈着がほとんど無痛性であることをのぞけば,Cushingのオリジナルの記載は,Cushing症候群の臨床診断のガイドとして,現在でも最も役にたつものである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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