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カラーグラフ
内分泌疾患の視診所見—Cushing症候群
著者: 尾形悦郎1 寺山勇2
所属機関: 1東大第1内科 2茨城県立中央病院皮膚科
ページ範囲:P.268 - P.269
文献購入ページに移動Cushing症候群の診断は,患者副腎皮質からのcortisol分泌の持続的亢進を化学的に証明すれば確実であるが,その特徴的な臨床像を注意深く観察することによってもかなりの正確さをもって,その疑い診断にまで到達することができる.Harvey Cushingは,1932年に始めてこの症候群を記載した際に,その特徴的な所見として次のような症状および徴候をあげている,ⓐ顔面・頸・躯幹の(有痛性)脂肪沈着,ⓑ胸椎上部を中心とする脊椎後彎,ⓒ女子および思春期前の男子の異常多毛,ⓓ皮膚の暗赤色色調および腹部・大腿の赤紫色の萎縮性皮膚線条,ⓔ高血圧,ⓕ座瘡を伴った感染しやすい皮膚.さらに彼は,その他にもしばしば見られる所見として,血糖上昇・糖尿・糖処理能低下,多飲,多食,骨粗鬆症,皮膚の青銅色色素沈着,大理石様皮膚紋理,赤紫色の皮下溢血をあげた.これら記載のうち,脂肪沈着がほとんど無痛性であることをのぞけば,Cushingのオリジナルの記載は,Cushing症候群の臨床診断のガイドとして,現在でも最も役にたつものである.
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