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雑誌目次

雑誌文献

medicina8巻4号

1971年04月発行

雑誌目次

Editorial

農薬中毒の対策

著者: 若月俊一

ページ範囲:P.403 - P.403

 農薬中毒の対策は,2つの面からなされる必要がある.1つは,農薬を使用する農民の安全対策として,もう1つは,農薬汚染による公害,とくに農作物などの食品への残留毒の対策としてである.前者は,職業災害ないしは職業病からの視野であり,後者は,「公害」的立場からである.

今月の主題

農薬中毒—発生機転と臨床像

著者: 平木潔

ページ範囲:P.404 - P.413

 農業の近代化に伴って農薬の使用は激増した.その結果,今日では農薬中毒が大きな関心の的となってきた.ここでは,主要な農薬中毒が如何なる臨床像を呈するかについて明らかにし,同時に最近の問題である残留農薬についても言及したい.

農薬中毒の治療

著者: 岩崎一郎

ページ範囲:P.414 - P.419

 施用の全面的な中止が不可能な農薬について,残留毒性ひいては慢性中毒化としての問題が提起されてきた.しかし現段階での治療対象は急性中毒の症例が主である.以下,一般救急処置並びに各農薬中毒に対する治療の実際についてまとめた.

農薬中毒の現状と対策

著者: 上田喜一

ページ範囲:P.420 - P.426

 DDTの発見を契機にして普及した農薬は,今日においてその弊害が問われている.ここでは,農薬中毒の変遷を識ることによってこの問題の原点に立ち,さらに農薬の残留毒性について内外のデータから実情をとらえ,対策点をも考えたい.

Leading Article

新しい医科大学に期待するもの

著者: 高橋晄正

ページ範囲:P.394 - P.395

 その"新しい大学"なるものが,いまいる人たちによっていまの医療のしくみのままに運営されるかぎり,何を期待しても無意味であることは明白である.だからこのような原稿を書くこと自体無意味なことだが,これを読む人のなかに一人くらいは共感を覚えて,いっしょに医療革命をやろうなどという人が出るかも知れない,という淡い期待のもとに,筆を進めることとする。

カラーグラフ

内分泌疾患の視診所見—Addison病

著者: 尾形悦郎 ,   寺山勇

ページ範囲:P.400 - P.401

 Addison病は,副腎原発性の(したがって,下垂体不全に由来しない)病変による,慢性副腎皮質機能不全症であるといえる.副腎皮質病変の本態は,日本では結核が大部分であるが,そのほか,癌転移,真菌症などもその原因としてあげられている.一方,欧米では自己免疫異常によると思われる特発性副腎炎がAddiosn病の主な原因となってきている.特発性副腎炎によるAddison病は,日本での報告は稀であるが,今後,より多く発見されるものと想像される.Addison病の視診は,まず色素沈着の観察につきるといっても良いほど,患者の色素沈着が,この病気の診断のきっかけとなっている.

診断のポイント

サルコイドージス

著者: 長沢潤

ページ範囲:P.427 - P.430

 サルコイドージスもはじめは稀有な疾患として,しかも皮膚科医の興味の対象にしかすぎなかったが,1939-1945年にわたる今次の大戦以後,欧米においても,本症は医学のほとんどすべての分野でみとめられる多彩な症状をもった疾患で,しかも比較的一般にみられるものと考えられるようになってきた1).このような傾向は勿論そのままわが国にもあてはまるものであり,特に1954年以後胸郭内病変が注目され,ついで眼など,その他の器官のサルコイドージスが報告されて,本疾患は明確に全身性疾患として考えられるようになった2)3).このような趨勢を反映して本疾患に対する関心もたかまり,その報告例も数を増してきており,本邦におけるサルコイドージスの実態調査も着々と進められている現状である.
 したがって私ども一般診療にたずさわるものも,本疾患の専門家であるか否かはとわず,まず一応の知識をもって対処しなければならない.現に私どもの関係している年間内科診療患者数わずか2800名前後という学内診療機関においてさえ,昨年度サルコイドージスと思われる2症例を経験しており,本症は比較的身近な疾患となってきている.

意識障害の診かた—経験例をもとにして

著者: 本多虔夫

ページ範囲:P.431 - P.433

診断の意義
 臨床家にとって,病歴と理学検査physical examinationは正しい診断に達する出発点として非常に重要である.しかし患者に意識障害がある時には,十分に,信頼できる病歴を得ることが困難であることが多い.このような場合には,当然の結果として,より正確なphysical examinationを行なうことが要求される.ところが,意識障害患者は一般患者よりも非協力的であり,必ずしも一般患者と同様に診ていくことはできない.このような困難に直面し,さらに意識障害という重篤な症状におびやかされて,あわてないためにも,意識障害の診かたに精通することは重要なことであると思う.

治療のポイント

経管栄養

著者: 林四郎

ページ範囲:P.434 - P.436

栄養補給法の中で経管栄養が占める位置
 生体にとって,1日も欠かしたくない栄養補給であるが,その方法として,経口的,経腸的(経管栄養)および避腸的(注射)という3つの代表的な経路があげられる.この中で経口的栄養摂取がもっとも生理的な栄養補給経路であることはいうまでもない.しかし患者の状態,たとえば食道狭窄,消化管通過障害,消化管手術後早期,あるいは意識喪失状態などではやむをえず,他の方法に頼らざるをえない.そのような場合,もっとも容易な方法は静脈内注射により糖質,アミノ酸製剤,全血,血漿製剤,さらに静注可能な脂肪乳剤などを与えるものであるが,この方法の最大の欠点は栄養補給量,カロリー投与量が不足しがちなことであり,それを克服するためには完全静脈内栄養補給法として,輸液量を4000-5000mlへと増やし,脂質注入などに活用せざるをえない.
 最近一部で賞用し始められたこのような完全静脈内栄養補給法などを考えると,従来考えられてきたレベルよりもはるかに効率の高い栄養補給路となりうる可能性があるが,今日のところでは経管栄養に及ぶ段階ではない.これから述べる経管栄養については,いろいろと手がかかる欠点があるが,活用される価値があるだけに,筆者の経験を中心にして,その概要を述べたい.

腹膜灌流—その適応と限界

著者: 詫摩武英 ,   三村信英

ページ範囲:P.437 - P.440

 近年人工透析療法が普及し,重篤な急性および慢性の腎不全例が本療法で単に延命のみでなく,あたかも再び翼を得たかのごとく社会復帰することも可能となった.人工透析療法としては現在のところ,人工腎臓という特殊濾過装置を必要とする人工血液透析法と,特殊な装置をことさらに必要としない,患者自身の腹膜(22000cm2の半透膜)を利用する腹膜灌流法との2つに大別される.
 腹膜灌流の発展の歴史,詳細な理論,長期透析の場合に起こる多彩な合併症,paramedicalな諸問題などは既述の報告1)〜3)に譲り,本稿ではその適応・手技・効果・副作用・限界など実際に長期腹膜灌流を施行するのに際して当面する臨床的な問題点,およびその対策について述べることにする.

症例 全身性疾患と筋・4

電解質代謝と筋

著者: 里吉営二郎 ,   木下真男 ,   若田宣雄 ,   高沢靖紀

ページ範囲:P.441 - P.445

症例1
 22歳,男,会社員.
 主 訴 全身の脱力感.左大腿部筋痛.

臨床家の遺伝学入門・4

染色体

著者: 大倉興司

ページ範囲:P.446 - P.450

ヒトの染色体
 染色体は細胞分裂の中期metaphaseという時期に光学顕微鏡によってはっきり見ることができる.15年ほど前から組織の人工培養が容易になり,末梢血から白血球を分離して,これを培養することによって簡単に染色体を調べることができるようになった.
 白血球培養では培養を始めてから48ないし72時間後(組織培養では約3週間後)に,コルヒチン(コルセマイド)を培養液に加えると,その作用で細胞の分裂が中期からさきに進まない.その時期は染色体が最も濃縮し,かつ各染色体が自己複製(増殖)して2本の染色分体chromatidになっているが,細胞分裂の時に染色分体をそれぞれの娘細胞に分けるための紡?糸spindleの付着する動原体centromere,kinetochoreの部分はまだ分かれていない.

日本人の病気

膵疾患

著者: 本間達二

ページ範囲:P.452 - P.454

 膵の疾患で臨床上扱うことの多いのは急性膵炎,慢性膵炎,膵癌である.そのほかにも,膵嚢胞,インシュローマ,Zollinger-Ellison症侯群など興味ある症状をもつものもあげられるが,頻度としては稀なものであり,諸外国とくらべて日本でとくに頻度が問題となるものではない.したがってここでは,急性膵炎,慢性膵炎,膵癌について記すことにする.
 1968年(昭和43年)に筆者らが全国の医療機関87施設についてアンケート調査した結果では,上の3者の最近の頻度は図1にみる通りである.合計すると,膵疾患患者は入院患者100人について1人強となり,それほど稀なものではない.入院患者数に占めるこれらの疾患の患者数の百分比の推移をみると,急性膵炎はほぼ横ばい,膵癌は徐々に増加,慢性膵炎は昭和40年を境としてかなり増加している.

日常検査のすすめかた

浮腫

著者: 河野均也

ページ範囲:P.456 - P.457

全身性浮腫の成因
 浮腫とは組織間隙におこる病的な体液の貯留を意味し,通常皮膚におけるものをいうが,胸水や腹水の貯留もほぼ同様の意義を有し,種々な疾患に際して出現する重要な症状の1つであり,その原因を追求することは治療を行なうにあたってきわめて大切なことである.浮腫には腎疾患や肝疾患などに際してみられる全身性の浮腫と局所性炎症性浮腫のごとく局所的浮腫の2つがあるが,ここでは全身性浮腫のみについてのべる.
 組織間液の量は正常では主として毛細管圧,血漿膠質浸透圧,および組織圧の相互の平衡と腎臓における水とNaの代謝などにより調節されている.したがって浮腫の成因としては,

内科医のための小児診療の手引き

児童・生徒に多い症状

著者: 巷野悟郎

ページ範囲:P.458 - P.459

学校身体検査の結果から診察を求められる場合
 学校身体検査は毎年定期的に行なわれて,異常がチェックされる.この際,文部省が定めた身体検査項目があるので,とくにこれを重点において観察するが,それ以外にもいろいろの症状の発見されることがある.そして,その際発見される症状は,すでに本人あるいは家族も気づいていて,診察,治療をうけていることもあるが,なかにはそのとき初めて指摘されたということもある.また医師が外観的な診察で異常を認めないとしても,担任教師から,日常の学校生活を通じて団体行動についていけないこどもであることを指摘されることがある.例えば疲れやすいこどもであるとか,病気しがちで欠席日数が多いとか,教師の目から見た健康のチェックの結果が報告される.
 このようにして,医師と教師とによってこどもの健康状態が把握されると,その結果は家庭に報告され,そのうちの多くのものは病院・診療所へ診察を求めることになる.

一般医のための救急診療のコツ

食中毒—鑑別と処置

著者: 柳下德雄

ページ範囲:P.460 - P.462

鑑別診断のコツ
 患者の発生状況から 食中毒の場合は,数人以上の患者が同時あるいは相前後して発症するのが常である.赤痢やパラチフスなどの急性伝染病の場合は,爆発的な流行であつても数日間にわたって発生をみる.食事の不摂生や食事性アレルギーによる急性単純性胃(腸)炎では,もちろん集団発生はみられない.
 季節の関係から 集団発生する夏の急性胃腸炎といえば,昔は赤痢とサルモネラおよびブドウ球菌による食中毒を考えるべきであつた.しかし近年は赤痢が激減したので,夏ならまず腸炎ビブリオ食中毒を念頭におくべきである.この腸炎ビブリオ食中毒は夏→初秋に限って多発する特徴があり,他の季節には全く発生しない.また,「いずし」によるボツリヌス中毒は初冬にだけ発生し,「ふぐ」や「きのこ」の中毒は,出まわる季節に関係し,貝類中毒は特定の季節に特定の場所で採れたものに限られる.

病態生理—最近のトピックス

ネフローゼ症候群と制御理論の導入

著者: 古川俊之

ページ範囲:P.464 - P.465

浮腫とアルドステロン分泌
 ネフローゼ症候群の浮腫にアルドステロン分泌亢進が伴う事実は,Luetcherら(1955)がはじめて明らかにしたが,今日,二次性アルドステロン症は生体のホメオスターシス維持を担う制御系の異常として理解されている.
 すなわちネフローゼ症候群で低アルブミン血症が起こると血漿膠滲圧が低下し,毛細血管壁を介する体液分布平衡が乱れて組織間液は相対的に増し,循環血漿が減る.その結果腎血流量が低下すると旁糸球体装置からのレニン放出が促され,これが血中アンジオテンシノーゲンを分解してアンジオテンシンIを作る.アンジオテンシンIは血中の酵素の働きによって活性型(II)となるが,後者は強力なアルドステロン分泌促進効果をもつ.こうして分泌されたアルドステロンは主として腎の遠位尿細管に作用して,Na再吸収,K,H排泄を促進する.Na再吸収は一部ADH系を介して水の再吸収をひきおこし,これは細胞外液増加をもたらす.この反応は新しい体液平衡条件が満足されるまで続き,組織間液の増加,すなわち浮腫を生じる.

グラフ

経口的大腸迅速造影法

著者: 恵畑欣一 ,   山中延元 ,   浅川裕三 ,   森弘

ページ範囲:P.468 - P.473

 大腸X線検査法は,経囗的方法でその機能的変化を,注腸法によって器質的診断をというのが原則ではあろうが,薬理X線検査法を用いると経口法によっても器質的診断がほぼ可能となる1)
 胃X線撮影後30-45分で小腸一般検査を施行したのち,メトクロプラマイドシロップ(プリンペランシロップ)20ml(適宜増減)を服用して60分あるいは120分(直腸までの時は180分)撮影を行なう.小腸検査をしないで大腸検査をする時は胃検査後右下側位を取らせてから服用させるとよい.浣腸などの前処置は,スクリーニング,集団検診の時は施行しなくてもよいが,精検の場合には胃検査前1-2時間に浣腸したほうがよい.精検のためには更に二重造影法に発展することも可能であり,実地医家には精度の高いスクリーニング方式として簡単容易であり,集団検診にも実際に応用されている.

内科専門医のための診断学・16

小腸・大腸(その1)—Malabsorption Syndrome

著者: 日野和徳

ページ範囲:P.475 - P.481

 筆者に課せられたテーマは,内科専門医のための診断学のうち「小腸・大陽」であるが,理解の便を考えて実際の症例について解説する形で述べながら,一般的な事順にふれてゆくことにしたい.
 内容を2部に分け,今回"その1"においては,いわゆるMal-absorption Syndromeの症例について診断上の要点を,一般的な検査,消化吸収試験,消化管内蛋白漏出試験,レントゲン所見,生検などの面から検討を加えることとする.

研修医のためのWard Conference 関西電力病院

腎孟腎炎—ことに慢性腎盂腎炎の考えかた,治療のすすめかた(その2)

著者: 片村永樹 ,   原報 ,   久下義文 ,   新井永植

ページ範囲:P.482 - P.485

腎盂腎炎と高血圧症
 —腎盂腎炎は高血圧とふかい関係がありますね.
 片村 すでに血管撮影のさい述べたように腎盂腎炎腎は,血管系,ことに弓状動脈や小葉間動脈などで狭窄や閉塞,部分的な拡張,蛇行,らせん様化などの変化があり11),増殖性動脈内膜炎をきたして動脈壁の増殖肥厚が著しいために,腎血管性因子による高血圧をきたします.さらに病変程度がすすめば腎組織の萎縮をきたし,腎阻血が強く,いっそう高血圧が増強します.Bengtssonら12)は,慢性腎盂腎炎患者の65%に高血圧があり,それらの37%は拡張期血圧が100mmHg以上になることを指摘しており,WeissとParker13)14)は悪性高血圧症の15-20%は腎盂腎炎に由来することを指摘していますが,そのほかの研究者15)23)たちもほぼ似た数字を示しています(表3).

他科との話合い

小児の虫垂炎

著者: 加藤英夫 ,   長島金二 ,   尾山彰

ページ範囲:P.486 - P.493

 小児の虫垂炎は症例が多く時にはその症状が多彩なため誤診されたり,見逃がされたりすることがある.そこで現時点での考え方,診断のコツなどについて,小児科・小児外科の立場から.

medicina CC

頭痛を訴えて来て高血圧と糖尿病を指摘され漸次体重減少をきたした症例

著者: 守屋美喜雄 ,   本田利男 ,   五十嵐正男 ,   沢木信之 ,   尾形悦郎

ページ範囲:P.495 - P.506

症例 曽○重○,47歳,男
 既往歴 虫垂切除,肺結核治療以外特記すべきことなし.事務職,飲酒癖あり.

話題

—重要な今後の課題を示唆—第8回日本糖尿病学会関東甲信越地方会から(1月30日・東京)

著者: 池田義雄

ページ範囲:P.445 - P.445

 第8回糖尿病学会関東甲信越地方会は,1月30日,東邦大学大橋病院で開かれた.
 発表された演題は27で,その内わけは次の通りである.

全国教室めぐり

「耕之不尽」—鹿児島大・第2内科

著者: 日高実

ページ範囲:P.507 - P.507

前身
 「熱さましにゲンノショウコとオオバコ,胃腸薬はセンブリ,切り傷には地獄花,魚の骨をひっかけたらクサキの薬を乾かして飲む」
 漢方医学が隆盛をきわめていた鹿児島の医学界に明治の文明開花は,ようやく民政の上で西洋医の養成を緊急の要務とした.ことに戦いで傷ついた戦士の手当てには漢方医学では手が出ず,外科手術のできる西洋医学をもってする以外には施す術がなかった.明治2年,鹿児島医学校と赤倉病院を設立し,英国人医師ウイリアム‐ウイルスを学校長兼病院長として迎えたのもこのためである.以下,現鹿児島大学医学部に至るまでの概略を列記してみる.

開業医は語る

農薬中毒との出逢い—中毒防止に燃える一開業医の情熱

著者: 渡部忍

ページ範囲:P.508 - P.510

 終戦後農薬の進展は極めてめざましいものがあり,農薬の使用によって農産物の増産,質的向上を招来したことは論をまたない.その反面農薬中毒という恐るべき問題が新たに登場してきた.しかもこの被害者は必ずしも十分この問題の重要性を意識しているとはいえない現状にあるといっても過言ではない.筆者が農薬中毒に関しいささか学んできたことを顧みつつ,現在及び将来のビジョンなどを述べてみたいと思う.

各科のトピックス 眼科から

有機燐農薬眼病

著者: 石川哲 ,   宇尾野公義 ,   瀬川昌也

ページ範囲:P.510 - P.511

 有機燐およびカルバメート系農薬(以下「P」と略)は,強力なコリンエステラーゼ阻害剤でBHCなどの有機塩素系農薬とともに殺虫剤として全国で大量に散布されている.わが国の「P」散布量は世界一であり西ドイツ等の10-15倍も使用(単位耕地面積当たり)されている.今回紹介する有機燐眼病もその害の氷山の一角に過ぎない.また農薬による疾病も1農村にとどまらず,食品に残留してどんどん都市に入り,また飲料水にも残留するので,本症は都市の中央部でもどんどん患者が増え続けている.

メディチーナ・ジャーナル

へき地医療対策の現状と将来

著者: 中澤幸一

ページ範囲:P.512 - P.512

へき地医療対策の現状
 山村・離島などのへき地における,医療に恵まれない地域住民の健康を守るための医療対策としては,昭和31年度から3次にわたる整備計画に基づいて,無医地区の人口,交通事情,財政事情その他の要素によって地区を類別し,それぞれの特性に応じて,へき地診療所の設置,巡回診療車(船)および患者輸送車(船)の整備,へき地診療班の派遣などの施策が講じられてきている.
 「無医地区」とは,「医療機関のない地域で,当該地区の中心的な場所を起点として,おおむね半径4kmの区域内に50人以上が居住している地区」をいい,昭和41年の調査では,全国で2920カ所が存在している.

読後随想

医学小説は存在するか—有吉佐和子著:華岡青洲の妻

著者: 長洲光太郎

ページ範囲:P.513 - P.513

 昨年東京の芸術座で本書が舞台に上がっていた.シュワイツァの小説は書きにくいだろう.ポールムニの演じたパスツールの映画は戦前の名作だったが,ペーターローレの演じたレンブラン伝より劣った.
 崇高なるヒューマニズムに貫かれた医者を主人公にした小説はどうもつくりにくいらしい.良く書こうとすれば甘味が勝って,作者ひとりよがりになる.本格小説ではきれいごとばかり書いてもしかたがない.小説構成がむずかしい.それをちゃんとやらぬと,飛行機乗りの空戦自慢話や特攻隊涙の壮挙などのように,小説とはなりえないのである.

統計

死亡からみた糖尿病の動向

著者: 小畑美知夫

ページ範囲:P.514 - P.515

 近年食生活の改善などが原因か,糖尿病の死亡率が次第に増加する傾向にあります.
 今回は糖尿病死亡者からみた糖尿病の最近の動向を観察してみます.

診療相談室

フィッシュバーグ尿濃縮試験に関して

著者: 守屋美喜雄

ページ範囲:P.519 - P.520

質問 フィッシュバーグの尿濃縮力試験では,実施方法として前日の夕食からの記載しかみられませんが,前日の(特に午後あたり)食事についてはどうさせるべきでしょうか. (浜松市・S生)

今月の表紙

—江戸時代に鉱害を書きとめた小川含章—「生野銀山 孝義伝」

著者: 小川鼎三

ページ範囲:P.520 - P.520

 これは「公害」というよりはむしろ「鉱害」の問題だが,珪肺Silicosis pulmonumは昔から鉱山などの労務者をおそう恐るべき病気として知られてきた.江戸時代には煙毒またはヨロケとよぶことが多かった.
 ここに掲げたのは筆者の曽祖父小川含章(1812-1894)の著「生野銀山孝義伝」(嘉永2年刊)のタイトル・ページと坑内の様子を示す挿図の一部である.この本に煙毒のことが書かれているのは筆者も以前から気がついていたが,近ごろ産業衛生の歴史研究者により注目されてきた(長谷川・吉野両氏の共著「珪肺—医学と補償—」1955;三浦豊彦氏「労働衛生」10巻4号,1969).

病理夜話

木村哲二先生(その2)

著者: 金子仁

ページ範囲:P.521 - P.521

 木村哲二先生は世にも恐しく,世にも懐かしく,世にも慕わしい人であった.
  日本医大病理学教室教授として来られたのは昭和25,6年であったと思う.私は昭和24年に同教室助手を拝命し,木村先生が来られてしばらくして医局長となったので,教室のオコゴトはもっぱら私が聞いていた.

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Current Abstracts

著者: 浦田卓

ページ範囲:P.516 - P.517

自動車事故は"避けられぬ運命"か?
 ドライブ中死亡した人たちの行動的因子を決定するために研究が行なわれたが,それによると,関係者の80%は,精神病とハッキリ診断してもよいほど高度な精神的および情動的障害を実際に示していた.研究の対象となった人びとの1/4は,反社会的人格をもっていた.60%がアルコール中毒であった.ドライバー5人につき1人は,さいごの殺人的爆発までは,意外にも極端におとなしいというパターンを示した.ドライバー4人につき3人は,中毒にかかっており,一般に中毒の程度は高度であった.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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59巻8号(2022年7月発行)

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59巻7号(2022年6月発行)

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59巻3号(2022年3月発行)

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56巻12号(2019年11月発行)

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56巻11号(2019年10月発行)

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56巻6号(2019年5月発行)

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56巻5号(2019年4月発行)

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56巻2号(2019年2月発行)

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56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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