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文献詳細

雑誌文献

medicina8巻5号

1971年05月発行

文献概要

治療のポイント

制酸剤の投与計画

著者: 森賀本幸1

所属機関: 1京大第1内科

ページ範囲:P.579 - P.581

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制酸剤治療の目標
 制酸剤とは胃内容の酸を中和し,低下させる,または除去する薬物の総称である.主として,過酸症と消化性潰瘍の治療に広く使用されている.正常の胃粘膜は強力な塩酸産生を行なっている.壁細胞がその役割にあたっているが,酸素含量からいって体内で最も活動的な細胞である.一説によれば,男性の平均壁細胞数は約10億といわれる.壁細胞よりの塩酸分泌はガストリンと迷走神経によって刺激される.各壁細胞は最大に分泌し,胃酸分泌率の変化は分泌している壁細胞の数の変化によるとされている.壁細胞よりの塩酸は,Hollanderによれば理論上165mEq/Lの濃度で分泌されるといわれるが,実際に採液してみると濃度は150mEq/L以下であることが多い.すなわち,胃内では高い水素イオン濃度を低下させる生理的防御機転が存在している.
 消化性潰瘍の病因として,まず胃酸分泌の重要性が強調されるが,胃液の作用に対する胃・十二指腸粘膜の感受性にも多くの因子が関与していることも事実である.胃酸分泌が正常ないし低値を示す消化性潰瘍も多く,粘膜の抵抗性も重要であるが,粘膜の抵抗を侵襲する因子については比較的知られていないことから,治療にさいして胃酸を低下させることが主な目標となっている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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