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Editorial
癌の免疫と転移
著者: 平井秀松1
所属機関: 1北大生化学
ページ範囲:P.1311 - P.1311
文献購入ページに移動転移はちょうど結核症末期の粟粒のごとくに,感染症における敗血症のごとくに,宿主の免疫機構の荒廃に基づく刀折れ矢尽きた終局の状態である.したがって上記の基本的立場はゆるがない,と考え得ても,一匹移植の成立は免疫機構の荒廃で説明するわけにはゆかぬ.吉田肉腫細胞のただ1個をラット腹腔内に入れてやればそこに移植が成立するという,驚異的な佐々木研究所の実験である.しかも,この移植はallogeneicのbarrierさえもこえているのだ.一匹移植の成立と癌の転移とは同一現象をみているといってよい.周辺ただ1人の同胞もない異郷の地にたくましくコロニーを形成してゆく癌細胞である.どうも,頼りがいのない免疫だ.
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