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文献詳細

雑誌文献

medicina9巻11号

1972年10月発行

文献概要

診断のポイント

腎性糖尿

著者: 後藤由夫1

所属機関: 1弘前大・第3内科

ページ範囲:P.1988 - P.1992

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腎性糖尿の概念の変遷
 DiabetesはJ. P. Frankによってdiabetes mellitus(verus)とdiabetes insipidus(spurius)とに分類され,多尿を伴わない糖尿に対してはdiabetes decipiensの名が付された.19世紀に入り血糖の存在が確認され,その測定法が改良されるにつれて,糖尿病患者の血糖の動態も次第に明らかになった.その結果としてLépine(1895)は血糖の上昇を伴わない糖尿のあることに気付き,これをdiabéte aglycémiqueと呼んだ.つづいてKlemperer(1896)も同様な観察を行ないdiabetes renalisと呼び,その後,このような症例は予後が良好であることなどからdiabetes innocens(Salomon),diabetes innocuus(Rosenfeld)などと呼ばれるようになった.
 当時の血糖測定はBang法の出現以前のものであり,かなり大量の検体を要し,また精度の点でも劣るものであった.尿糖測定法も同様であり,現在のglucose-oxidase法に較べると感度は悪く,したがってある程度以上重症の糖尿病のみが糖尿病と診断され,現在われわれが境界例としているものはもちろんのこと,軽症糖尿病として扱っているものの多くは非糖尿病と診断されたものと考えられる.また1920年代においても糖尿病の化学的診断基準値はなかったのであるから,糖尿病症状がなく,血糖の上昇の軽度のもので尿糖陽性の症例は腎性糖尿として扱われた可能性も考えられる.事実Klempererの症例はDiabetes innocensといえるものではなかったといわれている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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