icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

medicina9巻12号

1972年11月発行

雑誌目次

Editorial

呼吸器病学の流れ

著者: 中村隆

ページ範囲:P.2099 - P.2099

 戦前の呼吸器病学をふりかえってみると,呼吸器疾患をめぐる多くの関心は肺結核症をはじめとして,細菌感染症にその大部分が注がれていたといっても過言ではなかった.このことは呼吸器病学にかぎったことではなく,細菌をいかにたたくかは嘗って医学の主眼とするところであったためとうけとれた.が,戦後,化学療法剤の開発が急速にすすめられ,他方,外科療法,BCGなどの普及も手伝って,なお問題は残されているとしても,一応肺結核症をはじめとする感染症が抑圧されるようになり,合日では,必然的にこれら感染症の後遺症として残された肺変化や非細菌性の催炎体,あるいはまた大気汚染や年齢因子などと関連する諸変化に大方の関心がむけられるに至った.
 このような背景を考えると,肺機能の研究が戦後1940年頃から活発にすすめられてきたことは近年における呼吸器病学の変貌を反映し,必然的なものであったとみることができる.実際,近年における呼吸生理学の進歩はめざましく,かつて肺活量のみが日常臨床上の尺度として川いられてきた当時に比較すると,1950年代には新器類の進歩とあいまって換気力学的機構の解析をはじめとして拡散機能やガス分布に関する臨床的なアプローチが逐次開発され,実地臨床に役立つようになったことは一驚に値する.

今月の主題

呼吸器系における生体防禦機構—気道内感染症の成立機転解明への手がかりを求めて

著者: 三上理一郎 ,   工藤翔二

ページ範囲:P.2100 - P.2113

 10年前,ちょうど本稿と同じテーマ「呼吸器系における生体防禦機構」に関する論文1)を発表した.その当時,呼吸器疾患感染症に対する化学療法剤の進歩と,大気汚染の増加などによって,慢性気管支炎の問題が注目されてきた時代であった.筆者らは,慢性気管支炎を単なる細菌感染と考えることに疑問を感じ,慢性気管支炎の発生機序を体系づけんと試みた.
 まず慢性気管支炎と細菌感染との関係について,当時の文献を渉猟し,健康人の肺は細菌学的に無菌である事実を再認識させられ,呼吸器における精巧な防禦機構の重要な存在意義に改めて注目した.そして,慢性気管支炎は呼吸器系における防禦機構の障害によって惹起される病態と結論した.

(座談会)大気汚染と呼吸器疾患

著者: 和田攻 ,   高山乙彦 ,   宮本昭正 ,   常俊義三 ,   長岡滋

ページ範囲:P.2114 - P.2122

 この夏は光化学スモッグが連日新聞を賑わし,大気汚染の問題はいよいよ深刻の度を加えてきたが,最近の公害病の特徴として,その作用因子の複雑化があり,さらに慢性的な影響となると,問題の解明は必ずしも容易ではない,大気汚染の呼吸器に及ぼす影響について.

Leading Article

現代公害の特質—これからの医学にのぞむこと

著者: 東田敏夫

ページ範囲:P.2094 - P.2095

なぜ公害先進国になったのか
 「智恵子抄」の言葉をかりると,日本の産業都市には,いずこにも「空はない」.水の汚れははなはだしく,大平洋沿岸ベルト地帯の海も,河も,瀬戸内海も,琵琶湖も,すべてが「死の海」,「死の河」になろうとしています.PCB汚染は国民の食生活をおびやかしています.このようなすさまじい環境汚染・環境破壊は,世界に類をみません.日本の公害問題に対処するには,まず,なぜこのような「公害先進国」になったのか,「現代公害のしくみと特質」を正しく理解しなければなりません.
 現代公害の特質は,第1に,すでにいわれているように,企業優先の「経済成長政策」によって企業公害が無秩序に拡大されたことですが,いっそう重要なことは,公害発生の因果関係が加害企業のみならず行政によってあいまいにされ,加害者責任はぼかされ,被害者泣き寝入りがまかり通っていることです.しかも,それらのばあい,ほとんど常に,官製「第三者機関」や「学界の権威」が関係しています.

診断のポイント

1秒率低下の意味づけ

著者: 滝島任

ページ範囲:P.2123 - P.2127

はじめに
 1秒率とは,できるだけ息を吸いこんで,力一杯,最後まで一いきに呼息した際,吸いこんだ空気量(吸気肺活量)の何%を呼気はじめの1秒間ではき出しうるか,を表わす指標である.健康若年男子では80%以上,50-60歳を過ぎると70%あるいはそれ以下に低下する.
 1秒率が健康者よりも低い値を示すことは,呼気時に閉塞性障害が存在することを意味する.もう1つの重要な意味をもつ吸気時にも閉塞性障害が存在するか否かをきめることは1秒率からはできない.1秒率は呼気時の最大努力性呼気曲線から求められるものだからである.

間質性肺炎とは

著者: 荻間勇

ページ範囲:P.2128 - P.2131

 近年,1呼吸器病学の領域では,間質性肺炎という名称がしばしば用いられるようになった,しかし,その概念については未だ明確かつ一般化されているとはいえないように思われる.間質性肺炎について,現時点での筆者の考え方,問題点と思われるところをのべてみたい.

撒布性肺陰影をみたとき—その診断のすすめかた

著者: 西本幸男

ページ範囲:P.2132 - P.2138

撒布性肺陰影を示す疾患
 気管支・肺疾患においては,喘息や気管支炎など一部のものを除くと,ふつう胸部X線写真に何らかの異常陰影がみられるものであるが,鑑別診断の際とくに困難を感ずるのは,両肺に比較的均等に撒布した微細な粒状ないし線状陰影が認められた場合であろう.
 最近のごとく,高齢者の胸部写真を読影する機会が多くなると,外見上ほとんど異常がないと思われる症例においても,時としてこのような陰影を示すものに遭遇する.かつて宝来教授1)はかかる所見を異常線状影の立場から読影し,大都市の住民でとくに長期にわたる喫煙歴を有する老人に多いことを指摘している.かかる症例の多くは同時にせき・たんなどの症状を有し,明らかに慢性気管支炎と診断されるが,中には自覚的に症状を欠き,理学的検査あるいは肺機能所見にもほとんど異常を認めないものもある.かかる症例を疾患と考え,さらに精密検査を進めるべきであるか,あるいは60年あるいは70年という長年月にわたる生活史の一端として把え,ある程度やむを得ないものと考えるかは一概にはいえないことであって,結局はcase by caseに判断しなければならない問題であろう.

治療のポイント

酸素療法をどう処方するか

著者: 横山剛

ページ範囲:P.2139 - P.2143

はじめに
 呼吸器疾患とくに呼吸不全の治療における酸素の占める位置は,最も本質的で重要なものであるが,酸素療法の実際に当たっては,適応と投与方法,特に各種装置による長所と短所,吸入O2濃度,酸素療法にともなう副作用,合併症等の理解が必要である.不用意な酸素吸入が,慢性呼吸不全患者のCO2-narcosis発症の誘因としては最も多いものであることは,Campbellにより指摘されたが,さらに近年は,高濃度酸素の長時間吸入による肺障害(酸素中毒)が注目されてきており,漫然とした酸素吸入は厳に慎しむべきである.以下,臨床におけるわれわれの経験を中心として,酸素療法の実際について述べる.

全身性疾患と心電図

肺気腫の心電図

著者: 石見善一

ページ範囲:P.2144 - P.2146

心電図に肺気腫が与える影響
 肺気腫は種々の因子を介して心電図に影響を与えるが,その第1は肺の含気量の増大,およびそれによる心臓の相対的な位置の変化によるものである.たとえば立位心,心尖の後方への移動,心臓の時針方向回転,低電位差などである.第2には肺気腫による肺血管床の変化のために肺血管抵抗の増大,ひいては右室肥大が起こることによるものである.これは心電図上右房あるいは右室肥大所見としてあらわれる、またさらに右室肥大は心臓の位置変化を増強させることにもなる.
 しかし一般的にいって,肺疾患による右室肥大に対する心電図の診断的価値はあまり高くないとされている.これは肺疾患が多くは成人後に発病するため,右室肥大がかなり強くならない限り,左室優位の成人心電図に影響を及ぼし難いためである.ことに肺気腫自体では高度の右室肥大は起こりがたい.このため心電図に右室肥大所見があれば,右室肥大の存在は確実であるが,逆に所見がない場合には,右室肥大を否定する材料とはなり得ない.

カラーグラフ グラフ

閉塞性肺疾患への新しいアプローチ―I.内視鏡によるアプローチ/II.選択的肺胞—気管支造影法によるアプローチ

著者: 滝沢敬夫 ,   藤本隆逸 ,   川上雅彦 ,   中村俊夫

ページ範囲:P.2149 - P.2155

 閉塞性肺疾患は肺機能検査上指摘される気道閉塞を主体として枠づけられた概念であり,一般には肺気腫,慢性気管支炎(喘息)などが含まれている.すなわち近年における呼吸生理のめざましい進歩を背景として登場した疾患であり,それだけに疾病病態の本態を把えにくい点が少なくないが,近年気管支内視鏡検査の長足の進歩と,中村,星野らによって開発された選択的肺胞一気管支造影によって臨床形態学の面からも閉塞性肺疾患の病態をある程度解析することができるようになった.ここでは筆者らの経験を主体にこれら2つの方法によるアプローチについてふれるが,紙数の関係上,要点のみを記すにとどめる.

専門医に聞く・9

14年間の経過を観察し,最後に長期呼吸管理中に突然死亡した慢性気管支炎・慢性肺気腫の症例

著者: 本間日臣 ,   中山修二 ,   三上理一郎 ,   山中晃 ,   佐藤光男

ページ範囲:P.2158 - P.2166

症例 72歳 男
 家族歴 特記すべきことなし.
 既往歴 20歳時右湿性胸膜炎に罹患し,強い胼胝を残す.30歳胃潰瘍罹患,喫煙は20歳より1日20-30本.

疫学

慢性気管支炎

著者: 常俊義三

ページ範囲:P.2168 - P.2169

 現在,わが国では慢性気管支炎は大気汚染の人体影響の指標のように取り扱われているが,本疾患は予後の面からも軽視されるべきものではない.このことは,本疾患が19世紀後半より英国で国民病として重視されてきた背景に,本疾患による休業率の増加,労働力の低下という問題があり,これが本疾患を1つの社会問題として浮び上がらせたことからもうかがえる.
 また,本疾患の発病因子としては,細菌感染,大気汚染,素因,煙草など種々の因子があげられているが,基本的には肺の防衛機能の破壊1)を引き起こす因子が主たる因子であると考えられる.

新しい検査技術

α1アンチトリプシン(α1AT)の定量法

著者: 大島駿作

ページ範囲:P.2170 - P.2172

 α1ATは分子量4万-6万の糖蛋白であり,人血清中の蛋白分解酵素阻害物質のひとつである.その作用としては著明なトリプシン阻害作用の他に,キモトリプシン,プラスミン,トロンビン,エラスターゼ,コラゲナーゼおよび白血球中のプロテイナーゼに対する阻害作用も認められる.α1ATは血清α1グロブリン分画の主成分であるから,α1ATの欠損は血清α1グロブリン分画の著明な減少となって現われる.
 α1ATの欠損は遺伝的なもので,高度欠乏(ホモ接合型)と中等度欠乏(ヘテロ接合型)があり,高度欠乏型では蛋白分解酵素による組織破壊を阻止できないので,重症の若年性肺気腫や家族性小児肝硬変に罹りやすいといわれている.

救急診療

窒息

著者: 山本亨

ページ範囲:P.2174 - P.2176

 窒息asphyxiaとは,何かの原因で鼻や口から肺に至る気道が閉塞または狭窄を起こしたために,大気中の酸素が肺胞から血液の中まで運ばれず,また体内で産生された炭酸ガスが肺から体外に排出されない結果生ずる体の反応である.言いかえれば窒息とは,酸素の欠乏症と炭酸ガスの蓄積が同時に現われたもので,この状態のまま放置すると,患者の心臓は10分位で拍動を停止し(car-diac arrest),死が訪れることになる.そこで窒患、の患者を取り扱うとき最も大切なのは,気道の確保,原因の発見および除去というわけである.

小児診療

小児の精神発達

著者: 加藤寿一

ページ範囲:P.2178 - P.2181

はじめに
 最近の健康相談の窓口でも,小児の精神運動発達のおくれがないかどうか,病的異常がないかと,小児の神経系の発達評価を問われ,多くの時間を費やしているのが現状である.
 小児の神経系は,形態学的にも機能的にも常に成長発達をとげつつあるから,症状の解明にあたっては,常に患児の年齢・発達段階を考慮する必要がある.一方,小児を診察するにあたっては,所見を正確に把握することこそ大切で,そのためにも診察する医師は,よほど忍耐強く,やさしくしなければならない.親も患児も同じくらい不安と心配の気持を抱いているわけであるから,その心理状態をよく理解して,形式的な診察法によらずに,かえって自由に遊んでいる動作を観察したほうが,より有益な所見が得られるものである.

症例

24年間経過を追求し得た空洞を伴った肺Sarcoidosisの一剖検例—〈Aspergillomaの合併〉

著者: 松井泰夫 ,   河辺秀雄

ページ範囲:P.2183 - P.2190

 Sarcoidosis(以下"S"とする)における空洞の形成は,その病変が基本的には壊死を伴わない肉芽腫性疾患ということから,その形成機序に興味が持たれるが,肺野型"S"の進展につれて肺線維症に移行した症例における空洞の形成に関する欧米文献は,それほど少なくはない.
 図1,2は本院入院時の胸部X線写真と病理解剖所見であるが,このように立派な空洞を伴った肺"S"の症例はわが国では極めて少なく,しかも虹彩炎を初発症状として発症以来,24年間,内16年間は定期的に胸部X線撮影を行ない得た上,死後剖検し得たため,"S"における肺空洞の形成に関し貴重な示唆を得ることができた.従ってこの症例を中心に,肺"S"における空洞形成機序について述べ,併せてこの種病変におけるAspergillomaの合併についても考察を加えてみたい.

細胞学入門・5

IV.細胞形質(つづき)

著者: 山元寅男

ページ範囲:P.2199 - P.2203

(5)ライソゾーム(lysosomes)(図1,2) ライソゾームが細胞小器官の仲間に加えられたのは,比較的あたらしい,元来,ライソゾームは細胞分画法によって得られた粒子について,生化学的性質を検索した結果命名された細胞質顆粒である.1955年,de Duveが細胞の分画のうち,ミトコンドリアとミクロゾームの中間に超遠心分離の際におちる細胞質顆粒を研究し,この顆粒は膜に包まれており,ある操作で膜を破壊すると,加水分解酵素の活性が高いことを明らかにした.のことから,これらの顆粒を,加水分解酵素を含んだ小体(lyso=lytic,somes=bodies)という意味でライソゾームと命名した.
 ライソゾームに含まれる酵素は至適pHがやや酸性で,ほぼ5くらいである.酵素としては,タンパク,脂質,糖をはじめ核酸までも分解する酵素が広く含まれている.これらの酵素のなかでも,特に,酸フォスファターゼの活性は強く,これはライソゾームのマーカー酵素となっている.この酵素は,細胞化学的にも証明できるので,細胞内のライソゾームの同定によく用いられる.

臨床家の薬理学・11

ⅩⅠ.抗生物質

著者: 今井昭一

ページ範囲:P.2204 - P.2205

 微生物が作り出す物質で,他の微生物の発育を抑制するものを抗生物質と名づける.抗生物質の医学への応用は,Fleming(1929)によるペニシリンの発見以来急速に進展し,抗生物質のリストは,膨大なものとなっているが,臨床的に使われているのは,治療係数のすぐれた少数のものだけである.

私の治療方針

咳と痰

著者: 岩井和郎 ,   谷本普一 ,   太田怜

ページ範囲:P.2192 - P.2198

 咳と痰に関する基礎的な理解をふまえつつ,鎮咳・被痰の意味,あるいは慢性気管支炎,慢性気道感染症患者の管理について,さらには抗生物質,ステロイドホルモンの使用をめぐって,等々縦横にお話しいただいた.

オスラー博士の生涯・3

バリーの寮制学校からウエストンへ—1864-1867

著者: 日野原重明

ページ範囲:P.2208 - P.2211

 19世紀から20世紀にかけての基礎医学と臨床医学の橋渡し,診断学への寄与,医学生のBedsideteachingや病棟レジデント制の発足などの多彩な教育活動,CecilやHarrisonの内科書の出る前に世界の医学生,臨床医に広く愛読された1892年初版の「Oslerの内科書」の執筆,予防医学への貢献等,数えきれぬ功績を近代医学史の中にのこした内科医,みずからgoodphysicianであり,good teacherであることを誇りとし,それを希って生きたウィリアム・オスラー(1849-1919)が,少年時代や大学予科時代に,カナダの田舎でどんな生き方をしたか.オスラーは,英国からカナダへ年若く出かけて開拓地の宣教を行なった牧師の9人の子供の第7子である.

病理夜話

腎臓(2)

著者: 金子仁

ページ範囲:P.2207 - P.2207

 癌腫の組織像は一般に腺癌,扁平上皮癌,未分化癌に分ける.しかし悪性絨毛上皮腫,肝癌,腎癌の3つをやや分化した癌として特別の群の中に入れるのが普通である.これは組織像が一定の臓器に似ているからである.肝癌は肝の組織に,腎癌は腎の組織に,悪性絨毛上皮腫は絨毛の組織に似ているのである.したがってどこに転移をしても,その転移の組織像を鏡検して,これはどこの癌の転移であると診断することができる.
 また,この3つの特別な癌は血行性転移の多いことでも有名である.腎癌は組織学的に淡明細胞(clearcellとも呼び,細胞形質がきわめて明るい)が出現するのが特徴である.血行性転移が多いために,しばしば骨に転移して,腰が痛いとか,腕が痛いとかで整形外科を訪れる患者も稀でない.

ある地方医の手紙・6

「人生五十年」の家

著者: 穴澤咊光

ページ範囲:P.2212 - P.2213

 W先生.
 最近とみに評判の高い,「日本人とユダヤ人」の中で,著書イザヤ・ベンダサン氏が大変面白いことをいっています.

随想

近代衛生学の開祖Max von Pettenkofer(1818-1901)への日本人門下生からの手紙

著者: 北博正

ページ範囲:P.2156 - P.2156

 鷗外の独逸日記の明治19年(1886)3月8日の項に"ペッテンコーフェル余を其作業室に延く.廣面大耳の白頭翁なり,幣衣を纏ひて書籍を堆積したる机の畔に座す.余ロオトの翰を呈し,来由を陳ず.ペッテンコーフェルの曰く,緒方正規久く余が許にあり.余これを愛すること甚し.子も亦正規の如くならんことを望む"とあり,ここで衛生学を学び,帰国後も"別天師"に傾倒し,師がコレラ生菌を飲んだ自家実験を紹介したり,孫に師に因んで真章と命名したりした上,ドイツ語に堪能でしかも筆まめであった彼が,たびたび師に便りしたであろうことは想像に難くない.
 Pettenkofer関係の手紙が,Munchen爆撃の際にも大部分助かったということをきいていたので,昨1971年この地の国際生理学会に出席の際,Bayern国立図書館の手書き文書および古文書部門で探したところ,緒方正規関係13通,中浜東一郎関係10通を発見したが,鷗外のものはなくがっかりした(あるいは未整理なのかも知れない).ところが緒方のファイルから面白いものをみつけたので紹介する,即ち1892年(明治25年),Pettenkoferが学位を受けて50年の祝辞で,門下4名の連名である(右写真).

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

60巻13号(2023年12月発行)

特集 一般医家のための—DOAC時代の心房細動診療

60巻12号(2023年11月発行)

特集 内科医が遭遇する皮膚疾患フロントライン—「皮疹」は現場で起きている!

60巻11号(2023年10月発行)

増大号特集 患者さんの質問にどう答えますか?—言葉の意味を読み解きハートに響く返答集

60巻10号(2023年9月発行)

特集 ミミッカー症例からいかに学ぶか

60巻9号(2023年8月発行)

特集 症例から読み解く—高齢者診療ステップアップ

60巻8号(2023年7月発行)

特集 浮腫と脱水—Q&Aで学ぶジェネラリストのための体液量異常診療

60巻7号(2023年6月発行)

特集 整形外科プライマリ・ケア—内科医が知りたい整形外科疾患のすべて

60巻6号(2023年5月発行)

特集 Common diseaseの処方箋ファイル—臨床経過から学ぶ20症例

60巻5号(2023年4月発行)

特集 臨床医からみたPOCT

60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

icon up
あなたは医療従事者ですか?