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症例
広東住血線虫の感染による好酸球性髄膜炎の症例
著者: 木崎治俊1 竹内一郎1 河村潤之輔1 浅見敬三2 竹内勤2
所属機関: 1東京武蔵野病院・内科 2慶大・寄生虫学
ページ範囲:P.2328 - P.2331
文献購入ページに移動南太平洋諸島と東南アジアに流行的に存在する特異なタイプの好酸球性髄膜炎が,ねずみの肺動脈に寄生する広東住血線虫Angiostrongylus cantonensisの幼虫の人体侵入による病的状態であろうことは,ハワイにて米国のRosenやAlicataらが行なった詳細な研究により,今日はほとんど疑う余地はない.本線虫の感染によるこの病態の世界最初の報告は野村・林(1945)によって行なわれた台湾での症例であり,その後,沖縄からほぼ確実な症例(Simpson et al. 1970)が見出されてはいるが,西村(1966)の注意喚起にもかかわらず,未だ日本本土からの症例は知られていない.しかしながら最近の調査によると,日本本土でのねずみにおける本線虫の感染は稀ではなく,札幌(大林ら1968,折原1972),東京・川崎地区(堀ら1969,1972),小笠原島(堀ら1972)などの家鼠から見出されており,早晩日本本土での人体感染例も報じられるものと予想される.このことはアジア・南太平洋における本症の流行学的事実(Alicata,1966)からもほぼ確実に予言されよう.
筆者らは,インドネシアのジャカルタに在勤した一日本人がたまたまその地の陸棲カタツムリを生食したのち髄膜炎症状を呈したために日本に帰国し,入院検査の結果,広東住血線虫の感染による好酸球性髄膜炎と診断された症例を経験したので,その経過について報告し,将来わが国でも発生するであろう本症に対する読者の注意を喚起したい.
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