icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

medicina9巻2号

1972年02月発行

雑誌目次

Editorial

神経病のトピックス

著者: 加瀬正夫

ページ範囲:P.161 - P.161

 かつて医学の暗黒野として,特にわが国ではきわめて限られた人びとの関心しか得られなかった神経学の領域において,近年の進歩発展はまことにめざましいものがある.とくに公害病の先駆的役割をはたす宿命をになった水俣病やスモンが,わが国の神経学者を中心とした多くの研究者の手によって解決されつつあることは,国辱的な疾患であるとはいえ,神経学を含めたわが国の医学水準のレベルを示すものといえよう.思いもかけないことがおこりえて,思いがけない不幸とはかりしれない労苦の集積が一応の決着をつけたのであるが,私たちの周辺にはあまりにもこのような不安が多すぎる.何がおこるかわからないという疑惑を,心ならずも絶えず抱かせられている昨今である.
 さて神経病の近年における最大のトピックスの1つは,パーキンソン病におけるL-ドパ療法の発見であった.これはおそらく神経学の歴史において空前の出来事であり,これを契機として治療法の限られた各種神経疾患の真の治療法の発見がのぞまれる.すべて新しい薬剤はその出現の当初において過大に評価され,ついで反動として過小評価され,最後に本来あるべき評価におちつくのが普通であるが,L-ドパはその種々なる副作用にもかかわらず,薬効がそれを上回るがゆえに評価のゆるぎがみられない.けれども同時に,副作用を少なくして効果を高める努力がつづけられ,種々なるエコノマイザーがあらわれてきた.その真の評価は今後において決定されよう.

今月の主題

ミオパチーの新しい考えかた

著者: 木下真男

ページ範囲:P.162 - P.167

 ミオパチーの概念は,①神経原性筋萎縮・筋疾患混同の時代,②進行性筋ジストロフィー症の分離・独立の時代を経て,③種々のミオパチー認識の時代において成立した.ここでは③の時代,すなわち現代のミオパチーの概念・種類・診断について解説したい.

(座談会)神経病診断の進歩

著者: 里吉営二郎 ,   喜多村孝一 ,   石川哲 ,   田崎義昭

ページ範囲:P.168 - P.178

 最近10年間に神経病の診断は非常に進歩した.しかし神経病の診断は臨床医にとって,苦手であるという印象が今でもぬぐいきれない.神経内科,神経眼科,脳神経外科等における診断の原則と進歩の足跡を日常診療にいかに生かしてゆくか,そこがポイントになる.

Leading Article

薬効評価

著者: 佐久間昭

ページ範囲:P.146 - P.147

副作用ほとんどなし
 たとえば,本誌をパラパラと見ていただくとすぐにわかることであるが,掲載されている薬の広告のうち,まあまあ正直なものは,九牛の一毛といったところである.編集陣も満足しているわけではないだろう.不正直な広告の原型は,効果は抜群・副作用はほとんどなしといったもので,主効果の誇大な表現には馴らされてきたが,重篤な逆効果の可能性にまったくふれていないことは,医師が患者の存在を考えるとき,はなはだ迷惑で危険きわまりない.
 一般の臨床家が,金もうけにいそがしくて患者のことなどかまっていられないというのなら別であるが,上記のような不正直な広告に対して寛大すぎないだろうか.少なくとも,使用上の注意の要旨ぐらいは書きそえて,学術誌にふさわしい広告の姿をとるように,強い要望があってもよさそうに思う.

図解対症検査 消化器シリーズ・10

黄疸

著者: 鎌田武信

ページ範囲:P.152 - P.155

 黄疸は血中にビリルビンの増加する病態であるが,その鑑別診断のためにはビリルビン代謝の理解が必要であり,以下その点に留意しつつ診断への道をたどってみたい.

カラーグラフ

目でみるミオパチー

著者: 宇尾野公義

ページ範囲:P.158 - P.160

 ミオパチーの筋線維はその構築異常,散在性萎縮で代表され,時に肥大線維や中心核の出現,筋線維の断裂,間質の増加などをきたし,病因によっては空胞変性,硝子変性,脂肪浸潤,リンパ球浸潤,貪食細胞による壊死,再生像など種々の変化がみられる.さらに組織化学的には解糖系酵素活性の異常〜欠如,ミトコンドリアの数・大きさ・配列の異常,ミオシン蛋白異常,ring fiber,striatedannulet,sarcoplasmic massなど各ミオパチーに独特な所見がみられ診断の手がかりとなる.

診断のポイント

脳卒中と眼症状

著者: 沓沢尚之

ページ範囲:P.179 - P.183

 臨床神経学における神経眼科学の重要性に関しては今さらいうまでもないが,とくに脳卒中においては,脳病巣の種類や局在の診断上,さらには疾患の経過や予後を知る上にも眼症状のもつ意義は大きい.

肩こり

著者: 永野柾臣

ページ範囲:P.184 - P.189

 肩こりとは肩関節周囲から項頸部,肩甲骨間部にかけ,こわばった感じ,筋の緊張,不快感,時に鈍痛を伴い,運動痛や頸椎・上肢帯の運動制限をみることもある状態である。
 このいわば症候群の診断には,原因や発生病理の理解が緊要であるが,発症機序は経験的な推測にすぎない画が多い.また頸部や上肢帯の機能的・運動学的解剖学の知識も大切である.

治療のポイント

パーキンソニズムの薬物療法—特にL-Dopa療法について

著者: 井上尚英

ページ範囲:P.191 - P.195

L-Dopaの登場
 1817年James Parkinson1)がshaking palsy と題してパーキンソニズムの詳細な臨床記載を行なって以来,約1世紀半をへたが,パーキンソニズムの病態生理学ならびに治療の面では近年着実な進歩がみられる.
 特に治療については,アトロピンやスコポラミンなどの天然アルカロイド製剤に始まり,Artaneなどの合成副交感神経抑制剤,更には定位脳手術の開発などさまざまな手段が駆使されてきたが,本症の治療としてはなお不十分であった.

失語症患者の扱いかた

著者: 長谷川恒雄 ,   和田あさ子

ページ範囲:P.196 - P.198

はじめに
 失語症は過去1世紀以上の長い間,精神医学,神経学,心理学などより研究が進められてきたが,その本質についてはまだ明らかでない.最近,言語に関連する多くの分野の人々による共同研究の動きが起こり,興味ある知見が得られると共に,失語症の治療やリハビリテーションについても新たな開拓がはじまろうとしている.ここでは失語症患者の取り扱い方のうち,ことばの訓練と社会復帰の問題について具体的に解説することにする.失語症の症状や分類に関して興味をもつかたは文末の文献を参照されたい.

グラフ

膠原病と肺—IV.慢性関節リウマチ(RA)/V.皮膚筋炎/VI.ベーチェット病

著者: 萩原忠文 ,   堀内篤

ページ範囲:P.202 - P.207

 RAでは肺病変が20-30%に合併する.そのおもなものは間質性肺炎,肺線維症であり,肺血管炎を主とした病変はRheumatoid lung diseaseとよばれている.病理学的に本症にだけ特異的な病変はないが,肺感染に対する感受性が強いため,気管支炎,気管支拡張症あるいは陳旧性肺結核などを認める例が多いといわれている.じん肺を合併したRAの肺病変はCaplan症候群とよばれている.
 胸部X線像は肺門影増強,肺門を中心とした境界不鮮明な斑点状影,肺基底部のびまん性顆粒状あるいは網状影,蜂窩肺などの所見を示すことがある,急性期にはこれらの像の遊走性がみられたり,出現と消褪を繰り返したりする例があるが,やがて線状影から線維症の像に変わってゆく.また胸膜癒着をみることもある.

症例

Shy-Drager症候群

著者: 後藤文男 ,   石原伝幸

ページ範囲:P.208 - P.212

症例
患者 太〇保〇 55歳男会社役員
主訴 歩行障害,構音障害,排尿失神

全身性疾患と心電図

脳卒中と心電図

著者: 藤井潤

ページ範囲:P.213 - P.215

 脳卒中発作の直後に心電図を記録してみると,著明な不整脈や,また心筋硬塞とまぎらわしいような巨大陰性Tや,ときには異常Q,ST上昇が出現することさえある.このような症例を経験する機会が最近では増加してきており,決して珍しいことではない.

内科専門医のための診断学・26

不随意運動の診かた

著者: 濱口勝彦

ページ範囲:P.239 - P.243

 不随意運動といえば,一般に錐体外路系の障害で大脳基底核に病変が考えられ,臨床的には筋緊張異常を伴い,精神的興奮によって増悪し,睡眠により消失するのが特徴である.しかしそのほか大脳皮質,小脳,脊髄,末梢神経いずれの部位でも不随意運動は起こり得る.患者が不随意運動を訴えてきた場合,まずそれが何であるか,すなわちtremor, chorea, athetosis, ballismus, dystonia,myoclonus, fasciculationなどのどれであるかを判定し,次にそれの病巣部位および成因を考慮し,治療方針をたてなければならない.
 また,てんかん発作の場合にも,強直性または間代性けいれん,各種の自動症などの不随意運動がみられるが,この種のものはここでは取りあげないことにする.

疫学

SMON

著者: 祖父江逸郎

ページ範囲:P.218 - P.220

 新しい疾患を追究していく場合,疫学的アプローチは最も基本的な問題として重要であり,病因や病態の解明に大きな役割を持っている.SMONがわが国で注目されてきて以来,膨大な疫学的解析のデータが積み重ねられてきた.その成果はSMONの究明にいくつかの重要な素材を与え,より深い研究の展開に対する橋渡しとなっている.ここでは多くの疫学的成果のうち,紙面の都合もあり若干の問題について,筆者らの成績を中心に述べることにする.

新しい検査技術

オーストラリア抗原

著者: 村上省三

ページ範囲:P.222 - P.223

オーストラリア抗原とは
 1964年Blumbergはオーストラリア原住民の血清の中に1つの抗原を発見し,オーストラリア抗原と命名した.この抗原ははじめは遺伝形質の1つと考えられていたが,その後白血病,Hansen氏病,Down症候群(ことに施設に収容されたものに)やウイルス性肝炎などに特に高い頻度で検出されることがわかり,むしろある種の疾患に関連するものとされるにいたり,ここにこれら疾患に共通の因子としての肝炎との関係が注目されるにいたった.

救急診療

黄疸を伴った急激な上腹部痛

著者: 谷川久一

ページ範囲:P.224 - P.225

 黄疸を伴った急激な上腹部痛をみることは日常診療で少なくない.しかも救急を要する病態であるので,す早い診断のもとに治療にうつらなければならない.ここでは病態,診断,治療にわけて述べてみたい.

小児診療

病気と入浴—特に気道疾患について

著者: 野村雅雄

ページ範囲:P.226 - P.227

 毎日の診療,ことに外来診療で小児を診療する場合,最も多いというより,その大部分は気道感染症(気管支炎,肺炎を含む)である.そしてまた,母親からその時に受ける質問で最も多いのは,「食物の可否」と「入浴の可否」である.
 したがって,われわれとしては,これらの質問に対し,なんらかの返答をしなければならないのであるが,相手は病児であり,「そっと寝かしておけば安全」で,なまじ積極的に何かすれば,その後で病状に変化が起こった場合,「そのために悪くなった」といわれかねないので,従来この種の返答は,とかく消極的否定的に傾きがちであったことは否めない.

統計

最近10年間の患者数の動向

著者: 小林秀資

ページ範囲:P.228 - P.230

 つい先頃,昭和45年の患者調査の概況が発表された.この調査は病院,診療所,歯科診療所を利用する患者の実態を把握するために,日本医師会,日本歯科医師会の協力をえて,昭和23年以降おおよそ毎年1回実施されている.この調査はたった1日の抽出調査であり,発表される患者数はこの調査日1日の推計患者数であって,年齢別・傷病別などの患者数の少なくなる場合は,標準誤差率の高くなることを留意する必要がある.
 さて,今号ではこの調査の発表より,昭和35年から45年までの最近の10年間の患者数の推移をみ,その動向を述べたい.

臨床家の薬理学

Ⅱ.精神安定剤(トランキライザー)

著者: 今井昭一

ページ範囲:P.199 - P.200

 催眠作用を来たさぬ量で不安を鎮め,行動の異常を是正する薬は従来精神安定薬ないし静穏薬(トランキライザー)と呼ばれて来たが,その中,強力トランキライザー(Major tranquilyzer)と呼ばれるフェノチアジンやローヴォルフィアアルカロイドには強力な抗精神病作用があるので,最近は抗精神病薬(antipsychotic drugs)と呼ぶことも多い.これに対し筋弛緩薬,抗ヒスタミン剤に属する薬物のあるものは精神病を癒やす力はないが,不安を鎮ある作用をもち,緩和トランキライザー(minor tranquilyzer),または抗不安薬(antianxietydrugs)と呼ばれる.最近は単にトランキライザーというとこの群のみを指し,両者を含める意味では精神抑制薬(Psycholeptics)なる語を用いることもある.

免疫学入門

Ⅱ.免疫反応とその結果

著者: 鈴木秀郎

ページ範囲:P.233 - P.238

 前回はまず免疫とアレルギーの違いについてのべた後,主として免疫反応の成立機序,すなわち体内に入った抗原が如何にして免疫細胞を刺激し,免疫を成立させるかについてのべたが,今回は免疫細胞活動の結果おこること,すなわちつくられた抗体とその性質,一次反応と二次反応,細胞免疫などについてのべる.
 免疫反応の最も著明な結果は血中抗体の産生である.免疫反応にはもう1つ細胞免疫という現象があり,生物反応としてはむしろこのほうが重要であるが,研究がしやすいという点もあって,従来から血中抗体に関する研究が盛んであったし,最近さらに著しい進歩が認められている.

他科との話合い

老人の精神異常

著者: 大友英一 ,   新福尚武

ページ範囲:P.244 - P.250

 老人の精神異常の中で,内科医が日常診療上もっともよく接し,かつまたその対処に手こずるのが痴呆である.しかも,その正しい診断は治療手段と関連して,きわめて重要だという.老人の痴呆をめぐり,その特徴,鑑別の要点,これからの課題等々,内科・精神科各々の立場から縦横にご討議いただいた.

medicina reversed CPC

蛋白尿,低蛋白血症および抗核抗体陽性を伴った症例

著者: 堀内篤 ,   梶原長雄 ,   河合忠 ,   天木一太 ,   河野均也

ページ範囲:P.252 - P.261

症例 23歳女性 (死亡 13/1)
 河野 最初に入院後初回の検査成績を見ていただいて,ある程度の結論が出たところで,私が家族歴・既往歴・現病歴・現症といったものを説明させていただきます.それからその次の2回の検査がどのように変化していったか,その病態はどうであったろうかというようなことを経過を追って見ていただきたいと思います.最後に臨床の経過の報告と剖検報告を私がやらせていただき,そのあとでもういちど総合討論をし,その総まとめを天木先生にお願いしたいと思います.それでは,まず堀内先生に,血液学的な検査を見ていただきたいと思います.

特別座談会

新しい医師像を求めて—"新しい医療を創る会"の1年間の成果と今後

著者: 六反田藤吉 ,   長尾和治 ,   河津龍介 ,   竹熊宣孝 ,   坂本豊 ,   内田守 ,   松金秀暢 ,   池崎喜一郎 ,   上田カツ子 ,   小山和作

ページ範囲:P.266 - P.275

 閉ざされた医療への鋭い告発がジャーナリズムをにぎわし,国民の現医療に対する不信の念はいやが上にも高まっているかにみえる.しかし,患者の真の願いは,医療の破壊ではなくてまさしく創造にほかならない.そして,批判の痛みに耐えつつ,あるべき医療に向かって胎動をはじめた新しい芽が医療の内外を問わず,そこここに出はじめている事実も見逃がしてはなるまい.パラメディカル・スタッフのみならず,地域住民をも含めた医療運動として注目されている熊本県の「新しい医療を創る会」もそのひとつだ.

話題

オーストラリア抗原と臨床

著者: 藤沢洌

ページ範囲:P.262 - P.263

 オーストラリア抗原(Au抗原)は,肝炎の感染因子あるいは病原ウィルスときわめて密接した存在として最近内外でにわかに注目されているが,日本消化器病学会第13回秋季大会(盛岡:昭和46年10月1日)でも「オーストラリア抗原と臨床」がシンポジウムの主題の1つとしてとりあげられた.このシンポジウムに参加した演者の1人として,その話題と問題点について述べよう.

急性肝炎の予後

著者: 遠藤浩 ,   前田幸夫

ページ範囲:P.263 - P.264

 急性肝炎の予後には,1)生命に対する予後,2)治癒の遷延,3)慢性化の3つがある.本稿では劇症肝炎,亜急性肝炎などの特殊型は除いて通常の型の急性肝炎(ウイルス性)の治癒の遷延・慢性化に関し記す.

病理夜話

ノイローゼ(その1)

著者: 金子仁

ページ範囲:P.265 - P.265

 昭和46年12月1日付で日本医科大学教授,老人病研究所基礎部主任となり,13年6カ月勤務した懐しい国立東京第一病院を辞任した.考えてみると,私は昭和22年日本医大卒,東一でインターンをやり,母校の病理学教室で10年助手生活を送り,病理主任として東一へ赴任し,アッという間に13年以上たってしまったのである.
 日本医大へ赴任に際しても,東一の内科医長会で私に週に一度来て欲しいとの意見もあるし,私自身も週に一ぺんくらい東一へ行きたい気持が十分あった.そのことを何人かの先輩に相談した.

診療相談室

Heberden結節の治療

著者: 佐々木智也

ページ範囲:P.276 - P.276

質問 Heberden結節はよくリウマチと間違えられるということですが,これが痛む場合もかなりあると思います.治療をすることにより変形の進行をとめることができましょうか.できるとしたらその治療法を.(秋田市・M生)
答 Heberden結節は遠位指節間関節にみられる原発型の変形性関節症で,病理組織学的には,日本人に多い膝の変形性関節症と変わらない像を示す.すなわち,第一に関節軟骨の変性壊死が先行し,これに次いで軟骨下骨の硬化と増生が起こり,背面でHeberden結節として触知されるようになる.結節が触知される時期になると,既に軟骨下骨には関節面側から骨びらんerosionがはじまり,X線写真で凹凸不平にみえるようになる.さらに遠位指骨が亜脱臼になったり,屈曲拘縮にまで発展する.

ブドウ糖二重負荷試験の意義と評価について

著者: 後藤由夫

ページ範囲:P.277 - P.277

質問 ブドウ糖二重負荷試験の意義およびその成績の評価について弘前大学の後藤由夫教授に.(川崎市K.K生)
答 1921年Staubは,同じ量のブドウ糖を90分聞隔で2回服用させて血糖曲線をみると,健常者では初回の血糖曲線の頂値よりも2回目の血糖曲線の頂値が低くなることを観察した.翌年Traugottも同様なことを報告した.その後この2回目の血糖曲線の山が低くなるのは,初回のブドウ糖の刺激で膵から過剰のインスリンが分泌されるために2回目のブドウ糖は初回よりも容易に同化され,それで血糖曲線が低くなるものと説明されるようになった.一方,糖尿病患者では2回目のほうが高くなるが,これは初回のブドウ糖を処理するのに,不足しているインスリンが使われる結果,2回目のブドウ糖を処理するインスリンがさらに少なくなるので,2回目の血糖曲線が高くなるものと考えられた.

多発性大腸憩室症の頻度と処置

著者: 神坂幸良

ページ範囲:P.278 - P.278

質問 最近注腸バリウムにて多発性大腸憩室を2例経験しました.この憩室について,頻度,炎症を起こしている場合などの処置(外科的の場合も含む),大腸憩室についての文献をお教え下さい.(函館市・徳富生・30歳)
答 diverticulosisは粘膜の小さなherniaであり,腸壁から突出していて筋肉層を持たない.diverticulitisはdiverticulosisに炎症をともない1個以上の憩室が穿孔したものである1).わが国ではまれな疾患であり,筆者自身米国では多数経験しているが,本邦ではまだ数少ない.米国ではdiverticulosisは35歳以下にはまれで,40歳以上になると5-10%にみられ年齢とともに頻度は増加し,85歳では約2/3にdiverticulosisがある.子供には非常に少なく,あっても多くの場合先天性のものである.病理解剖例では10%にあるとされている.一方人種的には,日本人やアフリカ人のように大腸が長くしかもhigh residue dietをとる民族にはdiverticulosisの頻度は低い.憩室はsigmoidに最も多く,ついで下行結腸の順で回盲部2)や上行結腸では大きさも小さく頻度は少ない.

読者のひろば

国民は今の健康保険では救われない

著者: 津月克三

ページ範囲:P.279 - P.280

 中央社会保険医療協議会(中医協:厚生大臣の諮問機関)と日本医師会,事業主側との協議会は,診療側の主張30%,中医協,支払側10%の値上げを主張してゆずらなかったため妥結に至らなかったと各新聞は報じている.場合によっては診療側は健康保険取扱いの総辞退を再び行なうのではないかといわれている.
 過般,日本医師会が総辞退した際,多くの健保の患者は非常にこまり,毎日の各新聞紙に医師を非難した投書が多く寄せられたし,新聞社自体も医師会の無道を攻撃してやまなかった.わたしはこれらを読む毎に,政府当局を非難するならもっともだが,医師および医師会を攻撃することは見当ちがいも甚だしいものである,医師はむしろ被害者であると痛感した.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

60巻13号(2023年12月発行)

特集 一般医家のための—DOAC時代の心房細動診療

60巻12号(2023年11月発行)

特集 内科医が遭遇する皮膚疾患フロントライン—「皮疹」は現場で起きている!

60巻11号(2023年10月発行)

増大号特集 患者さんの質問にどう答えますか?—言葉の意味を読み解きハートに響く返答集

60巻10号(2023年9月発行)

特集 ミミッカー症例からいかに学ぶか

60巻9号(2023年8月発行)

特集 症例から読み解く—高齢者診療ステップアップ

60巻8号(2023年7月発行)

特集 浮腫と脱水—Q&Aで学ぶジェネラリストのための体液量異常診療

60巻7号(2023年6月発行)

特集 整形外科プライマリ・ケア—内科医が知りたい整形外科疾患のすべて

60巻6号(2023年5月発行)

特集 Common diseaseの処方箋ファイル—臨床経過から学ぶ20症例

60巻5号(2023年4月発行)

特集 臨床医からみたPOCT

60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

icon up
あなたは医療従事者ですか?